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August 01, 2017

ぼくの伯父さんの痛切 ケネス・ロナーガン 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

Photoまだ今年のアカデミー関連の話をしています。日本公開が遅い+地方はさらに遅い+わたしが書くのが遅い の3連コンボなのですね。今回はケイシ―・アフレックがお兄さんに先駆けて主演男優賞をもっていってしまった『マンチェスター・バイ・ザ・シー』をご紹介します。

ボストンで便利屋として淡々と暮らしているリーのもとに、ある日突然兄の訃報が入る。甥のパトリックのケアや葬儀のため久しぶりに故郷の「マンチェスター・バイ・ザ・シー」に戻るリー。そのままこちらに帰ってきてほしいと願うパトリックだったが、リーにはそこに長く住めない深刻な事情があった。

なかなか地味で物静かな映画です。海辺の田舎町に帰ってきた男と甥っ子の、それほど激しくもない日々をつづった内容なので。なんとなく予告や宣伝からシリアスで切ないムードを予想していたのですが、むしろユーモラスですらありました。パトリック君が繊細な子かと思えばけっこうちゃらんぽらんなところも、感動に水をさします(笑) でもまあその穏やかなで人を食った語り口が心地よく感じられる作品でした。冬景色の落ち着いた街並みに流れるクラシック調のスコア。なんつーか、アメリカは田舎町ですら風景や住人がおしゃれだなあと思いましたよ。でも今調べたら「景色のいい浜辺や景勝地で知られる」とありました。もともとそういうとこだったのね…

ただそのゆったりまったりしたムードの最中、突然ナイフでこちらの胸をズブズブッと刺し込んでくるようなくだり1回だけあります。そのあとまた元の調子に戻るんですが、前後とのあまりの空気の違いに強烈なインパクトを残します。わたしたちの近隣の普通に見える方の中にも、もしかしたら筆舌に尽くしがたい悲劇を経験してる人がいたりして…なんてことを思わされます。

以下、結末までネタバレしてるのでご了承ください。

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これが普通の感動映画だったら、リーが故郷で過ごすうちに過去の悲劇を乗り越え、「もう一度この街でやりなおそう」と決意するところで終わるでしょう。でもやっぱりリーはトラウマを克服できないし、失ったものも取り戻すことはできないのです。で、彼は違う選択をするわけですけど、それがどちらかというと肯定的に後味悪くなく描かれてるのに感心しました。人間どうやったってとりかえしのつかないことや癒えない悲しみもあるけど、それでもそれなりになんとか生きていく道もあるもんだ…ということを教えられたような。わたしはそんなに…というかまったく深刻な過去などありませんけどね。

ケイシ―・アフレックの演技は初めて見ましたが、高倉健のような朴訥な印象でした。お兄ちゃんが監督した評判の高い『ゴーン・ベイビー・ゴーン』などもいつか観たいものです。そしてそのうち兄弟で仲良く共演してる映画も観てみたいものですね。殺しあう話でも支えあう話でもかまわないので。

Photo_2『マンチェスター・バイ・ザ・シー』はもう公開からけっこう経ってますが、根強いファンが多いのかまだちょぼちょぼ上映館残ってますね。くわしくは公式サイトをごらんください。アカデミー関連の話題もまだ終わりません。近日中に『ハクソー・リッジ』の感想も書きます。邦題が波紋を呼んだ『ドリーム』もまだ待機中ですしね…

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