ナニワ陰陽道 奥浩哉・さとうけいいち 『GANTZ:0』
2004年アニメ化、2011年実写映画化、そして2013年堂々連載完結した『GANTZ』。
このまま勢いも収束していくかに思われましたが、ここに来て突然の新作CGアニメが公開となりました。『GANTZ:0(オー)』ご紹介します。
死んだ者を生き返らせ、ゲームのコマのように得体のしれない怪物と戦わせる謎の球体GANTZ(ガンツ)。通り魔の犯行を防ごうとして命を落とした高校生・加藤勝もまたGANTZに召喚され、第二の生を得た。わけがわからぬまま、彼はこれまでゲームに参加してきた者たちとともに、そのステージである大阪の地へと転送される。だがその地で遭遇する怪物たちは、先の参加者たちでさえ怖気をふるうほど圧倒的に強大な存在であった。たった一人の身寄りである弟のもとへ帰るため、加藤はその不条理で絶望的な戦いに身を投じる。
というわけで今回映像化されたのはシリーズでもやや中盤を過ぎた「大阪編」。ここでは本来の主人公である玄野計が死亡しているため、副主人公的な存在である加藤君がお話を引っ張っていきます。ちなみに最初ひねくれていた(だんだんいいやつになっていくんですが)「ごく普通の高校生」玄野に比べると、加藤君は他人のために命を張るのをいとわない、まさに正義の味方のような青年です。
だいぶ前に書いた原作漫画の紹介記事でも触れましたが、『GANTZ』の魅力というのは「死がすぐそばまで来ていて、それを鼻先で交わしていく恐怖感、緊張感、高揚感、爽快感」「不条理極まりなくてユーモラスなんだけど、過剰なまでに残酷だったりするヴィジュアル」にあると思っています。「大阪編」はそうした『GANTZ』の持ち味がピークに達したエピソードと言っても過言ではありません。今回の敵はぬらりひょん、天狗、ダイダラボッチといった日本古来の妖怪たち。ぱっと見クスッと笑ってしまうような外見です。でもこいつらがものすごく強い上に残酷度も半端ない。何度もゲームをクリアしてきた猛者たちですらあしらわれてしまうほどに。原作を読んでいた時、自分は何度も何度も「いや、こんな文字通りのバケモノたちを倒せるわけないだろ…」と震撼いたしました。この度の劇場版は先に原作を読んでいたのでなんというか再確認みたいな鑑賞になってしまったのですが、初めてこのエピソードを見る人はもっともっとこの絶望感とカタルシスを味わえるんだろうな…と少しうらやましく思いました。
あと前の実写版(特に第1部)もがんばっていましたが、『GANTZ』に登場する装備や怪物を最も迫力豊かに描けるのは、やはりこのCGアニメという手法かもしれません。特にこの大阪編に登場する巨大ロボのインパクトと存在感は、紙上に描かれた絵をはるかに上回っておりました。はっきり言うと『パシフィック・リム』みたいでした。「大阪編」はパシリムより前に描かれているので「真似した」ということはないと思うのですが、映画版では動きや構図の点でもいかにもパシリムを意識したシーンが幾つかあって嬉しくなっちゃいましたね。残念なのは(これは原作にも言えることですが)この巨大ロボットの出番があまり多くはないこと。これを最初から最後まで大暴れさせてくれたらもっとよかったのに… まあその辺は次回作に期待するとしますか。ていうか次回作あるのかしらん(^_^;
少し残念だった点。未映像化だった「大阪編」をやると聞いたので、「もしかしたら実写版の続きなのかも?」と淡い期待を勝手に抱いたのですが、そちらとは関係ない完全リブートというかパラレルワールドのような仕様になっていたこと。実写版の結末はあまりに玄野君が気の毒でわたしはまだ納得がいってないんですよ! でももうさすがにあちらのその後が語られることはないんだろうなあ~ もう自分の脳内で独自に妄想を繰り広げるしかないんだろうなあ~ つか、今回も玄野くんえらい損な役回りでしたね… 続編が作られないとこのまま死にっぱなしなんですが。
あまり「大ヒット!」とはいかなかったのでさらに映画が作られるかは微妙ですが、やるならばおそらく後半の山場である「カタストロフィ編」妥当なところでしょうか。あるいはもう原作は無視してオリジナルのエピソードを作ってしまうか。どちらでもいいのでこのCGアニメの新たなる可能性を探求し続けていってほしいものです。
『GANTZ:0』は現在全国の映画館で公開中。あと奥浩哉先生の漫画で『GANTZ』と同じ路線の『いぬやしき』がそろそろクライマックスに突入している感じです。興味を持たれた方はこちらもどうぞ。
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