カレーの国の王様 S.S.ラージャマウリ 『バーフバリ 伝説誕生』
インドで歴代興行収入1位を記録し、アメリカでもヒットしながら、日本ではとても細々とした扱い… でもそのみなぎるパワーから、少しずつ話題を呼んでいる『バーフバリ 伝説誕生』。あらすじから紹介いたします。
とおいとおい昔。たぶんインドか異世界。兵士の一団に襲われながら、ある高貴な女性が身を挺してかばったおかげで命を永らえた赤子がいた。村の心優しい女性に拾われたその子はやがて成長し、屈強な肉体と豪放な魂を持つ青年となる。村の境には頂が見えないほど高い巨大な滝がそびえていたが、青年は冒険心に駆られて何度も失敗しながら、滝の頂上へと上り詰めようとする。そして彼の冒険はやがて巨大な王国を揺るがすほどの波乱を呼び起こすことになる…
インド映画といえばうたって踊ってポップでファンキーみたいな、そんなイメージがあります。昨年好評を博した『PK』もそんなところがありましたし。この『バーフバリ』もミュージカル要素はそれなりにあるのですが、どっちかというとメインは迫力あふれるアクションや合戦シーンであります。インド発のスペクタクル映画ってこれまであまり聞いたことがなかったので興をそそられたのでした。全国で数館しかかかってないのに、なぜか近くの小田原でやってくれたのも助かりました。
わたしこの映画てっきりもとになった伝説なり神話なりあるのだろうと思ってましたが、どうも監督のオリジナルらしい…? もしくは無数にあるインドの伝承・民話をシャッフル&ミックスして、新たなストーリーを作り上げた…というとこでしょうか。インドの伝説といえば『ラーマーヤナ』や『マハーバーラタ』が有名ですが、バカ長い上に話があっちへいったりこっちへいったりするので、非常に映像化がむずかしいようです。
で、この映画でまず目をみはるのはその背景のスケールの大きさ。タイトルロールから冒頭の滝から、王都マシュマヒティからとにかくいちいちばかでかい。監督の前作『マッキ―』がハエの映画だったことの反動でしょうか。とにかくそんな画面の無限の広がりが、孫悟空のように「おらワクワクしてきたぞ!」という気分にさせてくれます。
主人公たちは男塾の面々や松田さん(ブラックエンジェルズ)のように人知を超えた怪力を有してはいますが、それ以外は超自然的要素はほとんどありません。ですからファンタジーというよりは史劇、『ロード・オブ・ザ・リング』よりは『300』っぽい要素が濃い映画。あといちいち他作品に例えて恐縮ですが、英雄が気合で大軍をふっとばすあたりなどは『キングダム』の描写そのまんまでありました。
インド映画といえば最近はアミール・カーンなどが人気でありますが、こちらのヒーローはどちらかというと『ムトゥ』『ロボット』のラジニカーント系の顔立ち。はっきりいって濃い。しかしそんなくどくどしい顔立ちが、主人公の男気に惚れていくうちに絶世のイケメンに見えてくるから映画の力は偉大であります。
さて、この『バーフバリ』、原題の後ろに「THe Biginning」とついてることからわかるように、思いっきり第一部というか、「次回へ続く!」というところで終わります。この辺もう少しキリよくしてほしかった… 幸い第二部がすでにインド・米国で公開され、年内にも日本にもやってくるとのことなので、あまり待たされずにすみそうです。その第二部の副題は「The Conclusion(終局)」。当初三部作として企画されたという話もあり、監督もそんなことをほのめかしているようですが、一応二部でひとまず完結するのかな…? というか、そうしてください。
第一部である『伝説誕生』はまだちょぼちょぼと上映が続いてる・予定されてるところがあります。くわしくは公式サイトをごらんください。
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