化け猫とボーズの推理 夢枕獏 チェン・カイコー 『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』
夢枕獏の伝記小説を『覇王別姫』などで知られる中国の名匠、チェン・カイコーが映画化。『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』、ご紹介いたします。
西暦8世紀。唐に渡った日本の僧・空海は皇帝の病を治すため宮廷に呼ばれるが、彼が着くとほぼ同時に皇帝は息を引き取る。そこで空海は怪しげな猫の気配を感じ取るのであった。折しも都では黒猫がある役人に祟るという事件が起きていた。空海は知り合いの詩人・白楽天と呪いの元凶を調査し始める。
ちなみに中国の題は『妖猫伝』。このタイトルで原作が夢枕先生ですから、まともな空海の伝記映画ではないことは想像がつきます。そういえば先生の代表作に『陰陽師』というのがありましたが、あれと少々雰囲気が似ております。陰陽師安倍晴明の代わりに沙門空海が、平安京ではなく唐の長安でお化けに立ち向かうという。ただ晴明は妖怪を調伏したり国難を解決したりしてしましたが、空海は基本的に話を聞いて回るだけ。その間に犠牲者もどんどん出るのですが、特に悼む風でもなく。一通り聞き込みが終わると一応事件の謎は明らかになるものの、特に誰が救われたわけでもないのですよね。強いて言えば主役コンビがちょっと成長したくらいのものです。
それでも世界史の教科書で学んだ唐のスターたち…玄宗皇帝、楊貴妃、李白などが次から次へと出てくるのは観ていてワクワクしますし、CGとセットで再現された当時世界随一の都・長安の風景には心が躍ります。皇帝が金にあかせて催した豪勢な祭り・宴の様子がまた華やかでありました。
いろいろ腑に落ちないところもありましたが概ね満足できたのはそういったところと、あとなんといっても猫映画だったおかげ。オヤジ声でしゃべり恐ろしい妖術を駆使するくせにこの化け猫、やっぱりかわいいんですよ。外見は普通の黒猫なので。そんでどうも話が進むにつれ、この作品ポーの『黒猫』を意識してることが明らかになってきます。なんで近代英国のお話を八世紀の中国に置き換えたのかはよくわかりませんが、猫がかわいかったのでよしといたします。
そういえば夢枕作品には『猫ひきのオルオラネ』なんていうファンタジーもありましたし、『闇狩り師』シリーズには「シャモン」という名の猫も登場してました。どうも先生、猫にはなみなみならぬこだわりがあるようです。
『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』は現在そこそこヒットという感じで公開されております。ただ製作費に約150億くらいかかってるようなので果たして回収できるのか… 本国で売れてれば問題ないのでしょうけど。あといま映画館では『ドラえもん』『ブラックパンサー』も公開されてますのでニャンコ好きのみなさんは猫映画トリプルはしごに挑戦されてくださいニャー
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Comments
これが日本の監督だったら、とりあえず、皆川おさむを出して「黒猫のタンゴ」は歌わせたのではないか、と。もしくは、最終的に楊貴妃の生まれ変わりの女の子に拾われてお届け物屋さんを始めるか。
Posted by: ふじき78 | April 09, 2018 11:59 PM
>ふじき78さん
皆川おさむとは年齢を感じさせるコメントだなあ。自分は黒猫というと二年くらい前の『猫なんて呼んでもこない』が印象に残っております
Posted by: SGA屋伍一 | April 11, 2018 09:33 PM