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November 09, 2016

宇宙の果てまでビヨヨ~ンと ジャスティン・リン 『スター・トレック BEYOND』

Stb1うちゅう… それはさいごのふろんてぃあ… たーららー たーらーらーたーららー
3年前もこの書き出しで始めましたが、今回もまた始めます。人気SFドラマをリブートした劇場版の第3作『スター・トレック BEYOND』ご紹介します。ちなみに前作『イントゥ・ダークネス』の記事はこちら。第1作の記事はこちら。

前作ラストで意気揚々と外宇宙の旅に出たカ―君。だがあまりにも茫洋としたその行程は、徐々に彼の心を深い倦怠でむしばみ始める。いつしかカークはエンタープライズのキャプテンを降り、駐留艦隊でのポストを願うようになっていた。そんな折辺境の宇宙ステーションに立ち寄っていたエンタープライズに、近くの惑星から救難信号が送られる。ただちに現場に急行した一行だったが、それは宇宙艦隊に敵意を抱く者の罠だった。

早いもので1作目からもう7年。今回は前二作で監督を務めたJ.J.エイブラムスが製作に回り、『ワイルドスピード』シリーズで名をはせたジャスティン・リンがメガホンを取っています。
これまで考えるより前に行動してた超ポジティブ野郎のカー君が、壁に当たって初めて暗い愚痴をこぼし始めます。偉大な父の存在と、いつ果てるともしれぬ任務。主題歌でリアーナさんも「壁に当たった」と歌ってますが、その障害物をいかにして乗り越えていくかが『スター・トレック BEYOND』のテーマであると思います。あまり言うとネタバレですが、ボスキャラとなる悪役がちょうどカー君の合わせ鏡のような存在なんですよね。壁を乗り越えられなかったもう一人の自分、みたいな。

ただ今回の『BEYOND』、監督の資質もあるのか冒頭多少和んだパートがあった以外は、ほとんどアクション!アクション!アクション!バトル!バトル!バトル!の繰り返しでした。だもんで人間ドラマの印象がかなり薄い。いつも女に手が早いカー君も、今回は忙しすぎてナンパする暇さえありませんでした。ワイスピ出身のリン監督だけあって乗り物のチェイスや破壊などはさすがの職人技という感じでしたがね~ あと前作は素顔のカンバーバッチさん演じる悪役がかなりかっこよく強そうだったのに対し、今回のライバルはいかにもやられ役といった宇宙人メイクのイドリス・エルバだったので、その点も少々物足りなかったです。

…とまあなぜか批判調になってしまいましたが、本当にアクション映画としては実に申し分ない出来でした。あと名前を忘れてしまいましたが、エンタープライズが立ち寄る宇宙都市というか宇宙ステーションの描写が大変すばらしい。SFファンならここだけでも十分観る価値はあると思います。

もう一点、この映画が大変重要なのは図らずもアントン・イェルチンの遺作となってしまったことです。リブート版の1作目からクルーのチェコフ役で出演していた彼でしたが、この映画での撮影を終えたのち不幸な事故でこの世を去りました。わたしもそんなに熱心なファンだったわけではありませんが、親しみやすくナイーブな風貌のアントンの演技が好きだったものの1人です。日本の俳優でいうと濱田岳氏をもう少し細くして、見栄えをよくしたような感じでしょうか。
彼の出演作で特に印象に残っているのは『君が生きた証』と『オッド・トーマスと奇妙な死神』。2本とも出だしは軽妙な語り口で後味もさわやかでありながら、「死」の持つ重みがズシリと響く作品です。まさかアントン君自らが早すぎる死でさらにそれを痛感させてくれることになろうとは… ただただ悲しい。遠い遠い未来の宇宙で、きっと彼はいつまでも活躍し続けるのだろうと思って自分を慰めることにします。

Stb2リブート版『スター・トレック』は日本では微妙な売れ行きながらすでに第4弾が決定しているそうで、順調にいけばまたクリス・パイン演じるカー君たちに数年後には会えることでしょう。またアントン君のもうひとつの遺作である『グリーン・ルーム』が来年2月公開ですが、こちらは怖そうな話なので自分観られなさそう。隣のイラストは全く似てませんがアントン君だと思ってください。


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Comments

伍一くんっ☆
残念ながらアントン君には・・・・(汗)
それにしてもアントン君は残念でした。私も彼のキャラは大好きでしたよ~
敵キャラとカー君が合わせ鏡だったとは!
そこまで凄い設定とは思えないようなアクション満載で盛り上がった作品でした♪私としては宇宙戦で寝なかっただけで◎な出来栄え!

Posted by: ノルウェーまだ~む | November 14, 2016 10:39 AM

>ノルウェーまだ~む

そういえばまだ~むが毎年参加されてるしたコメ映画祭でアントン追悼上映があったそうで。まだ~むは怖いの苦手そうだから観なかったかもしれませんが

わたしもさすがにクライマックスは起きてましたよ。エンタープライズが落っこちた直後くらいでついこっくりこっくり…

Posted by: SGA屋伍一 | November 15, 2016 09:13 PM

ああ、ビヨンドって、「びよーん」どいう意味なのかー。

Posted by: ボー | November 17, 2016 10:57 AM

>ボーさん

たぶんそうだと思います… 亜空間ジャンプの話だけに。ビヨヨ~ンと

Posted by: SGA屋伍一 | November 18, 2016 10:21 PM

あのテーマがかかると宇宙映像付きだと「宇宙大作戦」にとどまれるのですが、何の気なしにテーマだけ思い返して見ると「アメリカ横断ウルトラクイズ」の方が色濃く思いだしてしまって困ります。

Posted by: ふじき78 | November 20, 2016 10:47 PM

>ふじき78さん

「外宇宙へ行きたいかーツ!!」
「行きたくねーツ!!」
みたいな。ちがうか

Posted by: SGA屋伍一 | November 23, 2016 08:31 PM

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