夜でも黒田 ガイ・リッチー 『キング・アーサー』
あ、これもう終わってるわ… 英国における伝説の英雄を、おしゃれなサスペンスを得意とするガイ・リッチーが映画化。『キング・アーサー』ご紹介します。
たぶん中世初期。イングランドのユーサーは絶大な力を持つ聖剣エクスカリバーをもって国を治めていたが、欲望に取りつかれた弟のヴォーディガンにより妻と共に謀殺されてしまう。だがその一子アーサーは辛くも生き延び、スラムで娼婦たちに養われて成長していった。そして彼がたくましい青年になったころ、水の底に沈んだ聖剣が再び姿を現す。
アーサーを題材にした映画は2004年にもアントワーン・フークアが手掛けております。そちらはアーサー王の出自がローマの護民官だったりと、かなり「史実はこうだったんじゃないの?」ということを意識して作られていました。対して今回は差別化のためでしょうか。のっけから怪しげな魔術師が登場したり、ばかでかい戦象が出てきたりします。アーサー王という材料でいかにぶっとんだものができるか、そんな試みのもと作られてるような。大体最初イングランドをせめてくるのがモードレッドという悪者なのですが、たしかこの人原典ではアーサーの息子だったはず… その時点でもうオリジナルのあれやこれやは忘れようと思いました。
で、この映画の見どころはと申しますと、幻の邦題「聖剣無双」からもわかるようにエクスカリバーの絶大なるパワーであります。資格ある者がそれを振るうとたちまち嵐が巻き起こり、電光石火の速さで動けちゃったりする。もはや剣というより魔法のアイテムであります。ファンタジー・伝説系の映画は数あれど、ここまで一本の「剣」にスポットをあてたものはちょっと思い当りません。ただこのエクスカリバーがあまりにもチートすぎるゆえに、アーサーがそれを使いこなすのにかなり時間がかかったりして。まあウルトラマンが終盤のクライマックスまで登場しない、アレみたいな感じです。自分は堪え性のない人間なもんでつい「モタモタせんとはよそのドスふりまわさんかーい」と思ってしまいました。
主演は『パシフィック・リム』の活躍が印象深いチャーリー・ハナム。彼はどうも同年齢のチャニング・テイタムとイメージがかぶってしまうのですが、今回はいかつい髭をたくわえて違いが分かるように努力しておりました。
その主人公と敵対するのが前髪がかなり後退してるのに恐ろしいほどのお色気を放っているジュード・ロウ。明らかに監督がひいきして綺麗に撮っております。それにしても『バーフバリ』といい、『キング・オブ・エジプト』といい、どうして王族の叔父と甥は殺し合いになってしまうのか… それはぶっちゃけ『ハムレット』が元ネタだからでしょう。今更ながらかの名作の影響力を痛感いたします。そういえば『ライオンキング』の監督も「『ジャングル大帝』のパクリでは?」と責められてた時かたくなに「これの元ネタは『ハムレット』です!」と言い張ってたなあ。
さて、この映画なんでか「6部作構想」で企画されていたそうですが、1作目からさっそくコケ気味でどうやらその計画は幻と消えそうな感じです。監督にもその予感はあったのか、大変キリよくあとをひかない形で終わっていて見事でした。おじさんをそそのかした怪物の正体や、魔術師マリーン、ランスロットやグウィネビア姫なんかは続編で出すつもりだったんだろうなあ。あと5作は無理でも、お話を練り直してもう一本くらいできないものでしょうか。
というわけで『キング・アーサー』は現在全国の映画館で絶賛終了中です! 申し訳ございません! リッチー監督も早くも次回作が決まっててなんと実写版『アラジン』をやるとのこと。前作『コードネーム・アンクル』も興行的にイマイチだったので(私は好きですが…)今度こそ大当たりするとよいですね。
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