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March 22, 2017

ロサンゼルスの恋人たち デミアン・チャゼル 『ラ・ラ・ランド』

10107072「本年度アカデミー賞最有力候補!」とうたわれ、各所から絶賛の嵐を受けていた新鋭デミアン・チャゼルの話題作。ところがふたをあけてみると… 本日はそんな『ラ・ラ・ランド』をご紹介します。

夢を追う若者たちが多く集う街ロサンゼルス。ジャズピアニストのセブは自分の店を持つことを、ウェイトレスのミアは女優として名をはせることを目標としていた。ひょんなことから顔を合わせた二人は偶然にもその後何度か再会することに。そしていつしか互いに心惹かれ、恋人の夢を応援するようになるのだが…

最初にあらすじや予告を見た時、実は自分それほどひかれなかったんですよね。こう言ってはなんですけどそれこそ「月9」か何かでありそうなストーリーで。それでもこれほど多くの人が激賞してるんだから、きっと「何か」があるんだろう…と。その何かを見つけるために鑑賞することにしました。で、果たして見つけられたかというと… 実はいまだによくわからなかったりして(笑)  これは自分がそれほどミュージカルに対してあまり素養を持ち合わせていないせいもあると思います。

ではつまらなかったかといえばそんなことはなく。なんか、しみじみ胸にこたえる映画でした。予告からこれはきっと恋する二人がキュンキュン踊りまくって最初から最後までハッピーが満ち溢れたそんな映画だろう…と想像してたんですが、そういうのは前半だけ。後半に入ると歌はあってもダンスはほとんどなくなってしまいます。すれちがう二人の心や夢を追うことのむずかしさが踊りを封印することによって表現されているように感じられました。
そしてかつてそれなりに志を抱いたり、好きだったけどうまくいかなかった人のことを思い出すと、どうにも切々と肺の奥のあたりがきゅううう~と苦しくなるのでした。おっさんなのにうら若き乙女のようなことを言ってて大概キモいですけど。

鳴り物いりで公開された本作。きっと日本のネット上でも絶賛に包まれるだろうと思いきや、これがものすごい意見の割れっぷりで。それも賛否両論大激突というのではなく、賛にせよ非にせよ本当にひとそれぞれに感想が微妙に異なる。そしてみんな語りたがる。それはつまり、やっぱり優れた作品ゆえだと思います。
アカデミー賞における椿事もこの映画の伝説をひとつ付け加えてしまいました。普通に作品賞を受賞するより、ああいうハプニングがあったことでかえってこれからも末永く語りつがれるのではないでしょうか。そして若手ながらすでに2作品がノミネートされたデミアン・チャゼル。彼はまだ伝説の途上にあります。これからどんな物語をさらにつむいでいってくれるのか、とても楽しみです。

Llland2オスカーは逃したものの、軽快な音楽が功を奏してか、『ラ・ラ・ランド』は日本でもヒットを飛ばしています。決して甘いだけの映画ではありませんが、伝説として語り継がれるであろう映画が観たいという方はぜひ劇場に足を運ばれてください。接戦を制した『ムーンライト』、共に賞を争った『ハクソー・リッジ』『マンチェスター・バイ・ザ・シー』なども順次公開予定です。


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March 21, 2017

リアルさかなくん クォン・オグァン 『フィッシュマンの涙』

Fnn1『お嬢さん』『コクソン』『アシュラ』と最近韓国映画がいろいろ話題を呼んでますが、本日はその少し前に公開された風変わりなコリアンムービーを紹介します。その名も『フィッシュマンの涙』、ご紹介します。

とくにとりえもない平凡な青年パク・グは製薬会社の怪しげな実験に参加したことから、頭部が巨大な魚の「フィッシュマン」に変形してしまう。パクの自称恋人ジンとテレビマンのサンウォンはそのことを報道し、金と名誉を手に入れようと企む。パクの存在は二人の目論見どおり世間の注目を集め、様々な社会現象を呼び起こすのだが。

こんなあらすじを読むと抱腹絶倒のワンアイデアストーリーを想像します。自分もそうでした。実際幾つかのシーンはおなかを抱えて笑いました。ですが観ているうちにどんどん切ねえ思いが高まっていくのです。
自分の意志とはかかわりなく世間からもてはやされたり、やっかまれたり、崇められたり、憎まれたりする主人公。その無表情でじーっと耐えてる姿がなんとも物悲しいのですね。サカナ面なんで表情を出しようもないのですが。そんな風に人として笑うことも泣くことも奪われてしまったフィッシュマンのたたずまいについホロリとさせられました。さらに彼はダメ押しのようにとてもいじらしいことを言ったりするので、「も~、やめてよ~、おじさんそういうのダメなんだよ~」と鼻水を噴きながら身もだえしておりました。

そして彼を出世の道具としか見ていなかったサンウォンの心にも、次第に変化が訪れていきます。まるで接点のなかったサンウォンとパク。でも色々なことを共に経験していく中で、サンウォンはパクも自分と同じ夢を見失った一人の若者であることに気が付きます。そんな二人がポツポツと心を通わせていくくだりに、おじさんはまた鼻水を搾り取られたのでした。

わたしはお隣の事情とかよく知らないのですが、この映画を観る限りでは向こうの若者を取り巻く事情というのはとても厳しいようです。中央の大学を出なければ立派なポストにつけなかったり、公務員になれる倍率がかなり厳しい数字だったり。日本も含めなかなか将来に希望を持てない青年たちが、笑って顔をあげられるような社会にするにはどうしたらいいのだろうと、足りない頭でつい思いめぐらしてしまいます。そこで簡単に答えが出せれば苦労はしないんですけどね…

韓国映画といえば血しぶき飛び交うバイオレンス調のものが多い印象ですが、この『フィッシュマンの涙』はめずらしく物静かで心優しいファンタジー作品でありました。「涙」とタイトルにありますけど涙だけには終わらないところもけっこう好きです。
Fnn2こちらでは遅れてかかったうえに感想を書くのがもたついたので(またですか…)、もう全国でも5館くらいしか上映予定がないのですが、興味を持たれた方はごらんください。来月末にはもうDVDが出るようです。


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March 15, 2017

LAコンガラガッテル シェーン・ブラック 『ナイスガイズ!』

Ng1『ラ・ラ・ランド』のヒットで改めて注目を浴びているライアン・ゴズリング。今回はその一週間前に日本で公開された、ライアン氏のまた違った一面が現れた作品を紹介します。『ナイスガイズ!』、行ってみましょう。

70年代アメリカはLA。しがない探偵のマーチは依頼である若い娘の身辺を調査しているうちに、彼女に雇われた示談屋ヒーリーにこっぴどく痛めつけられる。最悪ともいえる出会いだったが、その娘アメリアが政府の機密を知って追われる身だったため、彼女に関わったマーチとヒーリーも命を狙われることに。不本意ながらも二人は手を組んで巨大な敵に立ち向かうことになる。

この映画に関してはまずこの予告編をまず見ていただきたい。それほど興味のなかったわたしが、これを見て一瞬で絶対鑑賞リストに入れてしまったほどです。逆にこのトレイラーに特に響かなかった人は、むいてないと思います。

ただそういいながら予告では実は70年代が舞台ということに気づきませんでした… この70年代LAの風俗が珍妙なコンビの活躍に妙にマッチしてるんですね。ヘンテコな口髭やクラシカルなオープンカー、携帯・PCは登場せず、AVもなかったためにポルノ映画がやけにはぶりがよかったりする。定番の『セプテンバー』も流れます。そんな能天気な街を融通の利かないゴリラ男と、頼りなさげなお調子者、そしてチャーミングで活発なマーチの娘らが飛び回るのですから楽しくないわけがありません。

ライアン・ゴズリングといえばこれまで基本的にクールですかしたイケメン役が多く、非モテ民からすれば嫉妬の対象でしかなかったのですが、いやあ、今回のゴズリンくんはよかった。たぶんこれまでのキャリアで最もかっこ悪い役を極めて自然に熱演しておりました。んで彼が演じるマーチという男、冒頭から最後まで落ちたり折られたり切ったりと、えんえんと痛い目に合い続けます。その不幸ぶりが彼には悪いのだけど大変痛快でした(笑) そして彼自身も派手に痛がる割にすぐ立ち直ったりしてるので、そういう意味では実にハードボイルドです。

ハードボイルドといえば相方であるラッセル・クロウ。今よりも半分くらいのウェストのころに、やはりLAの腐敗を描いた『LAコンフィデンシャル』という作品で脚光を浴びました。二人の男の共闘、キム・ベイシンガー、狂犬のようなキャラクターと色々共通するところも多いので、見比べてみると面白いと思います。思えば彼もそんなにコミカルな映画には出てないので、ライアン共々新境地と言えるかもしれません。

この映画には特に原作はないのですけど、軽妙な海外ミステリー小説のような趣があります。ドン・ウィンズロウとか、ドナルド・E・ウェストレイクとかあの辺の作風に近い。謎解きあり、ピンチあり、意外な展開あり。でももっとも魅力的なのはそのはっちゃけたお笑いセンス。くたびれてる時に観ると実にスコーンと疲労が抜けていくような、デトックスにもってこいの作品でした。

Ng2…と、さんざんベタ誉めしましたけどいまいち宣伝に花がなかったためか、日本ではそれほど売れなかったようであさってには大体のところで上映終了です。ああああああshock こないだの『マグニフィセント・セブン』もそうだったけどドツボだった映画が売れないと本当につらい。せめて微力ながらも一生懸命応援したいと思います(ならもっと早く書けや)。というわけで興味を持たれた方はあと二日のうちにご覧ください。どうにも無理という方は二番館か数か月後にDVDでぜひ!


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March 08, 2017

万国ビックリ少年団 ランサム・リグズ&ティム・バートン 『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』

Mpg1ここのところ、前ほどの勢いはなくなってきたティム・バートン。ですが今回の作品は久々に日本でも受けが良いよう。人気ファンタジー小説を映画化した『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』、ご紹介いたします。

アメリカに住む少年エイブはさえない平凡な毎日を送っていた。だがある日仲の良かった祖父が変死を遂げたことから、彼の謎に満ちた過去に興味を抱くようになる。祖父は戦時中ウェールズのとある島の施設で、不思議な力をもった子供たちと出会ったとエイブに語っていた。彼の死の真相を解けないかと、エイブは父親と二人でその島へと向かう。そこでエイブは祖父が子供たちを守るため、恐ろしい敵たちと人知れず戦っていたことを知る。

ティム・バートンというとジョニー・デップが観客置いてけぼりでケタケタ笑うような、ハイテンションなギャグが多いイメージ。しかし今回は原作付ゆえか、ジョニデと別れたからか、そういうお笑い要素はほとんどありませんでした。むしろ「もうちょっとユーモアを入れてもいいんじゃないの?」と思ったくらい。少年の冒険と成長と淡い恋模様
が真剣に真剣に語られていきます。自分… こういうのにも弱いんですよね…

変わった点のひとつはウェールズが主な舞台であること。先日の国民投票が記憶に新しいところですが、ウェールズのお話ってあまり映画でないような。アニメの『イリュージョニスト』くらいしか思い当りません。まあ自分、ウェールズとイングランドとスコットランドでどんなふうに風土が違うとか、あんまりわかってませんけどw

子供たちを率いる先生がなぜか鳥に変身できるというところも変わっています。いったい彼女は鳥なのか人なのか人間なのか… その辺の正体はよくわかりませんでしたが、「かっこよかったから細かいことはいい」と思うことにしました。ここんとこ肉食系女史の多かったエヴァ・グリーンさんですが、今回はとても男前です。くわえパイプがとてもよく似合っていました。

そしてエイブの仲間となる奇妙な力を持った子供たち。この子らのパワーがどれもなかなかヘンテコで楽しい。後頭部に口があるとか、風船のように宙に浮いてしまうとか、体に蜂の巣を内蔵してるとか、あまり実用的ではなさそうな特技ばかりなんですが、クライマックスの戦闘ではどれもちゃんと役に立っていて感心いたしました。バトルシーンなのにサーカスの曲芸を見てるかのような楽しさがあります。もちろん主人公エイブ君にもある特殊能力があるんですけど、これがなかなか地味(笑) でも仲間たちを守るためには絶対必要な能力で、その辺の設定のうまさにも舌を巻きました。
Mgp2ここんとこ『ファンタスティック・ビースト』『ドクター・ストレンジ』と幻想的な冒険映画がコンスタントにあたっています。なんにせよいま洋画が元気に乏しいので、少しでもヒット作が増えてくれたら嬉しいかぎりでやんす。
『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』はヤングアダルト原作にはありがちなことに三部作からなっているそうです。ただ映画の方は結末がそれなりによくまとまっていたので、これで終わりでもいいんじゃないかな、と思います。ちなみに世界興行収入はいまのところトントンの模様。うーん、微妙(笑)


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March 06, 2017

お熱いドッグがお好き コンラッド・ヴァーノン&グレッグ・ティアナン 『ソーセージ・パーティー』

Sp1いまや全然珍しくもなくなったフルCGアニメーション。「こういうの、前にも観たなあ」と思うことが多くなってきました。しかし先ごろとびっきり個性的で珍妙でお下劣なCGアニメが登場いたしました。『ソーセージ・パーティー』、ご紹介しましょう。

そこはとある町のスーパーマーケット。食品たちや製品たちは、いつか神(お客さん)に選ばれて、店の外へ出ていくことを夢見ていた。そこはきっと素晴らしい楽園に違いないという伝説を信じて。ソーセージのフランクもその一人というか一個だった。そしてあわよくば隣で売られているセクシーなパンと楽園で結ばれたいという妄想にもふけっていた。だがその甘い夢は奇跡的に外から戻ってきたハニーマスタードの証言により打ち砕かれる。彼が言うには外界は神が食品を貪り食い、商品を消費する恐ろしい世界だというのだ… 

まあなんで主人公がソーセージかというとですね。いわゆるなにかの比喩なわけですね。そしてソーセージを挟むパンも何かの象徴なのです。そしてソーセージとパンが合体するということは… ああ、もうこれ以上はちょっと言えません!
かようによくこんな下品なこと思いつくなあ、そしてそれをアニメでやるなあ…とあきれ果てるのですが、テーマが何もないかといえばそんなことはなく、意外と考えさせられるお話になっています。飽くことなく必要以上にモノを買い、食べる人々の姿が実に醜く目にうつるのですね。こうはなりたくはないなあ…と思いつつももうすでにそうなっているのかもしれません。

お話は最初こそピ○サーの名作のようなムードで始まります。というかやはりこの映画、下ネタをぶち込んだ『トイ・ストーリー』のような趣があります。主人公たちが人間たちとコミュニケーションが取れなかったり、おとぎ話を信じ込んでるあたりとかね(そして現実は厳しい…)。あらためてかの作品の偉大さに感じ入りました。
そして世界の真実が明らかになったあたりから、今度は途端にホラー調になります。これがまあやっぱり絵柄はそのまんま漫画調なんですけど、妙にシュールな怖さがありまして。メシ・フロ、済ませたあとのレイトショーなのでちょっとうとうと来てたんですが、そのあたりから急にしゃきっといたしました。

食べられるしかないと運命を悟ったソーセージたちは果たしていかなる決断をくだすのか。そこから先が本当に想定を超えるというか、ぶっとんだ展開を見せます。R15指定ならではの残酷描写や下ネタもバンバンヒートアップしていきます。クライマックスの一シーンなどは劇場全体にすごく気まずいムードが漂ったりもしました(笑) しかし、まあそれをさしひいても一見の価値がある…と言っていいのか。大変人を選ぶ映画であることも確かです。

Sp2で、この『ソーセージ・パーティー』、こちらで上映されたのもだいぶ遅れてからだったので、もう明後日にはDVDが出ます。ご興味おありの方はぜひお子様の目の届かないところでご覧くださいまし。セス・ローゲン、エドワード・ノートン、ポール・ラッド、ジョナ・ヒルなど声優陣がなかなか豪華なのも見どころ…というか聴きどころです。


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March 01, 2017

ジパング残酷物語 遠藤周作&マーティン・スコセッシ 『沈黙 -サイレンス- 』

Silence1ああー これはもう完全に公開終わってしまったなー(そんなんばっかしや) 遠藤周作の不朽の名作を大御所マーティン・スコセッシが映画化。『沈黙 -サイレンス- 』ご紹介します。

時は17世紀。ポルトガルの修道士ロドリゴは、敬愛していた師のフェレイラが遠い日本の地で消息を絶ったことを知らされる。フェレイラはかの地で体制側に寝返り棄教したという噂も流れてきた。ロドリゴは同胞ガルペと共にキリスト教が弾圧されている日本に渡り、師の安否を確かめるべく旅立つが…

この作品、映画を先に観てしまったらもう原作は読まないだろうと思い、珍しくはりきって原作を先に読みました。鎖国の時代のキリシタンが迫害される話なので確かに重苦しくはあるんですが、でも不思議と秘境探検ものみたいな面白さがあるんですよね。当時のヨーロッパ人にしてみれば日本もアフリカや南米と変わらぬ未開の地だったわけで。自分たちと全く異なる文化を持ち、ついこないだまで国中で戦争に明け暮れていたとなれば乗り込んでいく側とすれば相当な勇気が求められたはず。そんな彼らに感情移入して読むと、前半はなかなかスリルとサスペンスに満ちています。加えてフェレイラはどうなったのか? 本当に教会を裏切ったのか?というミステリー的な要素もあります。この「未開の地へある人物の謎を明かすために旅を続ける」というストーリー、コンラッドの『闇の奥』を思い出させます。
ただ中盤をすぎるとさすがにゴア描写やロドリゴの苦悩などが面白さに勝ってきて、「ああ、やっぱり純文学ねえ…」と感じ入りました。悩んで苦しんでたどりついたラストはなぜか意外とさわやかな印象でありましたが。
特に印象に残ったのはロドリゴの案内役となるキチジローというキャラクター。ウソつきで小心者で愚痴っぽくて、それこそ聖書の中のユダのように苛立つ人物なのですが、遠藤先生はこのキチジローに自分を重ね合わせて描いておられたそうで。ずいぶん謙虚な方だったんですね…

さて、映画のほう。一点を除くと実に原作に忠実でありました。ポルトガル人と日本人の共通語がなぜか英語というあたりはひっかかりましたが、日本描写は本当に違和感なく丁寧に作られていたので、そこは見逃してあげるべきでしょうか。
スコセッシ作品は主人公が「自分の悩み、苦しみを誰かにわかってほしい」というお話が多いです。『沈黙』に彼がひかれたのも同じテーマを見出したからでしょう。この作品の場合、わかってほしい相手が主に神様に限定されるわけなんですけど。でも神様はなかなか直接には言葉をくださらない。だから『沈黙』というタイトルなのですね。この辺現代日本人にはなかなかわかりにくい悩みかもしれません。日本人が書いた話なのにね(笑) ともかくその神の沈黙にどう折り合いをつけていくか、どれほど返事がなくても信仰をたもっていられるか… そういうお話なのだと思います。
そんなに深刻な映画なのに、どうも映像にされるとシュールというかユーモラスなものを感じてしまったわたくし。特に笑いをこらえていたのは塚本晋也監督が荒海で極刑に処せられるシーン。相当ハードな撮影で、塚本監督は「死ぬかと思った」「ここで死んだらスコセッシ喜んでくれるかな」なんてことを考えながら演じていたそうで。事前にそんなインタビューを読んでいたのがどうもいけなかったようです。原作では安らぎを覚えた結末も、映画の方はやっぱりなんでかけそけそけそと笑えてしまって。遠藤先生、スコセッシ監督本当にごめんなさい。
Yjimageslまあ自分はそんなでしたけど、日本について信仰について真摯に問うた映画なので、興味を持たれた方は是非ごらんください…ってもう公開終わっちゃったけどな! それにしても、あの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のあとでこんな重苦しい映画作るんだからスコセッシってやっぱりすごい人…というか人間の二面性が垣間見えて面白うございました。

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