チャイニーズ・マーメイド・ストーリー チャウ・シンチー 『人魚姫』
いまや中国本国ではナンバーワンのヒットメーカーと言っても過言ではないチャウ・シンチー。本日は「アジア歴代興行収入No.1を樹立!」しながらも日本ではなぜか扱いの悪い『人魚姫』、ご紹介します。
香港郊外の自然保護区に、一大リゾート地を建設しようと野心に燃える若き実業家リウ。だがそこには人知れず暮らしていた人魚たちのコミュニティがあり、彼らはリゾート地の開発で住む地を失おうとしていた。そこで人魚たちのリーダー・タコ兄はかわいい人魚のシャンシャンを刺客としてリウのもとに送り込む。しかしシャンシャンはリウの内側に秘められた孤独に気づき、いつしか彼に恋心を抱くように…
シンチーさんといえば世間一般ではコメディ映画の作家として認知されてると思います。この映画でも前半はベタベタでコテコテなギャグがひっきりなしに連打されます。まず何と言ってもおかしいのが普通の人魚たちの一団の中に、一人?だけ下半身がタコのお兄さんがいることです。この時点で可憐なタイトルとは裏腹に、「ああこれはマジメな映画ではないな」と思います。ついでに言うとこの映画、キュートな人魚は登場しますけど、彼女別に「姫」ではないんですよね。どちらかといえば庶民派です(ちなみに原題は『美人魚』)。少女漫画のヒロインは往々にしてドジっ子である場合が少なくありませんが、こちらのシャンシャンちゃんの天然ぶりはそんなレベルではなく、ドジのあまり絶えず流血を繰り返したりしてます。前から思っているのですが、シンチーさんは女優に対して少し厳しすぎるというか、サド気質がある気がしてなりません。わたしはどちらかといえば彼女の恋敵となる、通常のツンデレを五人分くらい濃縮したような財閥令嬢の方が好みでした。
…話がそれました。そんなバカバカしいムードでお話は進んでいくのですが、後半に入ると一転、物悲しいメロドラマへとシフトしていきます。最近のシンチーさんにありがちな傾向ですけど、以前は最初から最後までどんちゃん騒ぎが続くような映画を作っていたのに、近年はクライマックスで急に「泣かせ」にかかるんですよね。そういうのがダメとは言わんけど、ぼくはやっぱり以前のヒロインが最初ブスでひたすらギャグに徹してたスタイルの方が好きだったなあ… と、言いながら、終盤しっかり泣かされてしまいました(笑) こんなアホな映画で!! シンチーさんの計算に見事に乗せられてしまったようで大変悔しいです。あああ! 悔しい!!
それにしてもここんとこ国境を越えて水棲人間のロマンティックなお話が続いている気がします。『レッド・タートル』(フランス)に『ソング・オブ・ザ・シー』(アイルランド)、あまり話題にならなかったけど『蜜の哀れ』(日本)、あと『フィッシュマンの涙』(韓国)というのもありました。近々公開の『モアナと伝説の海』も魚にならないまでも水と仲良しの女の子の話ではなかったかな。たぶん世界中の人々がいま切実に「水・魚・自然と仲良くしよう→大切にしよう」と思ってるってことなんじゃないでしょうかね。強引ですね。
その『人魚姫』、前作『西遊記』の興行が日本でふるわなかったせいでしょうか。とても上映館が少ないです。『少林サッカー』の時はあんなにもてはやされたのに…
そして『西遊記』の続編はシンチーは製作に回り、これまた香港映画の大御所ツイ・ハークがメガホンを取るとのこと。すでに予告編もアップされてます。後半なんかシンチーとハークが謎のおしゃべりをしていて意味不明なんですが、DVDスルーになりませんように…
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