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July 26, 2017

豪快! マッド・ダディ! マット・ロス 『はじまりへの旅』

Hjt1『ロード・オブ・ザ・リング』で世界的に知られるようになり、その後も個性的な作品に多く出ておられるヴィゴ・モーテンセン氏。本日は彼が8年ぶりにアカデミー主演男優賞にノミネートされた『はじまりへの旅』をご紹介します。

世間とはほとんど関わりを断ち、自給自足で暮らす奇妙な一家キャッシュ家。父親のベンは子供たちに苛酷とも言えるサバイバル教育を施していたが、彼らはむしろ喜んで家長に従っていた。ある日一家のもとに、離れて暮らしていた療養中の母が亡くなったという知らせが入る。彼女の望みどおりの葬儀を行うため、キャッシュ家は初めて一家総出で長い旅に出るのだが…

原題は『キャプテン・ファンタスティック』。なにやらアメコミっぽいタイトルですが、意訳すると「ぶっとんだ家長」とでもいうところでしょうか。最初あらすじをどこかで読んだ時に「原始人一家の冒険物語」みたく紹介されてたのでかなりコメディ色の強い話を想像しておりました。たしかに笑えるところも多々ありましたが、意外と家族や教育について真摯なメッセージもこめられております。あとお父さんのベンさんはなかなかのインテリで十代の子供たちに難しい物理学の本を読ませ、レポートを求めたりする。そういうところはフリントストーンやギャートルズとは一線を画しておりました。

実はこの映画を観る少し前に、似たような一家のドキュメンタリーを観ていたので、鑑賞中そちらのこともちらちら思い出してしましまいました。「われら百姓家族」というタイトルで、キャッシュさんちほど隔絶されてないにせよ、山の中でできるだけ自給自足にいそしみ、子供たちも学校へ満足に通っていなかったりする。そしてやはりお母さんは離れたところで暮らしてたりして。検索すれば色々感想記事が出てくるかと思います。

以後、どんどんネタバレしていきますのでご了承ください。

そちらのお父さんが山中で暮らしていたのは子供たちにきれいな環境で過ごしてほしい…という動機でしたが、ベンさんのワイルドライフもきっかけは奥さんに元気になってほしいから、というものでした。しかし時として才能に秀でた方は一度こうと決めたらバランスのことも考えず、いきつくところまでいってしまうのですね。ベンさんの異常とも思える教育もそんな狂気により行われたものでした。ただその根底には一応愛情があるゆえか、子供たちがキャッキャ言いながら生活を楽しんでる(一人を除いて)のが微笑ましく。奥さんのことも含めて、こういうじんわりと温かい「狂気」もあるのだなあ…と感じ入りました。
けれどもやっぱり世間一般からしたらベンさんの方針はおおよそマトモではないわけで。特に彼の義理のお父さんは何かにつけてベンさんを目の敵にします。そんないけすかないじいさんが子供たちと過ごしていくうちに、いつしか彼への頑なな思いを和らげていくあたりがこの映画で最も心地よいくだりでありました。

人間時にはこもることも必要だと思うのですが、こもりきりだとやはりどこかでひずみが生じてしまう。こもることと周りと交わること、そのバランスを保つことが大事なのではないかと。精神的にまいってる時には、それがなかなか難しかったりするんですけどね。

ある場面でうちしおれた姿を見せるヴィゴさんは等身大のパパさん以外の何物でもなく、LotRや『イースタン・プロミス』でのパワー溢れる役柄とはまるで別人でありました。そんで最近は『危険なメソッド』『オン・ザ・ロード』、そしてこの映画でも「狂気のインテリ」的な役が続いております。今更いうまでもありませんが、本当に幅の広い方であります。またしてもオールヌードも披露してくれたし… これからもますますのご活躍に期待しております。

20070919183851『はじまりへの旅』はもう限りなく公開が終了しておりますね… もう佐賀くらいしか残ってなかった。DVDは10月発売予定です。
となりのイラストはむかーし描いたアラゴルン。最近すっかりお絵かきをさぼっております。まあ誰が期待してるわけでもないし~

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July 25, 2017

夜でも黒田 ガイ・リッチー 『キング・アーサー』

Photoあ、これもう終わってるわ… 英国における伝説の英雄を、おしゃれなサスペンスを得意とするガイ・リッチーが映画化。『キング・アーサー』ご紹介します。

たぶん中世初期。イングランドのユーサーは絶大な力を持つ聖剣エクスカリバーをもって国を治めていたが、欲望に取りつかれた弟のヴォーディガンにより妻と共に謀殺されてしまう。だがその一子アーサーは辛くも生き延び、スラムで娼婦たちに養われて成長していった。そして彼がたくましい青年になったころ、水の底に沈んだ聖剣が再び姿を現す。

アーサーを題材にした映画は2004年にもアントワーン・フークアが手掛けております。そちらはアーサー王の出自がローマの護民官だったりと、かなり「史実はこうだったんじゃないの?」ということを意識して作られていました。対して今回は差別化のためでしょうか。のっけから怪しげな魔術師が登場したり、ばかでかい戦象が出てきたりします。アーサー王という材料でいかにぶっとんだものができるか、そんな試みのもと作られてるような。大体最初イングランドをせめてくるのがモードレッドという悪者なのですが、たしかこの人原典ではアーサーの息子だったはず… その時点でもうオリジナルのあれやこれやは忘れようと思いました。

で、この映画の見どころはと申しますと、幻の邦題「聖剣無双」からもわかるようにエクスカリバーの絶大なるパワーであります。資格ある者がそれを振るうとたちまち嵐が巻き起こり、電光石火の速さで動けちゃったりする。もはや剣というより魔法のアイテムであります。ファンタジー・伝説系の映画は数あれど、ここまで一本の「剣」にスポットをあてたものはちょっと思い当りません。ただこのエクスカリバーがあまりにもチートすぎるゆえに、アーサーがそれを使いこなすのにかなり時間がかかったりして。まあウルトラマンが終盤のクライマックスまで登場しない、アレみたいな感じです。自分は堪え性のない人間なもんでつい「モタモタせんとはよそのドスふりまわさんかーい」と思ってしまいました。

主演は『パシフィック・リム』の活躍が印象深いチャーリー・ハナム。彼はどうも同年齢のチャニング・テイタムとイメージがかぶってしまうのですが、今回はいかつい髭をたくわえて違いが分かるように努力しておりました。
その主人公と敵対するのが前髪がかなり後退してるのに恐ろしいほどのお色気を放っているジュード・ロウ。明らかに監督がひいきして綺麗に撮っております。それにしても『バーフバリ』といい、『キング・オブ・エジプト』といい、どうして王族の叔父と甥は殺し合いになってしまうのか… それはぶっちゃけ『ハムレット』が元ネタだからでしょう。今更ながらかの名作の影響力を痛感いたします。そういえば『ライオンキング』の監督も「『ジャングル大帝』のパクリでは?」と責められてた時かたくなに「これの元ネタは『ハムレット』です!」と言い張ってたなあ。

さて、この映画なんでか「6部作構想」で企画されていたそうですが、1作目からさっそくコケ気味でどうやらその計画は幻と消えそうな感じです。監督にもその予感はあったのか、大変キリよくあとをひかない形で終わっていて見事でした。おじさんをそそのかした怪物の正体や、魔術師マリーン、ランスロットやグウィネビア姫なんかは続編で出すつもりだったんだろうなあ。あと5作は無理でも、お話を練り直してもう一本くらいできないものでしょうか。

Ka1というわけで『キング・アーサー』は現在全国の映画館で絶賛終了中です! 申し訳ございません! リッチー監督も早くも次回作が決まっててなんと実写版『アラジン』をやるとのこと。前作『コードネーム・アンクル』も興行的にイマイチだったので(私は好きですが…)今度こそ大当たりするとよいですね。

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July 19, 2017

10人くらいの怒れる男女 ベン・ウィートリー 『フリー・ファイヤー』

Photoわたしがよくいく駿東郡清水町の映画館は、ブロックバスターがひしめいてない時はよく小粋な小規模公開の映画をかけてくれます(2週間限定なのが辛いところですが)。これもそのうちの1本。2016年のトロント映画祭でミッドナイト・マッドネス部門を受賞した(どういう賞だ)『フリー・ファイヤー』ご紹介します。

たぶん1970年代のアメリカ。IRAの闘士フランクは世界的な武器商人ヴァーノンから大量の銃を購入するため、港の倉庫へと向かう。金を払ってブツを受け取る。それだけのシンプルな取引のはずだった。しかしフランクの義弟とヴァーノンの手下が前日バーで派手に喧嘩した間柄だったため、事態は一瞬にしてこじれのピークに達してしまう。

主な登場人物は10人。まず先のフランクとその参謀。彼らの手伝いに駆り出されたフランクの義弟とその友人。
さらに武器商人ヴァーノンとその経理担当。およびヴァーノンの二人の部下(喧嘩っ早いのと没個性的なやつ)。
そしてふたつのグループの仲介役として、紅一点のジャスティンと一番強そうなオードという男がいます。
本当はこういう多人数が入り乱れる映画はメモをとって確認しながら鑑賞したいのですが、映画館の暗闇の中ではそれもかなわず。記憶力と集中力をフル動員させて、30分を過ぎたあたりからなんとか全員のキャラを把握いたしました。
で、これらの面々がどいつもこいつも狡猾そうだったり血の気が多かったりで、ちっとも好きになれません。それゆえに誰がいきなり死んでもあんまり悲しくならないという利点があります。強いて言うならフランクの相棒のクリスだけは純情そうないいやつだったので、できたら生き残ってほしいな~と思いました。
ストーリーはずっと倉庫の中で進行し、えんえんとえぐい殺し合いがつづくのになんかすっとぼけて笑える。こういうスタイル、昨年の『ヘイトフル・エイト』なんかとよく似ています。

そんな低予算&インデペンデントの香りがプンプン漂うゆえに、俳優陣もきっと無名の人たちばかりなんだろうなあ…とか考えながら観ていたのですが、帰って調べてみたらこれまで観てきたはずのお名前がいっぱいあってコケました。だって~ わし外国の人の顔とかあんまり覚えられないし~ おまけにみんな髭もじゃだったし~ …いいわけはこれくらいにしてそろそろ老眼対策を考えねばなりません。
どんな人が出てるかというとまず唯一最初からわかったブリ―・ラーソン。『ルーム』や『ショート・ターム』では虐待に苦しむ痛ましい役を好演してましたが、最近は『キングコング』など武闘派の役が増えてきました。
特に「どうしてわからなかったんだ…」と思ったのはオード演じるアーミー・ハマーとヴァーノン役のシャールト・コプリー。アミハマは『ローン・レンジャー』『コードネーム・アンクル』など大好きですし、コプリーさんはついこないだ『ハードコア』で観たばっかりだったのに… この人は本当に胡散臭げな役がよく似合います。
あとフランクの参謀のキリアン・マーフィーはクリストファー・ノーランの常連組。アホ義弟のサム・ライリーは『オン・ザ・ロード』でのケルアック役や『マレフィセント』でのカラス男役が印象に残った…はずだったんだが… …

薄汚れた髭もじゃの男たちが死闘を繰り広げてる脇で、何度か場違いのようにしてかかるジョン・デンバーの曲もおかしかったです。わたし彼の『カントリー・ロード』とか『太陽に背を向けて』とか好きなんですけど、劇中では「オカマの聴く曲だろ!」と一蹴されてて憤慨いたしました。本当に失礼しちゃう! ぷんぷん! で、この映画を観た数日後にネットフリックスで話題の『オクジャ』という作品を鑑賞したら、こちらでも同じ「Annie's Song」が使われてて驚きました。最近映画ではよくクイーンのナンバーが使用されますが、その次はデンバーのブームがくるのでしょうか???

Anniessongsinglecover『フリー・ファイヤー』はこちらでも遅れ上映だったのでだいぶ公開終わりましたけど、まだぽちぽち予定が残ってるところもありますね。くわしくは公式サイトをごらんください。


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July 18, 2017

月の光は愛のメッセージ バリー・ジェンキンス 『ムーンライト』

Photoこれもまあ「今更」という感がありますが。本年度アカデミー作品賞を『ラ・ラ・ランド』の鼻先から奪い取っていった意欲作『ムーンライト』を本日はご紹介いたします。

海沿いの街に暮らす少年シャロンは、薬物依存症の母と学校でのいじめに悩まされ、鬱々とした日々を送っていた(ついこないだもこんなあらすじ書いたような)。そんなシャロンの慰めは対等に接し、いつも彼を励ましてくれる友人のケヴィンだけだった。やがて成長したシャロンはケヴィンに友情以上の思いを抱いていることに気が付くのだが…

物語はシャロンの子供時代が舞台の第一部「リトル」、十代のころを描く第二部「シャロン」、そして大人になった第三部「ブラック」に分かれています。それぞれの時代を別々の俳優が演じるという、映画ではあまり見ないスタイル。やせっぽちだったシャロンが第三部ではいきなりムキムキマッチョになっていてたまげましたが、先日の酒席である方が「目元がとても似ていた」と語っていて、そうか… そういうとこに着目せねばな… と恥じ入った次第です。
まだ子供なのにシャロン少年の置かれた環境はあまりにも過酷で、観ていてやるせない思いがつのります。子供の周囲でも平気で薬物が売られてる環境は西原理恵子の『ぼくんち』なども思い出しますが、あちらの兄弟はまだ開放的でありました。。
そんな痛ましいストーリーとは裏腹に、弦楽器をメインにしたスコアと、シャロンが訪れる海の風景はとてもやさしい。これらの要素のおかげで全体的にこの映画はとてもここちよい余韻を残します。

あともうひとつシャロンにとって「やさしい」存在に、友人であり思い人のケヴィンがおります。このケヴィンとの絆が一度壊れかけるくだりこそが、この映画で最もハラハラしたところでした。べつに恋までいかずとも、親しかった友人とあることで擦れ違い、その後大人になってもずっと悔いをひきずることってあるじゃないですか。そしてできることならばいつか再会してわだかまりを解消したい… そんな誰もが抱きそうな願いがシャロンとケヴィンの物語を通して描かれていた気がします。

ただまあやっぱりこの映画、「愛heart04」を描いた作品でもあるのですよね。自分が最も語るのが苦手なお題のひとつです。トンチンカンなことを書くかもしれませんがご容赦ください。
シャロンがケヴィンに抱く感情は紛れもなく恋心ですが、半分友情もまざってるあたりが独特であります。よくある恋愛と違って、シャロンは別に親友を独占したいわけではないし、恋人として付き合いたいわけでもない。ただただ純粋に慕い、いとおしく思ってるだけなのです。そんなささやかな思いをすら台無しにされた時に、初めて彼は我を忘れて怒ります。人が一番大切なものを踏みにじられた時にブチ切れる瞬間というのは、スカッとする反面、とても物悲しいものでありますね… 
で、ケヴィンの方はシャロンに恋してるのかというと、あまりそうは見えなかったり。彼は単に相手の望むことをしてあげたい、心を安らかにしてあげたいという、そんな懐の深い人間なのだと思います。子供のころのシャロンをやさしく包み込む海のような、そんな男なのでは。

タイトルの『ムーンライト』がまた意味深というか、いろいろなにか込められてる気がします。安直ではありますが狂気を表す「ルナティック」という語と関連があるのではないかと。月の光というのは、人を狂わせる作用があると言われてます。普段秘めている思いも激情に駆られて吐き出してしまったりする。わたしのような朴念仁は「月見そば食いたいわ」くらいしか思わないわけですけど。

Photo_2Photo_3『ムーンライト』はさすがにもう名画座か、幾つかの地方の劇場でしか公開予定が残ってないですね。まあ再来月には早くもDVDが出ますし。
作品賞は取ったものの興行的に『ラ・ラ・ランド』と大きく差をあけられてしまったのは何とも皮肉です。でもこちらはこちらで大変しっとりしたいい映画でした。

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July 14, 2017

ウォーキング・ウッド パトリック・ネス J・A・バヨナ 『怪物はささやく』

Main2xスペインのアカデミー賞と呼ばれる「ゴヤ賞」を9部門に渡って受賞。今日は日本では公開館は決して多くないものの、各所で評判を呼んでいる『怪物はささやく』を紹介します。まずはあらすじから。

難病の母親を抱え、学校ではいじめられ、鬱屈とした日々を過ごす少年コナー。ある晩彼のもとに、夢かうつつか、巨大な木の怪物がやってくる。怪物はコナーにこれから3つの物語を話すという。そしてそれらが語り終えられた後、今度はコナー自身の「秘密の物語」を告白しろと迫るのだが…

度々申してますが、スペイン映画には目に見えない存在に関係した哀しいお話がいろいろあります。『ミツバチのささやき』『アザーズ』『デビルズ・バックボーン』『パンズ・ラビリンス』『ブラック・ブレッド』、そしてバヨナ監督の『永遠のこどもたち』。この『怪物はささやく』もその系譜につらなる作品。たぶん夢か妄想なんだろうな…と思わせといて完全にそうとは言いきれない描写がちらちら出てくる「怪物」くん。この辺のぼやかし方がうまい映画は大体名作です。

で、バヨナ監督にはもう1作インドネシアの津波を題材とした『インポッシブル』という映画があります。3作共通して浮かび上がってくるのは母と子の絆の強さと、命のはかなさ。コナーの母の命が遠からず尽きることは誰の目にも明らかです。それに直面したコナーの心の揺れ動きと、母と関わりがあるらしい「怪物」の真意がこの映画の主な柱となっております。
「怪物」はコナーに明かすように迫る「秘密」。わたしのように心の腐った人間は「どっかにエッチな本でも隠してることでは」と考えてしまうわけですが、もちろん違います。
微妙にネタバレになりますが、その秘密のヒントは怪物の語る3つの話に隠されています。純真な少年はとかく「白は白、黒は黒」「ひとつでも邪な思いを抱いてしまったら自分はもう汚れてしまう」と考えがちなものですが、そんな聖人みたいな人間はそうそういるものではありません。いいことをしながら悪いことをするのが人間で、白黒はっきりしないのが世の中である。そのことを受け入れたられた時、少年は大人へと近づいていくのかもしれません。
そんなわけでどっちかというと、繊細なお年頃の十代の少年少女に特に観てほしい映画であります。

あと特筆すべきは、最近出るだけでネタと化しているシガ二―・ウィーバーがちゃんと女優していたこと。この人がこんな等身大のおばあちゃんやったことって今までありましたっけ? とはいってもスリラーでならした鬼気迫るオーラもびんびんにはなっておりました。

Ec90d4d3f11be8eae337d1c92961c1da427そんな『怪物はささやく』ですが、地方ではこれからかかるところも多いようです。くわしくは公式サイトをごらんください。

J・A・バヨナ監督の次回作はなんとあの『ジュラシック・ワールド』の続編。母と子が恐竜によって引き裂かれる涙涙の物語になるのでしょうか。

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July 11, 2017

肉食だけど草食系 ビル・コンドン 『美女と野獣』

Marvelavengerscomicsvisioncryingそれなりにあたるだろうとは思ってましたが、まさかこれほどとは… 本日は現時点で世界・日本ともに今年度No.1ヒット作となっている実写版『美女と野獣』をご紹介します。まずはあらすじから(いらない気もしますが)。

ある山間の村に変わり者だがその美しさで評判のベルという娘がいた。ある日ベルの父親は所要で出かけた際道に迷い、不気味な城に足を踏み入れてしまう。そこで娘への土産に一輪のバラを手折った彼は城の主である獣人の怒りをかい、城に閉じ込められてしまう。父親思いのベルは自分が身代わりとなって城の虜囚となることを「野獣」に申し出る。やがてそこで過ごすうちに、ベルは「野獣」の秘密について知ることになるのだが…

『シンデレラ』「マレフィセント』『ジャングルブック』など、最近自社の名作アニメの実写化に力を入れているディズニー。それは「新作を作らないと権利が切れてしまうから」という理由もありますが、もうひとつには「かつてはアニメでしか表現できなかった映像が、実写でもできるようになったから」ということもあるかと思います。
しかしこのたびの実写版『美女と野獣』にはひとつの壁があったかと思います。それは「しゃべるカップや時計といったアニメでしか描けなさそうなものを、実写でいかように表現するか」ということです。もちろん2014年のフランス版ではそういったものは出てきませんでした。
ですがまあ感心したことに、そういった小道具たちが見事に再現されていて驚きました。ぱっと見普通の家具であり調度品なんですが、上手に目鼻があしらわれていて自然に擬人化されている。そういえばこういうセンス、チェコアニメの作品などでしばしば見かけたような。ちょっと連中の騒ぎ具合がやかましい気もしましたが、もともとこれはそういう作品ですし、そのコラージュ具合が愉快だったので見過ごすことにしました。

ストーリーはよくある少女漫画と少し似たところがありますよね。快活で気持ちの優しい女の子が、ニヒルで意地悪な青年に会い最初は「何よ、あいつ!」とか思ってるわけですが、青年の隠れた優しさとかかわいそうな過去を知るにつれ胸をキュンキュンさせていくという。ただ少女漫画では相手役はワイルドなところはあってもあくまで人間の範疇ですけど、こちらは半分くらいマジのワイルドライフだったりします。個人的にはあのもさもさ加減や気性の激しいところが先日死んだ猫のモン吉先生を思い出させて泣けました。
あともうひとつ少女漫画と違う点。こういうロマンスにはもう一人くらい主人公に恋するポジションの男がいて、そういうキャラは大抵本命とは対照的な気立ての優しい(しかしいまひとつ物足りない)ボーイでヒロインの心を揺らしたりします。ですがD版『美女と野獣』では思い切りアホ丸出しのガストンというナルシスト男がそれにあたります。そんなキャラなもんでベルの心をピクリとも動かしたりはしません。前半はそのアホっぷりがなかなかに楽しく憎めなかったりするのですが、後半に入るとだんだん悪さが洒落にならなくなっていくのが哀しいところです。

主演はかつて『ハリー・ポッター』で名子役としてならしたエマ・ワトソン。当たり前ですがすっかり大人の女性となりました。彼女はこの映画の直前に『コロニア』という映画にも出てるのですが、そちらでも愛する人のために自ら隔絶された施設に入所する役柄でした。ちなみにその『コロニア』、記録的なまでに客が入らなかったそうです。逆に『美女と野獣』の方はいい方の売り上げ記録をいろいろ築いていて、まあ極端だな~って思いました。ともあれこちらではお釣りが大量に来るほどの結果を残せてよかったですね。

Xbeast_jpg_pagespeed_ic_xtvvplnbr2そんな『美女と野獣』は公開から2ヶ月以上経ってますが、いまなお普通に映画館でかかっております。下半期これを越えられる作品は出てくるでしょうか。

ディズニーさんはひきつづき『ライオン・キング』や『アラジン』『ダンボ』などの実写化も計画中とのこと。お手並み拝見といきましょう。

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July 07, 2017

ドニイェン癒しの鉄拳 ウィルソン・イップ 『イップ・マン』シリーズ 

Yip_man_2『ローグ・ワン』『トリプルX 新起動』などで世界的スターとしての名声を高めつつあるドニー・イェン氏。本日はそのドニーさんの代表作で先日最新作が公開された『イップ・マン』シリーズを紹介いたします。

イップマンと書くとまるでスーパーヒーローのようでありますが、20世紀に中国で活躍された実在の武術家であります。漢字で書くと葉問。主にブルース・リーの師匠であったことが知られていますが、その伝説的な強さゆえ、彼を主人公にしたフィクションが何本か作られています。日本で言うと宮本武蔵か西郷四郎のようなポジションでしょうか。中国では他にこういうヒーロー、ジェット・リーなどが演じた黄飛鴻がいますね。

さて、映画の方はまず2010年に第2作の『イップ・マン 葉問(原題:葉問2)』が公開され、その直後にオマケ的に第1作の『イップ・マン 序章(原題:葉問)』がごく一部の劇場で上映されました。それから7年の時を経て、第3作の『イップ・マン 継承(原題:葉問3)』がお目見えとなりました。
類似タイトルとしてほかに『イップ・マン 誕生』『イップ・マン 最終章』という作品もありますが、これらは監督も俳優も別で上記シリーズとは無関係です。あと巨匠ウォン・カーウァイもイップ師匠を題材にした『グランドマスター』という映画を撮っておられますね。

ドニー・イェン氏演じるイップさんの魅力は、その物腰の柔らかさにあります。当代随一のカンフーの実力者でありながら、茶をたしなみ、どんな人にも礼儀正しく、奥さんがいくらつんけんしても決して声をあらげたりはしません。武術家である以前に、人間として見習いたいキャラクターであります。
しかしいくら武芸に秀でていても一人の人間である以上、イップ師匠も時代や人生に翻弄されて辛酸をなめることもしばしば。1作目では日本軍の横暴に、2作目では新天地での生活苦に、家族ともども食うにも困るような状況に追い込まれます。3作目が決定したと聞いたときわたしが真っ先に思ったのは「イップ師匠、また没落しちゃうんだろうか!?」ということでした。果たしてそうなったのかのは内緒にしておきますが、一言もうしておきますと3作目のサブタイは「継承」よりも「純愛」の方が内容に即していた気がします。ポッ

もちろんカンフー映画ならではのアクションシーンも見ごたえ抜群。ずっと耐えに耐えてきたイップ師匠が男の誇りにかけて拳を全開にするクライマックスは、手に汗握るとともに、その動きの優美さに見惚れます。対する敵も池内博之(柔術)、サモ・ハン・キンポー(デブゴン)、マイク・タイソン(元ヘビー級王者)、マックス・チャン(売出し中のイェーガーパイロット)とまことにバラエテイ豊かです。
そして忘れてはならないのが川井憲次氏の音楽。1対1の対決シーンも川井サウンドが鳴り響くとまるで宇宙の命運をかけた戦いのように思えてくるから不思議です。その重厚さゆえにまるで龍が背後で舞ってるかのような錯覚さえ覚えます。さすがはGANTZ、ガンダム00の川井先生です。

51pehbtcyl__sy355__2「これで完結」という報道もありましたが、3作目の好評を受けてか早々と4作目の製作が決定した『イップ・マン』シリーズ。今度こそブルース・リーとのあれやこれやがじっくり描かれるのでしょうか。内容はどうあれ、またドニーさんのイップさんに会えるのが楽しみであります。


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July 05, 2017

老人と爪 ジェームズ・マンゴールド 『LOGAN/ローガン』

F5176b8c2000年のX-MEN第1作よりウルヴァリンを演じていたヒュー・ジャックマンさんですが、とうとうこの度その役を引退されることとなりました。本日はそんなヒューさんの卒業を飾る骨太映画『LOGAN/ローガン』をご紹介します。

ミュータントがほぼ絶滅した近未来。そのわずかな生き残りであるローガンは、衰弱した恩人のチャールズとひっそり地方都市で運転手として暮らしていた。だが彼を元ヒーローチーム「X-MEN」の一員だと知る女性が、ある少女を逃がすのを助けてほしいと頼んだことから、ローガンは再び激しい戦いに巻き込まれる。以前よりも回復能力が衰えた体をひきずりながら、彼はチャールズと少女を守りきることができるのか。

「いつまでも老けない」が売りだった狂戦士ウルヴァリン。ですが本作品ではだいぶ年寄りじみて、辛うじて治るものの傷の回復も遅い(そしてすごく痛そう)。いままで彼の活躍を「不死身だから」と安心していた我々も、やたらと「最後」と強調される宣伝も手伝って、「大丈夫かしら…」と不安な気持ちを掻き立てられます。
これまでのX-MENは多少の差こそあれ一応「ヒーロー映画」でありました。どんな困難があっても最後はヒーローが目的を達成して、明るい未来を予感させる…そんなシリーズでありましたが、今回のウルヴァリンはもろくたびれた手負いの獣のようなイメージで、「ヒーロー」の肩書からは程遠い。本作品の白黒ヴァージョンには「ノワール」という副題がついてますが、まさに主人公が滅びに向かって失踪していくノワール映画のような趣があります。話はとりあえずこれまでのX-MENとつながっているようにも見えますけど、そのあまりのドライで現実的な世界観は、まるっきり独立した別の映画に見えなくもありません。

で、アメコミファンとしてはいささか複雑なところですが、そのヒーロー性を排除したスタイルが、この映画の完成度をめっちゃ高めてしまっているのですね。悪者といえど殺しは殺しだし、正義の側が決して弱者を救い切れるわけでもない。どころか犠牲を増やしてしまうことさえある。そして生き抜こうと全力であがくことは、時としてあまりにも痛々しく物悲しい… カタルシスから遠ざかる一方で、一人の男の生き様としては切々と胸に響くものがあります。まるでローガンの心身の痛みを我々も共有するかのように。本作品が「アメコミ映画の新たなる到達点のひとつ」と評される所以です。

だけど… だけどね。あ、ここからほぼネタバレで

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leo
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leo

あれがウルヴァリン100年の戦いの結末だとしたら(多少の救いはあるにせよ)あまりにも悲しすぎるじゃありませんか!!
もしかしたらまたタイムスリップで時空改変とかして解決するのかな、とも予想しましたけど、とてもそんなトンデモが許される空気でもなく。これだったらむしろめでたしめでたしの『フューチャー&パスト』で引退した方がよかったじゃないの…と切に思いました。
ちなみにこの映画、あるスタッフによれば「『アポカリプス』の何年後」であるらしいし、パンフの説明によると「これっきりの独立した作品」でもあるらしい。え~ するってと… どっちなんだ???とこちらを見事に混乱させてくれます。自分の考えは後者に近く、「X-MEN世界の幾つかある未来のひとつ」と考えてます。X-MENの映画はこれからもまだまだ作られるでしょうから、いずれ『ローガン』の絶望的な未来はシリーズにとって矛盾を生じさせたり、不都合なものとなるでしょう。ウルヴァリンだって別の役者さんで再登場するものと思われます(なんせ人気No.1キャラクターですから)。だからこの映画はヒューさん&パトリックの卒業記念のために、特別に別枠で製作された作品のように思えてなりません。その辺のことはおそらく来年公開予定の『ダークフェニックス』で早くもはっきりするものと思われます。しかしコミックならまだしも現行の映画シリーズに「パラレルワールド」という設定を使用したら、ますます劇場版X-MENはカオスな状態に突入していくんだろうなあ… MCUやDCEUとの差別化になるのでしたら、それもまっ いいか!という気はします。

さんざん「暗い哀しい」と描きましたが、凄烈なシーンの合間合間にやさしく叙情性に満ちた場面が織り込まれているのも、この映画を傑作たらしめています。もう一度観るのはちょいきつくはありますが、そういう美しいショットはぜひ白黒版で観かえしたいものです。

213f1c60そんな『LOGAN/ローガン』ですが、日本では二日後の七夕に概ね終了です。ウルヴァリン&ヒューさんの最後の戦いを、これまで付き合ってきた方たちはぜひ見届けてあげてください。
余談ですがコミックの方のウルヴァリンも少し前「これで今度こそ本当に最後!!」みたいなイベントをやって死んじまいましまたが、早々と復活しそうな模様。というかもう復活したのかしら? 本の方のアメコミ売り上げが芳しくないいま、ローガンもそう簡単には死なせてもらえないようです。

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