ドニイェン癒しの鉄拳 ウィルソン・イップ 『イップ・マン』シリーズ
『ローグ・ワン』『トリプルX 新起動』などで世界的スターとしての名声を高めつつあるドニー・イェン氏。本日はそのドニーさんの代表作で先日最新作が公開された『イップ・マン』シリーズを紹介いたします。
イップマンと書くとまるでスーパーヒーローのようでありますが、20世紀に中国で活躍された実在の武術家であります。漢字で書くと葉問。主にブルース・リーの師匠であったことが知られていますが、その伝説的な強さゆえ、彼を主人公にしたフィクションが何本か作られています。日本で言うと宮本武蔵か西郷四郎のようなポジションでしょうか。中国では他にこういうヒーロー、ジェット・リーなどが演じた黄飛鴻がいますね。
さて、映画の方はまず2010年に第2作の『イップ・マン 葉問(原題:葉問2)』が公開され、その直後にオマケ的に第1作の『イップ・マン 序章(原題:葉問)』がごく一部の劇場で上映されました。それから7年の時を経て、第3作の『イップ・マン 継承(原題:葉問3)』がお目見えとなりました。
類似タイトルとしてほかに『イップ・マン 誕生』『イップ・マン 最終章』という作品もありますが、これらは監督も俳優も別で上記シリーズとは無関係です。あと巨匠ウォン・カーウァイもイップ師匠を題材にした『グランドマスター』という映画を撮っておられますね。
ドニー・イェン氏演じるイップさんの魅力は、その物腰の柔らかさにあります。当代随一のカンフーの実力者でありながら、茶をたしなみ、どんな人にも礼儀正しく、奥さんがいくらつんけんしても決して声をあらげたりはしません。武術家である以前に、人間として見習いたいキャラクターであります。
しかしいくら武芸に秀でていても一人の人間である以上、イップ師匠も時代や人生に翻弄されて辛酸をなめることもしばしば。1作目では日本軍の横暴に、2作目では新天地での生活苦に、家族ともども食うにも困るような状況に追い込まれます。3作目が決定したと聞いたときわたしが真っ先に思ったのは「イップ師匠、また没落しちゃうんだろうか!?」ということでした。果たしてそうなったのかのは内緒にしておきますが、一言もうしておきますと3作目のサブタイは「継承」よりも「純愛」の方が内容に即していた気がします。ポッ
もちろんカンフー映画ならではのアクションシーンも見ごたえ抜群。ずっと耐えに耐えてきたイップ師匠が男の誇りにかけて拳を全開にするクライマックスは、手に汗握るとともに、その動きの優美さに見惚れます。対する敵も池内博之(柔術)、サモ・ハン・キンポー(デブゴン)、マイク・タイソン(元ヘビー級王者)、マックス・チャン(売出し中のイェーガーパイロット)とまことにバラエテイ豊かです。
そして忘れてはならないのが川井憲次氏の音楽。1対1の対決シーンも川井サウンドが鳴り響くとまるで宇宙の命運をかけた戦いのように思えてくるから不思議です。その重厚さゆえにまるで龍が背後で舞ってるかのような錯覚さえ覚えます。さすがはGANTZ、ガンダム00の川井先生です。
「これで完結」という報道もありましたが、3作目の好評を受けてか早々と4作目の製作が決定した『イップ・マン』シリーズ。今度こそブルース・リーとのあれやこれやがじっくり描かれるのでしょうか。内容はどうあれ、またドニーさんのイップさんに会えるのが楽しみであります。
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