« 冬来たりなば、猿遠からじ マット・リーブス 『猿の惑星 聖戦記』 | Main | ボンクラのニャンダフル・ライフ ジェームズ・ボーエン&ロジャー・ポスティスウッド 『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』 »

November 08, 2017

正義は金 FROGMAN 『DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団』

Photoいまだかつてないアメコミ映画ラッシュとなった2017年。今回はその中でも群を抜いて低予算の日本代表的作品をご紹介します。『DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団』、参ります。

今日も赤貧にあえぎながら世界征服に励む秘密結社鷹の爪団。だが彼らの発明になぜか興味を抱いた天才犯罪者ジョーカーが「鷹の爪団」に接触を図ろうと来日する。ジョーカーの野望を阻止すべくスーパーヒーローチーム・ジャスティスリーグは後を追うが、主要メンバーのバットマンはある事件のショックからひきこもりになってしまっていた。

マーベルが六本木ヒルズで展覧会を開いたりファッション関係から女子たちの興味をひいたりしてるのに比べ、DCはチャンピオンにコミカライズを連載したり茅ヶ崎に専門店を開いたり果ては『鷹の爪』とコラボしたり… どうもマイナーな方へマイナーな方へ進んでいってるような気がしてなりません。まあ要は面白ければそれでいいんですけど。

『鷹の爪』映画の特色に画面の右端に備えられた「予算メーター」というものがあります。映画の中で予算が消費されればされるほどゲージがどんどん下がっていくという。しかしただでさえ低予算の『鷹の爪』シリーズに莫大な製作費がつぎこまれてるDCの面々が本気で暴れたらどうなるか。3分と持たずに映画は終了してしまいます。ではどうやって約二時間もたせればいいのか… まあこれまでシリーズを観てきた方にはおなじみの「あの裏ワザ」でお金をかき集めてくるわけですね。その浮いたお金で作られた白組やプロダクションI.Gの本気映像には目を見張るものがあります。そして平常時の低予算画風とのものすごい落差が独特のギャグになったりしています。

しかし映画を観てる時は気楽にケラケラ笑っておりましたが、「映画と予算」を巡る問題について考えると頭を抱えてしまいます。今公開中の『ブレードランナー2049』にも顕著ですが、その週の売上第一位を記録しても製作費・広告費においつかないと「大コケ」と言われてしまったりする。じゃあその分予算を抑えればいいじゃん、ということになりますけど、それが簡単にできたら誰も苦労しないわけで。あとどう考えても当たらなそうな企画にものすごい額のお金がぶっこまれるのも謎であります。投資する方たちはそれなりの勝算があるのか、それともわかっちゃいるけどやめられないのか。本当に映画ビジネスというのは難しいですね。

横道にそれました… ほかの見どころとしましては『レゴバットマン・ザ・ムービー』とはまた別の角度からバットマンの本質に迫っていたり。ブルース・ウェインは両親が殺されたからバットマンになったわけですが、もしこの悲劇が未然に防がれていたらどうなっていたか。このアンサーがなかなかにひどい(笑) 他にもアクアマンをサバ夫よばわりしたりワンダーウーマンをオカン扱いしたり… 面白いけどひどい。よくDCが許したな…とも思いましたが、アメコミは自社でもっとひどいパロディをやったりするのでこれくらい全然許容範囲なのでしょう。あとテラスハウスやあれやそれといった日本作品のわかりやすいパロディもあちこちにちりばめられております。

ちなみにこの映画東京までわざわざ出張って観に行った(アホだ)ら、ラッキーなことに舞台挨拶つきでした。マスコミがひいた二回目のあいさつだったせいか、監督が本音をぶっちゃけたりキャストのテンションが低かったり、両者が険悪なムードになりかかったり… 予想してた華やかな感じでは全然ありませんでしたが、それはそれで見ごたえがありました。特に印象に残ったのは一同のお金の失敗についてのコメント。バットマンの声役の山田孝之氏は「金貸しの役を長いことやってたので、お金の使い方は堅実になりました」と語っておられました。イイネ!!
20171021_151536他の本場のアメコミ映画と比べると上映館がだいぶ少ないのが泣かせどころですが、それでもファンであれば観ておいて損はない一作です。『DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団』はたぶんまだ全国各地で細々と公開中。できればもう少しスクリーン増えますように。彼らの聖地島根では無事かかるようでほっとしてます。


|

« 冬来たりなば、猿遠からじ マット・リーブス 『猿の惑星 聖戦記』 | Main | ボンクラのニャンダフル・ライフ ジェームズ・ボーエン&ロジャー・ポスティスウッド 『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』 »

Comments

昨日までまたまた安芸の国行ってました(笑)

このレビュー見てから鷹の爪団動画見てて
今更これの面白さに・・・気付いた俺は
・・・・・・・・遅すぎだ(爆)!

>「予算メーター」
吹いたwwwww!

そういえば、深夜アニメ系統でも
アンだけ残念扱いされた「マクロスデルタ」も
劇場版作ると言う・・・・・・・・・・。
量販ではさっぱり売れなかった
プラモ叩き売りされてるにも
拘らず強行するのは、興行収入やグッズで
賄える自信あるんだろうな・・・・・・

金さえ用意できれば何してもいいシステム
も倫理(何やっても許される)的
には・・・・どうかと思う。
むしろ俺には、予算メーターでさえネタとして使う
鷹の爪団の開き直りっぷりのほうが
なんか清清しくみえるわ。

そうそう・・・・・・・・・・・・
「この世界の片隅に」
広島八丁堀の映画館で未だ上映中!
改めてこの映画の起こした奇跡が
とんでもないものだと思い知らされた・・・・・。

Posted by: まさとし | November 26, 2017 11:56 AM

>まさとしさま

実は自分も映画館のマナームービーとEテレのアニメくらいでしか見たことがなく。過去作ちゃんと観ようと心に誓うのでした

金の問題は映画だけじゃなくアニメ業界にも言えることですよね。配信サービスネットフリックスがドバっと予算を出して労働者にもきちんと報酬が出る形ができつつあるようですが、このままうまくいくのか。いくといいですけど

この世界~は世界でもあちこちで旋風を巻き起こしているようで。すごいすごい

Posted by: SGA屋伍一 | November 28, 2017 09:56 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 正義は金 FROGMAN 『DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団』:

« 冬来たりなば、猿遠からじ マット・リーブス 『猿の惑星 聖戦記』 | Main | ボンクラのニャンダフル・ライフ ジェームズ・ボーエン&ロジャー・ポスティスウッド 『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』 »