ミッション・サムギョプサル パク・クァンヒョン 『操作された都市』
私のベスト韓国映画は2006年の『トンマッコルへようこそ』なんですが、その監督の新作がなじみの小田原で上映してると聞いて二週ほど前に行ってまいりました。『操作された都市』、ご紹介します。
元テコンドー選手のクォンは不祥事で競技から離れて以来、仕事にもつかずネットゲームに没頭する日々を送っていた。ある日彼は知らない女から「忘れ物の携帯を届けてくれたら多額の謝礼を払う」という申し出を受け、言われたとおりにする。だがその翌朝クォンは届けた先で起きた殺人事件の容疑者として逮捕される。いったい誰が彼を罠にはめたのか。そして全てが圧倒的不利な状況の中、濡れ衣を晴らすことはできるのか…
韓国映画の主流はドロドログチャグチャした人間の情念とバイオレンスにあると思っております。この映画にも多少そういう要素はあります。序盤の刑務所でのくだりなどが特にそうで、クォンが追いつめられて×××を×られたり、反撃に転じるあたりは漫画の『軍鶏』を思いだすほどにドス黒いです。
しかし脱獄に成功してからは一転、スリルと娯楽性を重視した一大アクション活劇へとシフトしていきます。この辺は『逃亡者』とも似てるのですが、そちらとの違いは主人公に意外なところから助けとなってくれる面々が現れること。そして多分に「現代性」をまぶした作りになっております。ここでいう現代性とはネットやハッキングや監視カメラ、遠隔操作にドローンなどです。大都市を舞台にしてクォンたちと謎の黒幕たちとの間で壮大なサイバーバトルが繰り広げられるわけです。またオンラインだけでなく実際のカーチェイスや格闘戦なども並行して行われます。
そんな感じで約二時間ジェットコースターのように追ったり追われたり、出し抜いたり出し抜かれたりが続くので、ずっと歯を食いしばって観ておりました。とても顎が疲れました。
主人公であるクォンは最初自堕落な感じで登場するのであまりイメージがよくありません。しかしオンラインでもオフラインでも仲間がピンチになった時にはわが身を投げ出して助けに向かいます。そういう性格がわかってくると俄然好感度が上がっていきますし、応援したくなります。あとこの映画で特にお国柄を感じるのはアクション巨編であっても、「お母さんの愛」が強調されているところですね。世間がみんな息子を凶悪犯だと思い込んでも、お母さんだけは懸命に息子の潔白を信じ続けます。本当にオモニってありがたいものですね… 韓国映画にはおっかないオモニもちらほらいらっしゃいますけど。
冒頭でクォンは自分たちを「腐った木」に例えます。そんな落ちこぼれた者たちが弱者を踏みつける権力者を一歩一歩追いつめていく。ちょっと無理があるところも幾つかありますが、勢いとカタルシスで細かいアラは吹っ飛ばしていくような映画です。
『トンマッコルへようこそ』とはだいぶ毛色の違った作品でしたが、これはこれで楽しませていただきました。ハリウッド映画と比べても遜色ない一級のエンターテインメントだと思います。
ただ残念なことにこの作品、公開館がとても少なかったりします。現在上映中・上映予定のところが日本全国で9館しかありません。ご興味おありの方は公式サイトを見て近くにあるかチェックしてみてください。
Comments
そうそうこれ面白いんだよねってコメント初じゃん。
弁護士さんが木下ほうかに似てると思います。
Posted by: ふじき78 | March 13, 2018 11:05 PM
>ふじき78さん
初コメありがとうございます。ほうかさんといえばハイローで「裏の始末屋チーム」の組長を演じていたのが印象に残ってます。こちらとちょっと近いような
Posted by: SGA屋伍一 | March 14, 2018 09:40 PM