カレーの国の王様・完結編 S.S.ラージャマウリ 『バーフバリ 王の凱旋』
インドで歴代興行収入第1位の記録を作った『バーフバリ 伝説誕生』。その記録を塗り替えたのはやはり『バーフバリ』でした。衝撃の結末のあとを継ぐ『バーフバリ 王の凱旋』、ご紹介します。前作の記事はコチラ。
数奇な運命に引き寄せられ暴君に立ち向かうことになった男・シブドゥは、戦いの最中己が伝説の王アマレンドラ・バーフバリの息子…マヘンドラ・バーフバリであることを知る。父の遺臣であるカッタッパは、マヘンドラに先代の物語を教える。その数々の偉業、なぜ無敵の彼が死を遂げたのか、そして彼を殺めたのは誰だったのか… 話を聞くうちにマヘンドラの胸の炎は一層熱く燃え盛っていく。
というわけで前作は途中から主人公のお父さんの話に突入してしまい、しかも語りきらないうちに幕となってしまいました。後編も当然冒頭からアマレンドラの話が続くことは予想できましたが、これがいつまで経っても終わらない(笑) というかもしかすると息子よりもお父さんのパートの方が長い…? もはやどっちが主人公なんだかわからなくなります(両方じゃないの)。
普通に第一部をパパ編、第二部をセガレ編とすることも出来たと思うのですが、なんでこんな構成にしたのか考えてみました。
以下は結末以外ほぼネタバレで語っていくのでご了承ください。
まず先代のバーフバリがすでに亡くなってる状態から前作は始まります。で、その無双の伝説を我々は子バーフと一緒になって聞くわけですが、彼と同じように「なんでそんな強い人が死んじゃったの?」という疑問が高まっていきます。そして彼を殺したのが忠臣カッタッパだったということが明かされるとますます頭が「???」で満ちていきます。今作『王の凱旋』ではそうした秘密が徐々に解き明かされていく面白さがあるのですね。前作公開からその真相を約9ケ月待ちましたが、インドの人たちは一年半以上待ったようなのでさぞつらかったことと思います。
それにしてもだまされたとはいえアマレンドラを死に追いやってしまった「決して間違えない」と言われてる国母シヴァガミ様。息子にいいように操られてけっこう痛い失策を色々やらかしています。「おばさんボケてんじゃないの?」と思いますが、こんな話シェイクスピアにチラホラあったような。それなりの分別があったはずの権力者が身近な人物の諫言に踊らされて、取り返しのつかない失敗をしてしまうという。『バーフバリ』は全体的に「『ハムレット』っぽい」なんてことも言われてますし、シヴァガミ様が肩書ほど賢人でないのも監督のシェイクスピア・オマージュなんだと思うことにします。あとやっぱりこの父バーフが追いつめられていくくだりがすごく計算されてて脚本がうまい。
それほどにかわいそうな目にあわされながらも、なおも養母を思うアマレンドラが健気で、「こんなトンデモ映画でなんで俺は…」と思いつつ泣かされてしまいました。
そしてようやくお話が語り終えられた時、マヘンドラもわたしたちも悪王バラーラデーヴァへの怒りがMAXに達することになります。そのボルテージを保ったまま一気に復讐編へと突入するのですから、これが気持ちよくないわけがない。先に述べたように親編・子編で二つに分けていたら間に9ケ月のインターバルがありますから、我々の怒りもだいぶしぼんでいた恐れがあります。その点でもこの構成はよくできてるなあ…と思いました。
そのクライマックスの攻城戦は前作以上の無茶アクションが炸裂し、さっきこぼれかけた涙がひっこむほどでした(笑) バネで飛ばしてパチンコ玉のように城内に入るというアレですが、普通は地面に激突して即死だと思います。現に?酒見賢一先生原作の『墨攻』という漫画でも同じようなことをやってて、そちらではパラシュートつきだったにも関わらず9割ほど死んでました。ところがこちらでは「盾でガードしてるから」という無茶な理屈でどなたもこなたもピンピンしてるという。そんな風に気合で大抵のことはなんとかなってしまう世界なのですね。なんとも恐ろしく、なんとも痛快であります。
暴れるだけ暴れると潔くバサッと締めてしまう本作品。ネットなどでは第3部の噂も流れてましたが、主演のプラバース氏によるときっぱり「第3部はない。これで終わり」とのことです。代わりに小説やアニメで外伝的な話がいろいろ展開されるのだとか。
わたしも前の記事で「2作できっちり終わらせてください」と書いてましたが、やっぱりこの荒唐無稽な世界がこれでおしまいなのはもったいない…という気になってきました。直接の続編は無理でも同種の世界観を生かしたファンタジー大作がまた観たいものです。
この2部作もうひとつ不思議なことがありまして、1部はコロナ小田原でかけてくれたのに2部はやってくれず、代わりに1部をかけてない駿東郡清水町の映画館で2部を上映してくれたり。いきなり2部とかやってお客さん入るのだろうか…と思いましたが、思い切りがいいのかDVDで予習してきたのか、10数名ほどお客さんが入っていたのは驚きでした。あるいはわたしのようにその中間地点に住んでる方ばかりだったのか。まあ映画の内容に比べればめちゃくちゃちっぽけなどうでもよいことです。
『バーフバリ 王の凱旋』はまだ少数ながら上映してるところがありますので、いまだかつてないトンでもね~~~史劇が観たい方はぜひごらんください。冒頭に短い「これまでのあらすじ」も入りますので、いきなりこれから観ても(たぶん)大丈夫です!
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Comments
あんなに牛がいっぱい出てくるからビーフバリでもいいのに。
すいません。血迷いました。
Posted by: ふじき78 | March 21, 2018 04:47 PM
>ふじき78さん
牛はインドでは食べちゃいけないらしいですよ
Posted by: SGA屋伍一 | March 26, 2018 09:32 PM