お熱いドッグがお好き コンラッド・ヴァーノン&グレッグ・ティアナン 『ソーセージ・パーティー』
いまや全然珍しくもなくなったフルCGアニメーション。「こういうの、前にも観たなあ」と思うことが多くなってきました。しかし先ごろとびっきり個性的で珍妙でお下劣なCGアニメが登場いたしました。『ソーセージ・パーティー』、ご紹介しましょう。
そこはとある町のスーパーマーケット。食品たちや製品たちは、いつか神(お客さん)に選ばれて、店の外へ出ていくことを夢見ていた。そこはきっと素晴らしい楽園に違いないという伝説を信じて。ソーセージのフランクもその一人というか一個だった。そしてあわよくば隣で売られているセクシーなパンと楽園で結ばれたいという妄想にもふけっていた。だがその甘い夢は奇跡的に外から戻ってきたハニーマスタードの証言により打ち砕かれる。彼が言うには外界は神が食品を貪り食い、商品を消費する恐ろしい世界だというのだ…
まあなんで主人公がソーセージかというとですね。いわゆるなにかの比喩なわけですね。そしてソーセージを挟むパンも何かの象徴なのです。そしてソーセージとパンが合体するということは… ああ、もうこれ以上はちょっと言えません!
かようによくこんな下品なこと思いつくなあ、そしてそれをアニメでやるなあ…とあきれ果てるのですが、テーマが何もないかといえばそんなことはなく、意外と考えさせられるお話になっています。飽くことなく必要以上にモノを買い、食べる人々の姿が実に醜く目にうつるのですね。こうはなりたくはないなあ…と思いつつももうすでにそうなっているのかもしれません。
お話は最初こそピ○サーの名作のようなムードで始まります。というかやはりこの映画、下ネタをぶち込んだ『トイ・ストーリー』のような趣があります。主人公たちが人間たちとコミュニケーションが取れなかったり、おとぎ話を信じ込んでるあたりとかね(そして現実は厳しい…)。あらためてかの作品の偉大さに感じ入りました。
そして世界の真実が明らかになったあたりから、今度は途端にホラー調になります。これがまあやっぱり絵柄はそのまんま漫画調なんですけど、妙にシュールな怖さがありまして。メシ・フロ、済ませたあとのレイトショーなのでちょっとうとうと来てたんですが、そのあたりから急にしゃきっといたしました。
食べられるしかないと運命を悟ったソーセージたちは果たしていかなる決断をくだすのか。そこから先が本当に想定を超えるというか、ぶっとんだ展開を見せます。R15指定ならではの残酷描写や下ネタもバンバンヒートアップしていきます。クライマックスの一シーンなどは劇場全体にすごく気まずいムードが漂ったりもしました(笑) しかし、まあそれをさしひいても一見の価値がある…と言っていいのか。大変人を選ぶ映画であることも確かです。
で、この『ソーセージ・パーティー』、こちらで上映されたのもだいぶ遅れてからだったので、もう明後日にはDVDが出ます。ご興味おありの方はぜひお子様の目の届かないところでご覧くださいまし。セス・ローゲン、エドワード・ノートン、ポール・ラッド、ジョナ・ヒルなど声優陣がなかなか豪華なのも見どころ…というか聴きどころです。
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Comments
> クライマックスの一シーンなどは劇場全体にすごく気まずいムードが漂ったりもしました(笑)
そうだった(笑)。
Posted by: ふじき78 | March 06, 2017 10:30 PM
>ふじき78さん
アホなことにカップルで来てた客も3組くらいいましたよ…
Posted by: SGA屋伍一 | March 08, 2017 09:54 PM