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September 28, 2018

さあ、人体実験を始めよう 『仮面ライダービルド』総括

火星で発見された謎の物体パンドラボックス。それが東京のセレモニーで開かれた時、突如として天を覆うほどの巨大な壁「スカイウォール」が出現。日本は「東都」「西都」「北都」の3国に分断されてしまう。
それから10年。東都では人々を襲う謎の怪人「スマッシュ」の暗躍が続いていた。だが罪なき者たちに危機が迫る時、どこからともなく正義の味方「仮面ライダー」が現れて彼らを守るのだった。

本日は1ヶ月ほど前にめでたく放映終了した『仮面ライダービルド』の紹介というか感想というか総括みたいなことを書きます。

主人公の名前は桐生戦兎(きりゅうせんと)。記憶を失った状態で喫茶店のマスター石動惣一に拾われた彼は膨大な物理の知識と超人「仮面ライダービルド」に変身する能力を持っていた。持ち前の正義感とマスターらの励ましにより、彼は日々スマッシュたちと戦い続けていたのだが…

というわけで今回のライダーのモチーフは「物理科学」(だったのだろうか…)。様々な物体・生物の要素(ウサギ、戦車、ゴリラ、ダイヤモンド、鷹、ガトリング砲etc)を二つ組み合わせてその時の状況に「ベストマッチ」した形態で戦えるという能力を持っています。

日本が朝鮮半島みたいになった設定はなかなか面白くはあったのですが、近年のライダーにありがちなチャカチャカしたギャグと慣れない放送時間に変更になったことで、自分5話くらいで一度脱落したのでした。しかしその後ツイッター等で評判をチラ観していて、どんどん面白くなっていることを知り、復帰。自分は一度離れたドラマにまた戻ってくるということがこれまでなかったので、大げさですがまさに「異例の事態」でありました。

どんなふうに驚愕の展開が続いていったかと申しますと(ここからバンバンネタバレしていきます…)、まず主人公のパトロンというか初代ライダーでいえば「立花のおやっさん」にあたる石動が、実はスマッシュを操る秘密結社の幹部で、主人公をライダーに仕立て上げたのも遠大な陰謀の一環であったことが判明。また桐生戦兎もその結社で働いていた「悪魔の科学者」で(ライダーマンみたい)、裏切りが露見したために記憶を奪われ別人格を与えられたことが明らかになります。ほんでこの時点でまだ全体の1/4くらいしか進んでなかったりします。

こう書くとなんか暗そうなストーリーのような印象を受ける方もおられるでしょう。確かに重いところはけっこう重かったりします。しかしそれでも全体的に沈みがちなムードにならないのは、戦兎の相棒、万丈龍我(ばんじょうりゅうが)に負うところが大きいです。
彼は冤罪で逃亡中の元ボクサーで、たまたまスマッシュに襲われていたところを戦兎に助けられます。行き場のない彼は戦兎と同様石動の喫茶店に身を寄せることに。最初こそ無実を晴らすことに躍起になっていた万丈ですが、「ラブ&ピースのために」戦い続ける戦兎を見ているうちに、次第に彼をサポートするようになっていきます。
戦兎が過去の過ちや現状の辛さに落ち込んでいる時、決まって彼を立ち直らせるのが万丈のぶっきらぼうな励ましだったりします。また戦兎は戦兎で命も顧みず無鉄砲な行動を取る万丈を、必死で守ろうとします。
普段はお互いのことをバカにしあったりつまんないことで喧嘩してたりするのに、いざという時は全力でもう一方をかばおうとする。この「ベストマッチ」な二人の絆が『仮面ライダービルド』全編を貫く太い柱であります。

さらに作品では東都を代表する武闘派ライダー「グリス」と、北都代表で戦兎を改造した張本人である「ローグ」が登場します。二人とも実に味わい深い濃いいキャラなのですが、説明すると長くなるので割愛いたします。

で、まあ色々あって最終回(飛ばし過ぎ)。ビルドと仲間たちは尊い犠牲を払いながら、なんとか火星からやってきた魔王を葬り去ることに成功。しかしその影響で世界は「パンドラボックスによる惨劇がなかった世界」に作り替えられてしまいます。以前の世界では不幸な最期を迎えた人々も、みな笑顔で生活しております。そんな世界にただ一人残されてしまった戦兎。一緒に戦った面々は誰も彼のことを覚えていない…というか、元から知らなかったことになってしまいます。相棒であったはずの万丈さえ… 「これでいいんだ」と満足しつつも寂しさを抑えきれない戦兎の前に現れたのはなんと…

このさびしくもなんとも心優しい結末、20年に渡る平成ライダーの中でもベスト3に入るものでした。そしてやはり有数の名作であるOP曲『Be The One』の歌詞の一番がまさにこの最終回の内容そのままであることに気づき、とめどなく鼻水を垂れ落したのでありました。こんなにもわたしを泣かせた平成ライダー作品は、小林靖子脚本以外では『鎧武』くらいであります。

もう終わっちゃいましたけど夏の劇場版『Be The One』(まぎわらしい)についても少々。実に『フォーゼ』から6年ぶりに夏ライダーを映画館で観てまいりました。最近の夏映画で多いのはなくても支障なさそうな後日談とか、パラレルワールドのお話とか。しかし今回の『ビルド』の映画は最終回直前にあった大事件を描くという、本編にがっつりからむ位置づけになってました。こういうの平成ライダーでは他に『W』くらいしかなかったのでは。ずるい気もしますけど、そうなるとやっぱり最終回の前に見たくなりますよね… 同じように思った人が多かったのか、今夏のライダー映画は5年ぶりに興行収入が10億を越えたそうです。ここんとこ子供たちはもっぱらニチアサより鬼太郎に夢中、みたいな噂を聞いていたので、これは嬉しい驚きでした。

現在放映中の『ジオウ』でとうとう20作目を迎えた平成ライダー。果たしてどこまでいくのでしょう。というか『クウガ』の時からもう20年も経ってしまったという現実におじさんは深く頭を抱え込むのでしたあああああああ

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September 26, 2018

落下の王様 クリストファー・マッカリー 『ミッション・インポッシブル フォールアウト』

まだやってるかわかりませんが、本日はすっかり定番シリーズとなったトム・クルーズ主演の『ミッション・インポッシブル』最新作『フォールアウト』をご紹介いたします。

核弾頭の燃料となるプルトニウムがテロリストにより強奪される。イーサン・ハント率いるIMFはその奪取に臨むが失敗。やむなくCIAと協力しながらミッションに再挑戦する。やがてハントは敵の企みに前作でとらえたソロモン・レーンが深くかかわっていることを知る。レーンの世界をも滅ぼそうとするその計画をハントは阻止することができるか。

いつでもどれでもいきなり観ても楽しめるのがウリだった映画「ミッション・インポッシブル」シリーズですが、6作目の今回はかなり過去作と密接に関わりあっていて、「3~5くらいは観ておいて」という感じになっています。特に4と5。監督は前作「ローグ・ネイション」と同じクリストファー・マッカリーなのですが、ひたすらお洒落お洒落してた5作目と違い、「フォールアウト」では自分の過去や信条ゆえに苦しめられるような、ちょっと重苦しいムードになっておりました。
おもうにイーサンが007と違うのは、スパイである以前に正義の味方…「弱き者の守護者である」ということ。007は絶対にMI6を裏切ったりしないでしょうけど、イーサンはIMFが自分の正義に叛くことをしたら、きっぱりと組織を敵に回しそう。でもそういう頑固さってスパイにはむいてないと思うのですよね。今回そのイーサンの良心が試されるシーンがあってハラハラいたしました。

ハラハラしたといえばこの作品、トム・クルーズの「アクション生身でやりたい欲」が暴走して見ごたえあるんですけど、スタッフは生きた心地がしなかったとか。CGですむところを107回もスカイダイビングしたり、ビルからビルへ飛び移って骨折したり… もはや危険ジャンキーといってもいい領域にまで達してきました。若いころ(『レインマン』とか)はそんな人じゃなかったのに… 50歳を過ぎた今になってなんでそんなに無茶を繰り返すのでしょう。

そんなトムさんの「生身アクション最優先スタイル」のためか、撮影開始時はまだ脚本が完成してなかったとか。まずトムトムの「こういうアクションをやりたいから、それに合わせたストーリーを考えて」という指示があって、それにマッカリーさんが鼻血を出しながら書き進めていったのだそうです。トムさんの無茶ぶりも大したものですが、これだけ違和感のない脚本をつけたしていって十分に受け切ったマッカリーさんの才能も恐るべきものです。

昔の香港アクションも脚本というものは特に存在せず、その場その場のノリでストーリーが形作られていったそうですが、そうしたスタイルの映画で出世したスターの1人がご存知ジャッキー・チェン。そのジャッキーが師と仰ぐ俳優の1人にチャップリンと並び称されるバスター・キートンがおります。CGも特撮もない時代にキートンは生身ひとつで無茶なアクションをこれでもかというくらい撮り続けました。そのハードアクトと独特なカメラワークは『マッドマックス 怒りのデスロード』などにも多くの影響を与えています。トム・クルーズももしかしたらキートンを目標としているのかもしれません。ただキートンが死にかけながら映画を作っていたのはあくまでお笑いのためなので、そういう点では誰も同じ存在になることはできないでしょう。

話が横道にそれました。そんだけ体を張った甲斐があったのか、『フォールアウト』は北米でも世界でもシリーズ最高収益を達成してしまいました。これではまた次作でトムトムが張り切ってしまうのは目に見えております。痛ましい事故とか起こさないうちに、どうか誰か彼を止めてください…

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September 24, 2018

家族はつよいよ2 ブラッド・バード 『インクレディブル・ファミリー』

あの1作目から14年… わたしはだいぶ年を取りましたが、彼らはあの時と変わらず帰ってやがり参りました。『インクレディブル・ファミリー』、ご紹介します。

いろいろあって家族の絆を取り戻したパー家。だが世間では変わらずヒーロー活動は禁止されていて、彼らにとっては肩身の狭い日々が続いていた。そんな折、ある資産家がパー夫妻にヒーローが再び表舞台に立てるための計画に協力してほしいと申し出る。考えた末にそのプロジェクトに乗ったボブたち。とりあえずいろんな意味で柔軟なパー夫人が秘密裏にレスキュー活動を行うことになる。そして家の留守を任されたボブは、いくつもの能力を持つ末っ子ジャック・ジャックの世話に手を焼かされることに…

モンスターズ~にファインディング~にカーズと、2作目は1作目のわき役が中心になることが多いピクサー作品。今回もイラスティ・ガールことパー夫人をメインに持ってきています。近年ますます女性の社会進出が顕著になってきている世界情勢を、如実に反映した内容となっていました。
三児のお母さんがスーパーヒーローの映画って果たして面白いのか?という疑問がわく人もいるかと思われますが、これがなかなかに楽しい。ゴム人間といえば『ワンピース』のルフィや『ファンタスティック・フォー』のリードがいますが、最新のCGアニメで描かれたゴムアクションはさらにそれらの上をいっておりました。
そしてイラスティ・ガールさんですが、かっこよくもあり、ほのかなお色気もあり、そして家に帰ると家庭的な奥さんという、熟女好きにはたまらないキャラでありました。出番が増えた分、前作より魅力も大幅にアップしております。

ただ観ていて心配になるのは、最近のディズニー、ピクサーには「人当たりのいい権力者、パトロンは信用してはいけない」という法則があること。この作品にもいかにもそんな登場人物が出てきます。こいつ絶対裏切るだろうな~と決めつけながら鑑賞しておりましたが、実際はどうだったかというと… 一応伏せておきましょう(笑)

先に公開された『未来のミライ』と同じく「育児」が重要な要素になってるところも興味深かったです。くんちゃんは普通の人間の子供でしたが、ジャック・ジャックは光線を放つし炎は吐くしでこんなベビーの面倒を見ていたら命がいくつあっても足りません。加えて長女の思春期の悩みや長男の難しそうな宿題まで取り組まなければならないのですから、スーパーヒーローのボブさんといえ、どんどん憔悴していくのはやむなきこと。スーパーヴィランに立ち向かうのと同じくらい、家事・育児は大変ということなんでしょうね。わたしは子供いませんけど全国のお父さん・お母さん、まことにお疲れ様であります。

さて、この作品ヒーロー映画的にはなかなか危ないテーマにも挑んでいます。それは「ピンチの際にはヒーローに頼るべきか? それとも自分で解決すべきか?」というもの。実際にヒーローはいませんが警察や救急におきかえて考えることもできるでしょう。わたしとしては普通にケース・バイ・ケースだと思うのですが、この映画はその辺投げっぱなしで終わってしまいました。観客一人一人で考えてくださいってことなんでしょうかね。

もうひとつ特筆すべきことをあげると、『ミッション・インポッシブル』シリーズを手がけたマイケル・ジアッチーノの音楽がレトロ調でめちゃめちゃ渋かっこいいこと。Mr.インクレディブル、イラスティ・ガール、フロゾンには専用のテーマがあるのですが、これらがまた無駄にオシャレで決まりまくっておりました。本年度の映画音楽ベスト1に選びたいくらいです。

お母さんが大暴れしてヒーローが育児に励むこの映画、果たして一般受けするのかと思いましたが、世界でも日本でもけっこうなヒットを飛ばしているようで、不思議なものであります。よかったね、ブラッド・バード!

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September 18, 2018

死霊のうらがわ 上田慎一郎 『カメラを止めるな!』

人里離れたところにある今はもう使われていない水道施設で、ゾンビ映画の撮影をしているクルーがいた。常軌を逸した監督の興奮ぶりに次第に疲弊していくスタッフ・俳優たち。メイク係の女性は場を紛らわそうとロケ地にまつわる伝説を語り始める。なんでもそこはもともと旧陸軍の研究所で、死体を生き返らせる実験が行われていたとのこと。彼女がその話を語り終えるや、異様な物音が館内に響き渡る。それは想像を越えた惨劇の幕開けであった…

…って感じで始まる今話題のヒット作『カメラを止めるな!』。ホラー映画としてはありがちな出だしであまり期待も持てないのですが、どうしてどうして、ストーリーはここからどんどん予期せぬ方向へ転がってまいります。

新宿駅東南口の近くにケイズシネマという映画館があります。欧州のアート系作品の特集上映や、新人監督の秀作なんかをよくかけてるところで、言ってみればこう、「エッジの効いた」映画をよくあつかってる劇場です。客席もそれほど多くなく、「新宿のど真ん中で経営厳しくないかしら」と勝手に心配したりしてました。
で、今年の7月くらいでしたでしょうか。そのケイズシネマで毎回満席で大評判を呼んでいる作品があると聞きました。それがこの『カメラを止めるな!』でした。興味が湧いたもののチケットを取るのが大変そうだな…と思っっていたら、今度は評判が評判を呼んで全国のTOHOシネマズで拡大上映されるという。そして映画ファンのみならずひろく一般層にも大変な好評をもって迎え入れられました。映画ファン歴20年のわたしにもこんな異例の形でヒットを飛ばした邦画はちょっと記憶にありません。ある方のお話によると伊丹十三監督の『お葬式』なんかがとても近い形だったそうですが。

ヒットの要因は月並みですがまずわかりやすい、とても面白い映画であったこと。「面白い」というのは人それぞれでですが、『カメラを止めるな!』には普遍的というか最大公約数的な面白さが詰まっておりました。また、それと同時にとても変わった作品でもあることも好評の理由かと。わたしくらいの年になると「これはあれのオマージュかな?」と感じるところがチラホラないでもないですが、それでもトータル的には立派なオリジナリティを有してますし、まして普段あまり劇場に行かない人たちにしてみたら「こんな映画観たことない!?」というくらいヘンテコな構成だったと思います。高額な予算をかけなくてもすぐれた脚本とアイデアひとつでこんだけの傑作を作れるという実証のような作品。少し前だと『キサラギ』『アフタースクール』『フィッシュストーリー』などと近いものを感じました。

監督はこの映画が2本の舞台から影響を受けていることを認めています。1本は劇団PEACEという団体の『GHOST IN THE BOX!』。もう1本は三谷幸喜氏の『ショウ・マスト・ゴー・オン ~幕を下ろすな』。後者はたまたま教育テレビ(現Eテレ)で放送されていたのを見たことがあります。どんな内容かと申しますと、ある名優が『マクベス』を公演するわけですが、もうかなりの高齢のため途中で倒れてもおかしくない状態だったりします。おまけに演出家が迷子になって小屋に到着できなかったり、ピンチヒッターにスタッフのお父さん(ずぶの素人)が来てしまったり、本当にたくさんのトラブルが公演を襲います。それでも一度幕を開けた以上最後まで芝居はやらなきゃならない…というスタッフのドタバタ・がんばりを描いた作品。ちなみに背景の転換は一回もなく、檀上はずっと舞台の袖で固定されておりました。

確かに『カメラを止めるな!』と似てるところは幾つかありましたが、表現方法が映画とお芝居とはおのずとやりようが異なってくるもの。『ショウ・マスト~』は普通にDVDが発売されてるので興味を持たれた方は見比べてみるのも一興かと。三谷さんは「ぼくの影響? 受けない方がいいんじゃない?」の一言で済まされましたが、もう一方の舞台の方は次第に納得いかなくなってしまったようで、現在「原作として認めるか」という協議がつづいてるとのこと。ただそんなネガティブなニュースさえもヒットの肥やしになってしまった感すらあります。

『カメラを止めるな!』は怪談の時期が終わってしまったこともあり、さすがに売り上げがピークを過ぎて参りました。それでもまだ2、3週は上映が続くものと思われます。繰り返すようですが、こんなヘンテコな映画がこんなヘンテコな形でヒットを飛ばすことは今後10年ないのでは。祭りにでも参加するつもりで、ちらっとでも興味を持たれた方は鑑賞してみるのはいかがでしょう。何かにつけ自信がないわたしが(ちょっとだけ)自信をもっておすすめいたします。

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September 12, 2018

プリズン・ブレイキング・バッド シドニー・シビリア 『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』

シネコンの普及で地方でも観られる映画の選択肢はぐんと増えましたが、それでもヨーロッパ映画なんかはあまり入って来ないもの。ただ先日珍しく一風変わったイタリア映画が流れて来たので、これはチェックせねばと鑑賞してまいりました(1ヶ月以上前の話ですが…)。『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』、ご紹介します。

大学を追われた研究者のピエトロは、金を稼ぐため仲間の教授たちと語らって違法薬物の密造に手を出す。色々あって結局警察に捕まってしまった彼らだったが、野心家の女警部がピエトロたちの知識を麻薬組織の摘発に利用することを思いつく。犯罪者から警察のスパイへ。奇妙な教授たちは180度立場を変えて再び夜の街で大騒動を繰り広げる。

実はこの映画『いつだってやめられる 7人の危ない教授たち』という作品の続編にあたります。そちらの方は都市部の2,3館で細々と特集上映されただけだったので、さすがに観に行けませんでした。どうせなら1作目からちゃんと見たかった…とは思いましたが、まあサイトのあらすじとかそれなりの想像力で前日談の内容はだいたい把握することができました。

やっぱり面白いのは主人公が「研究者たちのチーム」というところ。みなそれぞれその道の第一人者なんだから当然頭がいいはずなのに、やることなすこと抜けてたり危なっかしかったり。勉強ができるからといって、上手に波風立てずに生きていけるわけではない…ということを改めて教えられました。ひとつの才能が突出しすぎてるあまり、他の面(人格など)が大きく欠けてたりとかね。しかしそんな連中のハイテンションな暴れっぷりというのは観ていて至極痛快だったりします。

イタリア映画というとかつてはマカロニ・ウェスタンとか残酷ホラーなどを量産していたのに、近頃評判を呼んでるのは大抵社会派ドラマとか人情ものなど。この映画もちょびっと社会問題を提起ししてるようなところがありますが、普通にドタバタ喜劇として楽しめる作品。こういうあちらのコメディがもっと色々あるのなら、ほかの作品もぜひ観てみたいものです。

あとイタリア男というとキザで女性と見れば片っ端からナンパする…というイメージがありますが、本作品を観るとそんな男ばっかりでもないことがわかります。というかトルナトーレの諸作や『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』『ベニスに死す』『人生、ここにあり!』などを観ると、どちらかといえばナンパ男より不器用で一途な純情野郎の方が多い気がします。なんにせよ偏見はよくないですね。話が横道にそれてますね。

腹を抱えてなかなか楽しませていただいた『いつだってやめられる 10人に怒れる教授たち』でしたが、ラストに限ってはそりゃあひどい映画でした。ぶっちゃけちゃうと思いきり「第3作に続く!」というものです。しかも非常に切れの悪いところで。なんじゃあこりゃあ!!
幸いにも3作目『いつだってやめられる 戦う名誉教授たち』は11月から日本公開が決定しております。2作目がかかったんだから、その次も当然こちらでやるよな… 配給さん&映画館さん、信じてますから。

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September 11, 2018

妹はお姉さん 細田守 『未来のミライ』

今夏もアニメ映画をよく観ました。今日はそのうちの一本で細田守氏の最新作『未来のミライ』をご紹介します。

くんちゃんはまだ小学校にも上がっていない甘えん坊の男の子。妹のみらいちゃんが生まれてからというもの、両親はそちらにかかりきりで、かまってもらえないくんちゃんは癇癪を起す日々が続いていた。そんなある日くんちゃんは自宅の庭で「王子」と名乗る奇妙な男と出会い、それをきっかけに不思議な体験を繰り返すことになる。

予告から勝手に感動押しの泣けるお話かと予想していたのですが、これまでの細田作品では最も淡々としたストーリーだったように感じました。ちょうどくんちゃんが読んでる絵本によくあるようなパターン。ごく日常的な状況にある子供が、ちょっとだけ非現実的な体験をルーチンのように何回か経験していくというストーリー。ぱっと思い出せる例が『はれ、時々ぶた』と『トイレにいっていいですか』くらいしかないのが辛いところですが。

そしてこれまで以上に細田監督の私小説感が濃厚になったアニメでもあります。ネット等で「『うちの子かわいいでしょ?』という話をえんえんと見せつけられてるようできつい」という意見がありましたが、わたしはそうは感じませんでした。くんちゃんは時折かわいくて健気な一面も見せますが、基本的にはダダとわがままをこねまくるなかなか手ごわい男児です。でもまあ大抵の子供というのはそういうもんじゃないでしょうか。「育児って大変だな…」ということが未経験の者にもよく伝わって来ました。あと妹が生まれたばかりの時、すぐに機嫌を損ねる様子がわたしの上の姪とかなりおんなじでそのことを思い出してにんまりいたしました。

ただやっぱり細田監督や夏アニメには壮大な冒険とか切ないお別れとかを期待してしまうもので、その点ではちょっと物足りなかったかな… 今回はいいですけど次はもうちょっと細田さんのご家庭から飛躍した話が観たいものです(えらそう)。
個人的に気に入ったのはくんちゃんちにおける犬「ユッコ」の扱いとか。その家に子供が生まれた途端一番かわいい存在ではなくなってしまう…という例、いかにもありそうですよね。大島弓子先生の『綿の国星』にもそんなエピソードがありました。
あと前作からキャラデザが貞本義久さんでなくなってるんですけど、絵はおんなじだったりします。そんな貞本そっくり絵で描かれるイケメンが男のわたしでもドキッとするような色気を放っておりました。

日本テレビその他から「ポスト宮崎駿」として期待されている細田さん。先の言葉と矛盾するようですが、本人はあんまりそんなこと気にしなくてのびのびと自分のやりたいことをやってる様子で、いいなと思いました。『未来のミライ』はまだたぶん上映中。あと1週くらいでしょうか

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September 05, 2018

恐竜屋敷の恐怖 J・A・バヨナ 『ジュラシック・ワールド 炎の王国』

20180905_165821良い子の皆様、夏休みの宿題は終わりましたでしょうか。本日は今年の夏休み洋画で一番儲けたであろう『ジュラシック・ワールド 炎の王国』をご紹介します。前作の記事はコチラ

ジュラシックワールドの惨劇から数年。恐竜たちが残された島が火山活動で今にも壊滅するという知らせをクレアは聞く。若い資産家の援助を取り付けた彼女は、元恋人でラプトル「ブルー」の親でもあるオーウェンと共に恐竜たちを救出すべく、かの地を再び訪れるのだが…

このシリーズもいつの間にやら5作目。前半こそいつものジュラシック・パニック映画なのですが、後半に入ると意表をついた展開を見せ始めます(以下バンバンネタバレしていくのでご了承ください)

監督は『永遠のこどもたち』『怪物はささやく』などのJ・A・バヨナ。どちらかというとこぢんまりとした物悲しいムードを得意とする作家で、就任が決まったと聞いたとき「彼にはあんまり合ってないんじゃ」と思いました。ですが中盤を過ぎたあたりからはどんどんジュラシックシリーズを強引に自分色に染め上げていきます。
ハリウッドの大作を任されると個性が骨抜きにされてしまう例が多い中で、大したものでありました。

ただこの後半の展開、本国では意見が割れてるそうで。広大な屋敷の屋内で恐竜どもが暴れまわるというコンセプト、確かにいままでなかったアイデアでそこは誉めてさしあげたい。けれどせっかくの巨大生物が広いとはいえ家の中に押し込められているようで、少々ダイナミックさに欠けたのは確かです。わたし個人はといえばやはり窮屈さは感じましたが、目新しい演出に弱い上にそれなりに面白くはあったので、「よし!」といたしました。

あとこのシリーズは特に必然性もないのに決まってお話に子供をからめますよね。恐竜好きな低年齢層のお子さんたちを映画館に呼び寄せるためでしょうか。本当にちっちゃい子がスクリーンでT-REXのお食事シーンとか見たら確実にトラウマになるかと思いますけど。
ただ今回に限ってはかわいそうな親子話を得意とするバヨナさんの資質が、この「お約束」とぴったりマッチ。偶然なのか狙っての起用だったのか、最初「なんで彼が」と思っていたことを謝罪いたします。

クライマックスでさらに思い切ったことをやってくれちゃった『炎の王国』。次作は再びコリン・トレボロウにメガホンを戻し新三部作の集大成とするようですが、いったいどのように収拾をつけるのか… ちょっときなくさい予感もしますが3年後の完結編を楽しみに待ちたいと思います。

20180905_165944『ジュラシック・ワールド 炎の王国』はまだまだ全国の映画館で公開中。やっぱり夏は恐竜が強い…


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