らんだむ1/2 ルッソ兄弟 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』
開始から10年を経て、いまだ勢いの全く衰えないマーベル・シネマティック・ユニバース。この度3度目の総決算となる最新作が世界で大旋風を巻き起こしております。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』ご紹介します。
無限の力を秘めた6つの石「インフィニティ・ストーン」。それをすべて手に入れた者は全能の神に等しき存在となり、どんな望みもかなえることができる。ある目的のためにそれらを探し求めていた宇宙の覇王サノスは、二つの石が存在する地球へと改めて尖兵を送り込む。かつて一度はサノスを退けたアベンジャーズは各地でその猛攻に立ち向かうが、規模を増した宇宙の軍勢の前に苦戦を強いられる。
いきなり文句をつけるようですが、まずタイトルに偽りありだと思います。「アベンジャーズ」という題ですがことはもうアベンジャーズだけにとどまらないのですね。宇宙のはぐれ者チーム、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーもいるし、次元の管理人たるドクター・ストレンジもいる。正式に国王となったブラックパンサーも参戦しています。そのなんと豪華絢爛なこと。だから本当なら『マーベルユニバース/インフィニティ・ウォー』というタイトルがよりふさわしい。
それだけに登場キャラクターの数も半端じゃなく、主だったヒーロー・ヴィランだけでざっと三十名はくだりません。『アベンジャーズ』1作目も当時はものすごく豪勢に感じましたし今でも好きな作品ですが、あれからわずか6年後にこんなとんでもない境地にまで達しようとは夢にも思いませんでした。とてもじゃないですけど普通なら大混乱となるところを、監督のルッソ兄弟は恐るべき交通整理力でさっさかさばききっております。『トラブル・マリッジ カレと私とデュプリーの場合』とか撮ってた彼らがここまでビッグスケールの采配を振るうようになるとはだれが予想したでしょうか(未見ですが…)
ここまでキャラ立ちまくりな面々が大挙して活躍できるのは、これまでのMCU各作品で説明が済んでいるから、というのもあります。乱暴な見方をすれば10年かけて作ってきた18作品は全て『インフィニティ・ウォー』への「紹介編」とも言えます。
正直少し前DCの『ジャスティス・リーグ』が微妙な結果に落ち着いたとき、「世界の皆さんもいい加減大集合映画に飽きてきたのかな、これじゃアベンジャーズ新作も危ういかもな」と思ったものでした。
しかしそんな予想を覆して、『インフィニティ・ウォー』は現在ワールドワイドで次々と記録を更新し、現在歴代の興行収入記録4位のところにまでつけております。これほどまでに大成功を収めたのはやっぱり各キャラクターを映画1~3本かけてじっくり育て、みんなに親しみを持たせてきたからでしょう。あともうひとつの人気チーム「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の合流が1作目直後だったらこんなに盛り上がらなかったかも。4年の間隔をおいて十分熟成させて…というかもったいつけたからこそこれほどのお祭りになったのだと思います。
唯一今回バックボーンに時間を割かれているのはラスボスであるサノスのみ。ちらちらっとしか出てこないゴリラっぽいおじさん、というイメージでしたが、新作を見ますとその動機の深さに感じ入ることとなります。
おそらくこの作品の元ネタとなっているのは80年代マーベルで発表された一大クロスオーバー『インフィニティ・ガントレット』。やはり6つのインフィニティ・ストーンを入手したサノスが宇宙の全生命にやりたい放題する内容ですが、その無限力を欲した理由が今回とは大きく異なっております。コミックではただ一人の愛する女神デスを振り向かせたいから…という恐ろしく純情野郎な動機でしたが、映画では… あ、この先どんどんネタバレしていくのでご了承ください。
全宇宙の調和を保たせるために、生命の半分を消滅させる、というものでした。「おれだってやりたくてやってるわけじゃないけど、誰かがやらなくちゃいけないんだよね」という面持ちで計画を実行していくサノスに、気が付けば肩入れしたくなってしまう自分がおります。そのために唯一愛した娘でさえ犠牲にしようとします。わかりやすい悪者のように私利私欲で動いてるわけではないのですね。
ただここで浮き上がって来るのがかつて『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』で語られたテーマです。すなわち「大の虫を生かすためには小の虫を殺すべきなのか?」という論題。一見まともなようでも誰にも誰かの命を奪う権利などない。全体のためだからといって、誰かに犠牲を強いてはいけない。「正義」というのは少々うさんくさい言葉でもありますが、それこそがアベンジャーズの「正義」なのでしょう。その正義のためにアベンジャーズやガーディアンズその他の面々は絶望的な戦いに身を投じていきます。
そしてご覧になった方たちはすでにご存じでしょうが、実に衝撃的な結末となった『インフィニティ・ウォー』。ある意味ここで終わったらそれはそれで伝説になるかもしれませんが、もちろんそんなことはなく来春には『アベンジャーズ』の第4作が予定されております。そうです。本当に本当に恐ろしいことですが、ここまで盛り上げているのにこの作品でさえまだ通過点にすぎないのです。
「タイトルだけでネタバレになってしまう」ということでまだ伏せられてる正式な第4作の副題。いくらなんでももったいつけすぎではないでしょうか。公開が遅れた中国方面の方たちが無事観終わってから…という配慮なのか。ともかく、これまでもコミックの名作エピソードを映画のタイトル持ってきたMCU。総決算たるアベンジャーズの次作も大いにその可能性があります。というわけでありそうなのを予想してみると
・シークレット・ウォー
・ヒーローズ・リボーン(リターン)
・アベンジャーズ:ディスアッセンブルド
…といったあたりかなあ~(安直) あるいは『マーベル・ゾンビ―ズ』とか(ない)。
ともかく4作目まではまだ間にもう2本シリーズが公開されるので、そこから展開を読み取っていくのも一興かと。
1本は日本では8月末に公開となる『アントマン&ワスプ』。『インフィニティ・ウォー』直前のお話となるそうです。どんどん小さくなれるアントマンさんですが、量子レベルの極小世界では時間を超越したりパラレルワールドを行き来できる可能性もあるとのこと。もしかしたらそれがサノス攻略の糸口になるかもしれません。
もう1本は来年3月に全米公開となる『キャプテン・マーベル』。マーベル世界でも有数のパワーを持ち、宇宙とも深い関わりのあるスーパーヒロインの物語。90年代が舞台となるそうですが、そうなるとじゃあなぜ今までMCUに登場してこなかったんだ?という疑問がわきます。何から何まで計算ずくめのMCUスタッフのこと、おそらく納得のいく答えが用意されていることでしょう。うう~ん、はやくその答えが知りたい…
あと1年、こんなモヤモヤした思いを抱えてひとまずの完結編を待たなければいけないのでしょうか。本当に罪なシリーズですね、MCUってやつは!!
来月(っていうかもう今週…)にはサノスの中の人、ジョシュ・ブローリンがマーベル世界(ただしMCUとは異なる)の別のキャラを演じる『デッドプール2』が公開。これを観ればあまりのバカバカしさにそのモヤモヤも多少は軽減されるかも。『インフィニティ・ウォー』と合わせての鑑賞をおすすめします。
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Comments
おもしろかったです。
しかし、インフィニティストーンですっけ、地球に偏りすぎなような(^_^;)
宇宙の調和のために・・・って半分殺すって話なんですけど、私は“一部の”保全生態学とかこういう偽善的なイデオロギーがあまり好きじゃないんですよね(そういう場合はほっといてもちゃんと自然淘汰されるだろうし)。
正しいか、間違っているじゃなくて、自分がやっていることって本当に正しいのかなって常に内省し自問自答する姿勢が、自然科学に携わる人には大切なんだと思います。サノスは科学者じゃないけど(^_^;)
Posted by: ゴーダイ | May 29, 2018 07:24 AM
>ゴーダイさん
>インフィニティストーンですっけ、地球に偏りすぎなような(^_^;)
それはドラゴンボールが全部地球にあるのと同じことです。違うか
サノスの理屈って「もしかしたら正しいのかも」と思わせてしまうところが実に厄介であり危険なところなんですよね。私利私欲のためでなく行ってるのがまたヒーローっぽい
自分も科学者じゃないですけどゴーダイさんがおっしゃるような視点は忘れずに保っていたいものです
Posted by: SGA屋伍一 | May 30, 2018 09:55 PM
SGAさんこんばんわ♪
一応自分もこれまでのMCU作品を鑑賞してきましたし、そしてその都度興奮や感動を味わってきましたが、多分本作が今までのMCUの中で一番衝撃が凄かった内容だったと思いますね。ストーンの力があるとは言え、ヴィランのサノスが一騎当千のアベンジャーズ達をバッタバッタとなぎ倒していく様だったり、最後も指パッチンでああいう結末になってしまったり、そして動機に関しても自身の信念に忠実だったりと、なんかサノスの一挙手一投足にただただ見入っていた感じもします。
でもサノスをどうにか打倒できたとしても、あの世界はどうするんだろうと考えると、本作以降のマーベル作品はやっぱり時間とか過去ないし未来に関係する所に焦点を当てるんでしょうかねぇ?ドクターストレンジが見たヴィジョンも気になりますし、来年までこの悶々が続くと思うと・・・^^;
Posted by: メビウス | May 31, 2018 11:19 PM
パ、パラレロル、もとい、パラレルワールド! それだ!
Posted by: ボー | June 05, 2018 07:26 AM
>メビウスさん
思い切り遅い返信ですいません~
いきなりこれから観たわたしの友人は「アベンジャーズって弱くね?」と言ってましたが違うんです! サノスがつよすぎるんです! そんなサノスも『デッドプール2』ではすっかりお笑いキャラでしたが(あれ?)
ストレンジ先生はなんか企んでる感じだったので絶対何か裏があると思うんですよね。一緒にあと一年悶々としましょう(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | June 11, 2018 09:47 PM
>ボーさん
パラレロヒレハレ!
Posted by: SGA屋伍一 | June 11, 2018 09:49 PM