スマップ×スプラッタ 沙村広明 三池崇史 『無限の住人』
はい、またしても公開終わってます… 沙村広明氏の人気コミックを、最近漫画実写化のプロフェッショナルみたくなってる三池崇史監督がキムタクを主演に据えて映画化。『無限の住人』、ご紹介します。
たぶん江戸時代中期過ぎ。とある道場の娘・浅野凜は、名を上げるために各流派を潰して回っている剣客集団「逸刀流」に父を殺され、母を拉致されてしまう。仇をとるために用心棒を探していた凜の前に、謎の尼僧が現れてこう告げる。「江戸のはずれに決して死なない男がいる。そいつを見つけ出せ」と…
原作は未読であります。とりあえずまず目をひいたのはモノクロのプロローグ。まだ主人公の万次が普通の人間だったころのエピソードなんですが、この映像が大変美しくかっこいい。できればこのまま全編いってほしかった…のですが21世紀の大衆向け邦画としてそれは許されなかったのでしょう。残念です。
で、本編に入って色が着いてくるとお話はやや現実離れしていきます。ただ現実離れといっても魔界の生き物とかそういうものが出てくるわけではなく、不老不死の要素とか、いかにも漫画的なとんでもね~武芸くらいのものでしょうか。このリアルとトンでものバランスや、奇天烈な武芸者たちのセンスなどは山田風太郎の忍法帖とよく似ております。もしかしたら間接的とはいえこれまでの忍法帖の映像化で最もよく出来た部類の作品かもしれません。確かめたわけではないけれど、きっと原作者の沙村先生はそちらから強い影響を受けているのでは、と推測します。
監督は割りと作品の出来に浮き沈みがはげしい三池監督。いや、すごくアレなところもありましたが、去年の『テラフォーマーズ』とかいろいろ突き抜けててわたし好きなんですけどね。で、今回は監督ご自身が原作の大ファンということで、いつもより気合が入っていたような気がしてなりません。三池作品にありがちなしょうもないギャグとか、ほとんどなかったですしね。邦画の欠点によくあげられるベタな演出も幾つかありましたが、それを補ってあまりあるパワーにあふれていました。
そのパワーの中心となっているのが、意外なことにここんとこゴシップで世間をにぎわせているキムタクこと木村拓哉。どなたかが指摘されていたので注目して見ていたのですが、刀を両腕に持ちながら長時間暴れていてもほとんどスピードが落ちないという。同世代(40前半)として見たら驚異的な身体能力であります。加えて最近の苦労が(笑)いろいろ経験してきた万次というキャラクターに説得力を持たせていたような。ライバルである福士蒼汰君も久々に仮面ライダー仕込の切れのいいアクションを見せてくれました。
本当にねえ、日本にはすごい動きを見せてくれるイケメン俳優がまだまだいると思うのです。ただそうした役者さんはアクション映画よりもラブコメや人情ものに持っていかれることが多いので、せっかくの長所が持ち腐れになっているのではないのかと。ほんでかなしいことにアクションよりもそちらの方が大抵ヒットしてしまうのでますますそういった傾向が進んでしまうという… う~~~ん。なんとかなりませんかねえ。
余談ですがこの映画、現在公開中の『ローガン』と幾つか重なっているところがあり、見比べてみると面白いかと思います。まあこっちは上映終わっちゃってるんだけど~
三池監督の次回作はまたしても漫画実写化の『ジョジョの奇妙な冒険』第4部。危ぶんでいる声もよく聞きますが、予告を見た感じでは悪くなかったので自分は期待しております。
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