犬神家の獄門島 略して ウェス・アンダーソン 『犬ヶ島』
「すでに公開終了している映画」の紹介第二弾は、異才ウェス・アンダーソンが二度目のコマ撮り映画に挑んだ『犬ヶ島』でございます。
架空の日本。犬を憎むメガ崎市の市長コバヤシは、伝染病を媒介する原因として市内のすべての犬を離れ小島の「犬ヶ島」に隔離してしまう。だが自分に尽くしてくれた愛犬を諦めきれない市長の養子アタリは、単身犬ヶ島に潜入し、その犬「スポッツ」を救出しようと試みる。たまたまアタリと出会った4匹の犬たちはその心意気に打たれ、スポッツを探す旅に同行する。
最初に設定を聞いたとき首をひねりました。なぜ日本なのか。なぜ犬なのか。そこに理由はあまりないと思いますがたりない頭で考えてみました。
ウェスさんはアニメのオールタイム・ベストの1位か2位に『AKIRA』をあげておられました。ジブリ作品などもけっこうお好きなようです。つまり自分の手で好きな「日本のアニメ」を作ってみたかったのではないでしょうか。それがどうしてこうなったのかは謎ですが。正直AKIRAよりもジブリよりも、70年代的な風景やドタバタしてる時の表現などから『ド根性ガエル』や『天才バカボン』に近いセンスを感じました。
そしてなぜ犬なのか。外国の人が抱く日本のイメージのひとつに「侍」があります。しかし現代日本にサムライはいません。そこでどうしてもサムライ的なものを出したいウェスさんは、「忠義に熱い」「かっこいい」「戦闘力が高い」ということで代わるものとして「犬」を選んだものと思われます。劇中には『七人の侍』へのオマージュらしきシーンもありますし、島に捨てられた犬たちは主君を失った浪人と非常によく似てます。
ウェス作品ではよく犬猫などの小動物がひどい目にあいますが、『犬ヶ島』はその集大成的な映画でもありました。人形(犬形?)の映画ということで愛護団体からの抗議もないので、その点やりたい放題でした。動物が嫌いなわけではないと思うんですよね。好きなゆえにちょっかい出したり、小突きたくなってしまうようなそんなゆがんだ愛情かと。アニメとはいえ犬たちはいい迷惑です。
あとやっぱり「犬が喋る」ということや彼らが徒党を組んで冒険に挑むところは、高橋よしひろ氏の『銀牙』を思い出さずにはいられませんでした。この漫画はフィンランドではガラパゴス的な人気があるそうですが、ウェス氏もどこかで読んでいたのでしょうか? それとも単なる偶然か。
ちなみに今『銀牙』のシリーズは3作に渡る続編を経て最終章に突入。長年の敵である熊と戦うか和解すべきかという面倒くさそうな展開になっています。
話がそれました。少し前まで「毒にも薬にもならない」という作風だったウェスさんですが、前作『グランド・ブダペスト・ホテル』に引き続き『犬ヶ島』でもちらっと社会風刺的なメッセージが込められておりました。大人になっちゃったんですかねえ、ウェスさん。でも正直今回は素っ頓狂な日本描写やエキセントリックなキャラ達のせいでその辺はだいぶかすんでました(笑) 訴えたいことがあるなら、もう少しシリアスな映画でやった方がよいかと思われます。
『犬ヶ島』は現在ほぼ公開が終了。こんだけ日本愛を注いでくださったにも関わらず、興行の方はぱっとしなかったようで申し訳ない限りです。
まあ近々DVDが出るでしょう。この映画はぶっちゃけテレビ画面で観てもあんまり醍醐味とかは変わらないと思います。ワンちゃんの好きな人はぜひ。
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Comments
> ワンちゃんの好きな人はぜひ。
王貞治さんは好きだから見たよ。
Posted by: ふじき78 | July 08, 2018 09:44 PM
>ふじき78さん
ぼくはチョーさん派
Posted by: SGA屋伍一 | July 10, 2018 10:23 PM
猫ヶ島は行きたい。
Posted by: ボー | July 25, 2018 06:22 AM
>ボーさん
ぼくは女ヶ島に… いえ、なんでもありません
Posted by: SGA屋伍一 | July 31, 2018 09:52 PM