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March 01, 2017

ジパング残酷物語 遠藤周作&マーティン・スコセッシ 『沈黙 -サイレンス- 』

Silence1ああー これはもう完全に公開終わってしまったなー(そんなんばっかしや) 遠藤周作の不朽の名作を大御所マーティン・スコセッシが映画化。『沈黙 -サイレンス- 』ご紹介します。

時は17世紀。ポルトガルの修道士ロドリゴは、敬愛していた師のフェレイラが遠い日本の地で消息を絶ったことを知らされる。フェレイラはかの地で体制側に寝返り棄教したという噂も流れてきた。ロドリゴは同胞ガルペと共にキリスト教が弾圧されている日本に渡り、師の安否を確かめるべく旅立つが…

この作品、映画を先に観てしまったらもう原作は読まないだろうと思い、珍しくはりきって原作を先に読みました。鎖国の時代のキリシタンが迫害される話なので確かに重苦しくはあるんですが、でも不思議と秘境探検ものみたいな面白さがあるんですよね。当時のヨーロッパ人にしてみれば日本もアフリカや南米と変わらぬ未開の地だったわけで。自分たちと全く異なる文化を持ち、ついこないだまで国中で戦争に明け暮れていたとなれば乗り込んでいく側とすれば相当な勇気が求められたはず。そんな彼らに感情移入して読むと、前半はなかなかスリルとサスペンスに満ちています。加えてフェレイラはどうなったのか? 本当に教会を裏切ったのか?というミステリー的な要素もあります。この「未開の地へある人物の謎を明かすために旅を続ける」というストーリー、コンラッドの『闇の奥』を思い出させます。
ただ中盤をすぎるとさすがにゴア描写やロドリゴの苦悩などが面白さに勝ってきて、「ああ、やっぱり純文学ねえ…」と感じ入りました。悩んで苦しんでたどりついたラストはなぜか意外とさわやかな印象でありましたが。
特に印象に残ったのはロドリゴの案内役となるキチジローというキャラクター。ウソつきで小心者で愚痴っぽくて、それこそ聖書の中のユダのように苛立つ人物なのですが、遠藤先生はこのキチジローに自分を重ね合わせて描いておられたそうで。ずいぶん謙虚な方だったんですね…

さて、映画のほう。一点を除くと実に原作に忠実でありました。ポルトガル人と日本人の共通語がなぜか英語というあたりはひっかかりましたが、日本描写は本当に違和感なく丁寧に作られていたので、そこは見逃してあげるべきでしょうか。
スコセッシ作品は主人公が「自分の悩み、苦しみを誰かにわかってほしい」というお話が多いです。『沈黙』に彼がひかれたのも同じテーマを見出したからでしょう。この作品の場合、わかってほしい相手が主に神様に限定されるわけなんですけど。でも神様はなかなか直接には言葉をくださらない。だから『沈黙』というタイトルなのですね。この辺現代日本人にはなかなかわかりにくい悩みかもしれません。日本人が書いた話なのにね(笑) ともかくその神の沈黙にどう折り合いをつけていくか、どれほど返事がなくても信仰をたもっていられるか… そういうお話なのだと思います。
そんなに深刻な映画なのに、どうも映像にされるとシュールというかユーモラスなものを感じてしまったわたくし。特に笑いをこらえていたのは塚本晋也監督が荒海で極刑に処せられるシーン。相当ハードな撮影で、塚本監督は「死ぬかと思った」「ここで死んだらスコセッシ喜んでくれるかな」なんてことを考えながら演じていたそうで。事前にそんなインタビューを読んでいたのがどうもいけなかったようです。原作では安らぎを覚えた結末も、映画の方はやっぱりなんでかけそけそけそと笑えてしまって。遠藤先生、スコセッシ監督本当にごめんなさい。
Yjimageslまあ自分はそんなでしたけど、日本について信仰について真摯に問うた映画なので、興味を持たれた方は是非ごらんください…ってもう公開終わっちゃったけどな! それにしても、あの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のあとでこんな重苦しい映画作るんだからスコセッシってやっぱりすごい人…というか人間の二面性が垣間見えて面白うございました。

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Comments

伍一くん☆
ありゃ!原作を先に読むと、すごいシーンでも笑っちゃうとは・・・
ちなみにパパンは海の磔刑のところで、トイレにいきたくなって、そのあとずーっとモジモジしていたそうな(爆)

Posted by: ノルウェーまだ~む | March 03, 2017 at 04:47 PM

こんばんは

わたしは映画を先に観て,原作を読んだクチです。
遠藤周作さん,食わず嫌いでごめんなさいです。
・・・・素晴らしい作家ですね。
そうそう,秘境探索ものめいた面白さもありますね,原作。
そして,映画の後で読むと,ほんとに忠実に原作を映像化してくれたんだなぁと感心しました。
外国の監督さんなのに・・・
ちなみの日本でも映画化されていますがそちらはこれほど高評価ではないそうで・・・・

キチジロー,わたしも一番共感しました。
彼に自分を重ねる信徒は結構多いかもです。
だって,実は一番自然な反応だから…彼の行動は。

Posted by: なな | March 03, 2017 at 09:17 PM

>ノルウェーまだ~むさん

あそこからラストまでまだまだだいぶ時間ありましたよね… それを耐えきらねばならないとしたらまさしく拷問…

Posted by: SGA屋伍一 | March 04, 2017 at 10:11 PM

>ななさん

わたしもこれが遠藤周作初チャレンジでした。こう言ってはなんですが予想よりだいぶ面白かったです。ついでに並び称されてる代表作『海と毒薬』にも手を伸ばそうかと思ってますが、これまたえぐい内容のようで

>キチジロー,わたしも一番共感しました。

わたしも彼が自分に近い存在だからいらだったのだと思います。ああいう立場に立たされることもそうないでしょうけど、反面教師として思いにとどめておきたいです…

Posted by: SGA屋伍一 | March 04, 2017 at 10:25 PM

こんにちは。

>塚本監督は「死ぬかと思った」「ここで死んだらスコセッシ喜んでくれるかな」なんてことを考えながら演じていた

これ読んだら、あの悲惨なシーンがバラエティ番組のリアクション芸人のギャグに見えるようになりました。
困った困った……。

Posted by: ナドレック | March 12, 2017 at 09:55 AM

>ナドレックさん

ダチョウ倶楽部の熱湯風呂とか「どうぞどうぞ」とかがつい思い出されてしまってね… 塚本監督のM芸にこれからも期待(え)

Posted by: SGA屋伍一 | March 15, 2017 at 09:27 PM

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