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June 19, 2018

シン・メカゴジラ 静野孔文 瀬下寛之 『GODZILLA 決戦機動増殖都市』』

Gkk1史上初となるアニメ映画版ゴジラ三部作。本日はその第二部となる『GODZILLA 決戦機動増殖都市』を紹介いたします。第一部の記事はコチラ

ゴジラアースの圧倒的な破壊力の前に大敗を余儀なくされた人類軍。意識を失ったリーダーのハルオは人類の末裔らしき原住民の少女に介抱される。なんとか生き残った仲間たちと合流した彼は周囲を探検しているうちに、かつて人類軍の切り札であった機動兵器「メカゴジラ」がまだ機能していることを知る。なんとかシステムを復旧させ、さらに改良を重ねたハルオたちはアースゴジラにリターンマッチを挑む。

今年の春はスクリーンに二度もメカゴジラが登場した異常な時期でした。一本はスピルバーグのアレで、もう一本はこちらです。ただこの「メカゴジラ」の解釈がなんというかこう… 「そう来たか!」という感じでw
二作目にいたってようやく自分、スタッフが何を目指したのかわかった気がします。彼らは怪獣映画を作るというより、ゴジラを題材にしたハードSFがやりたかったのでしょう。だからか今回ゴジラさんの出番は終盤のみに限定されております。
まあそれはそれで面白い。今回の前半は「ウン万年たった地球がどんな風に変化したのか」という秘境探検ものとして、前作以上にワクワクしましたし、メカゴジラを形成するナノマシンの特徴や、ハルオたちに協力する宇宙人・未来人の考え方の違いなどもいちいち興味深い。
ただ「ゴジラ映画」を期待していった従来のファンたちはちょっときつかったかもしれません。わたしが思い出したのは『機動戦士ガンダム』を原作とした『フォー・ザ・バレル』という小説。『ガンダム』の子供っぽいところ、けれんみの強いところを徹底的に排除しSFとしての完成度をひたすら追求した作品。それはそれでオシャレで不思議な魅力があったのですが、本来のガンダムからはだいぶかけ離れてしまったような。
でもわたしとしては何かしら新しい試みをした方がコンテンツは自由になるし、さらに発展していくと思うので今回のこの試みも大いに賛同しております。
新しいといえばこれまでのゴジラ映画は大抵1作で片づけなければならないという不文律がありましたが、「3作かけないと倒せない」ということでいまだかつてないゴジラの無敵さが際立っているような。というかこんな感じだと3作目でも倒せるかどうかわかりません。
あと前の記事で自分は「虚淵さんの真骨頂はむしろストーリーの中盤あたり。だいたいその辺で主人公の世界観を根底から揺るがす衝撃的な事実が明らかになり、お話がどう解決するのかさっぱり予想がつかなくなります」と書きましたが、珍しいことに大体この予想が当たっておりました。まあ虚淵さんは残酷なようで心根は優しい方なので、この三部作も一応希望を残す形で終わるんじゃないかと思います。

この映画公開直前に刊行された本編を補完する小説の第二作『GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ』も前作『怪獣惑星』同様相変わらず面白い。忘れられた東宝特撮のマイナーネタがこれでもかと詰め込まれ、そしてひたすら破滅に突き進んでいく珍妙な作品です(笑) 映画版第3作の前にこちらももう一冊出していただけると嬉しい。

Gkk2『GODZILLA 決戦機動増殖都市』はもう終わったかと思ってましたが、まだ月末までは公開してるようです。近々ネットフリックスでも配信されるでしょう。そして11月には完結編『星を食らうもの』が公開。今度はゴジラの宿敵であるアレが登場するようで。ハルオ君たちの戦いを最後まで見届けたいと思います。

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June 13, 2018

美青年と野獣 『仮面ライダーアマゾンズ』ドラマ&劇場版『最後ノ審判』

Aomegatop2_thumb奇跡の三日連続更新に挑戦… 本日は一昨年のドラマシーズン1、昨年のシーズン2を経てこの度劇場版にてフィナーレを迎えた『仮面ライダーアマゾンズ』を紹介します。

ある地方都市で、大企業野佐間製薬が秘密裏に開発・培養していた生命体「アマゾン」が数千体脱走するという事件が起きる。アマゾンはある時期までは人間と寸分たがわぬ姿かたちをしているが、それを過ぎると異形の怪物に変貌し、人肉を欲するという性質を持っていた。野佐間製薬社長の息子として育てられた温厚な青年、水澤悠はある時耐えきれない暴力衝動に襲われ、自分も人口的に作られた存在「アマゾン」であることを知る。またその開発に携わった研究者、鷹山仁は責を感じ、自らを怪物に改造し「一匹残らずアマゾンを狩る」ことを誓う。二人の究極のアマゾンは何度かの出会いの後宿命の対決へと導かれていく。

明らかに『仮面ライダーアマゾン』のリメイク的なタイトルではありますが、オリジナルとはキャラクターの造形や幾つかの用語の流用、それにスプラッタ描写以外ほとんど接点がありません。おそらく「アマゾン」が「真(シン)」と並んで最もヒーローらしくない、怪物っぽいデザインだからこそタイトルにひっぱってきたのでしょう。あとスポンサーがamazone.jpだからという理由もあります。

ドラマシリーズは年齢制限のついた有料配信という形でリリースされました。それゆえ地上波放映ではできないような容赦ない残酷描写が頻繁に出てきます。そんなスタイルからもわかるように、この作品、「仮面ライダー」というよりかなり『寄生獣』に近いものがあります。人間そっくりの人間を主食とする怪物が徘徊し、それに対し怪物と人間の中間に位置する主人公が苦悩する…という流れなど明らかに意識してるのでは。

現代の科学技術でここまで高度な新生物が作れるのか?とか、なんで食人衝動なんて備えた生き物なんて開発したんだ?という疑問も生じますが、ここはひとつある種の寓話だとして乗り切っていただきたいと思います。
人間サイドから見るならば自分たちを食らうアマゾンは怪物で、それから身を守るのは正義ということになります。しかし人間とて自分たちの命をつなぐために他の生き物を殺して食べてるわけで。そうなると仮に人間より上位の存在がいたとして、彼らが生きるために仕方なく我々を食べるのは道理にかなったことではないのか?という論理も成り立つわけです。悠はこの終わることない二つのテーゼの相克に悩まされながら、「とりあえず目の前の命を救う」ことを目的として戦い続けます。そんな心の優しい悠ですら、生き物であるゆえに心の底にわずかながらの残酷性が潜んでいたりする。『アマゾンズ』ではこれまでヒーローもので扱えなかったそういったテーマがバンバンと描かれていきます。

そんな弱肉強食・生きるか死ぬかの世界観の中で、どうしようもなく優しいエピソードもあったりするので本当に小林靖子さん(脚本家)という方は憎たらしい。まるでボコスカに殴り飛ばした後に微笑んで「これで血をふけ」とでも言うような、そんな作家さんです。『仮面ライダー龍騎』で(一方的に)お会いしてから15年以上調教されてきたのですっかり慣れたつもりでおりましたが、この度の『アマゾンズ』ではさらにきつく、そして優しい一発…いや、百発をお見舞いされた気分です。

ちなみにシーズン2では悠と仁は一歩後に引き、新たな若いアマゾン、千翼(ちひろ)とイユという少年少女の恋物語が描かれます。冒頭こそ「なにこの胸キュンドラマ…」と若干引き気味で観てましたが、あっという間に靖子さんお得意の哀切モードに突入してまたしても涙を搾り取られることになりました。

そして現在公開中の完結編『最後ノ審判』であります。この映画では新たに人間に食べられるために育てられた「食用」のアマゾンが登場します。いくら国内の自給率が低いとはいえ、人間とそっくりな生き物を食用として売るとか無理がありすぎだろ!!!!…と思いますが、そこは寓話として(以下同文)。わたしは藤子F不二雄先生の名作短編『ミノタウロスの皿』などを思い出しましたが、いま少年ジャンプでもそんな漫画(『約束のネバーランド』)が連載されてるそうですね。
ともかくそういった設定からさらに強く浮かびあがってくるテーマ「誰だって殺してる 何かを殺してる(主題歌より)」。生きること(食べること)が罪というなら、わたしたちはその罪を自覚して、もっと謙虚に感謝して生きなければならないと思いました。
そして2年間つむがれた物語の果てに、悠と仁の戦いはいかなる決着を迎えるのか…

71zyv8avtll__sl1500_というわけで『仮面ライダーアマゾンズ』シーズン1・2は現在アマゾンプライムビデオにて有料配信中、劇場版『最後ノ審判』は映画館にて上映中…なのですが、映画の方ははやいとことでは明日で終わりだそうです… 嗚呼。数日前カリスマゲームクリエイター、小島秀夫氏がようやく注目している、みたいなツイートをされてましたが、遅いよ! せめてもう一月早く!!

おそらく他に誰もいないでしょうが、このままいくと上半期のマイベストムービーはこの作品になりそうです。少しでも気になった方はドラマシリーズからコツコツ観ていってください。DVDも出ております


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June 12, 2018

馬耳中東風 ダグ・スタントン ニコライ・フルシ― 『ホース・ソルジャー』

Mono0582753408042902今日もほぼ完全に公開が終わった映画の感想です。5月は動物映画の傑作が多かったのですが、その先駆けとなった『ホース・ソルジャー』、ご紹介します。

全世界を揺るがした9.11の同時多発テロ。ブッシュ大統領はイスラム過激派への報復としてアフガンへ12人の精鋭部隊を派遣する。家族とのつらい別れを経てミッチ・ネルソン率いる部隊は敵地へと向かうが、地元の協力者である軍閥のリーダーは一癖も二癖もある男で、作戦の進行は困難を極めるのだった。

予告編からは5万の敵軍に取り囲まれた12人の騎兵が決死の脱出を試みる…というストーリーを連想しますが、実際に観てみるとだいぶ違いました。別に包囲されてるわけではないし、何を考えてるかわからないとはいえ友軍もそれなりにいます。空からの援護射撃もあります。

そもそもなぜ現代の戦争において馬を用いているのか。これは険しい山の多い地形が関係しております。がけっぷちの細い道を通るのは馬でないと難しいですし、敵に気づかれずにそっと忍び寄るのももってこいなのです。
そしてもちろんこれで戦車に立ち向かうわけではありません。目的はアルカイダの拠点をこっそり確認すること。そしたら無線で基地に座標を知らせ、敵のアジトを空爆してもらうという作戦なのです。科学の発達した21世紀だからこそできる戦術である一方、同時にアナログな移動方法である馬に頼らなければならないというのが興味深かったです。
割と安全そうな戦法に思えますが、やはりそこは戦争。時々事情でアジトに近付きすぎて至近距離での銃撃戦に展開することもあれば、地元の協力者たちが血気にはやって勝手につっこんでっちゃったり。クリス・ヘムズワース演じる指揮官の苦労がしのばれます。
実はこの映画でとりわけ面白かったのは馬に乗ってのガンアクションよりも、とりあえず米軍をサポートしてくれる軍閥の将軍ドスタムとネルソンの駆け引きでありました。共通の敵がいるからこそ手を組んでいるものの、老獪で悲惨な経験をしているドスタムは若いネルソンをあまり信頼しておりません。その彼の信用を得るためにネルソンは全力で本音をぶつけていきます。

そのネルソン氏は国内での安全なポストが決まっていたにも関わらず、9.11の惨劇を目の当たりにして「何かをやらなければ」と中東行きを志願した男。その姿は『アメリカン・スナイパー』のクリス・カイルを彷彿とさせますし、『ハクソー・リッジ』のテズや『15時17分、パリ行き』の主人公をも思い出させます。そういう若者がすべてじゃないでしょうけど、世界の覇王たるUSAにはいいか悪いかはともかくとして、有事に際し国のために働こうと考える若者が時代を越えて多くいるようです。わたしなんかは仮にいま二十代だとしても日本のために戦おう、なんて気持ちはこれっぽっちもありませんけどね。
ただそうやって愛国心に身をささげたクリスが心を病みながらも戦場から離れられなかったのに対し、ネルソンはさっぱりさわやかに平和な環境に戻ってこれたのはなぜなんだろう…と思いました。「個人の資質の違い」と言ってしまえばそれまでですけどね。

Horsesoldier04300x200というわけで『ホース・ソルジャー』はもう二番館くらいでしか公開予定がありませんが、近々DVDが発売されると思いますので興味おありの方はその際にどうぞ。
引き続き五月の動物映画をいろいろ紹介していく予定ですが、記事が書けるのが先か、公開が終わるのが先か…


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June 11, 2018

恐怖箱男 グラハム・アナブル アンソニー・スタキ 『ボックストロール』

Hakocoverゴールデン・ウィークに観た映画の感想を今頃書いています… 本日はストップ・モーション・アニメの雄、ライカスタジオの作品で唯一日本未公開だった『ボックス・トロール』について紹介いたします。連休中に恵比寿の写真美術館で特別上映されたのでようやく拝むことができたのでした。

昔々あるところに、夜な夜な箱をかぶったトロールが徘徊する街があった。トロールは危険ということで市長は駆除業者のスナッチャーを雇い、一匹、また一匹とトロールを捕獲していく。トロールに育てられた男の子エッグズは仲間たちが捕まっていくのを涙を呑んで見守るほかなかった。だがやがてエッグズはトロールを助けるために勇気を出してスナッチャーに立ち向かっていく。

一応原作はアラン・スノウという方の小説『Here Be Monsters』。ただ550ページもある大長編ゆえかなりのアレンジがなされたものと思われます。
トロールといえばファンタジー世界では人を襲う怪物であったり、それなりに愛嬌のある妖精であったり、作品ごとにまちまちでありますが、この映画では後者のイメージで描かれています。よくわからないのはなぜ箱をかぶってるのか、ということ。それは作品を観ているうちにわかりました。単純に面白いからです。まず箱をかぶっていると擬態しやすい。さらに寄り集まって合体しやすい。他にもさまざまな箱アクションが披露されます。
あとこの「箱かぶり」というのがこの作品のトロールの性質をよく表しているのですね。人一倍臆病なために駆除業者が襲ってきても、逃げるよりも立ち向かうよりもまず箱にこもってじっと身をひそめることを選ぶという。わたしも日頃からびくびくして生きているので彼らに感情移入せずにはいられませんでした。

そんなトロールたちの窮状を打開すべく奮闘するエッグズが魅力的なのはもちろんですが、この映画にはもう二人異彩を放つキャラクターが登場します。
1人は市長の娘でエッグズに興味を示すウィニー(声はエル・ファニング)。いわば童話におけるお姫様ポジションでありながら、なかなかに乱暴で自己顕示欲の高いやや壊れたヒロイン。でも心の底にはあったかいものを秘めていて、エッグズを懸命に助けようとがんばります。こういう型にはまらない「お姫様」、いいですよね。
もう1人は駆除業者のスナッチャー。彼はトロールが実はおとなしい生き物であることを知っていて、自分の野望のためにそれを隠してエッグズたちを迫害します。この男はチーズのアレルギーを持っているのですが、「出世するためには町の有力者たちのようにチーズ通でなければならない」と思い込んでいて、無理やり苦手なそれに慣れようとします。その際の描写が思いっきりグロテスクで、やけに力が入っておりました。ライカ作品はみな多かれ少なかれホラー的な要素がありますが、『ボックストロール』は怖いというより、このグロ方向に思い切り振りきれておりました。

そんなちょいと悪趣味なところはありますが、ライカ歴代二位の売上を記録し(それでも赤字ですが)、第87回アカデミー賞の長編アニメ映画賞とゴールデングローブ賞アニメ映画賞にノミネートされ、アニー賞では9部門にノミネートされ声優賞と美術賞を受賞したくらいですから一級品のエンターテインメントであり、ストップモーションアニメの大傑作であります。先に話題になった『KUBO』などは動きがなめらかすぎてもはやCGと区別がつかないくらいでしたが、こちらはまだ人形独自の温かみのある質感がよく伝わってきました。そしてエンドロール後にはそんなコマ撮りアニメに費やされる恐ろしいほどの手間暇が、メタ的な演出で明らかにされます。本当にこんなろくろく儲けにもならないような作業をそれほどな苦労をかけて作っているとは… すばらしい(笑) あらためてこれからもコマ撮りアニメを応援していこうと心に固く誓いました。

41jx92krjl__sy355_当然特別上映は終了してしまいましたが、『ボックストロール』は現在普通にDVDで観られます。ご興味おありの方はどうぞ。
コマ撮りアニメの新作としては現在ウェス・アンダーソンの『犬ヶ島』が絶賛上映中。来月にはアードマンの『ア―リーマン』も待機しています。


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