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September 26, 2017

女神はアイスを愛す パディ・ジェンキンス 『ワンダーウーマン』

N1新作が公開される度になぜか賛否両論が巻き起こってしまうDCエクステンデッド・ユニバース。しかしこの度はじめて圧倒的な支持を得て世界に大旋風を巻き起こした作品が登場しました。『ワンダーウーマン』、ご紹介します。

ゼウス神により命と怪力を授けられた不思議な女の子ダイアナは、茶目っ気を振りまきながら女だけの島「セミッシラ」で平和な生活を楽しんでいた。そんな折ゼウスにより設けられた障壁をつきやぶり、外界から一人の男がやってくる。彼の名はスティーブ。独軍の攻撃から逃れてきた英国の軍人だった。彼の口からいま世界が戦火に包まれていることを知ったダイアナは好奇心と正義感から、混乱を治めようと故郷から旅立つ決心をする。

ワンダーウーマンが世に出たのは1941年。おそらくアメコミ史上初のスーパーヒロインであるかと思われます。DCコミックスではスーパーマンやバットマンと肩を並べるほどの重要なキャラクターであり、3人まとめて「トリニティ」と呼ばれることもあります。ライバルであるマーベルコミックスにはこれほどの存在感とキャリアを持つヒロインはおりません。
しかしながらスーパーマンのちゃんとした映画が70年代、同じくバットマンの映画が80年代に作られたことを考えると、ワンダー姉さんの映画化は実に時間がかかりました。それほどに果たして売れるのかわからないキャラだったのでしょう。わたしもアメコミファンながらずっと疑問だったのです。コミックのワンダーウーマンっていったいどんな層が読んでいるんだろうと。米国の一般の女児はまずコミックなど読まないだろうし、男児からもそんなに支持があるようには思えない。ただいつの時代にも一定の少数のファンがいて、そういう人たちに支えられて70年以上継続してきたのかな…と考えてました。

ですから今回の映画が米国ほかで一大センセーションを巻き起こしたのはびっくりでした。それだけ意外とワンダーウーマンの潜在的ファンがいた…ということではないようです。アメリカでも多くの人は映画は観てもコミックまでは読まないようなので。ヒットの原因は正直よくわかりませんw ガル・ガドットがあまりにもはまっていたこと、映画史上初のスピンオフでない本格的なスーパーヒロインものであること。男たちを従え凛々しく戦うダイアナの姿が多くの女性たちの喝采を浴びたこと… 自分に思いつくのはそんなもんです。
あと「これはアメコミ版『ローマの休日』である」と評してた方が何名かおられましたが、自分がとりわけ連想したのはあの『タイタニック』でした。以下ネタバレくさいので未見の方はご注意ください

1枚の画から20世紀初頭の若かった自分を思い出すおばあちゃん(失礼)。狭い箱庭しか知らなかった自分は、一人の陽気な男の手で広い世界を知る。だが楽しかった時はつかの間。男は身を挺して女を救い、笑顔を浮かべたまま散ってしまう…

まあジェームズ・キャメロンの黄金パターンですね。キャメロンは『ワンダーウーマン』のヒットに際しあれやこれや文句を垂れたそうですが、自分に近いセンスを感じるがゆえにどうしても気になってしまうのでしょう。そして自分はこのキャメロン・パターンに大変弱いのです。

監督のパティ・ジェンキンスさんは『モンスター』でオスカーを取ったほどの人なので、てっきり作りたい文芸作品の資金稼ぎのためにこのオファーを受けたのかと思ってましたが、本気でずっと『ワンダーウーマン』が作りたかったというので驚きました。その愛情があったればこそ、ここまで気合の入ったエンターテインメントがこさえられたのでしょう。続編もひきつづきメガホンを撮られるということなので楽しみでございます。

しかしどうもMCUに比べて勢いの定まらないDCEUが、ハーレクインやダイアナといった「ヒロイン」たちの力でここまで猛追を見せるとは予想だにしませんでした。毎年そろそろピークを過ぎるかと思ってるアメコミ映画ですけど、ここにきて女性ファンもぐっと増えたようなのでもう少し快進撃が続きそうです。

N一躍トップの人気を得たダイアナさんは年末のDCヒーロー集合映画『ジャスティス・リーグ』にも当然出演。バットマンやフラッシュをオカンのようにしばきながら駆り立てる姿が今から目に浮かびます。あとその前にオマケ的に?公開される『DCスーパーヒーローズ vs 鷹の爪団』にも登場するはず。これ上映館少ないので、もう少し増えてくれるとよいのですが…


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Comments

伍一くん☆
やっぱり女性票でしょう!
今度のジャスティスリーグがコミックのような水玉パンツでなくて良かったですね☆

Posted by: ノルウェーまだ~む | September 29, 2017 01:52 PM

こんばんは。
アメコミといえばごいちさんなんで勉強になります。
ガル・ガドットは本当にハマり役でしたよね。
女性からみてもホレちゃうカッコ良さです。
水玉パンツ...彼女ならカッコよく見えるのかも....でもいやだな 笑

Posted by: yukarin | October 01, 2017 08:31 PM

>ノルウェーまだ~むさん

DCEUはスーパーマンの赤パンも抹消しちゃいましたからね… ちょっとさびしい

Posted by: SGA屋伍一 | October 02, 2017 09:47 PM

>yukarinさん

ワイスピではお色気むんむん(死語)のガドットさん、こちらではひたすら凛々しく勇ましかったです。あと多くの人が言ってますがわずかながらのメガネっ子姿に萌えた~

Posted by: SGA屋伍一 | October 02, 2017 09:49 PM

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