頓狂ディズニーシー ロン・クレメンツ ジョン・マスカー 『モアナと伝説の海』
『アナ雪』以降、ジブリ不在ということもあって完全に日本での巻き返しに成功した感のあるディズニーご本家。本日はその最新作で快進撃を続けている『モアナと伝説の海』をご紹介します。
南洋の平和な島で長の娘として健やかに暮らしてきた少女モアナ。しかし彼女は出ることを禁じられている外の海への憧れを、ずっと抑えながら日々を過ごしていた。そんな折、島では魚が取れなくなったり、穀物が急に枯れたりと不吉な現象が続く。その原因が外海の魔神の呪いにあると知ったモアナは、精霊に導かれるまま広い世界へと漕ぎ出すのだが…
公開されるや否や映画ファンの間で「マッドマックスっぽい」と評判を呼んでいた本作。確かにそれらしいところもちらほらあります。しかしわたしが思い出したのは昨年日本でようやく公開された『ソング・オブ・ザ・シー』。禁じられた海へと惹かれていく少女。その少女を誘う精霊。古の災いにより呪いをかけられてしまう巨神…といったモチーフが共通しています。片や大資本で作られた南洋の神話、片や独立系のスタジオで作られた西欧の伝説ですからイメージもストーリー展開もだいぶ違いますが、それでもこういう民話にはある種の定型があるのか、似通った部分があるのが興味深いです。
で、マッドマックスにも例えられてるようにこの話、かなり男子の冒険物語っぽいところもあるのです。モアナは宮崎アニメのコナンかパズーのように人並み外れた大ジャンプを見せますし、次から次へと現れる海の魔物にもひるまず果敢に立ち向かいます。そして助け手となる神マウイと一緒にいても、一向にロマンスが芽生える気配がない。まあマウイは一応人の形をしていても神様なんで、人間のもつ恋愛感情とか超越しちゃってるのかもしれませんが。それ以前にキャラデザの時点でラブコメ向きではない気もします。ともあれ、喧嘩しつつも仲良く冒険を続けるマウイとモアナはカップルというより気心知れた友人、あるいは兄弟のようでした。
ではなぜモアナは男子ではなく女の子としてこの物語に選ばれたのか。女子たちを映画館によぶため…という目的もあるかと思いますが、彼女には能天気な男の冒険児にはない特質があります。それは挫折した時に見せる内面の弱さであったりとか、恐ろしい魔物をも思いやる心であったりとか。そういった女子ならではの柔らかい性質と男の子らしいたくましい冒険心が混ざり合って、実に中性的でバランスのとれたエンターテイメントになっておりました。
ポリネシアの民話を下敷きにした独特な背景や妖怪、アイテムも魅力のひとつであります。思えばこの辺を舞台にしたアニメ映画って今までこれといってなかったような。ミッシェル・オスロなども世界各地の昔話のアニメ化を精力的に行っているので、短編かなにかでやっているかもしれませんが。まあとにかく西洋ファンタジー世界とは一風違った南洋のセンスが目に楽しゅうございました。
というわけで予想通り大ヒットを続けている『モアナと伝説の海』ですが、驚いたことにさらにこれを越えて売れている海外アニメが同時公開中です。次の次くらいにその作品について取り上げる予定です。下のイラストはウシ先生が描いてくれた赤ちゃんモアナ。か~わい~な~~
Comments
伍一くん☆
ご無沙汰です~
今までのディズニーにはなかった冒険ものでしたね。
ある意味、今の時代らしいというか・・・
男子が料理をこなしグルーミングをし、女子が逞しく冒険に出る、こういった状況は日本だけじゃなかったのかも・・・・?
でもそういうさっぱりとしたストーリー展開が多くの人にウケている理由でもあるよね☆
Posted by: ノルウェーまだ~む | April 24, 2017 12:31 AM
>ノルウェーまだ~むさん
こちらこそご無沙汰しててすいません。最近仕事が煮詰まり気味でして…
海系のディズニーアニメといえば「不思議の海のナディア」をパク…意識したと思しき「アトランティス」というのがありましたが、あまり観てる人いませんね(笑)
どんどん王道のプリンセスものから離れていくディズニーですが、そっちの方が自分なんかは見やすかったりして
Posted by: SGA屋伍一 | April 24, 2017 10:34 PM