さあ、人体実験を始めよう 『仮面ライダービルド』総括
火星で発見された謎の物体パンドラボックス。それが東京のセレモニーで開かれた時、突如として天を覆うほどの巨大な壁「スカイウォール」が出現。日本は「東都」「西都」「北都」の3国に分断されてしまう。
それから10年。東都では人々を襲う謎の怪人「スマッシュ」の暗躍が続いていた。だが罪なき者たちに危機が迫る時、どこからともなく正義の味方「仮面ライダー」が現れて彼らを守るのだった。
本日は1ヶ月ほど前にめでたく放映終了した『仮面ライダービルド』の紹介というか感想というか総括みたいなことを書きます。
主人公の名前は桐生戦兎(きりゅうせんと)。記憶を失った状態で喫茶店のマスター石動惣一に拾われた彼は膨大な物理の知識と超人「仮面ライダービルド」に変身する能力を持っていた。持ち前の正義感とマスターらの励ましにより、彼は日々スマッシュたちと戦い続けていたのだが…
というわけで今回のライダーのモチーフは「物理科学」(だったのだろうか…)。様々な物体・生物の要素(ウサギ、戦車、ゴリラ、ダイヤモンド、鷹、ガトリング砲etc)を二つ組み合わせてその時の状況に「ベストマッチ」した形態で戦えるという能力を持っています。
日本が朝鮮半島みたいになった設定はなかなか面白くはあったのですが、近年のライダーにありがちなチャカチャカしたギャグと慣れない放送時間に変更になったことで、自分5話くらいで一度脱落したのでした。しかしその後ツイッター等で評判をチラ観していて、どんどん面白くなっていることを知り、復帰。自分は一度離れたドラマにまた戻ってくるということがこれまでなかったので、大げさですがまさに「異例の事態」でありました。
どんなふうに驚愕の展開が続いていったかと申しますと(ここからバンバンネタバレしていきます…)、まず主人公のパトロンというか初代ライダーでいえば「立花のおやっさん」にあたる石動が、実はスマッシュを操る秘密結社の幹部で、主人公をライダーに仕立て上げたのも遠大な陰謀の一環であったことが判明。また桐生戦兎もその結社で働いていた「悪魔の科学者」で(ライダーマンみたい)、裏切りが露見したために記憶を奪われ別人格を与えられたことが明らかになります。ほんでこの時点でまだ全体の1/4くらいしか進んでなかったりします。
こう書くとなんか暗そうなストーリーのような印象を受ける方もおられるでしょう。確かに重いところはけっこう重かったりします。しかしそれでも全体的に沈みがちなムードにならないのは、戦兎の相棒、万丈龍我(ばんじょうりゅうが)に負うところが大きいです。
彼は冤罪で逃亡中の元ボクサーで、たまたまスマッシュに襲われていたところを戦兎に助けられます。行き場のない彼は戦兎と同様石動の喫茶店に身を寄せることに。最初こそ無実を晴らすことに躍起になっていた万丈ですが、「ラブ&ピースのために」戦い続ける戦兎を見ているうちに、次第に彼をサポートするようになっていきます。
戦兎が過去の過ちや現状の辛さに落ち込んでいる時、決まって彼を立ち直らせるのが万丈のぶっきらぼうな励ましだったりします。また戦兎は戦兎で命も顧みず無鉄砲な行動を取る万丈を、必死で守ろうとします。
普段はお互いのことをバカにしあったりつまんないことで喧嘩してたりするのに、いざという時は全力でもう一方をかばおうとする。この「ベストマッチ」な二人の絆が『仮面ライダービルド』全編を貫く太い柱であります。
さらに作品では東都を代表する武闘派ライダー「グリス」と、北都代表で戦兎を改造した張本人である「ローグ」が登場します。二人とも実に味わい深い濃いいキャラなのですが、説明すると長くなるので割愛いたします。
で、まあ色々あって最終回(飛ばし過ぎ)。ビルドと仲間たちは尊い犠牲を払いながら、なんとか火星からやってきた魔王を葬り去ることに成功。しかしその影響で世界は「パンドラボックスによる惨劇がなかった世界」に作り替えられてしまいます。以前の世界では不幸な最期を迎えた人々も、みな笑顔で生活しております。そんな世界にただ一人残されてしまった戦兎。一緒に戦った面々は誰も彼のことを覚えていない…というか、元から知らなかったことになってしまいます。相棒であったはずの万丈さえ… 「これでいいんだ」と満足しつつも寂しさを抑えきれない戦兎の前に現れたのはなんと…
このさびしくもなんとも心優しい結末、20年に渡る平成ライダーの中でもベスト3に入るものでした。そしてやはり有数の名作であるOP曲『Be The One』の歌詞の一番がまさにこの最終回の内容そのままであることに気づき、とめどなく鼻水を垂れ落したのでありました。こんなにもわたしを泣かせた平成ライダー作品は、小林靖子脚本以外では『鎧武』くらいであります。
もう終わっちゃいましたけど夏の劇場版『Be The One』(まぎわらしい)についても少々。実に『フォーゼ』から6年ぶりに夏ライダーを映画館で観てまいりました。最近の夏映画で多いのはなくても支障なさそうな後日談とか、パラレルワールドのお話とか。しかし今回の『ビルド』の映画は最終回直前にあった大事件を描くという、本編にがっつりからむ位置づけになってました。こういうの平成ライダーでは他に『W』くらいしかなかったのでは。ずるい気もしますけど、そうなるとやっぱり最終回の前に見たくなりますよね… 同じように思った人が多かったのか、今夏のライダー映画は5年ぶりに興行収入が10億を越えたそうです。ここんとこ子供たちはもっぱらニチアサより鬼太郎に夢中、みたいな噂を聞いていたので、これは嬉しい驚きでした。
現在放映中の『ジオウ』でとうとう20作目を迎えた平成ライダー。果たしてどこまでいくのでしょう。というか『クウガ』の時からもう20年も経ってしまったという現実におじさんは深く頭を抱え込むのでしたあああああああ
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