父性からの物体X ジェームズ・ガン 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』
快進撃を続けるマーベル・シネマティック・ユニバース。その最新作では宇宙を駆けるあのはみ出しものたちの活躍が再び描かれます。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー/リミックス(原題はVol.2)』、ご紹介します。1作目の感想はコチラ。
クリーの武人ロナンから惑星ザンダーを守りきったガーディアンズ・オブ・ギャラクシー。その腕を見こまれて惑星ソブリンから発電所の警護を依頼される。ところがチームの1員のロケットが高価な電池をちょろましたため、ガーディアンズは彼らから追われる身に。絶体絶命のその時、彼らはエゴという謎の男に救われる。エゴはスターロードことピーターに、自分が父親であると告げるのだが。
1作目ははみ出しものたちがドタバタ暴れまわってるうちに、いつの間にか家族になってしまった話でありました。それに対して今回はその即席家族をなんとかして維持していく話であります。家族とはいいながら(家族だから?)彼らは本当によく喧嘩をします。まあ言いたいことも我慢してストレスをためこんでいくよりは、喧嘩になっても正直に本音をぶつけあったほうが家族としては健全なのかな? その喧嘩が時々シャレにならないレベルになってしまうこともあるわけですけど。
さて、こっからは本格的にネタバレで。
今回の「リミックス」はガン監督の「神様観」が見え隠れする作品でもありました。キーキャラクターでスターロードの父でもある「エゴ」は、星を創造し宇宙をも支配できるほんまもんの神様であります。ただここでは一般に信じられてるように神様は慈愛深い方ではなく、そこからかけ離れた独善的で利己的な者のように描かれています。ここで思い出すのは二つ前にガン監督が撮った『スーパー!』。あちらは神の啓示を受けた(と思い込んだ?)男が自分なりの正義を実行していく話でしたが、その正義というのが明らかにやりすぎで狂気じみたものだったりして。そして正義を懸命に代行した主人公に、神様はなんの報酬も与えてくれません。
かようにガン監督は神様は信じた自分を裏切った、自分勝手な存在と感じているようです。素っ頓狂でバカばかしい作風が持ち味のようで、時折そんな傷つきやすい少年のような人柄が作品から伝わります。
で、神様の代わりに彼が惜しみない愛情を注いでいるのが家族であり仲間たちであります。ことに『リミックス』においてはメジャーな監督作品第1作『スリザー』からずっとつきあってくれてる、ヨンドゥ役のマイケル・ルーカーへの愛情が大爆発しておりました。全身青色のヘンテコモヒカンの凶状持ちが、この映画ではめちゃくちゃ親しみ深く、愛すべき野郎としてわたしたちを魅了します。そのチャーミング力は公開日ガーディアンズの正規の面々を押しのけて、「ヨンドゥ」がツイッターのトレンド上位にあがったことからもよくわかります。
ガン監督の家族愛がもう一人よく表れているのが、実弟のショーン・ガン演じるクラグリン。「弟をこんなに目立たせて身びいきかよ!」とも思いますが、このガン弟、お兄ちゃんのひいき?に十二分に答えていて、本当に申し分ない働きを見せておりました。決して主役にはなれないタイプという気はしましますが、その異相といい妙におどおどした雰囲気といい、実に面白そうな役者さんであります。これからもいろんな作品での活躍を期待するものであります。
そんな家族愛がビンビンにみなぎりすぎて、終盤等はちょっと浪花節的なムードまでただよい始めました。この辺のベタベタなセンスはとても日本的でさえあります。ちょいと「泣かせ」がくどいと感じる方もおられましょうが、年で涙腺と鼻が弱くなっているわたしはダラダラと泣きました。二回目は鼻水が滝のように吹き出ました。終盤以外でもマンティスが泣き崩れてる横で微笑してるドラックスおじさんや、「(普通の人間に戻ることの)何が悪い」と毅然と言い放つピーター、あと彼が力に目覚める直前に仲間たちを思い出すシーンにもいちいちやられました。ガンさんったら本当ににくらしい人…
もちろん1作目の特徴であったノリノリのややマイナーな名曲、アホくさい宇宙人の習性、小気味よいギャグセリフの連打、80年代サブカルネタなども健在です。中学生時代クラスの男子がナイトライダー派とエアーウルフ派に別れていたことなど懐かしく思い出しました(少数ながら「特攻野郎Aチーム派」もいました)。
世界では予想通りの爆ヒットを記録した『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』。たしかMCUの中でもベスト5に食い込んだとか。当然ながら第3作の製作も早々と決まりました。おそらく次は家族の別れを描く内容となるという噂。そんなのいやでちゅ!! バカ!! まあその前にお祭り映画である『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』への登場が予定されています。ガーディアンズの面々がアイアンマンやスパイダーマンと共闘するかと思うと胸バクバクです。
余談ですがこのブログにも時々登場してた猫のモン吉先生、一か月ほど前に安らかに亡くなりました。メインクーンという種類だったこともあって、スクリーンで活躍するロケットがなんだかモン吉に見えてしょうがありませんでした。ううう…
Comments
こんにちは。
私は『ナイトライダー』を見てなかったんですよ。そこだけ乗れなくて残念でした。
ロケットを見てると、いろいろ思いますね。あんな風に会話できるといいんですけどね。
Posted by: ナドレック | June 16, 2017 11:42 PM
わっ、別れ!? いやでちゅー!
Posted by: ボー | June 19, 2017 10:19 AM
>ナドレックさん
『テッド』でも主人公の着メロが『ナイトライダー』のテーマだったりしましたね。あちらの30代~40代には相当な人気だったことがうかがえます
ちかいうちディズニーランドでもロケットがうろつくようになるかと思いますが、会話はむずかしいかなあ
Posted by: SGA屋伍一 | June 19, 2017 10:23 PM
>ボーさん
出会いがあれば別れもあるのでちゅ!!
Posted by: SGA屋伍一 | June 19, 2017 10:24 PM