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March 30, 2018

素顔のマーマンで ギレルモ・デル・トロ 『シェイプ・オブ・ウォーター』

Sow1いやあ、盛り上がりましたねえ、第90回アカデミー賞…ってもう一か月くらい経ってるけど… 今回は我らがギレルモ・デル・トロが半魚人を題材に見事オスカーをもぎとった『シェイプ・オブ・ウォーター』をご紹介いたします。

1962年アメリカ。宇宙研究センターに務めるイライザは口が聞けず独身でありながらも、それなりに友人に恵まれささやかに生活を楽しんでいた。そんなある日、研究所に謎の生物が運ばれてくる。人間と魚の中間のようなその生き物にイライザはひかれるものを感じ、いつか二人は手話で心を通わすようになるのだが…

この作品、なぜか舞台は60年代ということになっております。監督は「実は現代のことを風刺してるんだけど、直接やったらやばいから60年代にした」みたいなことを語っておりました。そういう理由もあるんでしょうけど、この時代だからこそまだアマゾンに半魚人がいても許されるような、そんなファンタジックな雰囲気があります。某アニメのコピーに「この変ないきものは、まだ日本にいるのです。たぶん」というのがありましたが、半世紀前の人間の手が及んでない領域がまだあった時代だからすんなり受け要られられます。

そして半魚人をテーマにしていながら全体的にオシャレなセンスでまとめられております。わたしゃおっさんですが「あんなヌルヌルしたウナギみたいなもんが恋愛対象とか、そりゃないわー」とか思っておりました。でもこの映画の半魚ドンさんはなかなかスタイリッシュだし決めてくれるところはズバッと決めてくれるので、ヒロインが惚れるのもなんかわかるような気がしました。ともかくオスカーならずとものヴェネツィア映画祭の金獅子賞まで持って行ってしまったのは、ドラマ性や社会風刺もさることながら、このアート力が何よりもものをいったのでは、と考えます。

あとモンスター映画なのに、さびしい満たされない中年たちの描写がきめ細かいあたりも特筆すべき点です。半魚さんに関わったことによりある者は心が満たされ、ある者は欲望をかきたてられ、ある者は自分を見つめなおし、ある者は思い切った決断に出ます。そのように周りの者たちを突き動かしていく半魚人さんというのは一体何者なのでしょう。ある種のメタファー云々と書きそうになりましたが、野暮くさいのでやめます。
ともかく、自分もさびしい中年なのでこの点は共感せずにはいられませんでした。おっさんでさびしがりやさんというのはうっとおしいことこの上ありませんが、そうなんだから仕方ないじゃない!! うーん、今日も酒が進むなあ。

そういえばデル・トロ氏はエロとか恋愛とかほとんどやらない人だったのに、前作『クリムゾン・ピーク』から急にそっちの方もしっかり取り入れるようになってしまってどうしちゃったのかな?という感じです。彼も大人になっちゃったってことなんでしょうかね… まあ前から大人なんですけど。こないだは「もうオモチャに対する執着がない」なんて発言までしてくれちゃったし… だからさびしいじゃねえかよ!! 置いて行かないでくれよ!! ぐびぐび

おまけにアカデミー監督賞・作品賞までゲットしてしまった日には、ますます遠い存在になってしまったような。でもぼくは信じています。『パンズ・ラビリンス』が評価されたあとにちゃんと『ヘルボーイ:ゴールデン・アーミー』や『パシフィック・リム』で戻ってきてくれたように、また童貞臭満載のオタクらしい映画を作ってくれるって。その日をわたしはずっと待ってるから… とりあえず長年企画を温めたり頓挫したりしてる『狂気の山脈にて』が実現したらいいですね。

話が横道にそれましたが、なんだかんだ言ってこの映画、『パンズ・ラビリンス』にも思い入れのある身としては好きにならずにいられません。果たしてヒロインは幸せになれたのか? 映像でははっきり見せてくれますが、実のところそれは誰かの想像なわけで。どっちに考えるかは観客ひとりひとりにゆだねるという… こういうのずるいけどなんだか心地よいのですよね。

Sow2『シェイプ・オブ・ウォーター』はデルトロ久々の黒字作品ではありますが、日本ではやっぱり微妙な成績でもう終わりそうです。興味ありつつもまだ観そびれている方は駆け足で観に行ってください。
デルトロ関連では伝説の『パシフィック・リム』続編がスティーブン・デナイト監督に引き継がれて来月中旬に公開予定。はああ~ もういまからおしっこが漏れそうやわ…
あとおなじ半魚人っぽい映画で劇場版『仮面ライダーアマゾンズ』が再来月にスタンバイしてます。お魚好きな人はぜひこちらもチェックされたし。

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March 26, 2018

チャドの黒豹 ライアン・クーグラー 『ブラックパンサー』

Bp1♪乾いた土地の 片隅で お前は何を 探すのか (略) 男の怒りか 男のアフリカ
失礼しました。現在北米にて大旋風を巻き起こしているマーベル・シネマティック・ユニバース最新作、チャドウィック・ボーズマン主演『ブラックパンサー』、紹介します。

アフリカの一国「ワカンダ」の王子ティチャラは、テロ事件で父を失い、正式に国王に即位する。ワカンダには他国から隠されている秘密があった。国王は特殊なスーツを身にまとい、「ブラックパンサー」として国の治安を守る務めがあるということ。また、宇宙より飛来した特殊な金属「ヴィヴラニウム」の恩恵により、世界で最も進んだ文明を築いているということも。その秘密を知る謎の男キルモンガーの陰謀により、ティチャラとワカンダは窮地に立たされる。

キャラクターとしてのブラックパンサーが誕生したのは1966年。『ファンタスティック・フォー』のゲストとしてでした。メインストリームとしてはアメコミ初の黒人ヒーローの登場でありました。この名前は過激な活動で知られるブラックパンサー党から取られたのかと思ってましたが、マーベルの方がそちらよりも先だったようです。「うちは関係ないよ」ということを示すため、一時期「ブラックレパード」に改名したこともあったとか。
もっともそれほどメジャーな方ではなかったようで、以後個人誌が創刊されたり終了したりを繰り返しながら、細々とマーベルユニバースの一画で生き永らえ続けます。90年代のアメコミ翻訳ブームの時もこの方はほとんど見かけなかったので、そのポジションがうかがい知れます。こちらでも多少話題になったのはX-MENのストームと結婚したことくらいでしょうか(のちに破局)。

そんなブラパンさん主演の映画が作られると聞いたとき、「それは果たして売れるのだろうか?」という思いが頭をよぎりまくりました。いくらのりにのってるMCUとはいえ、さすがにそろそろつまづいてしまうんじゃなかろうかと。
しかしプロデューサー、ケビン・ファイギの勘に間違いはなかったようです。『ブラックパンサー』は5週連続で全米の映画ランキングのトップを飾り、ついにはヒーロー映画史上NO.1の売上を誇っていた『アベンジャーズ』をも抜き去ったというからぶったまげです(日本ではそれほどでもないのに…)。いったいなにがそんなにあちらの人をひきつけているのか、足りない頭で考えてみました。

まずはいろんなところで言われてますが、これほどまでに黒人主体で撮られたヒーロー映画は初めてということですね。これまでも『スポーン』『ブレイド』『スティール』(…)などがありましたけど、これらは黒人社会についてそんなに踏み込んでいたわけではないし、メインは黒人でもその他の脇はだいたい白人だったりして。しかし今回はキャストのほとんどに黒人を起用し、世界とアメリカにおける彼らの立場にまで踏み込んだ内容になっています。
ただ映画を観てると米国の人口の半分くらいは黒人のように思えますが、実際は10%くらいなんだそうで。大ヒットの理由は他にもあるかと思われます。
舞台がアフリカ、ということもそのひとつかもしれません。『ジュラシックワールド』『ジャングルブック』『キングコング』、そして『ジュマンジ』新作とあちらの方ではけっこうジャングルもの・秘境ものってヒット率が高いのですね。この『ブラックパンサー』も一風変わった「秘境もの」と言えなくもありません。そして超科学技術とアフリカの文化が融合したこれまでにない「秘境」を作り出しています。こういう鉄板の題材に目新しいものをまぶしたことが光ったのだと思います。
あともうひとつ重要な点として「猫萌え」があります。これはアフリカもアメリカも日本も関係ありません。猫愛はすべての国民に均等に響くのです。

ひとくちに黒人文化といってもアフリカだけでも様々な国や民族があり、さらに欧米のそれぞれの土地で根付いたグループもある。当然それぞれに意見や主張があるわけですが、クーグラー監督はそれらをなんとかひとつにひっくるめることを試みておりました。リンカーンが奴隷解放宣言をしたのちも差別や衝突は続き、いまも米国でそうした事件が起きています。それでも他の人種と手を取り合い、前に進んでいこう…というメッセージです。いささか理想がすぎるようにも思われますが、ヒーロー映画というのはなんせ子供たちに絶大な影響力があるので、この映画のテーマが国や民族の垣根を越えて、子供たちの目標になったらいいな…とおじさんは願うのでした。

ちょっと不思議だったのはMCUの前作『マイティ・ソー バトルロイヤル』と色々かぶってしまってたところ。存在を知らなかった親族がヴィランとなって現れたりとか、お父さんの過去の罪を知って気落ちしたりとか。片やお笑いムード、片やシリアスムードなのでだいぶ印象は違いますけどね。『インフィニティ・ウォー』で合流した際、この二人はたぶん気が合うのでは、と思われます。

MCUおなじみのSFガジェットの数々や、いかにもアフリカといわんばかりの衣装・風俗もみどころです。『動物のお医者さん』の漆畑教授がなぜあそこまでアフリカを愛していたのか、ちょっとわかったような気もします。

Bp『ブラックパンサー』は日本ではだいぶ客足が落ち着いてきちゃいましたが、まだ全国の映画館で上映中。もう約一ヶ月後にせまったMCUの総決算『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』への序章としてファンなら押さえておかなくてはならない1本です。本当に2018年もアメコミ映画が元気で何より。


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March 14, 2018

ロシアの平和を守り隊 サリク・アンドレアシアン 『ガーディアンズ』

Gdan1『パディントン』『こぐまのケーキ屋さん』が人気を博し、『くまのプーさん』実写映画も待機している中、凍土のロシアからも一風変わった熊映画が流れてまいりました。『ガーディアンズ』、ご紹介します。

冷戦時代国から疎まれたマッド・サイエンティストが現代ロシアに突如として復活。恐るべき超能力と技術力を持つその男・クラトフは政府に対し宣戦布告する。ロシア軍諜報部はこれに対しソビエトが極秘裏に開発した「超人兵士」たちを探し出し、チームを結成させる。かくて悪の科学者と「ガーディアンズ」の戦いの幕が切って落とされた。

原題は『Zashchitniki』(読めない)。 「防衛するもの」「保護するもの」みたいな意味らしいので英題もそんなにまちがってはいないようです。まあわかりやすく言うとロシア版のアメコミヒーロー映画。メンバーは超高速で移動して両刀を振り回す兄ちゃん(クイックシルバーっぽい)、透明になれる姉ちゃん(インビジブル・ガールっぽい)、念力でモノを動かせるじいさん(マグニートー?)、そして熊になれるおじさんです。

やはり目を惹くのは熊男。狼男はこれまでいくつかの映画で観てきましたが、熊に変身する人間というのはちょっと聞いたことがない。他の3人はそれなりに定番の超能力なのに対し、この熊化だけが明らかに何か違う世界に突入しておりいます。半熊半人がガトリング砲をバカスカ撃ちまくるビジュアルは大したインパクトで、それだけでもこの映画を観る価値はあると思いました。

そしてもうひとつ変わっていたのは、世界の命運を握る最大パワーを持つのがヒゲモジャのおじさんだったということ。そういうのは他の映画では大抵いたいけな美少女だったり健気なお子様だったりする(『X-MEN』『ダークタワー』など)のでなかなか斬新でした。

あとマー○ル映画のヒーローたちというは大体素直にチームに加わらなかったり、仲間内で喧嘩したりするものです。けれどもガーディアンズの皆さんはそろってすんなり政府の要請を受け入れます。そしてみんな仲がいい…というか余計な口は叩かず黙々と共同作業に励みます。それぞれに悲しい背景があるにもかかわらずグレたりすることもありません。この辺がお国柄なのでしょうか。BGMにロシア民謡をかけたらすごく似合いそうでした。

最近はあまり映画を観ていて眠くなることはないのですが、この映画は久しぶりに前半けっこううとうときてしまいました。前日の晩『ポプテ○ピック』をリアルタイムで観ていて寝不足だったからか、映画が微妙だったからか、果たしてその両方か。いずれ再鑑賞して原因を再確認したいものです。

Gdn2『ガーディアンズ』は気が付けばもうほとんど日本での公開が終わってしまいました。熊とヒーローものが好きな方はDVDが出たらぜひごらんください。「絶対に面白い!」とは少し言いはばかられる映画ですが。
そうそう、キャッチコピーが「これがロシア映画だ!」となっておりました。それなりに楽しんで鑑賞したわたしもそれはちょっと違うと思います。露映画の本道はもっと重くてかわいそうで耐える感じの映画じゃないかしら。わたしのベスト露映画は『不思議惑星キン・ザ・ザ』ですけどね。クー!!

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March 13, 2018

化け猫とボーズの推理 夢枕獏 チェン・カイコー 『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』

Kki1夢枕獏の伝記小説を『覇王別姫』などで知られる中国の名匠、チェン・カイコーが映画化。『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』、ご紹介いたします。

西暦8世紀。唐に渡った日本の僧・空海は皇帝の病を治すため宮廷に呼ばれるが、彼が着くとほぼ同時に皇帝は息を引き取る。そこで空海は怪しげな猫の気配を感じ取るのであった。折しも都では黒猫がある役人に祟るという事件が起きていた。空海は知り合いの詩人・白楽天と呪いの元凶を調査し始める。

ちなみに中国の題は『妖猫伝』。このタイトルで原作が夢枕先生ですから、まともな空海の伝記映画ではないことは想像がつきます。そういえば先生の代表作に『陰陽師』というのがありましたが、あれと少々雰囲気が似ております。陰陽師安倍晴明の代わりに沙門空海が、平安京ではなく唐の長安でお化けに立ち向かうという。ただ晴明は妖怪を調伏したり国難を解決したりしてしましたが、空海は基本的に話を聞いて回るだけ。その間に犠牲者もどんどん出るのですが、特に悼む風でもなく。一通り聞き込みが終わると一応事件の謎は明らかになるものの、特に誰が救われたわけでもないのですよね。強いて言えば主役コンビがちょっと成長したくらいのものです。

それでも世界史の教科書で学んだ唐のスターたち…玄宗皇帝、楊貴妃、李白などが次から次へと出てくるのは観ていてワクワクしますし、CGとセットで再現された当時世界随一の都・長安の風景には心が躍ります。皇帝が金にあかせて催した豪勢な祭り・宴の様子がまた華やかでありました。
いろいろ腑に落ちないところもありましたが概ね満足できたのはそういったところと、あとなんといっても猫映画だったおかげ。オヤジ声でしゃべり恐ろしい妖術を駆使するくせにこの化け猫、やっぱりかわいいんですよ。外見は普通の黒猫なので。そんでどうも話が進むにつれ、この作品ポーの『黒猫』を意識してることが明らかになってきます。なんで近代英国のお話を八世紀の中国に置き換えたのかはよくわかりませんが、猫がかわいかったのでよしといたします。

そういえば夢枕作品には『猫ひきのオルオラネ』なんていうファンタジーもありましたし、『闇狩り師』シリーズには「シャモン」という名の猫も登場してました。どうも先生、猫にはなみなみならぬこだわりがあるようです。

Kki2『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』は現在そこそこヒットという感じで公開されております。ただ製作費に約150億くらいかかってるようなので果たして回収できるのか… 本国で売れてれば問題ないのでしょうけど。あといま映画館では『ドラえもん』『ブラックパンサー』も公開されてますのでニャンコ好きのみなさんは猫映画トリプルはしごに挑戦されてくださいニャー

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March 12, 2018

ニール・ゲイマンについてちょっと語ってみたい ジョン・キャメロン・ミッチェル 『パーティーで女の子に話しかけるには』

Ng1_22018年に入ってまだ三か月もたってませんが、すでに3本もアート的にぶっとんだ青春映画に出くわしてしまいました。『エンドレス・ポエトリー』『花筐』、そしてこの『パーティーで女の子に話しかけるには』です。ご紹介します。

1977年ロンドン郊外。パンクロックに夢中な少年エンは、パーティー会場と思しき古い館でみょうちきりんなダンスに興じる謎の一団と遭遇する。面喰いながらも目をみはるばかりの美少女ザンと知り合った彼は、彼女と意気投合して町の寂れたスポットを共に散策する。だがエンは知らなかった。ザンが自分とは異なる生き物で、過酷な風習に縛られていることに…

かわいいタイトルのキラキラしたラブロマンスというのは、おおむねわたしの興味の対象外であります。この映画も当初はスルー予定でした。しかしヒロインが宇宙人であり原作者がカリスマ・コミックライターのニール・ゲイマンと知って考えを改めました。彼が原作の映画といえば『コララインとボタンの魔女』『スターダスト』がありましたが、どちらも人を食ったセンスとブラックユーモアに満ちたファンタジー映画の傑作でした。ただ今回の『パーティーで~』はその二作品に比べるとかなりわかりづらいというか、ついていきがたいというか。カラフルな全身タイツの一団が意味不明の会話をかわし、超シュールな舞踊を繰り広げている様子を見てると、なんだか脳みそがウニになりそうでした。

それでもなんとか鑑賞し続けられたのはとにかくヒロインのエル・ファニングがチャーミングだったから。「わけわかんなくてもこの子がかわいけりゃそれでいいや」と思えるくらいの輝きを放っております。別に自分彼女のファンだったわけでもないんですが。あと後半に入るとムードもちょっとだけ普通になり、変則的なボーイ・ミーツ・ガールの物語として楽しめなくもありません。

思い出したのは藤子F不二雄氏のSF短編「ミノタウロスの皿」。あれもコミュニケーションが通じそうで通じない異文化の擦れ違いを描いた作品でありました。
あとやっぱりニール・ゲイマンが手掛けたコミックの『サンドマン』。夢を司る神ドリームの風変わりな旅の物語なのですが、ヒーローものとは一線を画した散文詩のような作風はすこしこの映画と通じるところがありました。実は劇中にちらっとタイトルが映るシーンがあります。

ついでに自分のゲイマンの思い出を語ると、最初に名前を知ったのは『スポーン』のゴス天使「アンジェラ」が登場するエピソード。楽しく読みましたがどこがそんなにすごいライターなのか正直よくわからなかったり。というか今でもちゃんと理解できてるわけではありません… 現在ではコミックライターというより幻想小説の方に主軸を置いている模様。現時点で入手しやすい邦訳作品は『バットマン:ザ・ラストエピソード』あたりかな。バットマンの葬儀において主要キャラたちが弔辞を読んでいくという内容。これもまた読み手を煙にまくような一筋縄ではいかないコミックです。

Pkh1『パーティーで女の子に声をかけるには』はまだちょこちょこ公開予定の残ってる劇場があるようです。このレビュー読んで「観てみたい!」と感じた人いないと思うんですけど、もしいたら劇場一覧の方をごらんください。

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March 07, 2018

ショウほどあこぎな商売はない? マイケル・グレイシー 『グレイテスト・ショーマン』

Gtsm2昨年正式にウルヴァリンを引退したヒュー・ジャックマンの最新作はサーカスを世に生み出した希代の興行師の一代記。『グレイテスト・ショーマン』、ご紹介します。

19世紀アメリカ。使用人の息子として生まれたP.T.バーナムは、苦労の末駆け落ちのようにして主人の令嬢と結ばれる(この辺創作かと思われますが)。妻にいい暮らしをさせたいと願う彼は、ある時変わった体型の人々を集めてショーを開くことを思いつく。周囲の住民や批評家からひんしゅくをかったものの、ショーは連日大盛況。バーナムは一躍社交界の名士となるが…

予告を見た段階で「なんだか『SING』に似てるなあ…」と思ったのですが、やはり7割くらい『SING』 でした。ただこういうサクセスストーリーというものは前半は我慢タイムに徹して、クライマックスでの爽快感を高めるものですが、バーナムさんはわりかし早めに成功を収めてしまいます。でもそのままずっとハッピーだったらお話は盛り上がらないわけで。きっと落とし穴が来るぞ~来るぞ~とびくびくしながら鑑賞してましたが、実際どうだったかというと(略)

最近なにかと差別問題に配慮してるなあ…とうかがえる米映画界。それくらいこの手の題材は炎上しやすいということなんでしょう。、そんな風潮の中、こんな微妙なお話を正面からやるとはヒヤヒヤしました。劇中と同じく批評家からのウケがよくないのはその辺に理由があるのかもしれません。
でも映画を観ていてそういえば「サーカス」には二通りのイメージがあるよな…なんてことを思い出しました。一つはボリショイサーカスや木下大サーカスのような広大な会場で華やかに繰り広げられる、ショーの王道としてのイメージです。
もうひとつは見世物小屋的な少しアングラっぽいイメージ。江戸川乱歩や寺山修司、ホドロフスキーが描くところのサーカスはこっちの方ですね。『グレイテスト・ショーマン』はこの対照的なサーカスの両面を無理やり融合させて描いてるところが圧巻でした。ちょっとひっかかるものがないでもないのですが、力強い歌と踊りで進行させられるとついなしくずしにのせられてしまうというか(流されやすい人間なので)

とりわけ印象に残った箇所はまず冒頭のバーナム少年が辛酸をなめるところ。ディケンズよろしくああいう子供がその日暮らしで苦労する話におじさんは弱いのです。
もうひとつは中盤欧州の歌姫(レベッカ・ファガーソン)にバーナムさんがよろめきそうになるあたり。物語の構造上仕方ないのですが、彼女とはもう少しさわやかに別れてほしかったなあ。全般的に曲はみな心地よかったですが、特に彼女が劇場で絶唱するシーンには圧倒されました。レベッカさんってこんなに歌唱力あるのか!?と感心しましたが、あとで調べたら歌部分はプロ(ローレン・アレッド)の吹替えであることが判明しました。まあ細かいことです。

2017best1日本ではそんなに知名度の高い人が出ているわけでもないのに、『グレイテスト・ショーマン』は現在なかなかのヒットをかっ飛ばしております。ヒューさまも『レ・ミゼラブル』があったし、やっぱりわが国でもだいぶ人気があがってきたのかな? ともかく派手なショーや歌・ダンスが好きな方におすすめいたします。

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March 06, 2018

哀しき野菜生活 クロード・バラス 『ぼくの名前はズッキーニ』

Bnz1昨日はアカデミー賞で大いに盛り上がりましたが、前回のアカデミー長編アニメ部門にノミネートされた傑作コマ撮りムービーが先日ようやく公開されました。『ぼくの名前はズッキーニ』、紹介します。

酒浸りの母と二人暮らす「ズッキーニ」と呼ばれる少年は、ある日起きた事故により身寄りのない子供たちが住む養護施設に引き取られることになる。そこにいるのはみな複雑な事情を抱えた児童ばかり。最初は壁を作ったり衝突したりしていたズッキーニだったが、共に過ごすうちに次第に彼らの「家族」となっていく。

どうでしょう、この重苦しいストーリー… ふつうストップモーションアニメというのは動物が主人公だったりファンタジックな話であることが多いですが、こちらではどこまでも現実的で深刻な物語。コマ撮りアニメで人間ドラマを丁寧につづったものといえば『メアリー&マックス』などもありましたが、あちらはもう少し語り口がユーモラスだった気がします。

本当に切ないことに世の中には親からも愛されない子供がいますし、すべての子供に温かい家庭があるわけではありません。しかしそうしたシビアな現実を突きつけるのは、普通こういうアニメを見る小学生以下のお子さんにはさぞショックだろうと思います。だもんでどちらかといえば十代以上の皆さんに観てほしい作品。ポスターもタイトルもキャラクターも、いかにも幼児向けっぽい感じなんですけどね…

コマ撮りアニメにも色々あります。アートで突き抜けたシュバンクマイエルの作品群、ポップでコロコロしたアードマン作品、リアルすぎてCGにしか見えないライカ作品などなど。
『ぼくの名前はズッキーニ』のモコモコっとしたフエルトっぽい質感や温かみのある積み木のような街並みは、製作国は違いますがロマン・カチャーノフの『チェブラーシカ』を思い出させます。主人公の頭がやたらでかかったり、どことなく物悲しいムードが漂ってるところも似ております。

わたくしなんでわざわざこんな題材をコマ撮りアニメでやろうと思ったのか不思議だったのですが、そんなETVで夕方にやってるようなビジュアルで語られると、お話のきつさも多少やわらげられるような効果がありました。
あと繰り返し「重い、悲しい」と書いてますがそれだけの作品ではありません。世の中にはちゃんとした情愛深い人たちも確かにいる、ということも含められておりました。
特に強い印象を残すのは序盤はタチの悪いいじめっ子にしか思えなかったシモン。この直後に観た『グレイテスト・ショーマン』にもあったんですが、最初すごく意地悪だった人が終盤ぽろっと優しさを見せるというの「ずるいよなあああ」と思いつつ弱いです。やめてください、本当にもう…

Bnz2というわけでこれまたできるだけ多くの人に鑑賞していただきたい良作アニメなのですが、昨年秋に公開された『KUBO』などと比べるとあまり話題になってないのが切ないところです。おまけに第一陣はそろそろ公開終わりそう… この映画も日本公開までこぎつけるのはさぞや苦労があっただろうに。近くでやっててちらとでも興味のある方は、ぜひ足を運ばれてください。劇場一覧はこちら

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March 04, 2018

決定・第7回人間以外アカデミー賞(2017年公開の作品から)

いよいよ明日に迫った第90回アカデミー賞。その前に恒例の「人間以外アカデミー賞」をそろそろ決めたいと思います。2017年日本公開の映画で活躍した人間以外の生物・自我を持つものを表彰してまいります。それでは例によってゲノムの単純なやつらから。

Kubo2☆細菌・微生物部門 『新感染 ファイナルエクスプレス』よりゾンビの原因になったウィルス
名前すらつけられてませんがこれくらいしか思いつかなかったので

☆植物部門 『怪物はささやく』よりリーアム・ニーソン演じるイチイの木
対抗馬に『GotG Vol.2』のベイビーグルートなどおりました

☆昆虫その他の無脊椎動物部門 『KUBO』よりクワガタ
人間のようでもありましたが昆虫とみなします。他候補に『ナイスガイズ!』の殺人バチ、『GotG Vol.2』のマンティス、『GODZILLA 怪獣惑星』のクモンガ、カマキラス、『無限の住人』の虫など

Ngh2☆魚類および海生哺乳類部門 『人魚姫』より人魚娘
『夜明けを告げるルーのうた』のルー、アクアマンなど純粋な魚より半魚人系の活躍が目立ちました

☆両生類・爬虫類部門 『ミルキー・オン・ザ・ロード』よりミルクをなめてた大蛇
これまたこれくらいしか思いつかなかった… 今年は変温動物系のみなさん、がんばってください

☆鳥類部門 『スターウォーズ 最後のジェダイ』よりポーグ
『モアナと伝説の海』のニワトリっぽいのと迷いましたが、どっちがよりうまそうか、ということで決めました。

2017best1☆犬猫小動物部門 『ボブという名の猫』よりボブ
ご本猫が演じてらっしゃるというところが画期的だったので。他候補に『ぼくのワンダフルライフ』のベイリー、『レゴニンジャゴー・ザ・ムービー』の猫、『SING』のネズミ、『ジョン・ウィック2』のワンコなど。

☆草食・牧畜系部門 『SING』のムーンさん
洗車シーンに泣いたので。他にも『SING』ではブタさん、ゾウさんが候補でした。あと『バーフバリ』の象さん、『キングアーサー』の象さん… 象さん多いな!

☆肉食・野獣系部門 『美女と野獣』より野獣
どっちかというとモンスターですが名前が野獣なので。他候補に『マイティ・ソーBR』のフェンリルがいました

Lng11☆類人猿部門『猿の惑星 聖戦記』よりシーザー
やはり『猿聖』の赤ゴリラ、『KUBO』 の猿、『キングコング』のコングさんなど今回はなかなかの粒ぞろいでした

☆恐竜・絶滅した動物部門 『パワーレンジャー』よりメガゾードのみなさん
もうひとつの候補の『トランスフォーマー』のダイナボットもメカ混じりで、純粋な動物でないのが苦しいところです

☆妖精・伝説の生き物部門 『レゴニンジャゴー・ザ・ムービー』のドラゴンビーグル
ひいきで。他に『モアナ』の海賊、『トランス―フォーマーLK』の竜ロボット

Mmy1☆怪獣部門 『キングコング 髑髏島の巨神』よりキングコングさん
他にもスカルクロウラー、ゴジラ・アース、『シンクロナイズドモンスター』の怪獣、『グレートウォール』の饕餮など昨年は怪獣の皆さんの頑張りが目立ちました

☆人でなし部門 『新感染』の重役
これくらいの人でなしもちょっと珍しい。他候補には『ゲットアウト』の人たち、『マグニフィセント・セブン』のサースガードの人、『バーフバリ』のバラーラデーヴァ、『ベイビードライバー』のジェイミー・フォックスのひと、『コクソン』の國村 隼さんなど。てめえら人間じゃねえ!

☆ゾンビ・吸血鬼・妖怪部門 『ザ・マミー』よりソフィア・ブテラちゃんのミイラ 『IT』のペニーワイズ
甲乙つけがたかったのでW受賞で。他に『スイス・アーミーマン』の死体、『KUBO』のがしゃどくろ

2017best7☆神様部門 『ワンダーウーマン』よりダイアナ
☆悪魔部門 『ドクター・ストレンジ』よりドルマムウ
この辺はアメコミ映画系にいっぱいおりました

☆ロボット部門 『ブレードランナー2049』のKくん
あまりに不憫だったので… 他候補に『SW 最後のジェダイ』のBB-8、『パッセンジャー』のバーテン、『エイリアン コヴェナント』のデイビッド、『トランスフォーマーLK』のコグマン、『怪盗グルーのミニオン大脱走』の悪者の手下ロボット、などいっぱいおりました

☆宇宙人部門 『メッセージ』よりヘプタポッド
いい書を見せていただきました。他に『エイリアン』のエイリアン、『GOtG Vol.2』のヨンドゥ

☆正体不明部門 『カーズ クロスロード』よりマックイーン
お疲れ様でした。他候補に『美女と野獣』の家具・調度品、ミニオン、『ジョジョ』のスタンド、『ドクターストレンジ』のマントなど

そして栄えある大賞作品はSwgw2


『猿の惑星 聖戦記』

で。さして猿が好きでもないわたしをすっかり猿化させてしまったその剛腕ぶりを評価して。ウキー!ウッキッキ! ウッホキャッキャッ

もう二ヶ月過ぎちゃいましたが、今年もたくさんのいい人間以外と映画の中で会えますように

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