妖術のお医者さん スコット・デリクソン 『ドクター・ストレンジ』
『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』から約9ケ月。ようやくマーベル・シネマティック・ユニバースの最新ヒーローがお目見えです。その名も『ドクター・ストレンジ』!(…) ま、ともかくあらすじからご紹介しましょう。
自他ともに認める天才外科医スティーブン・ストレンジは、不慮の事故により両手に大けがを負う。医師としてのキャリアを諦めきれない彼は、「半身不随さえ回復させた」施設の噂を聞き、その施設がある場所カマー・タージへと向かう。だがそこで彼が出会ったのは医師ではなくエンシェント・ワンと名乗る魔術師であった。魔術と聞いて一笑に付したストレンジだったが、エンシェント・ワンの強大なパワーを目の当たりにし、弟子入りすることに。しかしそれはこの世に災厄をもたらす異次元の怪物との闘いに足を踏み入れることでもあった。
X-MENは差別問題、アイアンマンは電子工学、スパイダーマンは地道な自警団員…と、アメコミヒーローにはそれぞれ得意分野や役割分担があります。ドクター・ストレンジの割り当ては地獄や魔界からくるモンスターと戦い、我らの世界の門番となること。日本のキャラで一番近い存在と言えば「悪魔くん」でしょうか。決して本国でもメジャーなキャラではなかったようですが、そのラリッたようなサイケデリック・アートが一時期マニアな大学生さんたちにウケていたそうです。
まあなんというかヒーローにしては独特ないでたちですよね。素顔丸出しでちょび髭で派手な衣装。正義の味方というより悪の幹部かマジックショーの舞台が似合いそうです。つい最近まで単独タイトルは訳されたことがなく、わたしの印象は「大規模なクロスオーバーでいつの間にかいて偉そうなことを言ってるおじさん」というものでした。ゲームファンには人気シリーズ「マーヴルVSカプコン」などでも親しまれているようです。
さて、この度の映画ですが、オカルト系の作品やあまりほめてる人のいない『地球の静止した日』のスコット・デリクソンがメガホンを撮っております。だからなんとなく不安だったのですが、マーベルのかじ取りがうまくいったのか、デリクソン監督のキャリアで最も称賛を浴びた作品となりました。本当に大人から子供まで広く楽しめる一大エンターテイメントに仕上がっています。自身の十八番であるオカルト描写を抑え、代わりに『インセプション』のようなサイバーパンク的なビジュアルで観客の目を楽しませてくれます。
あとこれも意外だったのですが、今回かなりギャグが多いです。しんみりした場面の直後でもすかさず入れてくるので「ちょっとやりすぎじゃね??」とも思いましたが、見逃しましょう。
最初こそじれったくなるほど魔法の習得にてこずっていたストレンジ先生ですが、「素質がある」と言われるだけあって一度壁を越えたらあとはグングンと様々なスキルを身に着けていきます。そんな風になんでもできちゃうようでいて、実はそれなりに法則にのっとっていたり、侵しちゃいけない領域があったり、失ったものは取り戻せなかったり…というあたりが面白いですね。魔法モノでありながらこういう色々不自由な設定がハリポタとは一風違ったところです。今回「時間」がひとつのテーマにもなっているのですが、先生が恋人から贈られた時計が要所要所で印象的な使われ方をしていて心憎かったです。
あともう一点気づいたのはストレンジ先生がMCUの代表的ヒーローであるアイアンマンとよく似ているということ。天才で傲慢でちょび髭でどんどん新技術を習得していくとこや、その実正義感を胸の奥に隠していたり、一度手痛い挫折を味わっていたり…と本当に「もう一人のアイアンマン」と言っても過言ではないかと。しかし上手に差別化されている…アイアンマンは科学技術の申し子、ストレンジは精神世界の探求者…ため、「二番煎じ」という印象は全く受けません。アイアンマンが基本ワンマンなのに対し、ストレンジには兄弟子たちや師匠が支えとなってくれるところも異なってますね。劇中で「アベンジャーズとは違い、我々は…」というセリフがあったように、ストレンジ先生はこれから別方面の侵略者たちと戦うヒーローたちのリーダーになるのかもしれません。もしそうであれば一人でなんでもしょい込んでしまうキャップやアイアンマンたちにとって、非常に心強い存在となるはず。ちょっとすっとぼけた一面もありますが、そんなストレンジ先生の活躍に期待しております。
『ドクター・ストレンジ』は『ファンタスティック・ビースト』の余波にうまくのっかったのか、日本でも初週第一と好調な成績をおさめました。いや~~~ わしゃ、これてっきりはずすと思ったけどな~~~
そしてMCUの次なるタイトルはあの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の続編。さらに今年はスパイダーマンの新作や(たぶん)『ソー』の第3作も待機しております。ああ… 楽しみなことが多くてなんだかあたし怖い…
左のイラストはお友達のウシさんが描いてくれたもの。上のわたしが描いたヘボ絵との画力のギャップをお楽しみください。
Comments
SGAさんこんばんわ♪
『インセプション』のような映像、そして『アイアンマン』のトニー・スタークのような傲慢さと、比較すれば似通った感じは確かに見受けられるんですが、それでもドクター・ストレンジはその似通った作品よりも更に頭一つ抜き出た面白さがあったように思えましたね。インセプションのような映像と言っても、こちらはもう天地や重力も完全無視した奇想天外さがありましたし、傲慢な性格だけど、生命の尊さもちゃんと理解していたりと、違いは確かにちゃんとあるんですよね^^
シリアスな局面でも炸裂する時折のユーモアも可笑しくて、この脱力具合はなんか『アントマン』の雰囲気に似てるなとも思いました。
でもマーベル作品はかなり数珠繋ぎな展開にもなってるので、たまにはアベンジャーズにも属さない独立したヒーローがこの先居てもいい気がしますね。
Posted by: メビウス | February 23, 2017 06:56 PM
>メビウスさん
どもども。なんか重苦しかったシビルウォーの反動か、やけにギャグがおおめでした。この辺もアイアンマンとは違うところかも? とはいえこのユーモラスなところが高評価につながったのでは、と思います
ビジュアルはやっぱりインセプションっぽかったですけど、監督はハウルの動く城なども意識してたそうです。言われてみれば、ああ、なるほど…と
作品もだいぶ増えてきたので、MCUスタッフも一見さんが入りやすいようにだいぶ心を砕いているようです。GOTG続編もあんまりアベンジャーズには関係ない話になるとか
Posted by: SGA屋伍一 | February 23, 2017 10:07 PM
伍一どんのイラストを見て、この男がこの服装で「俺、天才外科医で年収5億」とか言って近づいて来たら、バリバリ、お笑いニュースで取り上げられそうな結婚詐欺師だと思いました。
Posted by: ふじき78 | February 24, 2017 09:42 AM
伍一くん☆
うわーっすっごい絵がお上手!!と思ったらお友達でしたか?
でも伍一くんの絵もよろしくてよ。
飛びます飛びますっ!ってやっる♪
なかなか面白い作品でしたね~舐めてかかってました。
Posted by: ノルウエーまだ~む | February 24, 2017 11:27 PM
>ふじき78さん
堺雅人さんの主演でそんな映画ありましたね。『クヒオ大佐』だったか
Posted by: SGA屋伍一 | February 25, 2017 09:33 PM
>ノルウェーまだ~むさん
上手でしょう。掲載の条件が「スガヤさんの絵も一緒に載せるように」というものだったのです。ううう…
マーベルはマンネリにならずに次から次へと新しい世界を見せてくれるところがすごいですよね!
Posted by: SGA屋伍一 | February 25, 2017 09:42 PM