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December 11, 2017

まんが2本昔話 トラヴィス・ナイト 『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』

Kubo1『コラライン』『パラノーマン』などで知られるストップモーションアニメの雄・ライカの最新作は、なんと日本のおとぎ話をモチーフにした冒険談。本国より1年遅れての公開となった『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』、ご紹介します。

そこは昔々の日本。目の見えない母と暮らす隻眼の少年クボは、不思議な三味線の力で人形を動かして日々の糧を得ていた。だがある祭りの夜、母のいいつけを守らず家に帰りそびれたクボは恐ろしい魔女たちの襲撃を受ける。実はクボの祖父は月に住む魔王で、少年のもう片方の目を執拗に狙っていたのだった。無慈悲な祖父と戦うためにクボは猿とクワガタを相棒とし、三つの武具を探す旅に出る。

「アニメ」という語にはもともと「魂」という意味があります。本来命のない絵や人形をまるで生きてるかのように見せる…魂を吹き込んでるような作業ゆえ、こういう呼び方をされているのですね。クボ君も命のない折り紙を自在に動かしていましたが、ライカのお仕事はまさしく人工物に生き物のような感情や動きを再現させています。
ストップモーションアニメの雄といえばもう一社、『ひつじのショーン』や『ウォレスとグルミット』のアードマン・スタジオがあります。ライカと比べるとそれが味ではあるんですが、アードマンはもう少し動きがカクカクしています(両社とも「1秒に24コマ」という基準は一緒なんですが…)。一方ライカの人形の動作はまるでCGアニメのようになめらか…というかだんだん人形に見えなくなってくるから恐ろしい。ライカ作品ではコマ撮りアニメでは普通簡略される細かな表情までクルクルとよく動かしているので、その常軌を逸した手間暇のかけ方ゆえそんな現象が生まれるのかもしれません。

しかしそれは恐ろしく非効率的な作業であります。一週間で平均3.3秒しか作れなかったというから驚きです。それだけ時間を費やしたらからには、当然見合うだけの儲けがあるのかと思いきやライカの作品はこれまですべて赤字だったりするから泣けてきます。毎回アカデミー長編アニメ部門にノミネートされているとはいえ(ただしいまだに受賞は果たせず)、どうしてそんな赤字続きで会社が成り立っているのか疑問でした。ところが最近その謎がなんとなく解けました。実は『KUBO』の監督にしてライカの社長トラヴィス・ナイトは、ナイキの会長フィル・ナイトのご子息なのです。そしてフィル・ナイトはライカの会長も兼任してたりして。つまりナイキが浮いたお金を回してくれるからなんとかやっていけるのでは… そうとしか考えようがありません。

少々ネタバレになりますがタイトルにもある「二本の弦」とはある絆の象徴であります。ライカとナイキも靴ひもみたいな糸…絆で結ばれている関係にあるといえます。ありがとうナイキ。

お話の方はどうかというと、わたしたちが幼少のころに親しんだ多くの民話・昔話をバラバラに解体し、再構成したような作りでありました。少年のお供?の1人が猿なのは妥当なチョイスですが、もう1人がクワガタ怪人なのにはちょっと頭をひねりました。まあ「クワガタ(鍬形)」というのはもともと兜の飾りのことなので、「武士っぽい」ということから来た発想なのかも。
そして「赤子のころから体の一部を奪われる」という残酷な生い立ちは『どろろ』の百鬼丸を思い出させます。思えばライカ作品はパラノーマンといいコララインといいいつも子供たちに「そりゃ無茶だろ…」というくらい重すぎる試練を課します。それでも「こまったなあ」という表情で過酷な運命をなんとかしていく子供たちの姿に、くたびれた大人は頭を垂れるほかないのでした。
ポスターなどからは勇ましいイメージを受けるクボくんですが、本編を見ると年相応の無邪気な少年だったりするのでそんなところがまたいじらしかったりします。

Kubo2『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は初日観たときは半分くらいの入りだったのですが、その後ネットや口コミで良さが伝わって満員になる回も増えたとのこと。せっかくのライカ&ナイト氏の日本へのラブコール、もっと多くの人に広まればよいな、と思います。
そしてナイト監督の次回作はやはり日本発祥のキャラである『トランスフォーマー』の「バンブルビー」スピンオフであるとのこと。こちらも楽しみにしております。というか、楽しみになってきました!


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Comments

何にせよ、日本で公開されて良かったです。
興行成績はライカ史上最低のようなので、せめて日本では評判が立って欲しいですね。

Posted by: ナドレック | December 12, 2017 at 08:35 AM

>ナドレックさん

いい映画が必ずしも売れるわけではないという好例ですな…
とりあえずもう少し上映館が増えるといいですね。そのためにも折に触れ推していきたいと思ってます

Posted by: SGA屋伍一 | December 12, 2017 at 09:21 PM

「クーボー」と呼ぶのを反対にすると「ボークー」。
はっ、クボは「僕」のことだったのだ! と今、気づきました!
いいこと言った!?

Posted by: ボー | December 25, 2017 at 07:33 AM

>ボーさん

クポクピポー!(ガっちゃん)
来年『ボクの名前はズッキー2』というコマ撮りアニメが公開されますが、こちらも楽しみです

Posted by: SGA屋伍一 | December 26, 2017 at 10:41 PM

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