瞬間、心、重なっちゃったりして ナチョ・ビガロンド 『シンクロナイズド・モンスター』
なんでかよくわからないけど東宝からクレームを受けたという噂のヘンテコ怪獣映画が、ようやっと日本でも公開されました。実力派女優アン・ハサウェイを主演に据えた『シンクロナイズド・モンスター』、ご紹介します(原題は『COLOSSAL』)。
ネットの炎上でライターの職を失ってしまったグロリアは、酒浸りの日々を送っていた。ついには彼氏に三下り半をつきつけられ、田舎に帰ることに。再会した同級生オスカーのバーで働くことになった彼女は、ある日店のテレビで「韓国に怪獣が出現した」というニュースを見て驚愕する。そしてさらにたまげたごとに、グロリアは怪獣が自分の動作と全くシンクロしていることに気づいてしまう。怪獣とグロリアの間にはいったいどんなつながりがあるのか?
いやいやいや、この発想のバカっぽさ、並大抵ではありませんよね。怪獣もあれも出てくるし、これは絶対に俺たちオタク向けの映画だろう!と胸ワクワクで観に行ったのですが、ところがこれがなかなかオタク…というか、非モテ・キモメンにはつらい映画でした。
お話軸となっているのはもちろんグロリアなんですが、彼女の対となっているのが同級生のオスカー。地元でずっと細々と暮らしているさえない男。最初はなかなかいいやつそうに見えるのですが、ストーリーが進むにつれだんだんとそのうちに潜む暗黒面が明らかになってきます。もしグロリアが帰ってこなければ、そのまま田舎で平々凡々な毎日を送っていたのかもしれませんが、うっかり美人の同級生と親しくなった彼は慣れない状況に我を失い暴走を始めます。
これ、怪獣を除けばいかにも現実にもありそうな話ですよね。オタク・非モテというのは普段あまり女性と接点がないゆえに、少し優しくされただけで全力で勘違いに走ってしまう。これが十代や二十代ならともかく、中年のおっさんとなると傍から見ていて痛々しくてなりません。ちょっと冷静になれば自分がいかにかっこわるいか気付そうなものなのに。孫子の兵法にいわく。「敵を知り、己を知らば百戦危うからず」 年甲斐もなく恋をするときはまず自分のスペックを客観的に判定することです。そして性能が段違いの相手には決して挑んではなりません。非モテおっさんの1人として、このことを常々肝に銘じておきたいものです。
…話がだいぶ横道にそれました。自分としてはそれでもやっぱり非モテ仲間として、オスカーに親近感を抱かずにはおられず。暴走する彼を見て「キモメンに悪い奴はいない! オスカー正気にかえれ!」と改心できるよう必死に祈っておりました。果たしてその祈りが通じたかどうかはご自分の目で確認されてください。
他にも「怪獣映画なのに怪獣があまり動かない」という不満もありましたが、やっぱり「怪獣とシンクロする」というこのアイデアを、自分はまず評価してあげたい。あとオスカーに弱みを握られて八方塞がりになってしまったグロリアが、どうやって窮地を抜け出すのかもハラハラさせられました。この辺だけでも一応観る価値はあるかと思います。
『シンクロナイズド・モンスター』はすでに第一陣は終わったところも多いですが、これからさきかかる劇場もいくつかあるようで。くわしくは公式サイトをご覧ください。
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Comments
「たは」または「あちゃー」と言っているようにしか見えないイラスト彼女。
ほとんどクズしかいなかったオトコたちで、彼女がかわいそう。まー、アル中でしたから多少は苦労しないといかんのか。
Posted by: ボー | November 28, 2017 11:25 PM
>ボーさん
そういえばこれ、『マイティ・ソー/バトルロイヤル』とハシゴして観たんですけどね。「アル中だけどがんばる女の子」つながりでしたw 二人とも避けはやめられなさそう
Posted by: SGA屋伍一 | December 04, 2017 10:04 PM