ちょっと笛吹いてみただけの異邦人 リドリー・スコット 『エイリアン:コヴェナント』
なぜかここにきて70年代の懐かしSFの続編やら前日談やらが相次いで公開されます。本日はそのトップバッター『エイリアン:コヴェナント』をご紹介します。
人類発祥の謎を解き明かしに飛び立ったプロメテウス号が消息を絶って11年。いままた植民のためはるか遠くの惑星を目指し、宇宙を旅するコヴェナントという船があった。途中ニュートリノの衝撃波を受け、コヴェナント号は破損。謎の電波の発信源から近くに居住可能な星があると知ったクルーは、協議の末その惑星を調査することに。だが彼らはその地に想像を絶する怪物がいることを知らなかった。
「コヴェナント」とは旧約聖書において神がイスラエル人と結んだ聖なる契約のこと。また小難しいタイトルつけよったな…と思いましたが、映画評論家の町山智裕氏によるとこの映画には聖書のみならず、北欧神話やワーグナー、シェリー夫妻の詩、エジプトの伝説など様々な古典からの引用、オマージュがあるそうで。1作目のころはあんなに単純なモンスター映画だったのに…
でもまあ自分も触発されて小難しいこと書いちゃおうかな♪(というわけでここから例によってバンバンネタバレしていきます。どうぞご了承ください)
まずコヴェナント号が目的地を手近な場所に変更しこっぴどいめにあうという流れは、聖書の民数記で「約束の地」に向かうことをしりごみしたイスラエル人が神様からめっちゃ怒られるエピソードを思い出させます。
あるいは造物主の命令で宇宙に行ったはいいものの、置き去りにされたロボ(ファスベンダー)が再び地球人類と合流するという流れは、やはりイスラエル人が神の指示でエジプトで移民生活を送ったのち、また故国へ戻ることになったという話を連想させます。
リドスコ監督はそういえば少し前にモーセのお話を直で映画化されてましたよね。彼にはこの辺がとりわけ興味のある題材なのかもしれません。他にも聖書関連でデイヴィッドが異星の巨人族を滅ぼしていくあたりは、彼の名の由来であるダビデ王が巨人を打倒した伝説を思い出させます。
あと謎の惑星に降り立って次から次へと襲われる…というストーリーは「1」「2」「プロメテウス」に続き4回目かよ…とも思いましたが、これもいわゆるコンラッドの『闇の奥』オマージュなのかもしれません。春の『キングコング』や『地獄の黙示録』など、この作品も時を越えていろんなところで流用されてますね。
「なにかいる」という情報をもとに未開の地へ向かい、目的であった謎の多い「王」を見つけはするが、結局は謎がさらに深まって終わってしまうという… そういうスタイルは『コヴェナント』も『プロメテウス』も『闇の奥』の変奏曲と言えるかもしれません。
妄想話はこれくらいにして肩の力を抜きます。
前作『プロメテウス』はわかりやすいオール巨人阪神のどつき漫才みたいな面白さがありました。対して「コヴェナント」は二人のファスベンダーによる極めてシュールなコントが続きます。はじめはいささかぽかんといたしますが、慣れてくるとこれがなかなかツボにはまります。
お笑い関係でいうとヒロインの方がどうにもハリセンボンの春菜さんに見えてしまうのも困りました。『ファンタスティック・ビースト」の時はもっとシュッとした美女に見えたんですが… まあその春菜さん、エイリアンを相手に重機をフル活動しての大活躍ぶりでございました。無駄にきめ細かいメカ描写もこの映画の魅力のひとつです。
リドスコ監督の前作『オデッセイ』も大変良い映画でしたが、やっぱり彼にはこういう臓物とか血が飛び散る映画の方がお似合いですよね。御年79歳だそうですがまだまだがんばっていただきたいです。
監督はこの後はエイリアンよりもファスベンダーロボを中心に、あと2本くらい作りたいとのことですが、「コヴェナント」がちょっと赤字臭いゆえに実現は厳しいかもしれません。せめてあと1本くらいに抑えて大団円という風にはいかないでしょうか。
今月末にはリドスコのもうひとつの人気作である『ブレードランナー』の続編も公開。監督がいま活躍中のドゥニ・ヴィルヌーヴということでこちらも大変楽しみにしております。
Comments
コヴェ(これ)ナント、エイリアン!?
Posted by: ボー | October 14, 2017 08:40 AM
>ボーさん
来るものは拒めなんと… く、苦しい
Posted by: SGA屋伍一 | October 16, 2017 10:21 PM
笛を吹くなら黒木香くらい呼んで来い。
Posted by: ふじき78 | October 19, 2017 09:55 PM
>ふじき78さん
わき毛で一世を風靡しましたよね…
Posted by: SGA屋伍一 | October 23, 2017 09:50 PM