笑えないホット・ショット ジョセフ・コシンスキー 『オンリー・ザ・ブレイブ』
北米では猛暑期に頻発する大規模な森林火災。消防精鋭部隊「ホットショット」のあるチームを描いた実話に基づく物語『オンリー・ザ・ブレイブ』、ご紹介します。
だいたい2010年くらい。アリゾナ州でマーシュ隊長率いる消防隊は有能ながら融通の利かない制度ゆえにワンランク上の「ホットショット」に昇格できないでいた。そんな彼の隊にある日ブレンダンという若者が入隊してくる。薬物依存を患いながら、子供が生まれたたために一念発起して志願したのだった。最初は冷たい目で見ていた隊員たちも、やがてひたむきにがんばる彼を迎え入れるようになる。
火災を題材にした映画ってそんなにないもんですよね。有名どころでいうと『タワーリング・インフェルノ』や『バック・ドラフト』くらいでしょうか。だもんで実話でしかも山火事がテーマのお話というのはかなり珍しいかと。実際観てみますとわれ我々とは縁遠い大規模な森林火災のいろいろ勉強になります。山火事を消すのには水じゃなくてむしろ燃やすことだとかね。「???」と思われた方は本編をごらんください(もう公開終わっちゃってますけど…)
とは言いながら、そっち方面に別に興味があったわけでもない自分は、当初全然観ようとは思ってませんでした。予告編を見ても普通に「実話版『海猿』」みたいな印象でしたし。それが翻ったのはツイッター上で「とにかく衝撃的」という評判をいっぱい目にしたから。その衝撃とはどんなものなのか確認したくて鑑賞することにしたのでした。
でもね… 実話ベースで「衝撃」と言われちゃうと大体想像ついちゃうんですよね… そしてほぼ想像通りでした… なんというか、「まるで映画みたいな実話だなあ!」というところと、「やっぱり実話は映画のようにはいかんわ…」というところがあります。
この辺むずかしいですね。できたら先入観のない状態で観る方が一番良いのでしょうけど、「衝撃的すぎる」という評判を目にしなければまず自分は観に行かなかったでしょうし。少し前の『レディ・プレイヤー1』にも同じことが言えます。某ロボットが出てくるというのはできれば伏せといてほしかったけど、それを明らかにしないと観に来ない人もいっぱいいるだろうし。宣伝って本当に難しいですね。この辺で誤ったせいで『オンリー・ザ・ブレイブ』の日本公開もこけた感がありますし。
監督は『トロン・レガシー』『オブリビオン』のジョセフ・コシンスキー。SF畑の人という印象がありましたが、地に足の着いた実話ものも出来るということをこの作品で証明されました。
もう一人新境地に挑んだのは『セッション』でのひねくれ役が異彩を放っていたマイルズ・テラー。こちらでは非行から立ち直って成長する好感の持てる若者を巧みに演じておりました。前が前だけに反動でけっこういい人に見えてしまうという「映画版のジャイアン効果」みたいなところがなきにしもあらずですが。
そんでこの二人が組んで今度やるのが『トップガン』の続編だそうで。なんとなく物悲しい~せつな~い『トップガン』になりそうな予感がします。
『オンリー・ザ・ブレイブ』はもう11月にはDVDが出ます。ここまで読んで興味が湧いた奇特な方は秋になったらごらんになってください。
Comments
マイルズ・テラーといえば、『セッション』と本作の間に『ファンタスティック・フォー』があるじゃないですか。マイルズ・テラーは他でもないMr.ファンタスティックですよ。ヒーロー中のヒーローですよ。
マイルズ・テラーが演じた本作のマクドナウは、『ファンタスティック・フォー』のシリーズ化がぽしゃってグレたように見えました。
Posted by: ナドレック | August 23, 2018 12:34 AM
やはり消防団の横で闘将ダイモスの主題歌を歌ったら怒られるのでしょうか?
♪燃やせ燃やせ真っ赤に燃やせ怒る心に火をつけろ
うんまあ、映画は改変するにしても歴史が最近すぎるからなあ。
Posted by: ふじき78 | August 23, 2018 09:22 PM
>ナドレックさん
お返事おくれてすいません。ああ、ありましたね、そんな映画も…(遠い目)
監督ジョシュ・トランクがキャストに「ぼくはこの映画が出来たことを誇りに思う」とメールを送ったところ、ただ一人「ぼくはそうは思わない!」と返信したのがマイルズだったそうです。やっぱり『セッション』そのまんだな、と思いました(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | August 28, 2018 09:50 PM
>ふじき78さん
日本だと怒られると思いますが、ホットショットの人たちは火災をそれなりに楽しんでたし自分たちも燃やしてたのでOKでは?
Posted by: SGA屋伍一 | August 28, 2018 09:52 PM