愛のカルト脱出大作戦 フロリアン・ガレンベルガー 『コロニア』
年末進行で非常にバタバタしております。そんな中ひっそりと遅れて公開されてた映画をこっそりと観に行ってまいりました。『コロニア』、ご紹介します。
1973年(どうでもいいことですが、わたしの生まれた年)チリ。客室乗務員としてその地を訪れたレナは、その地で政治活動に加わっていた恋人ダニエルとの逢瀬を楽しんでいた。だが突如として起きた軍部のクーデターにより、ダニエルは秘密警察と結託しているカルト集団「コロニア・ディグニダ」の手に落ちてしまう。レナは恋人の命を助けるため決死の覚悟で自ら「コロニア・ディグニダ」に潜入するが…
チリといえば「細長い国」というイメージがまずあります。あと思い出すのは例の坑道落盤事故とか、チリ人妻アニータのこととか。まあ日本からしたらほぼ真裏の国ですから、そんなに知ってることはありません。
それでも『ぜんぶ、フィデルのせい』や『リアリティのダンス』といった映画を観ていきますと、かつてチリには開放的な大統領がいたものの、軍部により暗殺され、その後独裁政治が続いた…なんてことがおぼろげながらわかってきます。この映画はそんな時代のお話。
コロニア・ディグニダの中の生活を観てまっさきに連想するのは、かつて日本を騒然とさせたオウム真理教のあれこれ。閉鎖された空間の中で奨励される禁欲主義や、勤労の奨励。それだけならまだいいんですけど、ルールを破った者には容赦ないリンチが執行されるあたりやはり異常であり、恐ろしい環境です。そしてその組織を支配してるが暴君的なカリスマであるところもオウムの事件を思い出させます。違うのはコロニア・ディグニダは時の権力者と仲良しこよしだったということですね。狂気と権力が結びつくほど恐ろしいものはありません。
そんな地獄のような環境に恋人を救うため何か月も潜伏したレナ嬢の勇気と愛にはほとほと頭が下がります。レナとてスーパーパワーがあるわけではない非力な女性ですから、うっかり真意がばれて残酷な刑罰を科されるのではと観ていて胃袋がきりきりしました。
なんでしょうね… 男が閉じ込められる話というのは「必ずここから脱出したやるぞー!! うおー!!」と非常に燃えるものがあるのですけど、女子が監禁される話はヒロインに感情移入しすぎてしまって「もうやめて! これ以上いじめないで!!」と神経がまいってしまうことが多いです。だからそういう話はあまり好きではないのですが、今年はどういうわけかそんな映画を4本も観てしまいました、なんででしょうね…
主役二人を演じるのはエマ・ワトソンとダニエル・ブリュール。ネームバリュー的には申し分ない二人ですが、なんでかこの映画イギリスで驚異的な不入りを記録してしまったとか。いや、多少『アルゴ』に似てはいましたけど十分面白い映画だと思うけどなー ちなみにわたしの行きつけの映画館では1週間限定のうえ一日一回というさんざんな扱いでした。ひどい、ひどいわ…
とりあえず世界の歴史の影にこんな驚くべき実話があった…という作品が好きな人におすすめ。来年2月にDVDが出ますので、興味を持たれた方はどうぞ。
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