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April 30, 2018

スゴロクからスーファミへ ジェイク・カスダン 『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』

Jjwj1もう4月もおしまいですが、本日は今月公開された大作群で先陣を切ったあの名作の続編を紹介いたします。『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』、参ります。

オタクのスペンサー、体育会系のアンソニー、イケイケ女子のベサニー、ガリ勉のマーサは、それぞれ不正や反抗的な態度などの理由で、校長から居残り雑務を命じられる。しぶしぶそれをこなしたりさぼったりしていた彼らは、倉庫の隅から古ぼけたテレビゲーム機を発見する。退屈しのぎにそれをプレイした4人は、突然それまでとは違う容姿で見知らぬジャングルに放り出される。そのゲーム機は遊ぶものを自分の世界に閉じ込めてしまう呪われた玩具「ジュマンジ」だったのだ。

『ジュマンジ』第1作は1996年の作品。CGが本格的に使われ始めたころの映画で、街を行進する動物たちの映像が話題を呼びました。監督はノスタルジー職人のジョー・ジョンストンで、ストーリーに関連ある1969年の描写に力が入ったりしておりました。まだあどけないころのキルステイン・ダンストも出ております。

それから約10年後の2005年には「精神的続編」の『ザスーラ』が公開。精神的続編とは直接つながってるわけではないけれど、設定やコンセプト、スピリットを受け継いだ作品のことを言うようです。こちらは前作ではジャングルをモチーフにしたすごろくが宇宙探検のものに変わっています。のちに『アイアンマン』を作るジョン・ファブロウ監督作品です。

それからまた時を隔てて、今度は元祖の直接的続編である『ウェルカム・トゥ・ジャングル』の登場となりました。今回は「すごろくはもう古い」ということで、いかなるパワーによるものかジュマンジがTVゲーム機に進化を遂げています。四人対戦ができるところを見るとスーファミかプレステくらいのころの機種でしょうか。いずれにせよ、おそらくそんなにCGがもりもりしてないドット絵が似合う感じのゲームで、わたしくらいの世代にはなじみやすそうなソフトでありました。内容としてはスーファミの珍作『おでかけレスター れれれのれ』(下画像参照)を連想させるような。ただしこのゲームは3回死んじゃうと現実の命までゲームオーバーしてしまうようで洒落になりません。

キャラクターで特に目立っていたのはやはり今を時めくロック様ことドウェイン・ジョンソン。中身はオタク高校生なのでしょっちゅう気弱なしぐさを見せるものの、身体能力は恐ろしく高い。そして得意能力に「キメ顔」がある。ゲーム的に何のプラスにもならないと思うのですが、本当に「ここ一番」って表情をばっちりキメてくれるロック様はさすがです。正直いままでスコーピオン・キングかワイスピの髭担当くらいのイメージでしたが、思った以上に器用な方だなあと認識を改めました。これからも『ランペイジ(怪獣もの)』『スカイスクレパー(ダイハードもの』、ワイスピのスピンオフと主演予定が目白押しで、もう世界の危機は全部ロック様に任せておきゃいい、くらいの勢いです。そうそう、ラジー賞も取られてましたけどね…

もう1人異彩を放っていたのは中身がJKの髭デブ親父ジャック・ブラック。いつもオナラかウンコかしてるような下ネタ系の役がメインでしたが、こちらでは心は乙女ということでいちいち所作がかわいらしい。あと髭とめがねのせいかルックスもだいぶ柔らかみが出てるような。『タッカーとデイル』のタッカー、『ファンタスティック・ビースト』のジェイコブと並んで私の中の「キュートな髭メタボオヤジTOP3」にランクインいたしました。

感心するのはゲームの設定、小ネタなどを上手に生かしてこちらを楽しませてくれる一方で、きちんとしたテーマも盛り込まれていること。たとえば中高生というものはとかく仲間の評判とか自分の外見を気にするものです。先に述べたベサニーも冒頭は自分のかわいさを鼻にかけてるやな女なのですが、外見を気にしなくなってからは、だんだんと他の人のために健気にがんばるいい子へと変わっていきます。よけいなプライドを捨てた時、その人のよい性質が表に出てくるって微笑ましいものですよね。

そしてバカバカしいギャグでさんざん笑わせてくれたあとに、切なくもさわやかなオチで〆てくれるという。これがやっぱりアメリカンの青春映画の醍醐味ってやつだと思います。

Jmwtj2ちなみに監督はジェイク・カスダンさんは『スターウォーズ 帝国の逆襲』を手がけたローレンス・カスダン氏の息子さん。この作品の世界的大ヒットによってお父さんと肩を並べたといっても過言ではないでしょう。そしてソニー・ピクチャーズでの歴代興行一位を記録してしまったために、あんなにきれいに終わったのに続編が決まってしまいました。来年12月に全米公開だそうです。こうなったらまた新たなるアイデアに期待したいところです。


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April 25, 2018

セラ&ニーソンはつづくよどこまでも ジャウム・コレット=セラ 『トレイン・ミッション』

Tnmn1昨年秋から韓国(『新感染』)、ロシア(『オリエント急行殺人事件』)、フランス(『15時17分、パリ行き』)と映画の中で鉄道の旅を楽しんでますが(そしていつも惨事にあう)、この度はニューヨークの通勤列車でのトラブルを堪能してきました。リーアム・ニーソンとジャウム・コレット=セラ4度目のタッグとなる。『トレイン・ミッション』、ご紹介します。

マイケルは元刑事の保険屋さん。受験を控えた息子のためにもせっせと働いていたが、ある日突然リストラを宣告されてしまう。失意のうちに電車に揺られていた彼に、学者だというある女性が近づく。そしてこの電車の中から彼女が探しているある人物を見つけ出してくれれば、大金を支払うと申し出る。それが本当かどうかつい確かめようとしたマイケルだったが、それが悪夢の始まりとなった。

前にも「『かわいそうなリーアム・ニーソン三部作』を語る」なんて記事を書きましたが、彼が他のアクションスターと異なっているのは大抵いつも気の毒な、同情を誘う境遇であること(でも戦闘力は半端ない)。ジャウム監督以外の作品でも大体そうですね。わたしが観た範囲でかわいそうな順から並べていくと、

THE GREY
ラン・オール・ナイト
ダークマン
誘拐の掟
フライト・ゲーム
アンノウン
96時間
トレイン・ミッション

とこんな感じです。最新作が一番平穏なイメージ。そりゃリストラだって十分かわいそうですけど、家族はとりあえず全員生きてるし、いきなり生きるか死ぬかという状況でもないし。リーアムさんの幸せを願っていたはずなのに、実際不幸が軽いといまいちテンションが上がっていかない。映画ファンというのはまことに面倒くさい人種であります(自分だけか…)
ストーリーは数年前のダンカン・ジョーンズの二作目『ミッション・8ミニッツ』と似ているところがあります。電車の中で顔もわからぬどこぞの方を数少ないきっかけで見事あててみよ、できなかったら大惨事…というあたり。ただあちらの主人公はリセットし放題だったから片っ端から喧嘩を売って標的を探してましたが、今回のマイケルさんは「元刑事」だけあってできるだけ自然に聞き込み、和やかに調査を進めておられました。とはいっても事件が進行するにつれ頻繁に列車内をウロウロし始めるので、次第に乗客の皆さんから不審の目を向けられていきます。こういう流れ、ジャウム×リーアムの第二作『フライト・ゲーム』ともよく似ていますね。突然初対面の怪しげな美女とお近づきになったりするところも同じです。『フライト・ゲーム』と違うのは電車は飛行機よりゆるい乗り物なので、走行中でも壁や車軸にへばりついて車外に出るのが可能なこと。いや、普通の人がやったらすぐ振り落とされて死んじゃうでしょうけど。リーアムさんもアクションスターとはいえいいお年。必死に電車にしがみついてる姿に「がんばれ!」と思う気持ちと、「あまり無茶しないで…」という思いの両方をかきたてられました。

そういえばリーアムさん、先日「もうアクション引退するわ」みたいなことおっしゃってたかな? その一方ですでにコレット=セラとの五度目のアクション映画も企画中だとか。どこまで本当かわかりませんが、今度はずっと車の中で進行する話だそうで。「どんどんエリアが狭くなるね。しまいには家のクローゼットの中で終始する映画を作るかもしれない」(リーアムさん談)。さすがにこれは冗談か… でもコレット=セラさん(下画像参照)ならそれでも面白いものを作りそうです。

Tnmn2そしてこれまたぼちぼち公開終了です。明日明後日までかしら… ごめんなさいニーソンさんコレット=セラさん。次も必ず観に行きますので。ニーソンさんといえばひと月くらい前『ザ・シークレットマン』という主演作も封切られてましたが、そっちは見逃しました。実話ベースということで、なんかアクション少なそうだったので…

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April 23, 2018

愛は宇宙も救う ジャン=クロード・メジエール リュック・ベッソン 『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』

Vrn1初期のロマンチックな作風はどこへやら、このごろますます中二的になっているフランスの名物監督リュック・ベッソン。その彼がまたしてもやらかしてくれました。宇宙を舞台にラブ&ピース&ドラッグが駆け回る『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』、ご紹介します。

人類が様々な宇宙人と接触し、銀河の隅々まで交易を広げている未来。腕利きの宇宙警備隊員ヴァレリアンは、とある惑星が消滅する夢を見る。その直後相棒のローレリーヌと臨んだ任務で、彼は夢の中で見た真珠を生み出す動物を発見。そんな折、銀河の中心である宇宙ステーション・アルファでは、内部に謎の癌のような空間が発生し拡大を続けていた。夢の疑問を抱えながらヴァレリアンとローレリーヌはアルファの窮地を救うべく奮闘する。

原作はフランスで長年人気を博しているコミック『ヴァレリアンとローレリーヌ』。調べたら自分の生まれる前の60年代から発表されていると知ってちょっとたまげました。日本で言うなれば『コブラ』とか『クラッシャージョウ』といった、ああいうノリのスペースオペラですね。いつも恋人兼部下のローレリーヌと行動していて、ツンデレされたりしてるところが独特です。

この作品でまず嬉しかったのはまず冒頭から多種多様な宇宙人が出てくる点。『スターウォーズ』にせよ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』にせよ広い宇宙を舞台にしてるわりには、登場する知的生命体はホモ・サピエンス型が多数を占めています。ですが『ヴァレリアン』では動物園さながらいろんな形のエイリアンがひっきりなしに登場するので、宇宙人好きにはたまりませんでした。
わたしが特に気に入ったのは吹替えをアルフィーが担当している関西のあきんどみたいな三人組(下画像参照)。本体はクラゲっぽいのにぱっぱと美女に変身するリアーナの宇宙人もインパクト大でした。

もうひとつ感心したのは宇宙ステーション・アルファの設定。増築につぐ増築で内部に膨大な数のエリアを抱えているのですが、水中に満たされた区域や、電流が絶えず放出されている箇所、濃厚なガスが漂っている部分などがあり、それぞれに適応した生命体が居住しております。そんでそのカオスなステーションの美術がいちいち凝っていて見入ってしまいます。

そういったビジュアルの大洪水の中で、アホらしい描写が次から次へと繰り出されます。クラゲをかぶってトリップしたり、クラゲの宇宙人がポールダンスを踊ったり(クラゲ関連が多いな…)。真面目な人にはむかないでしょうが、こういうラリッたような演出も大変楽しませていただきました。あと毒親のせいで鬱々と悩んでいる役の多いデイン・デハーン君がうってかわってチャラいリア充を演じていたのもほっこりいたしました。

で、この映画原作付ながらベッソンが二十年前に監督した『フィフス・エレメント』のセルフ・リメイクのようなところもあります。軟体動物系の歌姫がいたり、アホらしいストーリーの中でも「愛こそが一番大事」なことを訴えてたりなど。ただ問題はダメなところまで踏襲してしまっていること。『フィフス~』は後半にいくほどおとなしくなってしまう作品でしたが、『ヴァレリアン』も肝心のクライマックスのところでいまいち盛り上がっていきません。自分にはその辺は対してマイナスにはならなかったのですが、世間一般ではそうではなかったようで、「フランス映画史上最大の予算」をぶっこんでいたことも手伝って相当な赤字を記録してしまったようです。気の毒な… やはりここはロケット・ラクーンやポーグのようなあざとかわいいゆるキャラも出して、子供人気を稼いでおくべきだったのかもしれません。

Vrn2日本でもその不遇は変わらず、いよいよ明々後日の木曜日をもって終了のようです。ぶっちゃけ、この宇宙ビジュアルの大洪水はぜひスクリーンで観ておいたほうがいいですよ?(言うのが遅いよ!!) もっともっと早くに応援しておくべきだった… 本当にもう残り少ないですけど最後まで上映ガンバレリアン!!

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April 17, 2018

カルタ馬鹿一代・千年伝説 末次由紀・小泉徳宏 『ちはやふる 結び』

Chyf1競技カルタに材を取ったベストセラーコミック『ちはやふる』。劇場版である『上の句』『下の句』連続公開から二年を経て、待望の完結編がお目見えとなりました。『ちはやふる 結び』、ご紹介いたします。

ちはやとクイーンの血を血で洗う激闘からしばらくして。瑞沢高校かるた部の面々も三年生へと進級。いよいよ最後の大会へ臨むこととなった。新入部員も2名入り順風満帆かと思われた時、部長の太一はあることで心を乱しかるた部を退部してしまう。ショックをうけるちはやたちだったが、彼が戻ってくることを信じて勝ち続けることを決意する。

少女漫画でありながら恋愛描写はあくまで添え物だった前二作。しかし今回はのっけから告白シーンがあり、いきなり胸キュンモード全開でおじさんはちょっと照れくそうございました。でもまあ考えてみれば百人一首ってほとんどが恋の歌ですからね。この方がむしろカルタという題材にはふさわしい気も。格闘技みたいにバンバン札をすっ飛ばしてる方がむしろおかしいのかもしれません。

そこでクローズアップされてくるのがちはやちゃんにずっと片思いしている太一君。彼、見かけはさわやかなのに恋路となるとジェラシーを燃やしてたり陰でうじうじ悩んでたり、まことに男らしくない。けれどもそれが嫌味にならないというか、同情心を誘う憎めないキャラであります。さすがに部長なのに大会すっぽかしてどっかへ行ってしまうというのは問題だと思いましたが… ともあれ、そんなひがみっぽい太一くんがあることで恋の迷いを振り切りり、「とてもかなわない」と思っていたカルタのライバルに肉薄していく。気が付けば主人公のちはやちゃんより目立っている…というか、彼の方が主人公っぽい!? というわけで、胸キュンモードに冷めていたわたしも、本来のスポーツ漫画モードに戻ったクライマックスでは手に汗握って画面を見守っておりました。

これは原作に負うところも大きいですが、『ちはやふる』はスポーツものとしてもちょっと変わっています。カルタは一人でもできますし、ちはやちゃんという魅力的な天才キャラがいるんですから、普通は彼女がどんどん勝ち数を重ねていく様子を中心に描いていけばいいはずです。でもこの作品は個人の戦いと並行して団体での試合も丹念に追っていくのですね。映画に関して言えば団体戦の方が個人戦よりも比重が大きいくらい。監督はそうすることで競技を通じて若者たちが励ましあい、競い合う姿…良い影響を及ぼしあっていくドラマを映しだしたかったんでしょうね。友達の少ない自分としてはそういうキラキラした青春がうらやましかったりまぶしかったり。

青春といえばこの映画で特に好きなシーンのひとつは、校舎の屋上で「ずっとこのままいられたらいいのにね」とちはやとカナちゃんが語り合う場面。陳腐な言い方ですが、時の流れは誰にも止めることはできません。でもその時の痕跡をなんらかの形で残しておくことはできます。『結び』ではその辺もテーマのひとつとなっています。後輩にタスキをわたしていくことによっても。この後輩がらみのシーンもいちいち心憎うございました。

ちはやちゃんについても一応書いておきます。先ほど「太一の方が主人公っぽい」と言いましたが、ちはや=広瀬すずの顔面力はやはり堂々たるヒロインのそれでありました。普段の彼女はまことに子供っぽい…というか、うちのめいご(6才)に喋り方とか動きとかかなりよく似てました。ですからおじさん目線としてみるとかわいくて仕方がない。ただもう一応それなりのおっぱいがついてるのですから、気安く男子に抱き着くのは控えた方がいいのでは?と思いました。…いや、そういうことじゃなくて。そんな幼児のような彼女が、試合になるときりりと気迫ある若武者のような表情を見せるのですね。この幼児と戦士の二面性を持つ女の子を広瀬さんは見事に演じ切っていたと思います。

Chfr2そんなわけで見事すぎるほどに「完結」を描き切った『ちはやふる』映画三部作(先日飲んだフォロワーさんたちは「肝心なところで逃げやがって!」「いやあれはまだ完結してない原作に気を使ってだね…」と語ってましたが…)。さすがにもうこの先はないかな? 最近の人気コミックは完結しても数年間を置いて次世代ストーリーを始めるというのがセオリーですけどねw

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April 11, 2018

メキシコ地獄編 リー・アンクリッチ エイドリアン・モリーナ 『リメンバー・ミー』

Rmbm1ディズニーご本家と両輪のように良作のCGアニメを作り続けているピクサー・スタジオ。その最新作はメキシコの「死者の日」をモチーフにしたミュージカル風作品。本年度アカデミー賞長編アニメ部門でオスカーを獲得した『リメンバー・ミー』、ご紹介します。

メキシコに住むミゲルはギターと歌が大好きな少年。だが彼の一族は何代か前に、歌手を夢見て家族を捨てた不心得者がいたという理由で音楽を禁忌としていた。けれども歌うことをやめられないミゲルは、「死者の日」に行われる音楽コンテストにこっそり出場することを試みる。それで壊されてしまったギターの代わりに、記念館に展示されている地元の大スター、デラクルスの名品をこっそり拝借するのだが、それを奏でた途端彼の体に異変が起きる。なんとミゲルは生きながらにして死者たちの領域に入り込んでしまったのだ。

「死者の日」とはメキシコのお祭りで、亡くなったご先祖様の霊が現世に帰ってくるのでそれをお迎えしようというもの。…まるっきり日本の「お盆」じゃないですか! 映画『007/スペクター』や『エンドレス・ポエトリー』では骸骨の仮装をした一団がパレードを行なったりしてましたが、地域によって差があるのかこちらではそういうのはなく、普通にご馳走を食べたり音楽を奏でたり、お墓にお供えをしたり花びらで道を作ったりしてました。

メキシコというのも思えばなかなか縁遠い国です。本格的に舞台になってる映画もいろいろあるんでしょうけど、自分は昔の『荒野の七人』や『ボーダーライン』、それにDVDスルーになった『ブック・オブ・ライフ』くらいしかぱっと思い出せません。R・ロドリゲスの「マリアッチ三部作」というのもありますがそっちは未見…
ともかく、『リメンバー・ミー』を通して彼の国の文化や習慣を色々学ぶことができます。家族の絆が強いこととか、ご先祖様や年長者をとても敬っていることとか。こんなところも一昔前の日本とよく似ています。このアニメでミゲルの他に重要な位置を占めているキャラは彼のおばあちゃんとひいおばあちゃん、それに霊になってるご先祖様たちであります。そして主人公の両親もちゃんといるのに影がとても薄い。そんなところがキッズアニメとしてはなかなか変わっております。

あの世の描写もかなり華やかで独特です。普通死後の世界というのはどんより暗くて辛気くさく描かれるものですが、こちらではキラキラと美しくて複雑に入り組んだ、見たこともない歓楽街のような世界を映しだしています。アカデミー長編アニメがここ数年ずっとディズニー系が独占してしまっているのはやはり問題なのでしょうけど、受賞も納得の美術力でありました。
あとご本家ディズニー映画には頻繁に歌が挿入されますが、「歌」そのものをテーマにした作品はほとんどなかったのでは。邦題ともなっている「リメンバー・ミー」という曲、宣伝で何回も聞かされましたが、よくある男女の別れの曲かと思いきや鑑賞後ではがらっと雰囲気の変わるところが心憎いです。途中主役コンビが演奏する「ウン・ポコ・ロッコ」という曲もなかなかよかった。自分は時間の都合で吹替え版で観たのですが、ミゲルをあてている男の子の歌声がとても朗々としてて思わず聞きほれてしまうほどでした。

中盤過ぎからはあの世の青年?ヘクターとのバディものになるところも楽しい。やっぱりピクサーの王道はバディものでありますよね。あと自分は青年と少年が対等のパートナーで冒険するという話が好きなので、そこらへんも高ポイントでした。

Rmbmここんとこ日本ではディズニーご本家やドラえもんに押されていた感のあるピクサーですが、『リメンバー・ミー』は歌を前面に押し出したのが効いたのか、『グレイテスト・ショーマン』と並んで粘り腰のヒットを続けております。タコスをかじりながら踊りたくなる快活な1本でした!

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April 09, 2018

モータリゼーションの裏側で キャスリン・ビグロー 『デトロイト』

Dtt『ハートロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティー』など骨太な題材で観る者を圧倒するキャスリン・ビグロー監督。その最新作は、60年代に米国を揺るがした暴動を扱った群像劇。『デトロイト』、ご紹介します。

1967年7月、黒人が経営するクラブの摘発をきっかけに火が付いたデトロイト暴動。その勢いはとどまるところを知らず、政府は鎮圧のため軍隊を派遣する事態に発展。歌手で成功することを夢見ていた青年二人は巻き添えから逃れるため、アルジェ・モーテルに宿泊する。だがそのモーテルから何者かが軍隊に空砲を打ち込んだため、容疑者とみなされた彼らは他何人かと共に、市警から容赦ない尋問を浴びることになる。

デトロイトといえば自分としては映画『ロボコップ』や『ナイスガイズ!』でなじみのある町。自動車産業で戦後急速に発展したものの、やがて日本車におされて今では空洞化に歯止めが利かなくなってる…なんてことをどこぞのニュースで目にしたような。本作品で扱ってる事件は、デトロイトがまさに頂点から下降を始める寸前くらいに起きた事件です。

黒人の差別をテーマにした映画も本当によく作られております。そのペースと本数はナチス関連作品に匹敵するほどでしょうか。現在ヒーロー映画『ブラックパンサー』が北米で映画史を塗り替えるほどのヒットを続けていますが、あちらが黒人の夢と理想を描いた作品だとすると、こちらは現実と歴史を扱ったものと言えます。

ただこの映画で扱われる悲劇は、人種差別のみが原因でもないような気がします。確かにそれはきっかけであり、要因の一つでありますが、少なくともアルジェ・モーテルで人命が失われたのは「自分が正しい。悪を裁かねばならない」という思い込みや、不幸にして滑稽な勘違いなども関係しているかと。ビグロー監督は『ゼロ・ダーク・サーティ』でも政府によるテロリストの拷問などを描いていましたが、人が義務感に駆られて残酷行為に走ることに興味があるのかもしれません。

そのサド的警官を演じるのが『ナルニア国第3章』『リトル・ランボーズ』での悪童役が印象的だったウィル・ポーター君。これまでのベスト・アクトでは…と思えるほどの鬼気迫る演技でしたが、あまりにこの役が辛くて影で泣きながらやってたんだとか。そんな情報を事前に仕入れてしまったせいか、いまひとつこのサド警官が憎めなくて困りました。

以下、ラストまでネタバレで。

命を永らえた青年の1人、ラリーは、歌手になる夢を捨てて、出世とは程遠い聖歌隊に入ることを望みます。先祖は強制的にアメリカに連れて来られた彼らですが、多くの人は自然にキリストの教えを受け入れているようで。まあそもそもキリスト教というものは白人専用のものではなく、中東から始まった人種に限定されないものですしね。その名を戦争に利用する政府・組織もありますが、本来はラリーのように憎しみを乗り越えて平和と愛を訴えていくものではないかと。このデトロイト暴動から約半世紀。いまだに対立の火種が絶えないのはなんともやるせないところでありますが。

Dtt_2「アカデミー賞候補!」とうたわれながらノミネートされなかった『デトロイト』ですが、決して候補の作品群と比べてレベル的に劣るものではありませんでした。結局モーテルの中で何が起きたのか、正確に知っているのは当事者たちだけなわけですが、それでも可能な限りに真実に近づこうとするビグロー監督の気迫を感じました。

残念ながらもうほとんど上映が終わってしまってましたが(…)、興味わいた方は二番館がDVD(たぶん近日発売)でご覧ください。

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April 03, 2018

フランス鉄道の奇跡 クリント・イーストウッド 『15時17分、パリ行き』

15171老いてなお精力的に映画を作り続けるクリント・イーストウッド。本日はその彼が実際にあった事件をもとに、また新たなチャレンジを試みた意欲作『15時17分、パリ行き』をご紹介します。

スペンサー、アンソニー、アレクは子供のころからの親友同士。成長してうち二人は軍に入り、一人は大学に進む。ある時旧交を温めるためヨーロッパ旅行を思いついた彼らは、金を工面して三人で欧州へ向かう。イタリア、ドイツ、オランダと大いに旅を満喫していたスペンサーたちだったが、フランスへ渡る途中で思いもよらない事件に巻き込まれる。

この映画、なによりまずびっくりしたのは映画情報サイト、ロッテン・トマトメーターでかなりの低得点をたたき出したこと(笑) あのイーストウッドでさえも、やる時はやってしまうんだ!?と、なぜか少しほっとしたものでした。
詳しく調べてはいませんが、おそらくその理由は事件の当事者である演技のド素人3人をそのまま主演で起用したことにある気がします。前作『ハドソン川の奇跡』で乗客の何人かを「本物」に演じさせたことと、そこで手ごたえを感じたことがイーストウッドのチャレンジ精神に火をつけてしまったんでしょうね。あと彼らが普通にヨーロッパ観光を楽しんでいるくだりがけっこう長いことも不評の原因かと。
でもわたしはあんまりその二点をマイナスには感じませんでした。

まず素人起用の件ですが、欧米人が身近にいないせいかあまり彼らの「演技」が不自然に感じられなかったのですよね。むしろ朴訥な表情や口調がかえってごく自然というか、「その辺をぶらぶら歩いてる観光客感」をリアルに醸し出しているように思えました。
もうひとつ観光パートが長いという点に関しては、彼らに感情移入してると自分も欧州の名所・スポットを巡ってるような気がしてきてこれまた逆に楽しかった。いいですよね、夢のヨーロッパ旅行。死ぬ前に一回くらい行けるかしら… ふううう

あとこの映画でもうひとつ興味深かったのが、「『ダイハード』みたいな事件って実際にあるんだなあ」ということ。そして現実の『ダイハード』はバトル部分がかなりあっという間だということです(笑) その辺のあっさり加減も一般にはマイナスポイントなのかもしれませんが、まあやっぱり現実はそんなもんでしょうと。

『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』と三作続けて「21世紀アメリカの英雄」を題材にしているイーストウッド。今回の『15時17分、パリ行き』は前二作の中間にあたる作品だと考えます。『アメリカン~』は殺人と戦いで英雄になった男の話。『ハドソン川~』は誰とも戦うことなく人命を救った男の話。で、『15時17分~」は戦って誰も殺さず人命を守った男たちの話…ということで。最近時々言動に不安も感じるイーストウッドですが、こうやってひとつのテーマを多面的にとらえ、観客に考えさせ、しかも十分にスリリングな映画を作りあげるという点で、やはり当代きっての名匠と言い切って間違いないでしょう。

当事者の青年の1人が「戦争で人を殺さないで人命を助ける」ことを目標に掲げている点も印象に残りました。その動機に信仰が大きく影響を及ぼしているあたり、『ハクソー・リッジ』のテズを思い出さずにはいられません。我々からすればその目標は大きく矛盾してるように感じられますが、彼らにしてみれば自然に導き出された結論なんでしょうね。そしてそのポリシーが結局は多くの命を死の淵から守ったわけですから、一概に「間違ってる」とは言えない気がします。

15172『15時17分、パリ行き』は公開からもう一か月を過ぎていますのでぼちぼち終了かと思われます。『ダイハード』や「沈黙」シリーズが現実に起きたらどんな感じなのか、興味ある方は駆け込みでごらんになってください。
電車映画としては先週末からリーアム・ニーソン主演の『トレイン・ミッション』も始まっています。『新感染』とか『オリエント急行殺人事件』とか、鉄道サスペンスが地味に続くこのごろ。

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