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August 09, 2017

明るい海賊計画 完結編(?) ヨアヒム・ローニング&エスペン・サンドベリ 『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』 

Pocs1夏休みも本番。ここぞとばかりに娯楽大作も次々と公開されております。本日はその先陣を切った名物シリーズの最新作『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』をご紹介します。

相変わらず無茶な悪巧みに精を出している海賊ジャック・スパロウ。だがそのいい加減さが祟って部下に見放された上に、海軍に捕まって死刑を宣告されてしまう。それでものんきにふるまうジャックの前に、かつて共に冒険した船乗りウィルの息子が現れる。彼は父にかけられた呪いを解くため、ジャックに力を貸してほしいと頼むのだが…

まず冒頭からこれまでもちょくちょくあったバスター・キートンへのオマージュ的アクションがドカンとあり、その時点でけっこう満足してしまった自分がいます。そういえば前作『生命の泉』ではあからさまにチャップリンの某作品を再現したシーンがあったなあ。
また「お宝の場所のヒントが星座に隠されている」というのも面白いアイデアでした。古来船乗りは星を頼りに航海をしたと言いますが、ようやくその辺が生かされたストーリーとなっております。

監督はノルウェー出身の監督コンビ、ヨアヒム・ローニングとエスペン・サンドベリ。この二人、『コン・ティキ』という「本当にあった」渋い航海記の映画で知られております。そちらでは必要以上に頻繁なサメ描写が特に印象に残ったのですが、この「最後の海賊」でも変わった形でサメを暴れさせておりました。おそらく最近のサメ映画ブームを強く意識してるものと思われます。

さらにバミューダ・トライアングルの秘密や幽霊船のヘンテコギミック、おなじみの大砲ドッカンドッカンやお宝のびっくりパワーなどもいちいち楽しませてもらいました。まあもともとこのシリーズにはそういうおかしなギミックとか、海賊ならではのアクションを期待してるのであって、ストーリーはよっぽど破綻さえしてなければどうでもいいよ、というスタンス。ですが今回二組の親子の「ちょっといい話」が軸になっていたりして、ついホロリと来てしまいました。年食って涙腺が弱くなってるのを差し引いても、パイカリに泣かされるとは不覚でございます。

こっから先はエンドロール後までネタバレで…

そう、この映画3作目『ワールズ・エンド』のオマケシーンからちょうど10年後の設定になってるのですね。あれからもう10年も経ったんかい…と時間の流れの早さに軽く絶望しますが、10年越しに果たされたハッピーエンドにはシリーズを追ってきた身としては感動せざるを得ません。だのに… だのにです。せっかくめでたしめでたしで終わった話が最後のオマケで少々水を差されてしまったのが残念です。あれは映画史上「もっともいらなかったエンドロール後のオマケ」と言っても過言ではないでしょう。例えるならすばらしい演技をしてびしっと着地を決めた体操選手が、マットを降りたところでずるっとズッコケたような印象でした。

Pocs2これまでずっと爆ヒットを続けて来たパイカリも、今回は北米成績が思わしくなかったようで、プロデューサーも「これが最後」とおっしゃってるようです。だったらあんなわけわかんねーヒキを入れんじゃねーよ!! ハアハア、ハアハア、ハアハア… すいません、ちょっと熱くなりました。たぶんまたいずれパイカリは作られると思いますが、ジョニデさんもいいお年ですし、次はそろそろリブートになりそうな気がします。

オマケに今まで書いたシリーズの感想リンクを貼っておきます。
『呪われた海賊たち』&『デッドマンズ・チェスト』
『ワールズ・エンド』
『生命の泉

本当にどうでもいことしか書いてないな…


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August 08, 2017

のこぎり崖は命ガケ メル・ギブソン 『ハクソー・リッジ』

Photoというわけでまーだアカデミー関連の話を続けます。本日はメル・ギブソンが約10年ぶりに監督に復帰した待望の映画『ハクソー・リッジ』をご紹介します。

第二次大戦たけなわのころ、一人の風変わりな青年が陸軍に入隊する。その青年デズモンド・ドスは信仰ゆえに人は殺せない、銃は持てないと主張し、あくまで衛生兵としての任務に専念させてほしいと上官に懇願する。だが軍隊がそんな「異物」を認めるはずもなく、テズは彼を除隊させようとする圧力と戦うことになる。

太平洋戦争の激戦地・沖縄で銃弾が飛び交う中、多くの兵士の命を救った実在の人物の物語。このドスさんの思考がちょっと常人にはわかりかねるところで、「人を殺したくないならそもそも戦争に行かなきゃいいんじゃない?」「人の命が大切なら戦争をやめさせる方向でがんばらなきゃいけないんじゃない?」とわたしなんかは思います。あとドスさんは何かにつけて「神様が」と口にするのですが、その辺が無信心な人間からしたらちょっと狂信的にすら感じられたりします。

ですが我々からみたら「?」と思える行動も、本人にしてみれば矛盾するものではなく、ちゃんと筋道だって導きだされた結論なのでしょうね。信仰というものは多かれ少なかれそんなところがあります。あと動機がどうあれ彼の尽力で死人の数が少しでも減ったならば、それはそれで称賛されるべきことなのではなかろうかと。

「衛生兵」で思い出すのは『プライベート・ライアン』の冒頭のシーン。銃弾の雨の中無数の兵士たちがバタバタ倒れていく中、あちらこちらから「衛生兵!」という呼び声が起きるのですが、この圧倒的な死の量産の前にはあまりにも無意味だよな… と思ったものでした。そんな状況にあっても、あきらめずに「あと一人、あと一人」と自らも傷つきながら救援に奔走するドスさん。その恐るべき信念にしょっちゅうフラフラ迷ってる身としては、頭を垂れずにはいられません。

そしていろいろ問題を起こしながらも信仰心が篤く、監督としてもすぐれた才能を有しているメル・ギブソンもまた矛盾だらけの存在です。本当にもっと人格がまともならこの10年の間にもう2、3本撮れただろうに…と、そのことが残念でなりません。そして本人もそのことを反省したのでしょうか。『アポカリプト』や『ブレイブ・ハート』では戦闘シーンや残酷描写をウヒウヒ楽しんで作ってるな~と感じられたのですが、こちらではゴアシーンが普通に痛々しく、戦争への悲しみが素直に伝わってくるような作りになってしまいました。立派になられたのね…と感慨にふける反面、「ちょっと無理してない?」と思わないでもありません。

主演は元スパイダーマンのアンドリュー・ガーフィールド。彼は先日『沈黙』でも、信仰ゆえに苦しい立場に立たされる役でした。あと自分の信念ゆえに日本くんだりまで来ることになるところも一緒でした。なんか面白い偶然であります。ともあれその熱演が認められて、本作でアカデミー主演男優賞にノミネートされたのだから大したものです。『アメイジング・スパイダーマン』シリーズが中途半端に終わってしまったのは残念ですが、代わりにこういう路線で引き続き活躍していければよいですね。

Photo_2『ハクソー・リッジ』はもう完全に公開終了したかと思ってましたが、終戦記念日の時期だからかそこそこ上映館残ってますね。くわしくは公式HPをご覧ください。メルさんの次回作はなんとあの『パッション』の続編…つまりキリストの復活の話という噂もあります。なんにせよ問題おこさずに無事映画が作れますように…

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August 01, 2017

ぼくの伯父さんの痛切 ケネス・ロナーガン 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

Photoまだ今年のアカデミー関連の話をしています。日本公開が遅い+地方はさらに遅い+わたしが書くのが遅い の3連コンボなのですね。今回はケイシ―・アフレックがお兄さんに先駆けて主演男優賞をもっていってしまった『マンチェスター・バイ・ザ・シー』をご紹介します。

ボストンで便利屋として淡々と暮らしているリーのもとに、ある日突然兄の訃報が入る。甥のパトリックのケアや葬儀のため久しぶりに故郷の「マンチェスター・バイ・ザ・シー」に戻るリー。そのままこちらに帰ってきてほしいと願うパトリックだったが、リーにはそこに長く住めない深刻な事情があった。

なかなか地味で物静かな映画です。海辺の田舎町に帰ってきた男と甥っ子の、それほど激しくもない日々をつづった内容なので。なんとなく予告や宣伝からシリアスで切ないムードを予想していたのですが、むしろユーモラスですらありました。パトリック君が繊細な子かと思えばけっこうちゃらんぽらんなところも、感動に水をさします(笑) でもまあその穏やかなで人を食った語り口が心地よく感じられる作品でした。冬景色の落ち着いた街並みに流れるクラシック調のスコア。なんつーか、アメリカは田舎町ですら風景や住人がおしゃれだなあと思いましたよ。でも今調べたら「景色のいい浜辺や景勝地で知られる」とありました。もともとそういうとこだったのね…

ただそのゆったりまったりしたムードの最中、突然ナイフでこちらの胸をズブズブッと刺し込んでくるようなくだり1回だけあります。そのあとまた元の調子に戻るんですが、前後とのあまりの空気の違いに強烈なインパクトを残します。わたしたちの近隣の普通に見える方の中にも、もしかしたら筆舌に尽くしがたい悲劇を経験してる人がいたりして…なんてことを思わされます。

以下、結末までネタバレしてるのでご了承ください。

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これが普通の感動映画だったら、リーが故郷で過ごすうちに過去の悲劇を乗り越え、「もう一度この街でやりなおそう」と決意するところで終わるでしょう。でもやっぱりリーはトラウマを克服できないし、失ったものも取り戻すことはできないのです。で、彼は違う選択をするわけですけど、それがどちらかというと肯定的に後味悪くなく描かれてるのに感心しました。人間どうやったってとりかえしのつかないことや癒えない悲しみもあるけど、それでもそれなりになんとか生きていく道もあるもんだ…ということを教えられたような。わたしはそんなに…というかまったく深刻な過去などありませんけどね。

ケイシ―・アフレックの演技は初めて見ましたが、高倉健のような朴訥な印象でした。お兄ちゃんが監督した評判の高い『ゴーン・ベイビー・ゴーン』などもいつか観たいものです。そしてそのうち兄弟で仲良く共演してる映画も観てみたいものですね。殺しあう話でも支えあう話でもかまわないので。

Photo_2『マンチェスター・バイ・ザ・シー』はもう公開からけっこう経ってますが、根強いファンが多いのかまだちょぼちょぼ上映館残ってますね。くわしくは公式サイトをごらんください。アカデミー関連の話題もまだ終わりません。近日中に『ハクソー・リッジ』の感想も書きます。邦題が波紋を呼んだ『ドリーム』もまだ待機中ですしね…

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