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July 26, 2017

豪快! マッド・ダディ! マット・ロス 『はじまりへの旅』

Hjt1『ロード・オブ・ザ・リング』で世界的に知られるようになり、その後も個性的な作品に多く出ておられるヴィゴ・モーテンセン氏。本日は彼が8年ぶりにアカデミー主演男優賞にノミネートされた『はじまりへの旅』をご紹介します。

世間とはほとんど関わりを断ち、自給自足で暮らす奇妙な一家キャッシュ家。父親のベンは子供たちに苛酷とも言えるサバイバル教育を施していたが、彼らはむしろ喜んで家長に従っていた。ある日一家のもとに、離れて暮らしていた療養中の母が亡くなったという知らせが入る。彼女の望みどおりの葬儀を行うため、キャッシュ家は初めて一家総出で長い旅に出るのだが…

原題は『キャプテン・ファンタスティック』。なにやらアメコミっぽいタイトルですが、意訳すると「ぶっとんだ家長」とでもいうところでしょうか。最初あらすじをどこかで読んだ時に「原始人一家の冒険物語」みたく紹介されてたのでかなりコメディ色の強い話を想像しておりました。たしかに笑えるところも多々ありましたが、意外と家族や教育について真摯なメッセージもこめられております。あとお父さんのベンさんはなかなかのインテリで十代の子供たちに難しい物理学の本を読ませ、レポートを求めたりする。そういうところはフリントストーンやギャートルズとは一線を画しておりました。

実はこの映画を観る少し前に、似たような一家のドキュメンタリーを観ていたので、鑑賞中そちらのこともちらちら思い出してしましまいました。「われら百姓家族」というタイトルで、キャッシュさんちほど隔絶されてないにせよ、山の中でできるだけ自給自足にいそしみ、子供たちも学校へ満足に通っていなかったりする。そしてやはりお母さんは離れたところで暮らしてたりして。検索すれば色々感想記事が出てくるかと思います。

以後、どんどんネタバレしていきますのでご了承ください。

そちらのお父さんが山中で暮らしていたのは子供たちにきれいな環境で過ごしてほしい…という動機でしたが、ベンさんのワイルドライフもきっかけは奥さんに元気になってほしいから、というものでした。しかし時として才能に秀でた方は一度こうと決めたらバランスのことも考えず、いきつくところまでいってしまうのですね。ベンさんの異常とも思える教育もそんな狂気により行われたものでした。ただその根底には一応愛情があるゆえか、子供たちがキャッキャ言いながら生活を楽しんでる(一人を除いて)のが微笑ましく。奥さんのことも含めて、こういうじんわりと温かい「狂気」もあるのだなあ…と感じ入りました。
けれどもやっぱり世間一般からしたらベンさんの方針はおおよそマトモではないわけで。特に彼の義理のお父さんは何かにつけてベンさんを目の敵にします。そんないけすかないじいさんが子供たちと過ごしていくうちに、いつしか彼への頑なな思いを和らげていくあたりがこの映画で最も心地よいくだりでありました。

人間時にはこもることも必要だと思うのですが、こもりきりだとやはりどこかでひずみが生じてしまう。こもることと周りと交わること、そのバランスを保つことが大事なのではないかと。精神的にまいってる時には、それがなかなか難しかったりするんですけどね。

ある場面でうちしおれた姿を見せるヴィゴさんは等身大のパパさん以外の何物でもなく、LotRや『イースタン・プロミス』でのパワー溢れる役柄とはまるで別人でありました。そんで最近は『危険なメソッド』『オン・ザ・ロード』、そしてこの映画でも「狂気のインテリ」的な役が続いております。今更いうまでもありませんが、本当に幅の広い方であります。またしてもオールヌードも披露してくれたし… これからもますますのご活躍に期待しております。

20070919183851『はじまりへの旅』はもう限りなく公開が終了しておりますね… もう佐賀くらいしか残ってなかった。DVDは10月発売予定です。
となりのイラストはむかーし描いたアラゴルン。最近すっかりお絵かきをさぼっております。まあ誰が期待してるわけでもないし~

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