肉食だけど草食系 ビル・コンドン 『美女と野獣』
それなりにあたるだろうとは思ってましたが、まさかこれほどとは… 本日は現時点で世界・日本ともに今年度No.1ヒット作となっている実写版『美女と野獣』をご紹介します。まずはあらすじから(いらない気もしますが)。
ある山間の村に変わり者だがその美しさで評判のベルという娘がいた。ある日ベルの父親は所要で出かけた際道に迷い、不気味な城に足を踏み入れてしまう。そこで娘への土産に一輪のバラを手折った彼は城の主である獣人の怒りをかい、城に閉じ込められてしまう。父親思いのベルは自分が身代わりとなって城の虜囚となることを「野獣」に申し出る。やがてそこで過ごすうちに、ベルは「野獣」の秘密について知ることになるのだが…
『シンデレラ』「マレフィセント』『ジャングルブック』など、最近自社の名作アニメの実写化に力を入れているディズニー。それは「新作を作らないと権利が切れてしまうから」という理由もありますが、もうひとつには「かつてはアニメでしか表現できなかった映像が、実写でもできるようになったから」ということもあるかと思います。
しかしこのたびの実写版『美女と野獣』にはひとつの壁があったかと思います。それは「しゃべるカップや時計といったアニメでしか描けなさそうなものを、実写でいかように表現するか」ということです。もちろん2014年のフランス版ではそういったものは出てきませんでした。
ですがまあ感心したことに、そういった小道具たちが見事に再現されていて驚きました。ぱっと見普通の家具であり調度品なんですが、上手に目鼻があしらわれていて自然に擬人化されている。そういえばこういうセンス、チェコアニメの作品などでしばしば見かけたような。ちょっと連中の騒ぎ具合がやかましい気もしましたが、もともとこれはそういう作品ですし、そのコラージュ具合が愉快だったので見過ごすことにしました。
ストーリーはよくある少女漫画と少し似たところがありますよね。快活で気持ちの優しい女の子が、ニヒルで意地悪な青年に会い最初は「何よ、あいつ!」とか思ってるわけですが、青年の隠れた優しさとかかわいそうな過去を知るにつれ胸をキュンキュンさせていくという。ただ少女漫画では相手役はワイルドなところはあってもあくまで人間の範疇ですけど、こちらは半分くらいマジのワイルドライフだったりします。個人的にはあのもさもさ加減や気性の激しいところが先日死んだ猫のモン吉先生を思い出させて泣けました。
あともうひとつ少女漫画と違う点。こういうロマンスにはもう一人くらい主人公に恋するポジションの男がいて、そういうキャラは大抵本命とは対照的な気立ての優しい(しかしいまひとつ物足りない)ボーイでヒロインの心を揺らしたりします。ですがD版『美女と野獣』では思い切りアホ丸出しのガストンというナルシスト男がそれにあたります。そんなキャラなもんでベルの心をピクリとも動かしたりはしません。前半はそのアホっぷりがなかなかに楽しく憎めなかったりするのですが、後半に入るとだんだん悪さが洒落にならなくなっていくのが哀しいところです。
主演はかつて『ハリー・ポッター』で名子役としてならしたエマ・ワトソン。当たり前ですがすっかり大人の女性となりました。彼女はこの映画の直前に『コロニア』という映画にも出てるのですが、そちらでも愛する人のために自ら隔絶された施設に入所する役柄でした。ちなみにその『コロニア』、記録的なまでに客が入らなかったそうです。逆に『美女と野獣』の方はいい方の売り上げ記録をいろいろ築いていて、まあ極端だな~って思いました。ともあれこちらではお釣りが大量に来るほどの結果を残せてよかったですね。
そんな『美女と野獣』は公開から2ヶ月以上経ってますが、いまなお普通に映画館でかかっております。下半期これを越えられる作品は出てくるでしょうか。
ディズニーさんはひきつづき『ライオン・キング』や『アラジン』『ダンボ』などの実写化も計画中とのこと。お手並み拝見といきましょう。
Comments
あ~よかったZE。
「ローグワン」見に行った際の
予告見ていて、何となく上手く行って欲しいと
思っていたから。
気分的に悪く無かったのだよ・・・・・・・直感でな。
では何故日本アニメの実写化に反対か
と言うのは・・・・・・・・・・・・
別に古の「ドカベン」へのトラウマで無く
まさとしが隠れエマ・ワトソンファン
(これはあ・・・・なんかいいねぇ~、という意味よ)
による贔屓の反動でもなく・・・・・・・・・・・・
日本の製作サイドや芸能サイドが
あれこれ騒いだり騒がしたり、原作改竄したりと
余計な事をしすぎるから。
だが・・・・・・・・最大の首班は
これをやろうと言い出して反対させようとしない
勢力かもね。
Posted by: まさとし | July 11, 2017 11:20 PM
>まさとしさん
こちら楽しめたようでよかったです。
まあ世界最高級のスタッフが無尽蔵のお金をかけて作ってるので、これくらいの出来は当たり前… と言いたいところですが、それでもダメになってしまうことも時々あるのが映画の面白いところです。この辺プロ野球とも似てるところがあります
日本の実写化に微妙な例が多いのはかける時間がハリウッドよりも短いところにあるのでは…とか考えております。まあ自分、ジョジョやハガレンの実写化もおっかなびっくり楽しみにしておりますよ
Posted by: SGA屋伍一 | July 14, 2017 10:38 PM