ディズニー世界の片隅に ショーン・ベイカー 『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』
再びの公開が終わってしまった映画シリーズ第二弾。名優ウィレム・デフォーがいろんな助演男優賞を受賞したりノミネートされたりした『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』、ご紹介します。
西海岸はディズニーワールドの近辺にあるモーテル群。そこでは家を持てない貧しい人たちがその場しのぎの生活を続けていた。そんな中でも母親と二人暮らす少女ムーニーは毎日友達と遊んだりいたずらを繰り返したり元気いっぱい。ヤンママっぽい母ヘイリーも共に陽気な日々を送っていたが、やがて生活苦は彼女たちをおいつめていく。
まず副題の「真夏の魔法」というのが謎です。そんなにのんきで都合のよい話ではないのです。魔法っぽいところがあるすればすぐ近くに「夢と魔法の王国」がそびえたってることくらいでしょうか。
「ディズニー施設のある町のひなびた家族の話」ということで自分は『浦安鉄筋家族』みたいなものを想像してましたが、あちらよりは西原理恵子先生の『ぼくんち』に近いかもしれません。劣悪な環境においても子供たちは愉快な仲間がいればいろんなところでお楽しみを見つけていくものです。しかし家計を支えなければいけない大人たちはそう単純なわけにもいきません。ことにそれがシングルマザーの場合は…
いまひとりの主人公であるヘイリーはガラは悪いしすべてが行き当たりばったりだし、子供がそのまま大人になったようなお母さん。正直近くにいたら問題に巻き込まれそうでいやだなあ…とは思いますが、それでも憎めないのはムーニーや近所の子供たちに対する愛情がとても深いものだから。どんなに苦しい境遇にあっても、彼女は決して娘に八つ当たりしたりはしません(ここ大事)。
そんなお母さんに育てられたからか、ムーニーはほとんど泣き顔を見せません。子供というのは本来もっとぎゃあぎゃあ泣くものだと思うのですが、この子は「バカなのかな?」と思えるほどにいつもケラケラ笑っている。だからこそそんなムーニーが一度だけ声をあげて泣きべそをかくシーンには胸が締めつけられるようでした。
このどん詰まりの親子をたしなめたり、さりげなく助けてくれるのが我らの?ウィレム・デフォー。アクション映画ではコワモテになりがちな彼が、人間ドラマではなんとあたたかく心を落ち着かせてくれること。しかしそのあたたかさが親子を救うものになるかといえば、やっぱりその場しのぎにしかならないのがなんともやるせないところでありました。そういう切ない人間模様と、登場人物のアナーキーな暴れっぷりと、ディズニー調のポップな街の背景が独特な印象を残す作品。
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』はもう再来月にはDVDが出ます。最近はこのブログ、DVD発売予告屋さんみたいになっちゃってますね…
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