10人くらいの怒れる男女 ベン・ウィートリー 『フリー・ファイヤー』
わたしがよくいく駿東郡清水町の映画館は、ブロックバスターがひしめいてない時はよく小粋な小規模公開の映画をかけてくれます(2週間限定なのが辛いところですが)。これもそのうちの1本。2016年のトロント映画祭でミッドナイト・マッドネス部門を受賞した(どういう賞だ)『フリー・ファイヤー』ご紹介します。
たぶん1970年代のアメリカ。IRAの闘士フランクは世界的な武器商人ヴァーノンから大量の銃を購入するため、港の倉庫へと向かう。金を払ってブツを受け取る。それだけのシンプルな取引のはずだった。しかしフランクの義弟とヴァーノンの手下が前日バーで派手に喧嘩した間柄だったため、事態は一瞬にしてこじれのピークに達してしまう。
主な登場人物は10人。まず先のフランクとその参謀。彼らの手伝いに駆り出されたフランクの義弟とその友人。
さらに武器商人ヴァーノンとその経理担当。およびヴァーノンの二人の部下(喧嘩っ早いのと没個性的なやつ)。
そしてふたつのグループの仲介役として、紅一点のジャスティンと一番強そうなオードという男がいます。
本当はこういう多人数が入り乱れる映画はメモをとって確認しながら鑑賞したいのですが、映画館の暗闇の中ではそれもかなわず。記憶力と集中力をフル動員させて、30分を過ぎたあたりからなんとか全員のキャラを把握いたしました。
で、これらの面々がどいつもこいつも狡猾そうだったり血の気が多かったりで、ちっとも好きになれません。それゆえに誰がいきなり死んでもあんまり悲しくならないという利点があります。強いて言うならフランクの相棒のクリスだけは純情そうないいやつだったので、できたら生き残ってほしいな~と思いました。
ストーリーはずっと倉庫の中で進行し、えんえんとえぐい殺し合いがつづくのになんかすっとぼけて笑える。こういうスタイル、昨年の『ヘイトフル・エイト』なんかとよく似ています。
そんな低予算&インデペンデントの香りがプンプン漂うゆえに、俳優陣もきっと無名の人たちばかりなんだろうなあ…とか考えながら観ていたのですが、帰って調べてみたらこれまで観てきたはずのお名前がいっぱいあってコケました。だって~ わし外国の人の顔とかあんまり覚えられないし~ おまけにみんな髭もじゃだったし~ …いいわけはこれくらいにしてそろそろ老眼対策を考えねばなりません。
どんな人が出てるかというとまず唯一最初からわかったブリ―・ラーソン。『ルーム』や『ショート・ターム』では虐待に苦しむ痛ましい役を好演してましたが、最近は『キングコング』など武闘派の役が増えてきました。
特に「どうしてわからなかったんだ…」と思ったのはオード演じるアーミー・ハマーとヴァーノン役のシャールト・コプリー。アミハマは『ローン・レンジャー』『コードネーム・アンクル』など大好きですし、コプリーさんはついこないだ『ハードコア』で観たばっかりだったのに… この人は本当に胡散臭げな役がよく似合います。
あとフランクの参謀のキリアン・マーフィーはクリストファー・ノーランの常連組。アホ義弟のサム・ライリーは『オン・ザ・ロード』でのケルアック役や『マレフィセント』でのカラス男役が印象に残った…はずだったんだが… …
薄汚れた髭もじゃの男たちが死闘を繰り広げてる脇で、何度か場違いのようにしてかかるジョン・デンバーの曲もおかしかったです。わたし彼の『カントリー・ロード』とか『太陽に背を向けて』とか好きなんですけど、劇中では「オカマの聴く曲だろ!」と一蹴されてて憤慨いたしました。本当に失礼しちゃう! ぷんぷん! で、この映画を観た数日後にネットフリックスで話題の『オクジャ』という作品を鑑賞したら、こちらでも同じ「Annie's Song」が使われてて驚きました。最近映画ではよくクイーンのナンバーが使用されますが、その次はデンバーのブームがくるのでしょうか???
『フリー・ファイヤー』はこちらでも遅れ上映だったのでだいぶ公開終わりましたけど、まだぽちぽち予定が残ってるところもありますね。くわしくは公式サイトをごらんください。
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