本当に恐ろしいグリム童話以前 ジャンバティスタ・バジーレ マッテオ・ガローネ 『五日物語 ー3つの王国と3人の女ー』
とうとう一か月以上前に観た映画の感想を書いてます… ははは…
カンヌを二度制したマッテオ・ガローネ監督が「狂った映像美」で話題を呼んだ『五日物語 ー3つの王国と3人の女ー』、ご紹介いたします。
17世紀のイタリアっぽいどこかの3つの王国。ある国では竜の心臓を食らったお妃が子供を宿し、ある国では少女のような美声を持つ老婆が王に求愛され、ある国では巨大な蚤に異常な愛情を注ぐ王がいた。彼ら、彼女らの風変わりな愛情は、やがて関わる者たちを悲劇に巻き込んでいく。
さっき公式サイトを観てようやく知ったのですが、これ原作がちゃんとある映画でした。17世紀ナポリの作家、ジャンバティスタ・バジーレにより著された『五日物語』という物語集がそれです。グリム兄弟にも多大な影響を与えているとか。ただどれほどアレンジされてるのかはわかりませんが、グリム兄弟の著作が「童話」だとすれば『五日物語』は「民話」という感じですね。どう違うかというと民話の方は必ずしも子供のために描かれていないというか。インモラルで、残酷で、正義が絶対勝つとは限らない、そんなお話も多くあります。ですから映画も見事にPG12指定となっておりました。…ということは親御さんがついてれば一応お子さんも観られるということか? 判断は各家庭にゆだねますけど、子供が観たらモロトラウマになりそうですけどね~
繰り返しになりますけど、童話というものは普通正しい人、かわいそうな人が報われるということになっています。しかし本作ではかわいそうな人や何の罪もない人も、悪いやつと同様みんなひどい目にあいます。ある意味平等というか現実的かもしれませんが、なんとも意地悪な作風でありました。
でもあんまり不快な気分にならないのは、残酷ながらも人を食ったようなシュールなギャグセンスを感じるからでしょうか。観てる側からすると「それどう考えてもおかしいから」とつっこみたくなるのをよそに、登場人物たちは突拍子もない決定を繰り返します。吉田戦車の世界をゴージャスに悪魔的に表現するとこんな風になるかもしれません。あと各紙がこぞって称賛した映像美も目を楽しませてくれます。イタリア各所の童話的な場所を懸命に探して、ロケを敢行したとのことですが、こういうやり方は何年か前の『落下の王国』を思い出させます。実際雰囲気かなり似ております。自分のようなものには、奇抜なお城や怪獣・妖怪がいろいろ登場するあたりもポイントが高かったです。
そんな『五日物語』、細々と公開されただけあってメインどころは大体上映終了しておりますが、地方や2番館ではこれからかかるところもある模様。詳しくは公式サイトをご覧ください。
ちなみにわたしは遠出して初めて日本橋のTOHOシネマズで観ました。ほかのTOHOよりもちょっぴり上品な造りになっていて、『5日物語』のムードに大変マッチしておりましたよ。ほほほほほ
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