親切の巨人 ロアルド・ダール スティーブン・スピルバーグ 『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』
最近すっかり社会派の巨匠となってしまった感のあるスティーブン・スピルバーグ。そのスピさんが久々に子供も楽しめるエンターテイメントを作ってくれました。たくさんの名作童話を世に送り出したロアルド・ダール原作の『BFG: ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』、ご紹介します。
ソフィーはイギリスの孤児院でくらす女の子。ある晩眠れなかったソフィーは、窓から街を駆け回る巨人を目撃したため、その巨人にさらわれてしまう。その巨人「BFG」の国に連れてこられたソフィーは最初こそおっかながっていたが、BFGの優しさに触れて次第に親しい間柄となっていく。だがその地に住む他の巨人はBFGと違って気性が荒く、ソフィーがいることを知って彼女を食べようと躍起になる。BFGは果たしてソフィーを守ることができるのだろうか。
巨大なのんきもののおっさんBFGと、小さいながら口が達者な嬢ちゃんソフィーの組み合わせは昨年の『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』とよく似ています。そういえばあれも童話というか絵本原作でしたね。
まあよくも悪くも絵本のような映画でした。ひとつひとつのパートの背景が細部までじっくり作りこまれていて、のんびりゆったりお話が進んでいくあたりが。ですからお子さんたちへの情操教育にはまことにふさわしい映画だと思います。スピルバーグにありがちなゴア描写も今回はほとんど見当たりませんでしたし。
ただ近頃リズムに飛んだスピーディなお話に慣れてしまった身としては、正直かなり眠くなりましたw すっかり感性が刺激物でマヒしてしまったのかしら。いかんなあ。でもその直前に観た『レッドタートル』はセリフなしにも関わらず全然眠くならなかったんですよね。なんでだろうなあ~
あともうひとつ不満としては、これまでのロアルド・ダール原作映画…『チャーリーとチョコレート工場の秘密』『ジャイアント・ピーチ』『ファンタスティックMr.FOX』にはどれも過剰なまでの「バカバカしさ」があふれていて、『BFG』にもそういうのを期待したんですけど、こちらは「おならドリンク」を除けばかなりお上品だったような。これは原作がもともと例外的にお上品だったのか、それともスピルバーグの重厚な作風に染められてしまったのか。はてさて。
文句垂れてしまいましたが、よかったところもありました。個人的にツボだったのは『ブリッジ・オブ・スパイ』で東側のスパイを好演してたマーク・ライランスがBFGに扮していたことでしょうか。あの朴訥で無愛想だったじいさんがにこやかでヘンテコなジャイアントをやってるかと思うと、なんか無性に萌えるんですよね。
あと『E.T.』脚本家のメリッサ・マシスンの遺作ということもあって、ちょっぴり切なげで、でもさわやかな友情が描かれていたところも印象深かったです。たとえしょっちゅう会えなくても、いつも心に思い続けていればそれはそれで篤い絆と言えるわけです。でもこんな秋風吹く夜は、一緒に飲んでくれるお友達がほしいところです。わたしあんまり友達いないので… あああああ! さびしい!(←うざったいですね!)
というわけで『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』は現在全国の映画館で公開中ですが『君の名は。』のあおりを食ってしまったのかあまり客入りがよくないようです。2週目で早くも10位圏内から姿を消してしまいました。若かりし頃ビッグネームだったスピさんがここまで勢いがないのもなんだかさびしいですねえ。そんなスピさんが次に挑むのはピーター・ジャクソンとコラボ作品とのことですが、これがタイトルも内容も一切不明の極秘プロジェクトなんだとか。老いてなお挑戦をし続けるスピルバーグ、よいですねえ。そんなわけでたまにこけてもめげずに映画を作り続けていってほしいものです。
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