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March 30, 2018

素顔のマーマンで ギレルモ・デル・トロ 『シェイプ・オブ・ウォーター』

Sow1いやあ、盛り上がりましたねえ、第90回アカデミー賞…ってもう一か月くらい経ってるけど… 今回は我らがギレルモ・デル・トロが半魚人を題材に見事オスカーをもぎとった『シェイプ・オブ・ウォーター』をご紹介いたします。

1962年アメリカ。宇宙研究センターに務めるイライザは口が聞けず独身でありながらも、それなりに友人に恵まれささやかに生活を楽しんでいた。そんなある日、研究所に謎の生物が運ばれてくる。人間と魚の中間のようなその生き物にイライザはひかれるものを感じ、いつか二人は手話で心を通わすようになるのだが…

この作品、なぜか舞台は60年代ということになっております。監督は「実は現代のことを風刺してるんだけど、直接やったらやばいから60年代にした」みたいなことを語っておりました。そういう理由もあるんでしょうけど、この時代だからこそまだアマゾンに半魚人がいても許されるような、そんなファンタジックな雰囲気があります。某アニメのコピーに「この変ないきものは、まだ日本にいるのです。たぶん」というのがありましたが、半世紀前の人間の手が及んでない領域がまだあった時代だからすんなり受け要られられます。

そして半魚人をテーマにしていながら全体的にオシャレなセンスでまとめられております。わたしゃおっさんですが「あんなヌルヌルしたウナギみたいなもんが恋愛対象とか、そりゃないわー」とか思っておりました。でもこの映画の半魚ドンさんはなかなかスタイリッシュだし決めてくれるところはズバッと決めてくれるので、ヒロインが惚れるのもなんかわかるような気がしました。ともかくオスカーならずとものヴェネツィア映画祭の金獅子賞まで持って行ってしまったのは、ドラマ性や社会風刺もさることながら、このアート力が何よりもものをいったのでは、と考えます。

あとモンスター映画なのに、さびしい満たされない中年たちの描写がきめ細かいあたりも特筆すべき点です。半魚さんに関わったことによりある者は心が満たされ、ある者は欲望をかきたてられ、ある者は自分を見つめなおし、ある者は思い切った決断に出ます。そのように周りの者たちを突き動かしていく半魚人さんというのは一体何者なのでしょう。ある種のメタファー云々と書きそうになりましたが、野暮くさいのでやめます。
ともかく、自分もさびしい中年なのでこの点は共感せずにはいられませんでした。おっさんでさびしがりやさんというのはうっとおしいことこの上ありませんが、そうなんだから仕方ないじゃない!! うーん、今日も酒が進むなあ。

そういえばデル・トロ氏はエロとか恋愛とかほとんどやらない人だったのに、前作『クリムゾン・ピーク』から急にそっちの方もしっかり取り入れるようになってしまってどうしちゃったのかな?という感じです。彼も大人になっちゃったってことなんでしょうかね… まあ前から大人なんですけど。こないだは「もうオモチャに対する執着がない」なんて発言までしてくれちゃったし… だからさびしいじゃねえかよ!! 置いて行かないでくれよ!! ぐびぐび

おまけにアカデミー監督賞・作品賞までゲットしてしまった日には、ますます遠い存在になってしまったような。でもぼくは信じています。『パンズ・ラビリンス』が評価されたあとにちゃんと『ヘルボーイ:ゴールデン・アーミー』や『パシフィック・リム』で戻ってきてくれたように、また童貞臭満載のオタクらしい映画を作ってくれるって。その日をわたしはずっと待ってるから… とりあえず長年企画を温めたり頓挫したりしてる『狂気の山脈にて』が実現したらいいですね。

話が横道にそれましたが、なんだかんだ言ってこの映画、『パンズ・ラビリンス』にも思い入れのある身としては好きにならずにいられません。果たしてヒロインは幸せになれたのか? 映像でははっきり見せてくれますが、実のところそれは誰かの想像なわけで。どっちに考えるかは観客ひとりひとりにゆだねるという… こういうのずるいけどなんだか心地よいのですよね。

Sow2『シェイプ・オブ・ウォーター』はデルトロ久々の黒字作品ではありますが、日本ではやっぱり微妙な成績でもう終わりそうです。興味ありつつもまだ観そびれている方は駆け足で観に行ってください。
デルトロ関連では伝説の『パシフィック・リム』続編がスティーブン・デナイト監督に引き継がれて来月中旬に公開予定。はああ~ もういまからおしっこが漏れそうやわ…
あとおなじ半魚人っぽい映画で劇場版『仮面ライダーアマゾンズ』が再来月にスタンバイしてます。お魚好きな人はぜひこちらもチェックされたし。

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Comments

わだすは中トロあたりが好きだす。

Posted by: ボー | March 30, 2018 at 10:53 PM

こちらにも☆
60年代が舞台だからこそ、このファンタジーな世界観がすんなり受け入れられたって感じしますね。
モンスターなのに男前さんでした。

Posted by: ノルウェーまだ~む | March 31, 2018 at 10:12 AM

>ボーさん

トロサーモンもいけますよ!

Posted by: SGA屋伍一 | April 03, 2018 at 09:57 PM

>ノルウェーまだ~むさん

デルトロ監督の「ヘルボーイ」にも半魚人出てきましたけど、あちらはどちらかというとかわいい系
60年代のレトロな部屋の作りなどもしんみりよかったです

Posted by: SGA屋伍一 | April 03, 2018 at 09:59 PM

猫……。

Posted by: ナドレック | April 08, 2018 at 05:23 PM

>ナドレックさん

あれは迫真の演技なので大丈夫です! きつかったけど…

Posted by: SGA屋伍一 | April 09, 2018 at 09:57 PM

> わたしゃおっさんですが「あんなヌルヌルしたウナギみたいなもんが恋愛対象とか、そりゃないわー」とか思っておりました。

でも、半魚さんが女の子でうるうる目で見つめてくれたら、ぬるぬるは逆にかーいー気がする。ぬるぬるはエロいよ。

Posted by: ふじき78 | April 10, 2018 at 12:08 AM

>ふじき78さん

まあどこにでもマニアはいるというか… 冬の時期は乾燥するので適度な粘液もいいかもしれませんね

Posted by: SGA屋伍一 | April 11, 2018 at 09:35 PM

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