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February 17, 2017

地獄の会計士 ギャビン・オコナー 『ザ・コンサルタント』

Photo『夜に生きる』監督・主演に『ジャスティス・リーグ』出演と今年も大忙しそうなベン・アフレック。そんなベンアフさんが『ウォーリアー』のギャビン・オコナー監督と組んで、やや現実的なバットマンの映画をこしらえました。『ザ・コンサルタント』、ご紹介します。

暗黒街の顔役たちを顧客に持ち、警察に見返りもなく情報を提供する謎の会計士、クリスチャン・ウルフ。彼の目的は果たして…(結論から言うとよくわかりませんでした)。そんなウルフの正体も知らず、ある企業が彼に内部の帳簿の監査を依頼してくる。調べているうちに不正の匂いをかぎつけたウルフだったが、その仕事を始めてまもなく何者かに命を狙われることになる。

大体年に1,2本は作られてますかね。「その辺のあんちゃん・おっさんかと思ったら実は凄腕の殺し屋だった」みたいな話。『ボーン・アイデンティティー』『96時間』『イコライザー』『アジョシ』『ジョン・ウィック』『アメリカン・ウルトラ』『ヒストリー・オブ・バイオレンス』etc… で、アメリカさんはこういう話が大好きみたいで、かなりの高確率でヒットをおさめたりします。
『ザ・コンサルタント』もその系譜につらなる作品なんですが、ちょっと変わっているのが主人公がいわゆるアスペルガー症候群をわずらっていること。そんなウルフがどんな少年時代を送って来たか…ということも断片的に並行して語られていきます。この構成と設定、自分は『96時間』よりもバットマンよりも日本の『脳男』を思い出したのですが。

そういえば『脳男』でもよくわからなかったのですが、主人公はなぜヒーロー業を始めたのか、その辺の理由があまり語られません。あるいは彼は正義の味方のつもりはなく、保身のためと裏社会を操るためだけにあんなスゴ業をふるっているのか? でも警察に犯罪者の情報をリークしたりもしていたしなあ。うーむ… よくわかりませんw
もし仮に彼がヒーロー業を意識してやってるとしたら、車の中にしまわれていた『スーパーマン』のコミックから大きな影響を受けた…とも考えられます。単に値打ちものだったから持ってた、ということも考えられますけど。
他にもこの映画、いくつか腑に落ちないとことか、ちょっとぽかんとしちゃうところがあります。あっちは許さないのに、そっちは見逃しちゃうんだ…とか。その辺はいささか脳内補完と広い心が求められます。監督は「単なるアクションものにはしたくなかった」とのこと。うん、確かに個性的ではありましたよ。だからといってそれがカタルシスにつながるかというと… …

そんな風に細かいとこが気になる一方で、「ま、面白いんだからいいじゃねえか!」という気もします(笑)。とにかくベン・アフレック演じるクリスチャン・ウルフのキャラがかわいいしこわい。で、ちょっとだけキモい(笑) 共演のアナ・ケンドリックが小柄なせいか知りませんが、やたらとでかく見えます。まるでクマさんです。そしてその眼は『ゴーン・ガール』の時の二倍くらい死んだような光を放っています。そんなコワモテのくせに普段はとてもおどおどしてて神経質。登場した時点でキャラ立ちしまくりでした。えー、あと腑に落ちない点も色々ありましたが、前半でさらっとまかれた伏線が後半ちゃんと回収されてた点もよかったです。

ちなみに監督のギャビン・オコナー氏、フィルモグラフィーを見るとほとんどが中赤字から大赤字です。日本では大変DVDスルー率が高い。『ウォリアー』なんかは大変感動的で燃えまくるいい映画なんですが、これもやっぱり興行的に失敗したためにこちらではごく限られた映画館でしかかかりませんでした。よい作品でも必ずしもヒットするとはかぎらない。映画ってむずかしいですねえ~ というかこの人、よく映画撮り続けてられますよね…

Cv00025_01もしかしたらこの『ザ・コンサルタント』はオコナー氏のキャリアで初めて大ヒットした映画かもしれません。一応続編の構想もあるとのことなので、近い将来クリスチャン・ウルフのモジモジアクションに萌えられたらうれしいです。ただ日本ではそんなに売れてるわけでもなく、あと一週間ほどで終わりそう。ここんとこ観てから書くまでがほぼ一か月遅れになっているので、もう少しペースを早めたいなあ…と思うわたくしでした。


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Comments

ベン・アフあまり正義っぽい感じはないですね。
最初の虐殺は意趣返しでしょうし。表面には出ないけど感情はある、と。
リークについては、確か雇い主が裏切った時みたいにセリフで注釈が付いてたと思います。正義以上に自衛に近い感覚ではないかと。
この主人公でとりあえずコスチュームに着替えないのは正解。変身用のコスチュームとか編み物させたら延々と編み物してそうな気がする(多分、そういう個性ではないんだろうけど)。

Posted by: ふじき78 | February 24, 2017 09:35 AM

>ふじき78さん

なるほど。リークはよきお父さんにいい目を見てほしかったから、という理由もあったのでしょうか
どうもベンアフ=バットマン=正義の味方 という先入観にとらわれていたようです。コスチュームは似合うかは老いといて、彼がでかい図体でちまちまと編み物してる様子はいかにも似合いそうです

Posted by: SGA屋伍一 | February 25, 2017 09:32 PM

こんばんは

そこらへんの普通のおっさんやあんちゃんが実は凄い・・・・というお話、大好きです。
で、これはおっしゃる通り、主人公がアスペルガーという設定が異色でしたね。
彼の突出したアスペ特有の才能が「数学」だったゆえに会計士になったのは腑に落ちますが、
なんで殺し屋になったかはよくわかりませんでした。
父親から戦闘能力を叩きこまれたというのも理由の一つでしょうか。
アスペルガーの人たちは、自分の突出した才能をとにかく生かすために生きているような面もありますよね。

>いくつか腑に落ちないとことか、ちょっとぽかんとしちゃうところがあります。あっちは許さないのに、そっちは見逃しちゃうんだ…とか。
そうそう、これもアスペルガーというか自閉症さんにはありがちかもしれません。
私は、主人公の戦闘能力にちょっと?でした。臨機応変とか、空気を読むとか、想定外に備えるとか苦手のはずなんですが・・・。
でもスナイパーとしての正確さはアスペルガーならではなのかな?
でも?があってもとにかく面白いからすべて許せる作品でもありましたね。

Posted by: なな | May 28, 2017 11:31 PM

>ななさん

こんばんは
ジョンウィックやイコライザーは続編企画がいいとこまで進んでるようですが、こちらはドラマ化の噂が流れてるくらいかな… ま、実現したら殺し屋になった動機とかもう少しくわしく語られるかもしれません

ハンディキャップのある凄腕というと日本では座頭市さんがいらっしゃいますが、ウルフさんは座頭市よりはもうちょっと現実的というか弱さのあるキャラクターで、その辺がかえってなじみやすかったです

Posted by: SGA屋伍一 | May 29, 2017 09:32 PM

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