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March 26, 2018

チャドの黒豹 ライアン・クーグラー 『ブラックパンサー』

Bp1♪乾いた土地の 片隅で お前は何を 探すのか (略) 男の怒りか 男のアフリカ
失礼しました。現在北米にて大旋風を巻き起こしているマーベル・シネマティック・ユニバース最新作、チャドウィック・ボーズマン主演『ブラックパンサー』、紹介します。

アフリカの一国「ワカンダ」の王子ティチャラは、テロ事件で父を失い、正式に国王に即位する。ワカンダには他国から隠されている秘密があった。国王は特殊なスーツを身にまとい、「ブラックパンサー」として国の治安を守る務めがあるということ。また、宇宙より飛来した特殊な金属「ヴィヴラニウム」の恩恵により、世界で最も進んだ文明を築いているということも。その秘密を知る謎の男キルモンガーの陰謀により、ティチャラとワカンダは窮地に立たされる。

キャラクターとしてのブラックパンサーが誕生したのは1966年。『ファンタスティック・フォー』のゲストとしてでした。メインストリームとしてはアメコミ初の黒人ヒーローの登場でありました。この名前は過激な活動で知られるブラックパンサー党から取られたのかと思ってましたが、マーベルの方がそちらよりも先だったようです。「うちは関係ないよ」ということを示すため、一時期「ブラックレパード」に改名したこともあったとか。
もっともそれほどメジャーな方ではなかったようで、以後個人誌が創刊されたり終了したりを繰り返しながら、細々とマーベルユニバースの一画で生き永らえ続けます。90年代のアメコミ翻訳ブームの時もこの方はほとんど見かけなかったので、そのポジションがうかがい知れます。こちらでも多少話題になったのはX-MENのストームと結婚したことくらいでしょうか(のちに破局)。

そんなブラパンさん主演の映画が作られると聞いたとき、「それは果たして売れるのだろうか?」という思いが頭をよぎりまくりました。いくらのりにのってるMCUとはいえ、さすがにそろそろつまづいてしまうんじゃなかろうかと。
しかしプロデューサー、ケビン・ファイギの勘に間違いはなかったようです。『ブラックパンサー』は5週連続で全米の映画ランキングのトップを飾り、ついにはヒーロー映画史上NO.1の売上を誇っていた『アベンジャーズ』をも抜き去ったというからぶったまげです(日本ではそれほどでもないのに…)。いったいなにがそんなにあちらの人をひきつけているのか、足りない頭で考えてみました。

まずはいろんなところで言われてますが、これほどまでに黒人主体で撮られたヒーロー映画は初めてということですね。これまでも『スポーン』『ブレイド』『スティール』(…)などがありましたけど、これらは黒人社会についてそんなに踏み込んでいたわけではないし、メインは黒人でもその他の脇はだいたい白人だったりして。しかし今回はキャストのほとんどに黒人を起用し、世界とアメリカにおける彼らの立場にまで踏み込んだ内容になっています。
ただ映画を観てると米国の人口の半分くらいは黒人のように思えますが、実際は10%くらいなんだそうで。大ヒットの理由は他にもあるかと思われます。
舞台がアフリカ、ということもそのひとつかもしれません。『ジュラシックワールド』『ジャングルブック』『キングコング』、そして『ジュマンジ』新作とあちらの方ではけっこうジャングルもの・秘境ものってヒット率が高いのですね。この『ブラックパンサー』も一風変わった「秘境もの」と言えなくもありません。そして超科学技術とアフリカの文化が融合したこれまでにない「秘境」を作り出しています。こういう鉄板の題材に目新しいものをまぶしたことが光ったのだと思います。
あともうひとつ重要な点として「猫萌え」があります。これはアフリカもアメリカも日本も関係ありません。猫愛はすべての国民に均等に響くのです。

ひとくちに黒人文化といってもアフリカだけでも様々な国や民族があり、さらに欧米のそれぞれの土地で根付いたグループもある。当然それぞれに意見や主張があるわけですが、クーグラー監督はそれらをなんとかひとつにひっくるめることを試みておりました。リンカーンが奴隷解放宣言をしたのちも差別や衝突は続き、いまも米国でそうした事件が起きています。それでも他の人種と手を取り合い、前に進んでいこう…というメッセージです。いささか理想がすぎるようにも思われますが、ヒーロー映画というのはなんせ子供たちに絶大な影響力があるので、この映画のテーマが国や民族の垣根を越えて、子供たちの目標になったらいいな…とおじさんは願うのでした。

ちょっと不思議だったのはMCUの前作『マイティ・ソー バトルロイヤル』と色々かぶってしまってたところ。存在を知らなかった親族がヴィランとなって現れたりとか、お父さんの過去の罪を知って気落ちしたりとか。片やお笑いムード、片やシリアスムードなのでだいぶ印象は違いますけどね。『インフィニティ・ウォー』で合流した際、この二人はたぶん気が合うのでは、と思われます。

MCUおなじみのSFガジェットの数々や、いかにもアフリカといわんばかりの衣装・風俗もみどころです。『動物のお医者さん』の漆畑教授がなぜあそこまでアフリカを愛していたのか、ちょっとわかったような気もします。

Bp『ブラックパンサー』は日本ではだいぶ客足が落ち着いてきちゃいましたが、まだ全国の映画館で上映中。もう約一ヶ月後にせまったMCUの総決算『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』への序章としてファンなら押さえておかなくてはならない1本です。本当に2018年もアメコミ映画が元気で何より。


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Comments

ブラパン秘境もの…卑怯者!?
ヒット、理解できんわー。

Posted by: ボー | March 28, 2018 at 06:32 AM

X-MENのストームと?

夜のブラックパンサーがあちこちで猛威を振るうと伝説の嵐が吹き荒れる。

「ダーリン、お仕置きだっちゃー!!」

Posted by: ふじき78 | March 28, 2018 at 09:42 PM

SGAさんこんばんわ♪

ブラックパンサーは一応日本でもかなりヒットはしてるみたいですが、それでも地元のシネコンではもういっちゃん小さい劇場の方に移されて上時間も一日一回になってるせいか、ヒーロー映画史上一位のヒットという感じを国内で感じ取ることが出来ないのが正直なとこでもあったりします(汗)。・・・でも確かにヒーロー映画でここまで黒人の人達を取り入れた作品は見た事が無い気がしますし、色んな文化・民族間の問題にも触れていましたが、それほど固くないというか説教臭くない印象もあったので、自分もワカンダの超文明にスゲースゲーとかオコエさんの無双っぷりにまたスゲースゲーとか言ってて、なんだかんだで楽しめた次第ですw

Posted by: メビウス | March 29, 2018 at 06:53 PM

>ふじき78さん

あなたも本当にそっちの話がすきねえ
そういえば豹とエッチといえばキャット・ピープルなんて映画があったな

Posted by: SGA屋伍一 | March 30, 2018 at 10:15 PM

>ボーさん

キルモンガーさん 「卑怯とはわが帝国では褒め言葉だ!」(特撮の悪者にありがちなセリフ」

Posted by: SGA屋伍一 | March 30, 2018 at 10:17 PM

>メビウスさん

おなじ猫映画でもやっぱり日本ではドラえもんの猛威に対抗することはむずかしかったようで… せめてアベンジャーズIWで旋風を巻き起こしてくれることを期待しましょう(あ、そっちではコナンとぶつかりそう…)

個人的にはいろんなとこで言われてますがジャバリ族がまんまジャパリパークというかけものフレンズだったのが大うけでした
オコエさんはすごかったですね。吉田沙保里(MCUファン)とタメ張れるのでは?

Posted by: SGA屋伍一 | March 30, 2018 at 10:24 PM

伍一くん☆
そんなにアメリカでは大人気なのですね~
猫耳だから?
それにしてもストームと結婚・破局していたなんて!!

Posted by: ノルウェーまだ~む | March 31, 2018 at 10:06 AM

>ノルウェーまだ~むさん

猫耳だからです(断言)
マーベルヒーローはけっこう破局・離婚ありますね。他にも死別とか現実改変でなかったことになったりとか

Posted by: SGA屋伍一 | April 03, 2018 at 10:01 PM

『太陽戦隊サンバルカン』は東映とマーベルの提携作品だったんだから、バルパンサーのスーツを黄色じゃなくて黒にしていれば、日本市場にもブラックパンサーが浸透していたかもしれませんね。もったいない!
ブラックパンサーはヒーロー本人だけでなく、ワカンダという国まるごとが驚異の世界なので面白いですね。ワカンダをネタにして、いくらでも映画を作れそうです。

Posted by: ナドレック | April 08, 2018 at 05:35 PM

>ナドレックさん

バトルフィーバーJはマーベルと提携してたと聞いていたけど、賛バルカンもそうだったんでしたっけ? スパイダーマンに続いてアベンジャーズも普通に東映で作ってくれたら面白かったのになあ…と夢想するこのごろ

現実の地名を使うことが多いマーベル世界で「ワカンダ」はけっこう特異な存在なんですよね。他は南極のサベッジランドくらいかなあ

Posted by: SGA屋伍一 | April 09, 2018 at 10:00 PM

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