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February 28, 2018

男女七人唐津物語 檀一雄・大林宣彦 『花筐/ HANAGATAMI』

E8a281cd1bb6dada『この空の花』『野のなななのか』に続く大林宣彦監督の「戦争三部作」完結編。本日は先の第91回キネマ旬報邦画部門にて第二位に輝いた『花筐/ HANAGATAMI』をご紹介します。

アムステルダムから故国の佐賀県唐津市に戻ってきた青年・榊原俊彦は、級友の鵜飼や吉良、可憐で病弱な従妹の美那と青春を謳歌する。時に危うい空気をはらみながらも交流を楽しんでいた彼らだったが、美那の病は重さを増していき、唐津の街にも戦争の気配が濃くなっていく。

原作は『火宅の人』などで知られる檀一雄の短編小説。おそらくかなりのアレンジがなされてるかと思われます。それにインスピレーションを受けた大林監督はデビュー前に脚本を書いたそうですが、日の目をみることなく長い間しまわれておりました。しかしこの度40年の時を経て「奇蹟の」映画化が実現することとあいなりました。

若き日の秀作をもとにしてはいても、氏の出世作『時をかける少女』や『転校生』のような能天気さはなりを潜めております。柔らかいながらも死の気配が満ちているあたりは、やはり近年の二作と共通しております。
「戦争間近の時代の若者たちのロマンス」「不治の病で余命いくばくもないヒロイン』というところは宮崎駿監督の『風立ちぬ』を思わせます。ただ『花筐』はさすがは大林というべきか、例によって宮崎アニメにはないようなぶっとんだ演出が炸裂しておりました。
しきりに繰り返される流血のイメージや、「お飛び! お飛び!」というセリフ。やたらにでかい月や太陽。畑の中にどんどん増えていく兵隊さんの案山子。そして街を行進する「唐津おくんち」の巨大な鯛…などなど。
キャスト陣でとりわけ目を惹いたのはどう見ても高校生には見えない吉良君。長塚京三に似てるなあ…と思ったら息子さんの圭史さんでした(42歳)。無理があるだろ~って気もしますがそれくらいの年でないとあの濃厚な厭世感は出せないかも。
そしてもう一人際立っていたのはヒロイン美那を演じる矢作穂香さん。観た後で調べてみたら『仮面ライダーオ―ズ』で怪人メズール役を演じていた子でした。あのころも浮世離れした空気をまとっておりましたが、今回はさらに現実を越えたような輝きを放っておりました。元々少女を美しく撮ることにかけては定評のある大林監督。少し前ある番組で「映画を撮るということはヒロインに惚れること。僕が『野のなななのか』で常盤ちゃんにどれだけ惚れたか」と語っておられましたが、本作品でもきっと矢作さんにメロメロのデレデレだったのでしょうね。ちなみにこの映画前作に続き常盤貴子さんも出演されています。

正直今回は作品の中で言われるほど「戦争はいかんなあ。悲惨だなあ」というメッセージは伝わってきませんでした。それよりも強く感じたのは若い日々の儚さとか、二度と取り戻せない青春を懐かしみ、惜しむ思いなどでしょうか。大林監督は余命一年という宣告を受けた状況でこの映画を作っていたので、特に「黄金時代」への熱い思いがみなぎっていたような。幸い「余命」は撤回されていまではお元気になられたとのこと。なによりでございます。

前二作と比べると「現代」のパートがほぼないせいかパスカルズの音楽が流れなかったのがちとさみしゅうございました。わたしとしてはこの三部作の中では、やはり二作目の『野のななのか』が最も性にあいました。この『花筐』ももちろん強烈な忘れがたい映画ではありますが。

Photo『花筐/ HANAGATAMI』は概ね公開が終わってしまいましたが、まだちょぼちょぼ予定が残っているところもあります。詳しくは公式サイトをご覧ください。名物映画館のポレポレ東中野では3/17より三部作の一挙上映も行われるとのこと。かなり体力が入りそうですが幻惑の大林ワールドにどっぷりと浸りたい方はどうぞ。


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February 20, 2018

カンバンはしまわない マーティン・マクドナー 『スリー・ビルボード』

Tbd1いよいよ再来週にせまった第90回アカデミー賞。本日は『シェイプ・オブ・ウォーター』と並んで作品賞の最有力候補である『スリー・ビルボード』をご紹介します。

ミズーリ州エビングで若い娘が強姦されたのち焼き殺されるという凄惨な事件が起きる。だが半年たった後も警察はいまだ犯人を捕まえられずにいた。業を煮やした被害者の母ミルドレッドは、家の近くの大きな三枚の看板に強烈なメッセージをでかでかと掲示する。
「娘はレイプされて焼き殺された」「未だに犯人が捕まらない」「どうして、ウィロビー署長?」
警察署長ウィロビーは温厚で街の人々から慕われていたため、ミルドレッドの行動は多くの反感を買う。露骨にいやがらせをする者も現れるが、それでも彼女は態度を変えない。

最初あらすじを読んだ時すごく痛々しい話だなあ…と思って話題作であるにも関わらずスルーするつもりでおりました。ところが予告編を目にしたら主演のフランシス・マクド-マンドがファックファック連発しててとてもユーモラスな印象を受けたのですよ。思ったほどきつい映画ではないかも?と考え直して鑑賞することにしました。まあやはり発端となる事件はとても残酷なものですが、全体的にショッキングな映像はほんの少ししかありません。そして観終わったあとには妙に心地よくなる不思議な作品でありました。

出だしはどことなく西部劇を思い出させます。。犯罪がまかり通る地方都市で、理不尽な暴力により家族を奪われた主人公。正義の執行人たる警察はあてにならず、彼(女)はついに自ら行動を起こす…という具合に。
しかし家族を奪った悪漢はどこの誰なのかさっぱりわからず、警察もそれなりに一生懸命やっていたりする。そんな感じで娯楽活劇ならこう進むであろう…という展開のことごとく逆をついてくるのですが、それがかえって痛快でした。むしろあっさり犯人が現れたら興ざめしてしまったのではないかと思います。

序盤で登場人物たちがビリヤードに興じている場面があります。狙ったわけではくタマタマなんでしょうけど、キャラクターたちの関係がちょうどビリヤードの球に似ている気がしました。殺人犯はキューを握るプレーヤーです。彼に後ろから突かれたミルドレッドは怒りにまかせ別の球にぶつかり、その球はさらに別の球にぶつかり…という具合にひとつの怒りが様々な方向に伝播されていきます。
その中にあってやや異質なボールがウィロビー署長。他の球が木製な中、彼だけがまるでスポンジで出来ているかのようです。すごい勢いで突進してくる球をやんわり受け止め、上手に勢いを殺していく、そんな存在です。

以下結末までネタバレで。
Tbd2
そんなボールたちの予想せぬ動きが面白くはあるのですが、それでもやっぱり多少のモヤモヤ感も残ります。各々の激情は幾分おさまったのでしょうけど、結局残忍な犯罪者に公平な裁きはくだされないわけですから。きっと世の中往々にしてこういうことはあるのでしょう。怒りをぶつけるべき相手が上手く逃げおおせた場合、振り上げた拳はどこにもっていけばいいのか。作り手からそんな宿題を提出された気がします。怒りは時として大きなエネルギーになります。この映画でも「怒り」が多少よい結果を生んだと言えなくもありません。反面あちこちに被害をもたらしてもいます。そんな風に怒りは悪いものもいいものも焼き尽くしてしまう大火によく似ておりますね。

中心となる三人を演じるフランシス・マクド-マンド、ウッディ・ハレルソン、サム・ロックウェルはそれぞれがベストアクトだったのでは…と思えるほどの存在感を放っておりました。特にコワモテの役が多かったハレルソン氏は、イメージを一新するような懐も思慮も深いキャラを演じております。余談ですけど彼のお父さんはマフィアの殺し屋で何回目かのお仕事の時逮捕され、服役中に亡くなったとのこと。ウッディさん自身も警察やパパラッチを殴って何度か逮捕されているようです。この映画の撮影中、いったいどんなことを考えながら演技していたのでしょうか。

Tbd3『スリー・ビルボード』は現在全国の映画館で上映中…ですが、せっかくアカデミー賞の前に公開してくれたのにあんまりお客さん入ってないみたいです。観た人それぞれに何かしら残していく映画だと思うので、ちらとでも気の向いた方はぜひごらんください。


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February 19, 2018

放蕩と朗読とホドロフスキー アレハンドロ・ホドロフスキー 『エンドレス・ポエトリー』

Ept1前々作と前作の間には約20年もの歳月を必要としましたが、今回は4年で新作を完成させた鬼才アレハンドロ・ホドロフスキー。やればできんじゃん! そんな彼の自伝的作品第二弾『エンドレス・ポエトリー』ご紹介します。

生まれ育った町トコピージャからチリの大都市サンチャゴに越してきたホドロフスキー一家。詩作に熱中するアレハンドロは、事業を継がせようとする父親と対立。家を出て芸術家たちのシェアハウスに落ち着く。やがて経験する恋人や親友との出会い、裏切り、別れ… 若き詩人は魂の赴くままに青春を謳歌する。

なんてさわやかでキラキラとしたあらすじなんだ… のちに変態的かつ難解な映画で名を知られるホドさんにも、ごく普通の夢を追う若者だった時代があったということですね。彼らしいアングラなビジュアルもチラチラとはありましたが。
まず驚いたのは前作『リアリティのダンス』とかなり直結した内容だったこと。本作品は『リアリティ~』のラストシーンから始まってますし、キャストも続投してます。タイトルを同じにして「PART1」「PART2」としても全く違和感ございません。『リアリティ~』を「少年時代編」とするならば、今回は「青年時代編」であります。
ただ前作が後半「お父さんが独裁者を暗殺しに行く」という明らかにフィクションなストーリーだったのに対し、今回は最初から最後まで現実にありそうなお話でした。おそらくホドさんのキャリアの中でも最もまっとうで落ち着いた映画かと思われます。

意外だったのは彼が最初から映像作家を目指していたわけではなく、詩人になりたかったというところ。わたしはこの二作の他には『エル・トポ』くらいしか観てないのですが、確かにあれはシュールな叙事詩か民謡のようなところがありました。どこまで意味がこめられているのか、意味などないのか、わかるようでわからない。そんな後の作品に通じるような荒々しいポエムが全編を彩ります。
ただ詩を朗読するだけでなく、「芸術は行動だ」と主張して突発的に無謀な冒険を始めたり、珍妙な作品をこしらえたりするアレハンドロと仲間たち。これよりだいぶスケールは劣りますが、かつて似たような中二的思考をこじらせた身としては若気の至りをいろいろ思い出して顔から火が出るようでした。ただホドさんがすごいのは単なる中二だけに終わらず、のちにちゃんと世界のアーティストたちに影響を与える存在になったことですね。こういうこともごくごくまれにありますから中二魂もなかなか侮れません。

あと作品の中でホドさんは若き日の自分のことを「美しい」と言わせたりしてなかなかずうずうしい、と思いましたが、こないだツイッターで流れてきた画像(記事頭参照)を見ると本当に美青年だったようです。天は二物を与えずとはあてにならない言葉であります。

この映画にはもうひとつ際立った特色があります。それはチンコがはっきり映るシーンがけっこうあること。ホドさんの映画といえばチンコが出るのは当たり前なのですが、これまでで最長の露出度だったのではないかと。しかもこれがぼかしなしにかなりはっきりと出ます。「芸術作品」ということで上手に映倫を説得したのでしょうか。わたしもそういえばあまり他人様のブツをまじまじと見ることはないので、ある意味貴重な映像体験でした。

変態とかチンコとかいろいろ書いてしまいましたが、ホドさんらしからぬ優しくしんみりするエピソードも幾つかありました。特にエズメとアレハンドロの別れのシーン(両方とも息子さんたちがやってる)は、ホドさんの厳父への複雑な愛情がじんわり伝わってきて感慨深いものがありました。その後の映画作家へと転向するお話も観たいですし、自伝を離れてコミックのようなSF作品も作ってほしい。年齢的にいろいろ厳しいかとは思いますが、まだまだ長生きしてヘンテコな映画・コミックをなるたけ世に送り出してほしいものです。

Ept2『エンドレス・ポエトリー』は昨年11月から公開されてますが、まだ粘り腰のように全国各地で続映されてたり予定されてたりします。中には過去作品も一緒に特集上映があるところも。詳しくは公式サイトをご覧ください。


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February 18, 2018

リロード・オブ・ザ・キング スティーブン・キング ニコライ・アーセル 『ダーク・タワー』

Dt1_2昨年秋の『IT』のHITが記憶に新しいスティーブン・キング作品。間を置かずしてやはり代表作と言えるこちらも映画化となりました。『ダークタワー』、ご紹介します。

ジェイク少年は日ごとに黒衣の男と暗黒の塔の恐ろしい夢を見ていた。その塔が崩壊した時、世界も滅びを迎える。そしてその消滅に自分も関わっているという夢… 黒衣の男の手下が現実に現れた時、悪夢は将来の予言であることが明らかとなった。ジェイクは黒衣の男を倒すことのできる戦士「ガンスリンガー」を探して決死の旅に出る。

原作は全7部からなる大長編。だいぶむかし1部だけ読んだことがありましたが、よくわかりませんでした。今回「映画は原作を全部読んでないと楽しめない」みたいな噂を聞いてぞっとしたのですが、普通に面白かったのでよかったです。ただ多少頭を柔らかくする必要はあります。「なんで塔が倒れたら世界が滅びるの?」とか「なんでジェイク君だけにそんな強大なパワーがあるの?」とか考えたら負けです。昔話とか神話とかには突飛な設定がよくありますが、そういうもんだと思ってください。そこに理由はないのです。

キング作品はわたしたちの身近な現実社会をベースにホラー的超自然要素が混ざり込むものが多いです。だいたい現実7:非現実3くらいの割合でしょうか。しかし『ダークタワー』はこの辺が完全に逆転しており、キングの中では珍しいかなりファンタジー寄りの作品になっています。それでいてキングの他作品…『シャ○ニング』とか『○T』の「ペ○ーワイズ」などと関連した要素がチラホラ出てくるあたりがファンとしては嬉しかったりします。
あと『I○』とはかなりかけはなれたようなストーリーのようでいて、共通するところも幾つかあります。どこにでもいるような少年が正体不明の怪物(一応人間体)に立ち向かわねばならないストーリーとか。そして親があんまりあてにならないところとか。『イ○ト』と違うのはジェイクには力強い守り手である「ガンスリンガー」がついている点です。このガンスリンガーもどこで生まれてどうしてそうなったのか色々わからないところがあるんですが、考えたら(略)。まあいわゆる「正義の味方」なんですよ! 多少情緒不安定なのがご愛嬌ではありますが。
ガンスリンガーと言うだけあって武器はリボルバー式の拳銃であります。しかし彼は肉眼にたよらず、あさっての方を向いて「心の目」で的にあてることができます。この無茶なガンアクションがとてもかっこいい。あとその際となえる誓いの文句がまたかっこいい。「われは手で撃たず。心で撃つ。手で撃つ者、父の顔を忘却せり」だったかな?(うろおぼえ) 別にお父さんの顔を忘れても戦闘には支障ない気もしますが、そういう野暮なことを言ってはいけません。
少年とおっさんがバディを組んで励ましあうところも自分の好みでありました。また現代社会の子供が異世界で大冒険を繰り広げるあたりは『劇場版ドラえもん』にも少し似ております。

Dt2Dt3そんな『ダークタワー』ですが、やっぱり世界観がぶっ飛び過ぎてるせいか、日本でも本国でも売り上げは『IT』と好対照をなす形になってしまいました。おそらく続編はないでしょう。たぶんあと一週くらいで公開も終わりかと思いますが、もしあなたの胸にまだ中二魂が息づいてるなら頑張って観に行ってください。

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February 12, 2018

ミッション・サムギョプサル パク・クァンヒョン 『操作された都市』

Ssts私のベスト韓国映画は2006年の『トンマッコルへようこそ』なんですが、その監督の新作がなじみの小田原で上映してると聞いて二週ほど前に行ってまいりました。『操作された都市』、ご紹介します。

元テコンドー選手のクォンは不祥事で競技から離れて以来、仕事にもつかずネットゲームに没頭する日々を送っていた。ある日彼は知らない女から「忘れ物の携帯を届けてくれたら多額の謝礼を払う」という申し出を受け、言われたとおりにする。だがその翌朝クォンは届けた先で起きた殺人事件の容疑者として逮捕される。いったい誰が彼を罠にはめたのか。そして全てが圧倒的不利な状況の中、濡れ衣を晴らすことはできるのか…

韓国映画の主流はドロドログチャグチャした人間の情念とバイオレンスにあると思っております。この映画にも多少そういう要素はあります。序盤の刑務所でのくだりなどが特にそうで、クォンが追いつめられて×××を×られたり、反撃に転じるあたりは漫画の『軍鶏』を思いだすほどにドス黒いです。
しかし脱獄に成功してからは一転、スリルと娯楽性を重視した一大アクション活劇へとシフトしていきます。この辺は『逃亡者』とも似てるのですが、そちらとの違いは主人公に意外なところから助けとなってくれる面々が現れること。そして多分に「現代性」をまぶした作りになっております。ここでいう現代性とはネットやハッキングや監視カメラ、遠隔操作にドローンなどです。大都市を舞台にしてクォンたちと謎の黒幕たちとの間で壮大なサイバーバトルが繰り広げられるわけです。またオンラインだけでなく実際のカーチェイスや格闘戦なども並行して行われます。
そんな感じで約二時間ジェットコースターのように追ったり追われたり、出し抜いたり出し抜かれたりが続くので、ずっと歯を食いしばって観ておりました。とても顎が疲れました。

主人公であるクォンは最初自堕落な感じで登場するのであまりイメージがよくありません。しかしオンラインでもオフラインでも仲間がピンチになった時にはわが身を投げ出して助けに向かいます。そういう性格がわかってくると俄然好感度が上がっていきますし、応援したくなります。あとこの映画で特にお国柄を感じるのはアクション巨編であっても、「お母さんの愛」が強調されているところですね。世間がみんな息子を凶悪犯だと思い込んでも、お母さんだけは懸命に息子の潔白を信じ続けます。本当にオモニってありがたいものですね… 韓国映画にはおっかないオモニもちらほらいらっしゃいますけど。 

冒頭でクォンは自分たちを「腐った木」に例えます。そんな落ちこぼれた者たちが弱者を踏みつける権力者を一歩一歩追いつめていく。ちょっと無理があるところも幾つかありますが、勢いとカタルシスで細かいアラは吹っ飛ばしていくような映画です。

Ssts1『トンマッコルへようこそ』とはだいぶ毛色の違った作品でしたが、これはこれで楽しませていただきました。ハリウッド映画と比べても遜色ない一級のエンターテインメントだと思います。
ただ残念なことにこの作品、公開館がとても少なかったりします。現在上映中・上映予定のところが日本全国で9館しかありません。ご興味おありの方は公式サイトを見て近くにあるかチェックしてみてください。

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February 07, 2018

こぐまの刑期と予算 マイケル・ボンド ポール・キング 『パディントン2』

Pdt1作目の感想で「また何年後かにはパディントンに再会できることでしょう」と書きましたが、二年で帰ってきやがりました。
南米からやってきた小熊さんの冒険と生活を描く第二作『パディントン2』、ご紹介します。

ロンドンにもブラウン家にもすっかりなじんだ熊のパディントン。故国のおばさんの誕生日が近づいたある日、パディントンは英国に来ることを望みながら果たせないでいる彼女に、ロンドンの情景を見事に表わした「飛び出す絵本」を贈ることを思いつく。けっこうなお値段のその本を買うために、必死にバイトするパディントン。だがその本にはお宝のありかがこっそり記されていたため、秘密を知る落ち目の役者ブキャナンに盗まれてしまう。その現場を目撃したパディントンはブキャナンの罠にはまり盗難の濡れ衣をきせられ、哀れ刑務所に入ることに…

今回はしょうもない小理屈をこねるのはやめ、完全ネタバレでどこが気持ちよかったかネチネチとつづっていくことにします。

まず冒頭でただ乗りをしながら街の人々に親切をわけていくパディントン。この一連のシークエンスが楽しくよく考えられていて、さらにほっこりさせてくれます。
次いで「飛び出す絵本」を眺めているあたり。紙で出来た人や景色の中をパディントンとおばさんが散策するシーンは昔作られたコマ撮りアニメ版へのオマージュかと思われます。

お話は進み、無実の罪で裁判にかけられる熊八くん。ここで感動したのはあからさまに怪しい状況でありながらごくずかの例外を除き、みんなパディントンの潔白を確信しているところですね。特に被害者の古物商のおじさんが「彼が犯人なんてそんなことあるわけない」と断言するところで、恥ずかしながらガチ泣きいたしました。
その証言もむなしく収監されるプー太郎。ただ彼には悪いけど刑務所の映画というのはもともとハズレが少ないもの。そのうえパディントンが主人公なのですから、コンセプトが決まった時点でこの映画は名作になることが確定したようなものです。
彼がすごす刑務所のなんとゆるやかで楽しそうなこと。こんな刑務所だったら正直わたしも入りたい。まあここだって最初からそんなにパラダイスだったわけではなく、パディントンが努力したからこそそうなったわけですが。

しかし不幸な擦れ違いから脱獄を決意するこぐまのケーキ屋さん。そこから怒涛のクライマックスに流れ込んでいきます。ここで冒頭何気なく出てきた設定やエピソードがビンビン生きてくることに感心します。
パディントンの掃除用具や、犬に餌付けしてたこと、収集車の兄ちゃんに親切にしてたこと、ブラウン家の長男君の趣味が鉄道であること、ブラウンさんがヨガに打ち込んでること、昔的当て名人だったこと、奥さんが遠泳の練習に励んでいること… すべて逆算で作っていったにしても見事すぎる伏線の回収っぷりです。

あと刑務所仲間で途中裏切ったナックルズが「絶対最後に助けにくる」ことはあからさまにわかってるのですが、それでも真剣にハラハラしますし、わかっていてもバカ泣きさせられます。演じるは最近息子さんがよく災難にあってるブレンダン・グリーソン氏。本当に似てない親子というとか、お父さんは頼もしかお人ですね。

そしてまたしても親切が親切で報われるエピローグ。「ああッ モフモフがモフモフをモフモフしてるなんて… 俺もモフモフしたいッ…!!」と完全に理性と涙腺が決壊いたしました。

そうそう、忘れちゃいけないエンドロール後。今回の裏の主役たるヒュー・グラントさんが見事なダンスを見せてくれます。1作目も大好きですけど、ちょっと悪役のニコール・キッドマンが生い立ちのこともあって気の毒だったんですよね。でも「2」では悪役にもちゃんと救済を与えていて心地よかったです。おヒューさんはラブコメが主な活躍畑の方だったので、わたくしあんまり出演作を観てないのですが、いやあ、本当にいい年の取り方をしていると思いました。

Pdt2やっぱり日本ではそこそこの収益の『パディントン2』ですけど、世界的にはぶっちぎりの売上と評価を誇り、当然ながら「3」が決定いたしました。次もまた2,3年後でしょうか。そのころにはまた弟君の背がぐんぐん伸びてそう…
ブラウン夫人役のサリー・ホーキンスがまたまた変な生き物と絡む『シェイプ・オブ・ウォーター』ももうじき公開で、こちらも期待大です。


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February 05, 2018

鉄の城、再浮上 永井豪 志水淳児 『マジンガ―Z INFINITY』

Mgz1永井豪先生の画業50周年ということでいろいろ盛り上がっておりますが、これもそのうちの1本。スーパーロボットの代名詞がスクリーンによみがえった『マジンガ―Z INFINITY』、ご紹介します。

Wマジンガ―がミケーネ帝国を退けてから十年。光子力研究所のある富士のふもとでいまだかつてないほどの巨大なロボットが発掘される。それと呼応するように復活する悪の天才科学者Dr.ヘル。彼の率いる機械獣軍団を迎え撃つため、かつての英雄・兜甲児は再び戦場に復帰する。

マジンガ―Zといえば鉄人28号、ガンダム、エヴァンゲリオンと並ぶロボットアニメのトップスター。そういうのに疎い人でも名前くらいは聞いたことがあるはず。放映当時の人気はすさまじく、以後しばらく同種の作品が雨後の竹の子のように量産されました。
わたしは残念ながらリアルタイムで観た記憶があるのがこの続々編の『UFOロボ グレンダイザ―』からなのですが、繰り返し放映されてた映画『マジンガ―Z対デビルマン』『マジンガ―Z対暗黒大将軍』などで親しんでおりました。

その後アニメ、漫画などで何度かリメイクされたりしてましたが、今回はTVアニメ第二作『グレートマジンガ―』からの直結の続編という形を取っております。先に述べた海外でも人気の高い『グレンダイザ―』は存在を抹消された形になってしまいましたが、あれも含めると話が大宇宙にまで広がってしまい、収めきれなくなってしまうのでやむなき処置だったのでしょう。

かつての『マジンガ―Z』は大変わかりやすく子供たちの快感を充足させるためにのみ作られたアニメでした。すなわちヒーローであるマジンガ―はとても強く、どこまでも正しく、人々はマジンガ―を両手をあげて応援します。一話一話のストーリーも単純明快なものでした。
しかし今回のマジンガ―は、やはりガンダム、エヴァ以降の言ってみれば面倒くさいテイストが色々含まれています。ややこしい専門用語や科学的考証、人間は果たして守るべき価値があるのか…という倫理的なテーマなどなど。まあそれはそれで楽しませていただきました。
あといい年になった兜甲児が長年の恋人である弓さやかと、いまひとつ結婚に踏み切れてないという、『レゴバットマン』でもあったような問題に直面したりしてます。まるでスタッフから「君たちもいい加減アニメにうつつを抜かしてないでちゃんとした家庭を持ちなさい」と諭されているかのようでした。まあかつてマジンガ―に熱狂した子供たちのほとんどはもうちゃんとそうなってると思うのですが、一人でロボアニメを身に来てるような大人はやはり… いや、この話はやめましょう(笑)

そういったテーマもありますが、ロボアニメとしては一番大事な豪快なアクションにも大変力がこめられていました。すべての戦力が失われたかに思えた時、満を持して登場するあたりや、たった一機で無数の敵を吹っ飛ばすカタルシス、ズタズタのボロボロになりながらもそれでもなお立ち上がるマジンガ―、そしてクライマックスにおけるまさかの隠し技とおなじみの必殺技… こういうものを見せられてはやはり童心に帰るしかありません。しごいんだ! 大きいんだ!! ぼくらのロボットマンだ!!!

バトルだけでなく新海誠ばりにキラキラした背景や、ボスの作るラーメンの作画にも無駄に精緻に描かれてたりして。そうそう、懐かしい面々にたくさん再会できましたが、一番いい年の重ね方をしていたのはこの「ボス」だったように思います。

091009_132119『マジンガ―Z INFINITY』はそのあまりのターゲットを絞った作風に広く一般には勧めづらいですが、もしあなたがロボアニメが好きなら、心の中に小学生男児が住んでるなら、迷わず観に行ってください。
あと現在ネットフリックスにてやはり永井先生の名作の現代版『デビルマンcrybaby』が配信中。まるで『マジンガ―Z INFINTY』の合わせ鏡のようなストーリーになってますのでこちらもぜひ興味ある方はご覧ください、


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