ロシアの森からこんにちは ユーリー・ノルシュテイン特集上映
あいかわらず1ヶ月おくれでの感想アップです… ロシアの伝説のアニメーション作家、ユーリー・ノルシュテイン。その特集上映が年末から行われていたので正月早々張り切って行ってきました。その紹介と雑感をば。
☆「25日・最初の日」(1968年)
ロシア革命の日を振り返った勇壮な絵アニメ。一言でいうなら共産主義のプロパガンダアニメなのですが、労働者側の描き方があまりにも迫力ありすぎてあまり正義の側には見えないような。現代人からのフィルターがかかった目から見ているせいでしょうか。
☆「ケルジェネツの戦い」(1971年)
AD988年にあったロシアとタタールの戦いを題材にした作品。バロック調の絵画を切り抜いたような絵柄が独特な印象を残します。クライマックスの激戦はさながら切り絵版『300』のような迫力があります。
☆「キツネとウサギ」(1973年)
前二作とはうってかわった子供向けの動物童話。ただ絵柄はなかなかにシュール。凶暴なキツネに家を追い出されたウサギくん。森の猛者たちは彼を助けようとするがことごとく敗退。誰もがキツネにはかなわないとあきらめたとき現れたのは…
後の「霧の中のハリネズミ」と同様、損得抜きの純粋な友情が胸をうちます。腐女子の皆さんが妄想をかきたてられそう。
☆「アオサギとツル」(1974年)
純情なアオサギと気位の高いツルの擦れ違いの恋模様。まあ最後はうまいとこおさまるところにおさまるんでしょう?と予想していたら笑えるサプライズ・エンディングが。例えて言うならつげ義春の「ねじ式」のような。
淡い色調と細い描線は日本の浮世絵を意識したとのこと。
☆「霧の中のハリネズミ」(1975年)
ノルシュテインの最高傑作との誉れ高い1本。友達の熊のもとへイチゴを届けようとしたハリネズミだが、道は霧が深くどんどん迷ってしまう。「迷う前と後でハリネズミの価値観が変わる」「我々が見ている世界は全体のごく一部でしかない」という深遠なテーマも含まれていますが、それはともかくハリネズミ君がほんと~~~~にかわいい。高畑勲激賞もなっとくの満足感です。
☆「話の話」(1979年)
へんてこな子犬を狂言回しに、脈絡もなくつむがれる幾つかのシュールな情景。ほかの作品はすべて10分ですが、これだけ30分弱です。
十代のころ深夜放送で一度見たのですがわけがわからず、今なら理解できるかな~と再挑戦したのですが、やっぱりちんぷんかんぷんでしたw ただ今回はそのわけわからなさを楽しむ余裕がありました。
解説を読むとどうもノルシュテインの幼少期の記憶や原風景をつなぎあわせたらこうなった…とのこと。そう考えるといろいろうなずけるところがあるような。
気に入った順は上からハリネズミ、キツネ&ウサギ、話の話…というところでしょうか。噂に名高い傑作を一挙に観られてようございました。
ノルシュテイン特集上映はひきつづき横浜、川崎などで細々と公開中。今回はデジタルリマスターを記念してのイベントだそうなので、近々DVDも出ると思います。
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