LAコンガラガッテル シェーン・ブラック 『ナイスガイズ!』
『ラ・ラ・ランド』のヒットで改めて注目を浴びているライアン・ゴズリング。今回はその一週間前に日本で公開された、ライアン氏のまた違った一面が現れた作品を紹介します。『ナイスガイズ!』、行ってみましょう。
70年代アメリカはLA。しがない探偵のマーチは依頼である若い娘の身辺を調査しているうちに、彼女に雇われた示談屋ヒーリーにこっぴどく痛めつけられる。最悪ともいえる出会いだったが、その娘アメリアが政府の機密を知って追われる身だったため、彼女に関わったマーチとヒーリーも命を狙われることに。不本意ながらも二人は手を組んで巨大な敵に立ち向かうことになる。
この映画に関してはまずこの予告編をまず見ていただきたい。それほど興味のなかったわたしが、これを見て一瞬で絶対鑑賞リストに入れてしまったほどです。逆にこのトレイラーに特に響かなかった人は、むいてないと思います。
ただそういいながら予告では実は70年代が舞台ということに気づきませんでした… この70年代LAの風俗が珍妙なコンビの活躍に妙にマッチしてるんですね。ヘンテコな口髭やクラシカルなオープンカー、携帯・PCは登場せず、AVもなかったためにポルノ映画がやけにはぶりがよかったりする。定番の『セプテンバー』も流れます。そんな能天気な街を融通の利かないゴリラ男と、頼りなさげなお調子者、そしてチャーミングで活発なマーチの娘らが飛び回るのですから楽しくないわけがありません。
ライアン・ゴズリングといえばこれまで基本的にクールですかしたイケメン役が多く、非モテ民からすれば嫉妬の対象でしかなかったのですが、いやあ、今回のゴズリンくんはよかった。たぶんこれまでのキャリアで最もかっこ悪い役を極めて自然に熱演しておりました。んで彼が演じるマーチという男、冒頭から最後まで落ちたり折られたり切ったりと、えんえんと痛い目に合い続けます。その不幸ぶりが彼には悪いのだけど大変痛快でした(笑) そして彼自身も派手に痛がる割にすぐ立ち直ったりしてるので、そういう意味では実にハードボイルドです。
ハードボイルドといえば相方であるラッセル・クロウ。今よりも半分くらいのウェストのころに、やはりLAの腐敗を描いた『LAコンフィデンシャル』という作品で脚光を浴びました。二人の男の共闘、キム・ベイシンガー、狂犬のようなキャラクターと色々共通するところも多いので、見比べてみると面白いと思います。思えば彼もそんなにコミカルな映画には出てないので、ライアン共々新境地と言えるかもしれません。
この映画には特に原作はないのですけど、軽妙な海外ミステリー小説のような趣があります。ドン・ウィンズロウとか、ドナルド・E・ウェストレイクとかあの辺の作風に近い。謎解きあり、ピンチあり、意外な展開あり。でももっとも魅力的なのはそのはっちゃけたお笑いセンス。くたびれてる時に観ると実にスコーンと疲労が抜けていくような、デトックスにもってこいの作品でした。
…と、さんざんベタ誉めしましたけどいまいち宣伝に花がなかったためか、日本ではそれほど売れなかったようであさってには大体のところで上映終了です。ああああああ
こないだの『マグニフィセント・セブン』もそうだったけどドツボだった映画が売れないと本当につらい。せめて微力ながらも一生懸命応援したいと思います(ならもっと早く書けや)。というわけで興味を持たれた方はあと二日のうちにご覧ください。どうにも無理という方は二番館か数か月後にDVDでぜひ!
Comments
伍一どんの記事を読んでて、
クレヨンしんちゃんのヒロシと園長がヒマに注意されながら探偵やるみたいな映画だなと思いました。
Posted by: ふじき78 | March 18, 2017 12:01 AM
>ふじき78さん
確かに今回のライアン・ゴズリングは藤原啓治さんの吹替えが似合う感じでした。その後回復なさったのかな。陰ながら心配
Posted by: SGA屋伍一 | March 21, 2017 10:07 PM