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December 30, 2017

2017年、この映画がアレだ!!

いよいよ2017年もきょうを入れてあと2日。毎年恒例の年間ベスト参りますか~!

ではリバイバル部門からいきます。
2017best6☆リバイバル賞 『クーリンチェ少年殺人事件』
エドワード・ヤン伝説の作品。4時間に及ぶ超大作でしたがあっというま…というわけではなくさすがにそれなりに長かったです。でも苦労して鑑賞してよかったと思える作品でした。
リバイバル系ではほかにユーリ・ノルシュテイン特集上映、『マッドマックス 怒りのデスロード ブラック&クローム・エディション』、『ほら男爵の冒険』(来年レビュー予定)などを観ました。

つづきましてワースト…
2017best5ワースト3位 ハードコア
ワースト2位 虐殺器官
この2本はいいとこもありましたが、全体的に肉味噌描写がくどくて悪酔いいたしました。連日続けて観たのもよくなかったです。
そしてワースト1位 哭声/コクソン
これも大変力作であることは認めてますが、あまりにもお父さんがかわいそうすぎて辛うございました… ひどいよクニムラさん!!

ではようやく本番。今年観た82本の新作の中から上位40作をランク付けしてみました。40位から11位まで一気に参ります。
2017best940位 フィッシュマンの涙 ギョギョッ!!
39位 DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団 島根よいとこ一度はおいで!
38位 オリエント急行殺人事件(来年レビュー予定) 世界の車窓から!
37位 仮面ライダー平成ジェネレーションFINAL(来年レビュー予定) 宇宙も地球もキターツ!!
36位 ジャスティス・リーグ  COME TOGETHER!!
35位 ワンダーウーマン ♪デデデデデデデデデデデーン!
2017best1234位 ブレンダンとケルズの秘密 ♪バンガボンボンバン~ガボン~
33位 コードギアス 反逆のルルーシュⅠ 興道(来年レビュー予定) 王の力はお前を孤独にする…
32位 人魚姫 ♪ガンガンガンガン! 若い命が真っ赤に燃え~て~
31位 マイティ・ソー/バトルロイヤル ♪あああ~ アッ!
30位 ビニー 信じる男 鷹村さん、強いってなんですか!?
29位 マンチェスター・バイ・ザ・シー マンチェスターだけどアメリカです!
2017best428位 ムーンライト 今夜もいい夢見ろよ!
27位 バーフバリ 『伝説誕生』『王の凱旋』とありますが後編のレビューは来年で!
26位 ドクターストレンジ 世にも奇妙なお医者さん!
25位 KUBO/クボ 二本の弦の秘密 坊やよい子だねんねしな!
24位 ベイビー・ドライバー かわいいベイビー! ハイハイ!
23位 キングコング/髑髏島の巨神 「髑髏」って書くのむずかしいよね!
2017best222位 LOGAN/ローガン おつかれヒュー・ジャックマン!
21位 ボブという名の猫 幸せのハイタッチ ああ… おれも猫が… 肉球がほしいいいい!!
20位 ラ・ラ・ランド 惜しかったねアカデミー作品賞!
19位 ダンケルク Afternoon!
18位 パターソン ぼくらはみんなポエマー!
17位 ソーセージ・パーティー ち○ち○ぶらぶらソーセージ!
2017best116位 ゲット・アウト アウト! セーフ! よよいの…
15位 ヒトラーの忘れもの 地雷とゴミはお持ち帰りを!
14位 SING Sing~ Sing a song~ Sing out loud~ Sing out strong~
13位 IT/イット それが見えたら終わり 「終わり」と言いながら始まりの話!
12位 新感染 ファイナル・エクスプレス 走らないかん釜山まで!
11位 ナイスガイズ! 『バッドガイズ!』もお忘れなく!(観てないけど!)

というわけでいよいよベスト10です。
2017best710位 T2 トレインスポッティング あれから20年… 君たちはまだまだ走り続けているのかい? もう年だし心臓発作には気をつけようぜ!
9位 レゴバットマン・ザ・ムービー いい映画は黒で始まり、白で終わる。今年4本もあったDC関連映画で最もツボだったのはこれでした。
8位 ブレードランナー2049 各方面から高い評価を得たにも関わらず製作費がかさみすぎたために「こけた」と言われてしまった悲劇の作品。でも断言します。この映画は本家とともに30年後も残る…!
2017best87位 カーズ クロスロード トレスポ2と並んで40代のハートとボディに沁みる一本。俺も走り続けよう… 一週間に一回くらいは
6位 スターウォーズ 最後のジェダイ 最後やらファイナルやら今年いっぱいあった「最後」映画の中で、もっとも「終わる終わる詐欺」だった一本。ていうかエピソード9もあるしね…
5位 猿の惑星 聖戦記 「まあまあがんばってるよね」という印象だったマット・リーブス。この映画で評価を改めました。ごめんなさい! 本当にごめんなさい! バットマン新作も期待してます!
2017best34位 レゴニンジャゴー・ザ・ムービー 本年度アニメ大賞。大傑作でもあるにも関わらずほぼまったく話題にならなかった不遇の作品。でも僕は忘れない… 今後息ある限り応援し推薦しつづけます!
3位 マグニフィセント・セブン 大抵年初めにやった映画というのは印象が薄くなりがちなものですが、この作品のことは年末の今でも脳裏にギラギラと輝いております。カウボーイ道とは死ぬこととみつけたり。
2位 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス 踊って笑って歌って泣かせる、本年度最高のエンターテインメントの1本。アベンジャーズ・インフィニティウォーでの活躍が今から待ちきれねえっす!
そして栄えある1位は…
5d5c5246スパイダーマン ホームカミングであります。
個人的にはこれまでのスパイダーマン映画の最高傑作。一人の少年の頑張りが暗黒時代にあったアベンジャーズの夜明けをもたらし、そして宇宙を統べる魔王との決戦にMCUは突入していくのです。おかげでまだまだ数年は映画のために生きていけそう

推定で銀河系で4名くらいの当ブログの読者の皆様、本年もどうもありがとうございました。来年もたぶん惰性でずるずると続いていくと思います。どうぞごひいきに。

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December 27, 2017

第14回SGA屋漫画文化賞

昨年は仕事が修羅場で年始にずれこみましたが、今年は平和なので年内にマンガベストを発表できます。限りない自己満足で継続しているSGA屋漫画文化賞。今回で14回目です…
例によって賞金も賞品も授賞式もありません!! ではまいりましょう。


2017cm1☆少年漫画部門 ちばあきお・コージィ城倉 『プレイボール2』

まさかあの『プレイボール』の続きが読めるとは… 38年前の終了場面のすぐ後から始まる奇跡の続編。
そしてなにより驚くのはコージィ城倉氏の再現力。あのころと変わらない谷口君、丸井君が確かに紙面で躍動しております(イガラシはまだちょっと大人しいかな?)。迷作『砂漠の野球部』のことは喜んで忘れましょう。
欲を言うならコージィ先生、『キャプテン』の近藤君のつづきも読みたいです。

2017cm2☆少女漫画部門 吉田秋生 『海街diary』

今年は少女漫画はこれしか読んでないので自動的にこれが受賞という… すいません。
香田さんちのお姉さんも次から次へと良縁にめぐまれ、あとはすずちゃんが我が静岡県へやってくるだけとなりました。さすがにあと1巻で完結かな…
名作『BANANA FISH』のアニメ化も発表され、吉田先生周りがにぎやかになってきましたね。

2017cm3☆青年漫画部門 田中芳樹・藤崎竜 『銀河英雄伝説』

『封神演義』の藤崎先生が青年誌らしい熱さで描く21世紀版の新『銀英伝』。週刊連載だけあってサクサク進んでいるようにも見えますが、開始2年でまだ原作の1巻部分しか進んでおりません。でもやっぱり面白い! がんばれ! 
余談ですがつい先日、田中先生の代表作のひとつである『アルスラーン戦記』が30年かけて完結いたしました。めでたかったが辛かったですね…

2017cm4☆中年漫画部門 原作:萩原天晴・漫画:上原求、新井和也・協力:福本伸行 『1日外出録ハンチョウ』

「悪魔的スピンオフ第2弾!理外の飯テロ漫画!!」 このコピーがすべてを物語っております。『カイジ』本編を読んでなくても映画の1作目だけ観てればだいたいわかる親切設計。与えられた24時間の枠内で五官をフルに発揮して、その街を・飯をいかに味わい尽くすかという人生の教科書。こちらを大賞にしようかとも思ったのですが… ああ! はやく3巻が読みたい!!

2017cm6☆漫画家漫画部門 平松伸二 『そして僕は外道マンになる』

『ドーベルマン刑事』『ブラック・エンジェルズ』など、「ダークヒーローが外道をぶっ殺しまくる」作品でよく知られる平松先生が異常なまでの話の盛りっぷりで楽しませてくれる自伝的作品。…だったのですが、最近ではこの作品の単行本があまり売れてないことを苦にしてどんどん暗黒面に落ちていってる先生がちょっと心配(それはそれで面白いんですが)。先ごろ増刊的な『グランドジャンプ プレミアム』から本誌の『グランドジャンプ』に移籍したばかりですのでまだまだ続くと思うのですが。

☆ウェブ漫画・猫漫画部門 桜井海 『おじさまと猫』
いつまでもペットショップで売れ残っているブサイクな猫。「どうせ誰もわたしにゃんかほしがらない」 そう諦めきっていた彼女の前に現れたのは… こちらのまとめから読むことができます。来年2月22日には単行本も発売。

2017cm5☆翻訳部門 フランク・ミラー ジェフ・ダロウ 『ザ・ビッグガイ&ラスティ・ザ・ボーイロボット』

突如東京に現れた大怪獣。立ち向かうのはア○ムをチンチクリンにしたような少年ロボット・ラスティ。だがその戦力差はいかんともしがたく… 肉味噌・血みどろ描写を得意とするフランク・ミラーが何を思ったか突然手掛けたポップでキュートな作品。長年翻訳を待ち望んでいましたがようやく今年実現しました。おそらく『ベイマックス』に深い影響を与えた…と勝手に思っています。今年は他に通販限定の『アベンジャーズ・プライム』、悪趣味描写満載の『ザ・ボーイズ』などが印象に残りました。

2017cm7☆アニメ部門 長井龍雪 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』

春に完結を迎えたこちらが二年連続の受賞…というか、今年はテレビアニメをこれくらいしか観てませんでした。
あまりにも悲壮な終盤の展開に打ちひしがれたファンも多かったようで。わたしも大変複雑な気持ちでしたが、ともかく鉄華団の少年たちのことを忘れたくなくて…
長年続いた週末夕方のTBSアニメ枠もこの作品をもって終了。これまたさみしいことであります。

そしてトリです。
2017cm8
☆大賞 野田サトル 『ゴールデンカムイ』

日露戦争の地獄を生き抜いた帰還兵「不死身の杉元」は、幼馴染の病を治すため、砂金を求めて北海道へ渡る。そこで彼が遭遇したのは奇妙な刺青を掘られた脱獄囚たちだった。彼らの刺青はつなげるとひとつの地図になり、アイヌの残した金塊のありかが書かれているという…

今年『ハンチョウ』と並んでもっともはまった漫画。吉村昭の渋いネタをこれでもかこれでもかとぶちこんでおきながら、若者たちをもとりこにするほどの一大エンターテインメントに仕上げております。本筋にはあまり関係ない北海道の野生の珍味描写も読みごたえたっぷり。これまた春にはアニメ化されるそうですが、どちらかというと骨太な役者さんたちでの実写版が観とうございます。

というわけで本年もいっぱい面白い漫画に出会えて感謝。週末に映画の方のベスト記事を書いて今年のブログ〆といたします。

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December 26, 2017

続・新・惑星大戦争 ライアン・ジョンソン 『スターウォーズ 最後のジェダイ』

Sw81ここ3年、年末の恒例行事と化している『スターウォーズ』。今年もやってまいりました。新世代と旧世代の交錯を描く「続3部作」の第2弾。『最後のジェダイ』、紹介いたします。直接の前作となる『フォースの覚醒』の記事はこちら

巨大兵器スターキラーを破壊したはいいものの、結果ファーストオーダーからの猛追を受けることになったレイア率いるレジスタンス。圧倒的な戦力差により彼らは次々と艦を沈められていき、全滅も時間の問題かと思われた。レジスタンスの火の玉パイロット、ポー・ダメロンは昏睡から目覚めた戦友フィンと語らって一発逆転の奇計を練る。
一方彼らと離れて伝説の英雄ルーク・スカイウォ―カ―を探していた新世代のフォースの使い手・レイはついにその人と相対する。だがルークはレジスタンスに協力してほしいという彼女の願いをあっさりはねのける。どうしたものか考えあぐねていたレイの意識に、ある意外な人物の思念が飛んできた。

時代を越えた人気作ゆえ、ファンの数も膨大なスターウォーズ。それだけにその面倒くささも群を抜いています。まさにファンの数だけ理想のスターウォーズがあるというか。彼らすべてを納得させる作品があるとすれば、それは一番最初に作られたエピソード4『新たなる希望』くらいのものでしょう。そんな不利な状況の中で比較的多くのファンから好意的な評価を得たのが前作『フォースの覚醒』でありました。ところがこの度の『最後のジェダイ』は評論家筋からのウケはいいものの、一般のファンたちは賛否を巡って大激突。「正式なストーリーからはずすように」という署名活動まで行われていて、とんでもなくめんどくせ~~~状況になっております。

特に物議を醸してるのは、やはり旧三部作の主人公だったルークの描かれ方でしょうか。あ、ここからかなりネタバレしていくのでその点ご了承ください…

fullmoon
newmoon
fullmoon
newmoon

この度の新作、意外なことにシリーズの産みの親ジョージ・ルーカスは大変満足しているそうで。それは彼や監督のライアン・ジョンソンがルークを「神話の英雄」と考えてるからでしょう。旧約聖書、ギリシャ神話、北欧神話、その他多くの世界に伝えられている神話の英雄にはある種の定型があります。それは多くが「悲劇的な最期」「英雄的な死を迎える」というものです。あと彼らは決して完璧な存在ではなく、一時的な激情に駆られて取り返しのつかない失敗をしたりするものです。今回のルークはまさにそんな存在でした。

しかし子供のころから現在進行形で親しんでいるファンにとっては、それが許せないのだと思います。彼らにとってアメリカが産んだ最高の物語の主人公であるルークは暗黒面などまったくない、明るく汚れない人物でなければならないのでしょう。英雄であると同時に、キリストやスーパーマンのような聖人性も兼ね備えたキャラクターとしてとらえている。そしていつまでも明るくさわやかなアイドルでいてほしい。今回の大論争は特にこの辺の解釈の違いに端を発していると考えます。

他に興味深く思った点は昨年のサイドストーリー『ローグ・ワン』との対比でしょうか。あの作品は戦争につきものの「犠牲」の悲しさを描いていましたが、結果的に彼らの死が反乱軍に勝利をもたらしたため、その犠牲を肯定してるように思えなくもありません。
『最後のジェダイ』も割と中盤過ぎまではドバドバ犠牲を出しまくって同じ姿勢のように見えたのですが、途中から「やっぱ誰かの犠牲で勝利を得るのはいくない」ということを言いだします。ドンパチをやっている以上それは単なる理想論のようにも思えますが、そういうアンチテーゼを打ち出すことによって『ローグ・ワン』とのバランスを取っているように感じました。

あとキャラクターで特に面白いのはさらに深みを増した感のあるカイロ・レン。『フォースの覚醒』では「やたらとキレやすい」人という印象で、『最後のジェダイ』でも基本的にその辺は変わってないのですが、今回は前作よりも善性への迷いや優しさ、愛情を求める弱さなどが目に見えてくるようになりました。そういえばライアン・ジョンソン監督の前作『ルーパー』にも、ある出来事がきっかけで無垢な少年が超人的な「魔王」へと変貌してしまうエピソードが織り込まれていました。
正直ダース・ベイダ―が『ジェダイの帰還』で改心したのはやや唐突な感が否めませんでしたが、続三部作ではそれを反省してレン君の善悪の狭間でのぶらつきを丁寧に描こうという狙いなのかもしれません。さらに闇落ちして見苦しい死を迎えるという可能性も十分にありますが…

この度のフォースは今まで以上にあぶなっかしい、ちょっとした油断ですぐにダークサイドに転げ落ちるものとして描写されていました。主人公のレイ嬢にもちらっとそんな兆しがありましたが、それは本当に一瞬のことで、かつてのルークのようにまっすぐな心を失わないのがとても微笑ましい。そして明かされた彼女の意外な出自。
既にいろんなとこで言われてますが、ここに至ってようやくスターウォーズはスカイウォ―カ―という「血筋」から解放されつつあるのでしょう。しかしその「精神」は脈々と血統を越えて受け継がれていくのだと思います。そういうわけで「最後のジェダイ」はある意味「新たなる『新たなる希望』」であったと思います。

わたしひいきのR2-D2はディズニー体制に入ってようやくちゃんと動いてました。しかし寄る年波かその動きはやっぱりどこか億劫でありました。代わりに獅子奮迅の活躍を見せているのがBB-8.。もうレジスタンスのリーダーは彼しかいないんじゃないか、というくらいの無双ぶりです。さびしいことですがこんなところでも世代交代が見て取れました。

20171215_215510_001てんでまとまらない感想をダラダラ書き連ねてまいりましたが、自分のポジションはおごそかな確信をこめて「賛」であります。そして続三部作を完結へと導くエピソード9が今からとても楽しみです。
その「9」の公開は二年後の2019年ですが、その前に来年の夏はやくもスピンオフ第二弾『ハン・ソロ』が待機中です。はや!! ここんとこずーっと暗いムードだったSWに、久々にファンキーな空気が戻ってくるのでしょうか。こちらももちろん期待してます!


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December 20, 2017

ミート・ザ・モンスターペアレンツ ジョーダン・ピール 『ゲット・アウト』

Go12017年もだいぶ残りすくなくなってきました… 本日は来年のアメリカの賞レースを驀進してる風変わりな作品『ゲット・アウト』を紹介します。

クリス(黒人)とローズ(白人)は仲の良い恋人同士。二人は休暇にローズの実家にいくことになり、クリスは緊張を隠せない。ローズは「うちの両親は進歩的だから大丈夫」と彼を慰めるが… クリスの心配をよそにローズの両親・アーミテージ夫妻は彼をあたたかく迎えてくれた。ひとまず安心するクリスだったが、夜更けに全力疾走する使用人や、彼をこっそり観察しているメイドに不気味なものを感じ始める。やがて周囲の資産家があつまるパーティーがアーミテージ家で開かれ、事件は起きた…

最初にこの映画のことを知ったのはアメリカでヒットを飛ばしていた時だったでしょうか。で、どうやら主人公の黒人青年がじわじわいたぶられるストーリーらしいと知って、興味が減りました。自分、そういうサドっぽいお話ってあんまり好きじゃないもので…
でもたまたまなじみの映画館でかかることになったし、評論家がその年に選ぶベストムービーなどによく名を連ねたりしてたので、「観るだけ観てみるか…」と考え直したのでした(権威に弱い)

で、結論からすると予想とは裏腹に大変いい気持ちで映画館を出ることができました。いや、こういうこともあるから映画は実際に観てみないことにはわからんもんですね。
まず感心したのは異様なムードの出し方。シャマラン作品なんかも普通の映像を撮ってるだけなのに、突然何が起こるかわからない緊張感が常にみなぎってますが、『ゲット・アウト』にも田舎の綺麗な屋敷の中にそこはかとなく不気味で、「何かがおかしい…」というぞわぞわした空気が漂っております。特にインパクトを残すのがメイドさんの「泣きながら笑う」演技。怒りながら笑う竹中直人にも匹敵するすごワザでした。
この感じ、わたしたちと変わらない平凡な主人公がずるずるとのっぴきならない状況にはまっていく、藤子不二雄A先生のブラックユーモア短編とよく似ています。

序盤の意味ありげな伏線・映像にことごとくちゃんと意味があるのもすごいし、主人公が「トリップ」したりさせられたりする描写も独特で面白かったです。そして謎が明らかになると藤子F不二雄先生の「すこし不思議な」短編の方にムードがシフトしていきます。

そして特に自分が気に入ったのは要所要所で絶妙なユーモアがあり、最後にはとてもカタルシスを感じさせてくれたことです。一応これ「ホラー」というジャンル分けをされてるんですが、「したコメ映画祭」でも上映されておりました。確かにホラーでもあり、コメディでもあるんですよ。普通ホラーにお笑い要素を入れると全体的にギャグ映画になってしまうことが多いのですが、『ゲット・アウト』はその二つが見事に融合した稀有な作品となっておりました。ちなみに監督はもともとコメディアンが本業だったそうです。名前が「ジョーダン」ってえのがまた…(すいません)

実はこの映画、本当は別の結末が用意されていたそうですけど、世相を鑑みて監督がラストを変更したとのこと。そのもう一つのENDについてはウィキペディアの項目で読むことができますが、いやあこうならなくて本当によかった。


Go2というわけでかなり痛快な作品でありましたけど、こんな映画が大ヒットしちゃったらアメリカの人種問題が一層深刻になったりしないだろうか…と遠い国のことながら心配になるのでした。

自分が観たあとも『ゲット・アウト』はますます多くの賞にノミネートされ、この分だと来年のアカデミー賞も大いににぎわせてくれそうです。観られる人はいまのうちに観ておくことをお勧めいたします。

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December 18, 2017

ミルク色の夜明け すすんでく血塗られた道 エミール・クストリッツァ 『ミルキー・オン・ザ・ロード』

Motr2ユーゴ出身の個性派、エミール・クストリッツァが久々に「戦争」を描いた悲喜劇。『オン・ザ・ミルキーロード』、ご紹介します。

隣国と戦争状態のとある村。銃火の間をかけながらミルクを売り続ける男コスタは、村で一番の美女(ただし性格は荒々しい)ミレナに思いを寄せられていた。だがどこからか亡命してきた一人の女と出会った時、コスタはたちまち恋に落ちてしまう。その女がミレナの兄の婚約者であり、他国の将軍から命を狙われている身の上であるにも関わらず…

自分が観たクストリッツァ作品は『アンダーグラウンド』と『ウェディング・ベルを鳴らせ!』の2本のみ。それだけで語ろうとはいささかおこがましいですが、「にぎやかな音楽」「のんびりとした動物たち」そして「障害の多い恋」が彼の作品の特色である気がします。今回も羊、ハヤブサ、ロバ、ガチョウ、大蛇とおおむねかわいらしい動物が画面狭しといっぱい出てきて動物好きには楽しい反面、逆につらい場面もあったりして複雑な心境になりました。

二人の美女に言い寄られる主人公を演じるのは監督のクストリッツァ自身。なかなかずうずうしい…と思わないでもありませんが、確かに彼は(いいおっさんであるにも関わらず)なかなかかっこいい。苦労してきた半生が醸し出す哀愁とあいまって、女だけではなく動物もこぞって彼にメロメロです。この映画ではおまけに変わった鍵楽器の腕前まで披露してくれます。

戦争を題材にしているという点では『アンダーグラウンド』と重なるところも多い本作品。ただあちらが現実の歴史を背景にしたニヒリズムの濃い映画であるのに比べ、『ミルキー・オン・ザ・ロード』はもっとファンタジックでロマンに満ちたお話でありました。また『アンダーグラウンド』の3人がいかに相手を出し抜くか考えてるのに対し、こちらの男女はわりかし純粋でただただ自分の思いにまっすぐであります。

そんな恋物語に暗い影を落とすのが絶え間なく続く砲火の音。一度平和が訪れたかと思いきや、どこぞの将軍が派遣した特殊部隊が村を血で染めていきます。軍服のスタイルなどは某大国がリーダーの多国籍軍をつい思い出してしまうのですが、確たる根拠もないので考えすぎかな…とも思ったり。

いまなお各地で紛争がつづく世界を風刺している面もあるかとは思います。ただわたし自身はそういう社会派的なメッセージよりもちょっと夢見がかった悲恋話としてこの作品を受け止めました。あとあまりうまく言えませんがクストリッツァが伝えたいのは怒りとか非難よりも、悲嘆であり追悼である気がします。お笑いのオブラートにくるまれてはいますけどね。

Motr1『ミルキー・オン・ザ・ロード』はもう7割方公開が終わっているようですが、まだ残っている上映館もあり。気になった方は公式サイトの劇場一覧をごらんください。


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December 14, 2017

超人・半神・機人・金持ち (一応)ザック・スナイダー 『ジャスティス・リーグ』

Jsa_2MCUに追いつき追い越せとばかりに奮闘するもうひとつのアメコミ映画世界「DCFU(DCフィルムズ・ユニバース 最近DCEUから改名したみたいです)」。その総決算たる大集合映画が先日満を持して公開されました。『ジャスティス・リーグ』、紹介します。

お話は『バットマンVSスーパーマン』の直後から始まります。異世界からの侵略がせまっていることに気づいたバットマン=ブルース・ウェインは、スーパーマン亡きあとの地球を守るべく、特別なパワーを持った超人たちを探す。だがそのうち二人はブルースの要請にすんなりと応じようとはせず、チーム結成には暗雲が漂う。そうこうしているうちに侵略者「ステッペンウルフ」が無数の兵士を連れて来襲。地球を改造する力を秘めた3つの「キューブ」を求め、それらを守る者たちに容赦ない攻撃をくだすのだった。

「アベンジャーズの後追い」なんてことも言われてますが、コミックのジャスティス・リーグの歴史はそれよりもっと古かったりします。まず1940年に前身である「ジャスティス・ソサイエティ・オブ・アメリカ(JSA)」が誕生。そして「アベンジャーズ」登場の3年前である1960年にJSAをリニューアルさせた「ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカ」が創刊。以後この名前で一旦のリセットを経て、様々なメンバーが入れ替わりしながら50年活動します。
そして2011年再びのリセットイベント「NEW52」に際しチーム名が「ジャスティス・リーグ」に変更。

現在コミックではこの本家の他に米国政府指揮下にありかつての同タイトルとは違う立ち位置の「ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカ」(ややこしい…)、魔界担当の「ジャスティス・リーグ・ダーク」、国連が作ったけど終了したっぽい「ジャスティス・リーグ・インターナショナル」、よくわからない新チーム「ジャスティス・リーグ・ユナイテッド」などがありなかなかにカオスであります。

では今回映画に出て来るメンバーを「なにをいまさら…」というキャラも含めて紹介します。

☆スーパーマン…言わずと知れた(雑誌形式では)世界最初のアメコミヒーロー。怪力・飛行なんでもできちゃう。MARVELとDCの最大の違いは「MARVEL宇宙にはスーパーマンのような圧倒的な大黒柱がいない」ということかも。真っ先にあげちゃったけど今度の映画に出るかは一応不明(白々しく)

☆バットマン…アメコミで最高の人気を誇るキャラ。特殊能力は金と推理。バットマン一派の人気が突出しすぎてるのがDCの悩みどころかも。時々「何の超能力もないの?」と揶揄されるが時間さえあれば宇宙の最高神にも勝てる男。ただゴッサムシティの治安は永久に解決できない

☆ワンダーウーマン…世界最初のアメコミヒロイン。怪力と嘘発見がスペック。キャリアの割に伸び悩んでいたが、先の映画で大ブレイク。DCのいまひとりのアイドル・スーパーガールと比べると「お母さんみ」が強いのが特徴か。好物がアイスクリームなのが萌える

☆フラッシュ…光速で駆けるスピードスター。一応アメコミの第二黄金期のきっかけとなった重要なキャラで、現在映画とドラマが並行してる唯一のヒーロー。時々物理を越えたスピードを出してしまい、並行世界にいったり現実改変を招いたりするのが玉にきず

☆アクアマン…今回映画とコミックで一番風貌が変わったキャラ。海底人と地上人のハーフで、水や魚類を操ることができる。それゆえ水のないところでは手持無沙汰になってしまうという、サイボーグ008的な問題を抱えている。日本での愛称はサバ夫(?)

☆サイボーグ…実は一番よく知らないキャラ。特殊能力は変形・飛行・ネット検索。若手ヒーローチーム「ティ―ン・タイタンズ」に加入してから人気が上がり、少し前JLのメンバーに大抜擢される。恐らく「黒人一人くらい入れとこう」というPC的配慮かと思われます。風呂にどうやって入るのかが謎


さて、肝心の内容の方ですが、『BVS』や『スーサイド・スクワッド』と同じくDC世界の奥行きを感じさせるネタが色々入っていて、コミックファンとしてはまことに楽しゅうございました。逆にそういうDC愛がない人には、ちょっとあっさり風味に感じられるかもしれません。こう言ってはなんですが、本当に予想範囲内のことしか起きないので。
そしてやっぱりちらつく『アベンジャーズ』の影。監督がジョス・ウィスドンに変わる前から決まってたことだと思うんですけど、「宇宙の果てからマッチョな悪者が軍勢を率いて攻めてくる」というプロットはもうちょっと変えられなかったのかと。そしてまたキーアイテムがサイコロだと来ている(三つに増えてましたが)。
一方で『アベンジャーズ』よりも良いところもあります。尺が短くなった分テンポがよくなったりとか。超人たちがかみ合わなくてギスギスしてるパートが短かったのも好印象でした。これはエズラ・ミラー演じるフラッシュの性格に負うところが大きいですね。本当にひとりムードメーカーがいるだけで場の空気というものはずいぶん変わるものです。

今年は『パワーレンジャー』や『スパイダーマン ホームカミング』などヒーローものと『ブレックファスト・クラブ』をかけあわせた作品が目立ちましたが(『ブレックファスト~』観てないんですけどね…)この『ジャスティス・リーグ』もカーストの違いを乗り越えていく学園ドラマと似たところがありました。
バットマンは過去のあやまちをひきずってる先生、ワンダーウーマンは以前の失恋を乗り越えられない級長、アクアマンはやたらとイキりたがる番長、フラッシュは寒いギャグを連発するお調子者、サイボーグは怪我で夢断たれた体育会系…といった具合です。それぞれに悩みを抱えてる面々が、ディスカッションしたり一緒にクラブ活動に精出したりしてるうちに、やがて自分の殻を打ち破っていく、そんなムードが大変さわやかで好みでした。

Photoただ『ワンダーウーマン』の好調にのって大ヒットとなるかと思いきや、全米ではDCFU中もっとも低調なスタートで赤字はまちがいないとのこと。やっぱりメリケンの映画ファンは常に何か目新しいものを求めているということですかね… ここでくじけないでDCFUにはさらにがんばって残りの企画を面白いものにしてほしいものです。とりあえず現在ほぼ確定してる企画は『アクアマン』と『ワンダーウーマン2』、そして『フラッシュ(ポイント)』というところでしょうか。あと一応『スーサイド・スクワッド2』『ザ・バットマン』『バットガール』『シャザム』『グリーンランタン・コァ』『サイボーグ』『ジャスティス・リーグ・ダーク』といった企画も上がっている模様。果たしてどこまで実現できるでしょう。


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December 12, 2017

星を奪うもの 静野孔文 瀬下寛之 『GODZILLA 怪獣惑星』

Photo昨年『シン・ゴジラ』の大ヒットで大いに復活の兆しを見せた東宝怪獣映画。今年はアニメの三部作という変化球で攻めてまいりました。『GODZILLA 怪獣惑星』、ご紹介します。

突如として巨大怪獣の出現が頻発するようになった世界。人類はなんとかそれに対抗しようと戦いを続けていたが、それまでの怪獣をはるかに超える存在「ゴジラ」の登場により敗北を余儀なくされる。宇宙に新天地を求めて旅立った人類だったが、先の見えない旅に次第に消耗していき、ついには地球への帰還を望むようになる。その先陣を切る若者ハルオは激しい怒りと科学的な理論をもってゴジラ殲滅のプランを練り上げたのだが…

まず語っておきたいのが公開前に出版された前日談となる小説『GODZILLA 怪獣黙示録』。映画ではナレーションで済まされた人類衰亡の歴史をインタビュー形式でつづったものなのですが、これが滅法面白くて。カマキラスやらドゴラやらオルガやら、存在をすっかり忘れていたマイナー怪獣が次から次へと出てきて破壊の限りを尽くすという内容。滅亡の危機が迫っているというのに団結も出来ず決定的な対抗兵器もなく、ただただ絶望しかない『パシフィック・リム』みたいな暗い話なんですが、登場怪獣の顔ぶれの懐かしさに楽しさしか感じないという奇天烈な1作でありました。

しかし今回は映画の前にこれを読んでしまったのがよくなかった。なんでかというと『怪獣黙示録』に比べると『怪獣惑星』はあまりにも登場モンスターの種類が限られていて、ちょっと派手さに欠けるところがあるからです。どうせ3部作でやるならこの『黙示録』を1作目にして映像化すりゃよかったのに…と思わずにはいられませんでした。

ただ映画本編もまったくつまらなかったわけではなく。むしろ小説を先に読んでなかったら普通に楽しめたと思います。
特に印象に残るのはゴジラよりも彼?に鬼気迫る憎しみを抱き、「何が何でも絶対殺すマン」と化している主人公のハルオ君。ふつうあんな山みたいな怪獣を目にしたら一目散に逃げ出したくなるのが普通の人間です。しかしハルオ君は恐怖などまったく表に見せず、「ゴジラ―!! ぶっころーす!!」と何度も何度もあの巨体に向けて特攻していくあたり頭の配線が2,3本ぶっとんでるとしか言いようがありません。でもまあこれくらいエキセントリックなやつでないとゴジラとの真っ向勝負はできないでしょう。芹沢博士や矢口蘭堂に並ぶ怪獣キラーになれるかどうか、これからの成長に注目です。というか『進○の巨人』のエ○ン君とよく似ておりますね。

あと主人公を絶望に追い込む脚本虚淵玄氏お得意のストーリー展開に今回も引き込まれました。ただ虚淵さんの真骨頂はむしろストーリーの中盤あたり。だいたいその辺で主人公の世界観を根底から揺るがす衝撃的な事実が明らかになり、お話がどう解決するのかさっぱり予想がつかなくなります。というわけで1作目終盤のアレもまだまだ前フリにすぎず、本当のショックは2作目あたりに待っているものと思われます。ハルオ君のさらなるあがきに期待しましょう(ひどい)

Photo_2とりあえず次はもう少しいろんな種類の怪獣が出てくると嬉しいですね… ちなみに2作目『決戦・起動増殖都市』のポスターにはメカファンには嬉しい「アレ」の姿がちらっと描かれております。その辺にまんまと踊らされるワタクシ。『シン・ゴジラ』に比べるとあんまり売れてないようなので無事完結までたどり着けるか少々危なっかしいですが、東宝を信じて応援していこうと思います。というわけで第二部は来年5月の公開。そして丸一年後の11月あたりで完結編…という計画なんでしょうか。なんとかついていくのでスタッフのみなさんがんばってくだされ

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December 11, 2017

まんが2本昔話 トラヴィス・ナイト 『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』

Kubo1『コラライン』『パラノーマン』などで知られるストップモーションアニメの雄・ライカの最新作は、なんと日本のおとぎ話をモチーフにした冒険談。本国より1年遅れての公開となった『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』、ご紹介します。

そこは昔々の日本。目の見えない母と暮らす隻眼の少年クボは、不思議な三味線の力で人形を動かして日々の糧を得ていた。だがある祭りの夜、母のいいつけを守らず家に帰りそびれたクボは恐ろしい魔女たちの襲撃を受ける。実はクボの祖父は月に住む魔王で、少年のもう片方の目を執拗に狙っていたのだった。無慈悲な祖父と戦うためにクボは猿とクワガタを相棒とし、三つの武具を探す旅に出る。

「アニメ」という語にはもともと「魂」という意味があります。本来命のない絵や人形をまるで生きてるかのように見せる…魂を吹き込んでるような作業ゆえ、こういう呼び方をされているのですね。クボ君も命のない折り紙を自在に動かしていましたが、ライカのお仕事はまさしく人工物に生き物のような感情や動きを再現させています。
ストップモーションアニメの雄といえばもう一社、『ひつじのショーン』や『ウォレスとグルミット』のアードマン・スタジオがあります。ライカと比べるとそれが味ではあるんですが、アードマンはもう少し動きがカクカクしています(両社とも「1秒に24コマ」という基準は一緒なんですが…)。一方ライカの人形の動作はまるでCGアニメのようになめらか…というかだんだん人形に見えなくなってくるから恐ろしい。ライカ作品ではコマ撮りアニメでは普通簡略される細かな表情までクルクルとよく動かしているので、その常軌を逸した手間暇のかけ方ゆえそんな現象が生まれるのかもしれません。

しかしそれは恐ろしく非効率的な作業であります。一週間で平均3.3秒しか作れなかったというから驚きです。それだけ時間を費やしたらからには、当然見合うだけの儲けがあるのかと思いきやライカの作品はこれまですべて赤字だったりするから泣けてきます。毎回アカデミー長編アニメ部門にノミネートされているとはいえ(ただしいまだに受賞は果たせず)、どうしてそんな赤字続きで会社が成り立っているのか疑問でした。ところが最近その謎がなんとなく解けました。実は『KUBO』の監督にしてライカの社長トラヴィス・ナイトは、ナイキの会長フィル・ナイトのご子息なのです。そしてフィル・ナイトはライカの会長も兼任してたりして。つまりナイキが浮いたお金を回してくれるからなんとかやっていけるのでは… そうとしか考えようがありません。

少々ネタバレになりますがタイトルにもある「二本の弦」とはある絆の象徴であります。ライカとナイキも靴ひもみたいな糸…絆で結ばれている関係にあるといえます。ありがとうナイキ。

お話の方はどうかというと、わたしたちが幼少のころに親しんだ多くの民話・昔話をバラバラに解体し、再構成したような作りでありました。少年のお供?の1人が猿なのは妥当なチョイスですが、もう1人がクワガタ怪人なのにはちょっと頭をひねりました。まあ「クワガタ(鍬形)」というのはもともと兜の飾りのことなので、「武士っぽい」ということから来た発想なのかも。
そして「赤子のころから体の一部を奪われる」という残酷な生い立ちは『どろろ』の百鬼丸を思い出させます。思えばライカ作品はパラノーマンといいコララインといいいつも子供たちに「そりゃ無茶だろ…」というくらい重すぎる試練を課します。それでも「こまったなあ」という表情で過酷な運命をなんとかしていく子供たちの姿に、くたびれた大人は頭を垂れるほかないのでした。
ポスターなどからは勇ましいイメージを受けるクボくんですが、本編を見ると年相応の無邪気な少年だったりするのでそんなところがまたいじらしかったりします。

Kubo2『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は初日観たときは半分くらいの入りだったのですが、その後ネットや口コミで良さが伝わって満員になる回も増えたとのこと。せっかくのライカ&ナイト氏の日本へのラブコール、もっと多くの人に広まればよいな、と思います。
そしてナイト監督の次回作はやはり日本発祥のキャラである『トランスフォーマー』の「バンブルビー」スピンオフであるとのこと。こちらも楽しみにしております。というか、楽しみになってきました!


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December 06, 2017

ストーリー・オブ・騒動 完結編 久保茂昭  『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』

Hl31♪はいやー はいやー はいやー はいやー 2か月前の第二弾の後を受けて、畳み掛けるように公開された第3作。『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』、ご紹介します。1、2作目の感想はこちら

とうとうSWORDをつぶすべく本格的に動き始めた九龍会。必死で抵抗するコブラたちだったがその力の差は圧倒的で、山王連合をはじめ各チームは壊滅的なを被害を受ける。国の事業のために地区の中央にあるスラム「無名街」は爆破されることが決まり、コブラもついには九龍会の手に落ち拷問を受けることに。SWORDの若者たちに果たして明日は来るのか…

前作ラストでヤクザの組長相手に300キックをかましたコブラ君。ただでは済むまいとは思っていましたが、予告を見たら裸にむかれてコンクリを飲まされそうになっていたからビックリです。それほど思い入れのあるキャラでもなかったのですが、彼の胃袋が心配で心配で結局公開1週目に観てまいりました。自分も仕事柄コンクリを扱うことがあるので、人体にどういう影響があるのか知っておきたかったし。

というわけで自分的にはそのコンクリシーンのあたりがスリルのMAXでした。いや、全体的に大変楽しませていただきましたけどね(笑)。

ただTLを眺めていると「ちょっと物足りなかった」という声もちらほら。思いますに、これまでコブラ君たちは気合と拳ですべて物事を解決してきました。ところが今回彼は初めて「拳だけでは解決できない」壁にぶち当たってしまうのですね。ではSWORDの皆さんがどうしたかと申しますと、拳と一緒に頭も使い始めちゃうという。これがなかなかに強引な作戦なんですけど。ともかくそんな風にちょっと大人になってしまったコブラちゃんと仲間たち。でもこれまでのファンたちにしてみれば、あくまでガキの拳で悪者たちをぶっとばしてスカッとさせてほしかったのかもしれません。
あと極悪マフィアみたいだった九龍会も終盤に来て急に「あ、ぼくたち悪かったかな」みたいなことを言いだして自分たちを反省し始めるのですね。悪者ヤクザだったらそこは自分を見つめなおしたりしないで、最後まで本当~ににくたらしいワルでいてくれないと。そして主人公たちに完膚なきまでに叩き潰されてくれないと。この辺が微妙にずれてるがゆえにややカタルシスが削がれた気はします。自分は懐の広い人間なので、「まあこんなんもありか~ツ」と思いましたけど。それに若いお兄ちゃんたちが画面狭しとピョンピョン元気に飛び回っていたのは、1,2と比べて全くひけをとらなかったし。

今回印象に残った点の一つは、コブラちゃんがようやく主人公らしくなってきたということ。実は2の途中くらいまでは、山王の頭二人がどっちがコブラでどっちがヤマトなのかよくわかってませんでした。だって彼らって大抵いつも二人でいるし、1では九十九さんが、2ではロッキーばかりが目立っていたし。でもまあこの度はコブラ君も一人で真剣に悩んでたり、コンクリ飲まされかけたりしていてちゃんとお話の中心になっていた気がします。
目だっていたといえば窪田正孝君演じるスモーキーもようやくちゃんとした見せ場が巡ってきました。映画しか観てない身からすると、これまでずっと寝たきりで具合が悪いというイメージだったので。窪田君は自分は『ケータイ捜査官7』のころから知ってますけど、顔がスクリーンに大写しになっても普通に鑑賞に耐える、いい俳優さんになったな…と思いました。

ハイロ―らしいヘンテコな部分も健在。たとえばSWORD地区にカジノを作るために政府は「爆破セレモニー」なるものを敢行するのですが、ちょっとこういうことを思いつくお役人さんは頭がどうかしてると思います(笑) でもハイローの世界ならアリなんでしょうね! それにやっぱりタイトルに「MISSION」と入っていたら爆破を防がないといけない気がします。

Hl32ひとまずこれで幕となったっぽい「HiGH&LOW」シリーズ。でもまた伏線っぽいものを匂わして終わっちゃったし、それなりにヒットしたしで続きが作られそうな匂いがプンプンします。自分はそんなにがっつりはまったわけではありませんが、この変な勢いのあるタイトルがこれで終了してしまうのは確かに惜しい。邦画界の異端というかカルトとして、まだまだがんばってほしいものです。♪はいやー はいやー はいやー はいやー

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December 04, 2017

This is… スティーブン・キング アンディ・ムスキエティ 『IT/イット "それ"が見えたら終わり。』

It130年前ベストセラーとなったスティーブン・キングの代表作が、なんでかいまごろ再映像化。ところがこれがアメリカで大ブームを巻き起こしておりまして… 『IT/イット "それ"が見えたら終わり。』ご紹介します。

80年代末、メイン州はデリー。少年ビルのまだ幼い弟は、ある雨の日こつ然と姿を消してしまう。そのころ街では子供の失踪事件が多発していた。弟を諦めずに探すうちに、ビルは転校生ベンからデリーでは27年ごとに大きな災厄が訪れていることを教えられる。やがてビルと仲間たちにも及ぶ魔の手。そして彼らは災いをもたらすものが、相手が恐怖する存在に変身できる怪物「IT」であることを知る。

いきなり中バレですが、原作『IT』は文庫本で全4冊もある大長編。「大人編」と「子供編」が交互に語られて同時進行していくという構成です。こんな話どっかで聞いたような…(『20世紀○年』…)  今回は二時間ちょいの枠に収めるためばっさり「大人編」をカット。『スタンド・バイ・ミー』のような少年の夏休み冒険談がずっと続きます。ホラー風味で。

何度も書いてますけど自分はホラー苦手のチキンメンです。この映画もあらすじを知ってるのにかなり怖かった。よく子供のころ、学校の一室とか大きな家のあまり行かない部屋とか何か潜んでそうで異様におっかなかったりしたじゃないですか。『IT』はそんな懐かしい恐怖をこれでもか!というくらい思い出させてくれます。それでも耐えられたのはちょっとこの『IT』、ホラーとしては掟破りなところがあったからでして。
ホラーというのは一応観客を怖がらせることを主眼としています。しかし人間が抱く恐怖が怪物のエネルギーであったことを知ったビルたちは、その恐怖を克服しようと懸命に闘うのですね。だから後半はおっかないというより燃える展開になるんです。まだ非力でいじめっ子にもひるんでいるような少年たちが、人知を超えた化け物に勇気ひとつで立ち向かっていく… これが熱くならずにいられるでしょうか。逆に生粋のホラーファンにはこの辺調子が狂うかもしれません。

わたしも原作読んだのだいぶ前なので忘れているところもいっぱいあるんですが、今回特に気づいたのは少年たちの保護者がどなたもこなたも毒親ばっかりだということ。キング作品には問題児ならぬ問題親がよく出てくるのですが、本作品はさながらその集大成といった感があります。怪物だけでなく家庭でもストレスにさらされる子供たちを見ているのは実につろうございました。まあキング先生はけっこう子供たちに対して情け容赦ないところがありますよね… 天使のような幼子でさえぶっ殺したりするし(T T) その辺は全体的にさわやかであってもさすがはキング・オブ・ホラーです。

ちなみにこの『IT』、現在アメリカでは今年ヒットした映画の第5位をマーク。ホラー映画としては歴代第一位の座を獲得しています。なんでそんなに売れたのかはよくわかりません。最近の80年代ブームにうまくのっかったからかな? でもそれだけではこれだけの数字は叩き出せないだろうし。やっぱり原作のもつスリルや謎解きやキャラクターの魅力を存分に再現できたからかなあ。

あとこれは洋画に限られないんですけど、ここ2,3か月は純愛ものよりもなぜか「力を合わせて戦おう!」というタイプの映画や「兄弟の絆」を強調した作品がヒットしておりますね。今の世相となにか関係あるのかは…すいません。よくわかりません。

It2というわけで『IT/イット "それ"が見えたら終わり。』は日本でも地道に売り上げを伸ばしており、3週目にして1位をゲットするというまさしくモンスターのようなしぶとさを見せています。
そして予想通り今回オミットされた「大人編」も製作がアナウンスされました。約二年後の2019年9月に全米公開を予定しているとのことです。

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