ニール・ゲイマンについてちょっと語ってみたい ジョン・キャメロン・ミッチェル 『パーティーで女の子に話しかけるには』
2018年に入ってまだ三か月もたってませんが、すでに3本もアート的にぶっとんだ青春映画に出くわしてしまいました。『エンドレス・ポエトリー』『花筐』、そしてこの『パーティーで女の子に話しかけるには』です。ご紹介します。
1977年ロンドン郊外。パンクロックに夢中な少年エンは、パーティー会場と思しき古い館でみょうちきりんなダンスに興じる謎の一団と遭遇する。面喰いながらも目をみはるばかりの美少女ザンと知り合った彼は、彼女と意気投合して町の寂れたスポットを共に散策する。だがエンは知らなかった。ザンが自分とは異なる生き物で、過酷な風習に縛られていることに…
かわいいタイトルのキラキラしたラブロマンスというのは、おおむねわたしの興味の対象外であります。この映画も当初はスルー予定でした。しかしヒロインが宇宙人であり原作者がカリスマ・コミックライターのニール・ゲイマンと知って考えを改めました。彼が原作の映画といえば『コララインとボタンの魔女』『スターダスト』がありましたが、どちらも人を食ったセンスとブラックユーモアに満ちたファンタジー映画の傑作でした。ただ今回の『パーティーで~』はその二作品に比べるとかなりわかりづらいというか、ついていきがたいというか。カラフルな全身タイツの一団が意味不明の会話をかわし、超シュールな舞踊を繰り広げている様子を見てると、なんだか脳みそがウニになりそうでした。
それでもなんとか鑑賞し続けられたのはとにかくヒロインのエル・ファニングがチャーミングだったから。「わけわかんなくてもこの子がかわいけりゃそれでいいや」と思えるくらいの輝きを放っております。別に自分彼女のファンだったわけでもないんですが。あと後半に入るとムードもちょっとだけ普通になり、変則的なボーイ・ミーツ・ガールの物語として楽しめなくもありません。
思い出したのは藤子F不二雄氏のSF短編「ミノタウロスの皿」。あれもコミュニケーションが通じそうで通じない異文化の擦れ違いを描いた作品でありました。
あとやっぱりニール・ゲイマンが手掛けたコミックの『サンドマン』。夢を司る神ドリームの風変わりな旅の物語なのですが、ヒーローものとは一線を画した散文詩のような作風はすこしこの映画と通じるところがありました。実は劇中にちらっとタイトルが映るシーンがあります。
ついでに自分のゲイマンの思い出を語ると、最初に名前を知ったのは『スポーン』のゴス天使「アンジェラ」が登場するエピソード。楽しく読みましたがどこがそんなにすごいライターなのか正直よくわからなかったり。というか今でもちゃんと理解できてるわけではありません… 現在ではコミックライターというより幻想小説の方に主軸を置いている模様。現時点で入手しやすい邦訳作品は『バットマン:ザ・ラストエピソード』あたりかな。バットマンの葬儀において主要キャラたちが弔辞を読んでいくという内容。これもまた読み手を煙にまくような一筋縄ではいかないコミックです。
『パーティーで女の子に声をかけるには』はまだちょこちょこ公開予定の残ってる劇場があるようです。このレビュー読んで「観てみたい!」と感じた人いないと思うんですけど、もしいたら劇場一覧の方をごらんください。
Comments
パーティでツチノコに話しかけられたいです。
Posted by: ボー | March 13, 2018 08:52 AM
>ボーさん
ドラッグパーティーなら幻覚でツチノコに会えるかも(あわわ)
Posted by: SGA屋伍一 | March 13, 2018 09:39 PM