星を奪うもの 静野孔文 瀬下寛之 『GODZILLA 怪獣惑星』
昨年『シン・ゴジラ』の大ヒットで大いに復活の兆しを見せた東宝怪獣映画。今年はアニメの三部作という変化球で攻めてまいりました。『GODZILLA 怪獣惑星』、ご紹介します。
突如として巨大怪獣の出現が頻発するようになった世界。人類はなんとかそれに対抗しようと戦いを続けていたが、それまでの怪獣をはるかに超える存在「ゴジラ」の登場により敗北を余儀なくされる。宇宙に新天地を求めて旅立った人類だったが、先の見えない旅に次第に消耗していき、ついには地球への帰還を望むようになる。その先陣を切る若者ハルオは激しい怒りと科学的な理論をもってゴジラ殲滅のプランを練り上げたのだが…
まず語っておきたいのが公開前に出版された前日談となる小説『GODZILLA 怪獣黙示録』。映画ではナレーションで済まされた人類衰亡の歴史をインタビュー形式でつづったものなのですが、これが滅法面白くて。カマキラスやらドゴラやらオルガやら、存在をすっかり忘れていたマイナー怪獣が次から次へと出てきて破壊の限りを尽くすという内容。滅亡の危機が迫っているというのに団結も出来ず決定的な対抗兵器もなく、ただただ絶望しかない『パシフィック・リム』みたいな暗い話なんですが、登場怪獣の顔ぶれの懐かしさに楽しさしか感じないという奇天烈な1作でありました。
しかし今回は映画の前にこれを読んでしまったのがよくなかった。なんでかというと『怪獣黙示録』に比べると『怪獣惑星』はあまりにも登場モンスターの種類が限られていて、ちょっと派手さに欠けるところがあるからです。どうせ3部作でやるならこの『黙示録』を1作目にして映像化すりゃよかったのに…と思わずにはいられませんでした。
ただ映画本編もまったくつまらなかったわけではなく。むしろ小説を先に読んでなかったら普通に楽しめたと思います。
特に印象に残るのはゴジラよりも彼?に鬼気迫る憎しみを抱き、「何が何でも絶対殺すマン」と化している主人公のハルオ君。ふつうあんな山みたいな怪獣を目にしたら一目散に逃げ出したくなるのが普通の人間です。しかしハルオ君は恐怖などまったく表に見せず、「ゴジラ―!! ぶっころーす!!」と何度も何度もあの巨体に向けて特攻していくあたり頭の配線が2,3本ぶっとんでるとしか言いようがありません。でもまあこれくらいエキセントリックなやつでないとゴジラとの真っ向勝負はできないでしょう。芹沢博士や矢口蘭堂に並ぶ怪獣キラーになれるかどうか、これからの成長に注目です。というか『進○の巨人』のエ○ン君とよく似ておりますね。
あと主人公を絶望に追い込む脚本虚淵玄氏お得意のストーリー展開に今回も引き込まれました。ただ虚淵さんの真骨頂はむしろストーリーの中盤あたり。だいたいその辺で主人公の世界観を根底から揺るがす衝撃的な事実が明らかになり、お話がどう解決するのかさっぱり予想がつかなくなります。というわけで1作目終盤のアレもまだまだ前フリにすぎず、本当のショックは2作目あたりに待っているものと思われます。ハルオ君のさらなるあがきに期待しましょう(ひどい)
とりあえず次はもう少しいろんな種類の怪獣が出てくると嬉しいですね… ちなみに2作目『決戦・起動増殖都市』のポスターにはメカファンには嬉しい「アレ」の姿がちらっと描かれております。その辺にまんまと踊らされるワタクシ。『シン・ゴジラ』に比べるとあんまり売れてないようなので無事完結までたどり着けるか少々危なっかしいですが、東宝を信じて応援していこうと思います。というわけで第二部は来年5月の公開。そして丸一年後の11月あたりで完結編…という計画なんでしょうか。なんとかついていくのでスタッフのみなさんがんばってくだされ
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