美青年と野獣 『仮面ライダーアマゾンズ』ドラマ&劇場版『最後ノ審判』
奇跡の三日連続更新に挑戦… 本日は一昨年のドラマシーズン1、昨年のシーズン2を経てこの度劇場版にてフィナーレを迎えた『仮面ライダーアマゾンズ』を紹介します。
ある地方都市で、大企業野佐間製薬が秘密裏に開発・培養していた生命体「アマゾン」が数千体脱走するという事件が起きる。アマゾンはある時期までは人間と寸分たがわぬ姿かたちをしているが、それを過ぎると異形の怪物に変貌し、人肉を欲するという性質を持っていた。野佐間製薬社長の息子として育てられた温厚な青年、水澤悠はある時耐えきれない暴力衝動に襲われ、自分も人口的に作られた存在「アマゾン」であることを知る。またその開発に携わった研究者、鷹山仁は責を感じ、自らを怪物に改造し「一匹残らずアマゾンを狩る」ことを誓う。二人の究極のアマゾンは何度かの出会いの後宿命の対決へと導かれていく。
明らかに『仮面ライダーアマゾン』のリメイク的なタイトルではありますが、オリジナルとはキャラクターの造形や幾つかの用語の流用、それにスプラッタ描写以外ほとんど接点がありません。おそらく「アマゾン」が「真(シン)」と並んで最もヒーローらしくない、怪物っぽいデザインだからこそタイトルにひっぱってきたのでしょう。あとスポンサーがamazone.jpだからという理由もあります。
ドラマシリーズは年齢制限のついた有料配信という形でリリースされました。それゆえ地上波放映ではできないような容赦ない残酷描写が頻繁に出てきます。そんなスタイルからもわかるように、この作品、「仮面ライダー」というよりかなり『寄生獣』に近いものがあります。人間そっくりの人間を主食とする怪物が徘徊し、それに対し怪物と人間の中間に位置する主人公が苦悩する…という流れなど明らかに意識してるのでは。
現代の科学技術でここまで高度な新生物が作れるのか?とか、なんで食人衝動なんて備えた生き物なんて開発したんだ?という疑問も生じますが、ここはひとつある種の寓話だとして乗り切っていただきたいと思います。
人間サイドから見るならば自分たちを食らうアマゾンは怪物で、それから身を守るのは正義ということになります。しかし人間とて自分たちの命をつなぐために他の生き物を殺して食べてるわけで。そうなると仮に人間より上位の存在がいたとして、彼らが生きるために仕方なく我々を食べるのは道理にかなったことではないのか?という論理も成り立つわけです。悠はこの終わることない二つのテーゼの相克に悩まされながら、「とりあえず目の前の命を救う」ことを目的として戦い続けます。そんな心の優しい悠ですら、生き物であるゆえに心の底にわずかながらの残酷性が潜んでいたりする。『アマゾンズ』ではこれまでヒーローもので扱えなかったそういったテーマがバンバンと描かれていきます。
そんな弱肉強食・生きるか死ぬかの世界観の中で、どうしようもなく優しいエピソードもあったりするので本当に小林靖子さん(脚本家)という方は憎たらしい。まるでボコスカに殴り飛ばした後に微笑んで「これで血をふけ」とでも言うような、そんな作家さんです。『仮面ライダー龍騎』で(一方的に)お会いしてから15年以上調教されてきたのですっかり慣れたつもりでおりましたが、この度の『アマゾンズ』ではさらにきつく、そして優しい一発…いや、百発をお見舞いされた気分です。
ちなみにシーズン2では悠と仁は一歩後に引き、新たな若いアマゾン、千翼(ちひろ)とイユという少年少女の恋物語が描かれます。冒頭こそ「なにこの胸キュンドラマ…」と若干引き気味で観てましたが、あっという間に靖子さんお得意の哀切モードに突入してまたしても涙を搾り取られることになりました。
そして現在公開中の完結編『最後ノ審判』であります。この映画では新たに人間に食べられるために育てられた「食用」のアマゾンが登場します。いくら国内の自給率が低いとはいえ、人間とそっくりな生き物を食用として売るとか無理がありすぎだろ!!!!…と思いますが、そこは寓話として(以下同文)。わたしは藤子F不二雄先生の名作短編『ミノタウロスの皿』などを思い出しましたが、いま少年ジャンプでもそんな漫画(『約束のネバーランド』)が連載されてるそうですね。
ともかくそういった設定からさらに強く浮かびあがってくるテーマ「誰だって殺してる 何かを殺してる(主題歌より)」。生きること(食べること)が罪というなら、わたしたちはその罪を自覚して、もっと謙虚に感謝して生きなければならないと思いました。
そして2年間つむがれた物語の果てに、悠と仁の戦いはいかなる決着を迎えるのか…
というわけで『仮面ライダーアマゾンズ』シーズン1・2は現在アマゾンプライムビデオにて有料配信中、劇場版『最後ノ審判』は映画館にて上映中…なのですが、映画の方ははやいとことでは明日で終わりだそうです… 嗚呼。数日前カリスマゲームクリエイター、小島秀夫氏がようやく注目している、みたいなツイートをされてましたが、遅いよ! せめてもう一月早く!!
おそらく他に誰もいないでしょうが、このままいくと上半期のマイベストムービーはこの作品になりそうです。少しでも気になった方はドラマシリーズからコツコツ観ていってください。DVDも出ております
Comments
そんなにカニバリス゜ム嗜好はないので、アマゾンの美少女には女体盛りをお願いできれば満足です。常にお皿として清潔、野座間製薬さんにはそういうアマゾンを開発してもらいたい。
Posted by: ふじき78 | June 14, 2018 01:39 AM
>ふじき78さん
カニ怪人が食人レストランをやっていたのはおそらく「カニバリズム」のダジャレだったんでしょうね… ふじきさんみたい
『アマゾンズ』は悪趣味ではありつつエロに走らなかったのが上品な作品でした
Posted by: SGA屋伍一 | June 19, 2018 11:03 PM