ニンジン義なき戦い 英国田園編 ビアトリクス・ポター ウィル・グラック 『ピーターラビット』
公開終了した作品の紹介もこれが最後です… 英国の名作絵本を大胆な解釈で映画化した『ピーターラビット』について書かせていただきます。
そこはイギリスのとある田園。ウサギのピーターと仲間たちは、マクレガーじいさんの畑から命がけで作物を奪い取るスリリングな毎日を送っていた。そんなある日、じいさんは老齢と不摂生のため頓死してしまう。これで屋敷と畑は俺たちのものだ!とはしゃぐピーターたちだったが、間を置かずしてじいさんのいけすかない甥が越してきたため、戦いは第二ラウンドへと突入する。
ええと… よく知らないけど『ピーターラビット』ってもともとはこんな話じゃなかったと思うんですよね。わたしが初めてその名を聞いたのはキューピーマヨネーズのコマーシャル。あと某『トリビアの泉』で「お父さんはマクレガーさんに捕まってパイにされた」ということは存じてました。ですからおそらくのらくらした原作の中のブラックな部分を面白おかしく強調した映画のようです。先の『パディントン』が正攻法で名作童話を再現したのに対し、こちらは斜め上の変化球で挑んできた感じです。
ピーターたちの視点でみますと巨大な人間の殺意・攻撃を鼻先で交わし、果敢に反撃に転じるあたりはまるで『進撃の巨人』のよう。人間だけでなく小動物の方も負けず劣らず殺る気満々です。ひねた大人としてはとても楽しいですが、子供たちにはあまり教育的によろしくないかも(笑)
一方人間の側から観てみると、服を着て喋る動物がたくさんうろついている情景は明らかにおかしい。誰かのラリッた妄想を延々と眺めているかのようです。そういう意味ではなかなか痛快なドラッグムービーでもありました。
そう思えるのはピーターたちと戦う甥の方のマクレガーが明らかに変人だからでもあります。なんせ登場一番清潔さを確かめるために便器から水を飲もうとさえします。そのエキセントリックな行動ぶりはミスター・ビーンに近いものがありました。演じるは最近スターウォーズ他で活躍の目立つドーナル・グリーソン氏。何かと災難に巻き漏れる役が多く、これまでは「単なるかわいそうな人」というイメージでしたが、今回は「おかしなかわいそうな人」を熱演していて俳優として一皮むけた感があります。そういえば『パディントン2』ではいかついお父さん(ブレンダン・グリーソン)が動物と友情を深めていたのに対し、こちらでは息子さんが生き物と本気の殺し合いを演じていたのも偶然とはいえ面白いことですね。
以下、結末をネタバレ
ただいろいろすったもんだあった末、両者とも成長していい人(ウサギ)になってしまったのが個人的にはさびしかったです。特に人間の方。ずっとへんてこりんなお兄さんでいてほしかったのに…
既に続編が決定しているようですので、ドーナル氏演じるマクレガーさんが再び変人となってピーターと激闘を繰り広げてくれることを期待しております。
ちなみに日本では『パディントン』よりもこちらの方が成績が良かった模様。ジャパンでは熊好きよりウサギ好きの方が多いということかな?
Comments
全世界的にクマに負けない為には、山火事を起こして、炎に包まれながら逃げてくる兎集団を描写するのがいいんじゃないかと(爆破まで出来るようになったから発火もピーター達自身で出来そうだし)。
Posted by: ふじき78 | July 08, 2018 09:51 PM
>ふじき78さん
焼けたウサギをみんなで食べて「ウサギおいしい火(か)の山」みたいなオチでしょうか
Posted by: SGA屋伍一 | July 10, 2018 10:25 PM
ズボンかスカートをはいたほうがいいと思います。
Posted by: ボー | March 02, 2019 04:32 PM
>ボーさん
そうですね。下半身丸出しは風邪をひきそうです
Posted by: SGA屋伍一 | March 04, 2019 10:35 PM